ワールド・クロス   作:Mk-Ⅳ

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第三十一話

「くそ、いきなりなんだ!?」

 

突如上空から降り注いだビームから慌てて退避した俺は悪態つく。

ビームによって、プリンセスと五河のいた校舎が消え去りクレーターとなっていた。

グラウンドにはプリンセスに抱えられた五河と、それを見下ろすように浮いているのは――

 

「1号機!」

 

形状は大分変わっているが、間違いないあれは強奪された1号機!

 

「ファントム・タスクか!」

 

1号機の強奪以降出てこなかったが、遂に動き出した。狙いはプリンセスなのか?

そんなことを考えている内に、アラームが鳴りだした。

 

『何事だ友里君!?』

『来禅学園敷地内に転移反応を感知!このパターンは――ノイズです!』

『何!?』

 

風鳴司令の驚愕の声と共に、学園内の空間からノイズが次々と出現していく。それも俺達を1号機やプリンセスへ近づけないようにしているかの様に。

なんだ?まるで誰かの意思で動いているみたいな感じだな。

 

『作戦変更だ!ASTと遊撃隊はノイズの殲滅を!』

「了解!聞こえたなお前ら、行くぞ!」

『士道っ!』

「って、おい!折紙!?」

 

折紙が焦った様子でノイズの群れに突撃していく。いかん冷静さを欠いていやがるなあいつ!?

 

「ええい。風鳴、オルコット、折紙をフォローするぞ!」

 

風鳴とオルコットがそれぞれ応えるのを確認すると、迫り来るノイズの頭部をショットガンで吹き飛ばす。だが、すぐさま別のノイズが襲いかかって来た。やっぱり数が多いなこいつら!まるでゾンビの群れに襲われているみたいだ!

まるで波の様に押し寄せて来るノイズらを、左腕のサークル・ザンバーを起動させ次々と切り裂きながら折紙を追いかけていく。

 

『ハァッ!』

『狙い撃ちますわ!』

 

風鳴とオルコットも、それぞれの獲物でノイズを薙ぎ払いながら俺に追従する。

 

「オォラァ!」

 

ノイズの頭部を掴むと、他のノイズに叩きつけてショットガンで蜂の巣にする。

襲いかかるノイズをあしらいながら、ショットガンのリロードをしていると。上空から光弾が降りかかってきたので、バックステップで回避する。

 

『はぁい軍人さん。ここから先は通行止めよぉ』

 

上空に現れたのは、アミタと同じ形状でピンク色を主体としたバリアジャケットを纏った少女であった。その手には、アミタのとは色違いのヴァリアントザッパーが握られており、俺へと銃口が向けられていた。

それに彼女の側には、ファントム・タスクに強奪されたISまでもがいた。

 

「そのバリアジャケット…。お前はキリエ・フローリアンだな?」

『ええ。そうよ』

「なぜファントム・タスクと共にいる?そいつらは…」

『国際テロ組織でしょ?それくらい知ってるわよ。利害が一致したから手を組んだのよ』

 

まじかよ…。その可能性もあるかもしれないとは想定されていたが、最悪のパターンだな。

 

「今すぐそいつらと手を切れ!そんなことアミタは望まな――」

 

俺の言葉を遮る様にキリエは発泡してきたので、身体を横に逸らして回避する。

 

「やめろ!俺はお前とは戦いたくない!」

『MDM!問答無用!』

 

ザッパーを両手剣形態に変えて斬りかかって来るキリエ。両手にサーベルを構えて受け止めた。

 

 

 

 

「セイッ!」

「そこ!」

 

勇がキリエと切り結んでいる傍らで、翼は押し寄せてくるノイズを逆立ちと同時に横回転し、展開した脚部のブレードで薙ぎ払い。セシリアはビットを展開して撃ち抜いていく。

ある程度周辺のノイズを殲滅すると、群れの後方から飛び出してきた人影が翼目掛けて迫って来た。

 

「ちょいさぁぁぁぁぁ!」

 

人影が纏っていた鎧の肩部の鞭状の突起部を、翼目掛けて振るう。

 

「ッ!」

 

それを横に転がって回避すると、刀を襲撃者へと向けた。

 

「!?それは…!」

 

翼は襲撃者の姿を見ると驚愕した。襲撃者が身に纏っていたのは――

 

「ネフシュタンの鎧だと!?」

 

2年前の起動事件の際に紛失した筈の、完全聖遺物だったからである。

 

「さぁ、いくぜぇぇぇえええ!」

 

驚愕している翼へと、ネフシュタンの鎧を纏った少女は襲いかかった。

そして、オルコットはサイレント・ゼフィルスを纏ったマドカと対峙していた。

 

「サイレント・ゼフィルス…!」

 

サイレント・ゼフィルスを見て、オルコットは歯を噛み締める。ゼフィルスは元々イギリスが開発した物で、それをファントム・タスクに強奪されてしまったのである。

 

「その機体は我がイギリスの物、お返し頂きますわ!」

 

闘志を剥き出しにし、ビットを自身の周囲に展開してライフルを向けるオルコット。

 

「ふん…」

 

対するマドカはつまらなさそうに鼻を鳴らすと、手にしていたライフルをオルコットに向けた。

 

 

 

 

一方。士道の元に向かっていた折紙もファントム・タスクによって妨害されていた。

 

「ハァッ!」

 

手にしてたレーザーブレードを立ち塞がるオータムに振るう。

だが彼女の纏うISアラクネ。その背部から展開している蜘蛛の脚を模した八本のアームの内の一本に受け止められる。そして残りのアームが折紙を刺し貫こうと襲いかかる。

 

「くっ…!」

「オラオラオラ!こんなもんかよぉ!」

 

別々の方向から次々と襲いかかるアームに翻弄されて、防戦一方になる折紙。隙を見て反撃に出ようとするも、一刻も早く士道を助けに行きたいと焦る余りに、動きには繊細さを欠いていた。

 

「邪魔をするな!」

 

アームの動きをテリトリーで強引に止めた折紙。それを好機と捉え折紙が大きく振りかぶって斬りかかる。だが振るった腕が何かに絡まったかの様に止まってしまう。

 

「!?」

 

よく見てみると腕にワイヤーが絡まっており、それにより動きを阻害されたのだ。ワイヤーを辿ると、アラクネのアームから複雑な軌道を描いて出されていた。

アラクネはこのワイヤーにPICを用いることで、自在に操り例え何も無い空間でも、蜘蛛の巣の様に張り巡らせるといったことが可能なのだ。

 

「うらぁ!」

「ぐっ…!」

 

両腕を塞がれ無防備となった腹部に膝蹴りを受け、身体をくの字に曲げて動きを止めてしまう折紙。その隙を逃さず追撃しようとするオータムを、折紙はテリトリーで強引に引き剥がした。

 

「(士道…!)」

 

無理なテリトリーの連続使用で脳に走る痛みを無視して、折紙はオータムへと再度斬りかかった。

 

 

 

 

ヴォルフがバスター・ランチャーのトリガーを引くと、ビームの閃光が十香へと迫る。

十香は構えていた大剣『鏖殺公(サンダルフォン)』でビームを容易く切り払った。

その程度は予測通りと言わんばかりに、背面の大型ブースターの出力を上げると、ヴォルフは十香へと突撃しながらビームを連射する。

両手で構えていたサンダルフォンを片手持ちに変えると、ビームを切り払いながら空いた片手に黒い光球を生み出し、ヴォルフへと投げつける。

ビームにも匹敵する速度で放たれた光球を、横回転しながら速度を緩めることなくヴォルフは避ける。そしてランチャーの斧型の銃剣を展開し、自らを弾丸の様にして十香へと突き立てる。

 

「くっ!」

 

銃剣をサンダルフォンの腹で受け止めるも、勢いに押されて地面を削りながら僅かに後退する十香。その表情には僅かに苦悶の色を滲ませていた。

 

「うわあああああああああ!?」

 

そして十香の足元にいた士道は、風圧に吹き飛ばされて地面を転がった。

そんな士道を尻目に、ヴォルフは受け止められている剣先を軸にし、十香の頭上を越えて背後に回り脇腹目掛けて蹴りを放つのと同時に、足先から隠し刃を展開させる。

 

「ッ!」

 

纏う鎧の継ぎ目を狙った蹴りを、上半身を捻ることで避けた十香は、サンダルフォンを地面に擦り合わせながら振り上げた。

全身のスラスターを全開にし、陸上選手がバーを飛び越える様に身を浮かせると、背中をなぞる様に刃が通過していった。

 

「シッ!」

 

着地と同時に足払いを狙うも跳んで回避すると同時に、放たれたカウンターの蹴りを後方に大きく跳んで距離を取ると、ランチャーのトリガーを引くヴォルフ。

最小限の動きでビームを避けながら、光球で牽制しつつ今度は十香から距離を詰めていく。

ある程度距離を詰めると、残像が見える程の速度で大きく踏み込んでサンダルフォンを振り下ろした。

十香が踏み込むのと同時に、僅かに後退したヴォルフの眼前を剣先が掠めた。サンダルフォンが地面に叩きつけられたことで舞い上がった砂埃によって、一瞬だが両者の視界が塞がれる。

その砂塵を突き破って放たれた銃剣の突きが、十香の顔面に迫る。顔を傾けることで回避するも、数本の髪が宙を舞った。

 

「一体なんだってんだ…」

 

目にも止まらぬ速さで繰り広げられる攻防を、士道はただ見ているしかできなかった。

 

『だから敵よ』

「敵って。軍じゃないのか?」

『ええ。奴らはファントム・タスク。私達ラタトスクの敵よ』

 

ファントム・タスク――ラタトスクの宿敵と言われるDEMが加盟する国際テロ組織。あらゆる組織に武器を売り、争いを生み出す世界の癌だと説明されたのを士道は思い出していた。

 

『こうも早く『漆黒の狩人』が出てくるなんて…』

 

通信機越しに聞こえる琴里の声には焦りが見えていた。

 

「漆黒の狩人って誰だ?」

『ファントム・タスクの説明の時に教えたでしょう。このあんぽんたん』

「ぐっ…し、仕方ないだろ!色々といっぺんに教えられたんだから!」

 

精霊やラタトスク、そしてファントム・タスクと、今までの常識の外にあったことを短期間に教えられても、記憶しきることは士道にができなかった。

 

『漆黒の狩人は、単独で精霊と渡り合えるだけの力を持ったファントム・タスク最高戦力の一人に数えられる男よ。予想だと出てくるのはまだ先の筈だったのだけど、こちらの動きが読まれたのかもしれないわね。とにかく一旦戻りなさい士道。こうなっては、あなたの身を守るのが最優先だわ』

「でも、十香が…!」

『でももへったくれもないわよ。このままそこにいても、あなたにできることはないわ。逆に十香に迷惑をかけるだけよ。さっきから十香はあなたのことを気にして戦いに集中できていないの』

「え?」

 

言われてみると初めて出会った時と比べて、十香の動きがどこかぎこちない様に見えた。それに時折士道を気にするかの様に視線を向けていたのだ。

恐らく十香にとって初めて誰かを守りながら戦っているのだろう。そのせいか次第に押され始めていた。

 

「十香…」

『分かったでしょう?十香のためにも撤退すべきなの』

「…ああ、分かった」

 

琴里の言うことは理解できる。確かに自分がいても何もすることはできない。それでも女の子に守られながら逃げることしかできないことに、士道は拳を強く握り締めた。

そんな時。流れ弾が校舎に当たり、飛散した瓦礫が士道目掛けて落下してきた。大きさ的に直撃すればただでは済まないだろう。

 

「ッ!?」

 

高速で落下してくる瓦礫に逃げられないと悟った士道は、せめて頭だけは守ろうと両腕を顔の前で交差させた。

 

「シドー!」

 

絶対絶命の士道を救ったのは十香であった。慌てて駆けつけた十香は、サンダルフォンで瓦礫を両断する。

 

「怪我は無いかシドー!」

「ああ、助かったよ――ッ!?危ない十香ぁ!!」

 

安心したのも束の間。士道の目に飛び込んだのは、ランチャーを胸部のコネクターに接続し、十香に狙いを定めているヴォルフであった。

士道が叫ぶのと同時に放たれた高出力のビームが、無防備となっていた十香を弾き飛ばした。

 

「うあああ!?」

 

受身も取れずサンダルフォンを手放し、地面を転がる十香。すかさずヴォルフはランチャーの接続を解除し、銃剣を構えて突撃する。

ダメージが大きいのか立ち上がれずにいる十香を見て、士道は駆け出していた。

 

『何をする気士道!?やめなさい!!』

 

琴里の制止する声を聞いても、士道は止まらない。ただ十香を守りたい。その一心だけが士道を動かしていた。

 

「うおおおおおおお!!!」

 

突撃してくるヴォルフの前へと躍り出ると、そのまま体当たりをする様にぶつかった。

加速中のPTにそんなことをするのは、走行中のトレーラーに轢かれるのと同義である。ただの人間である士道の身体は、当然弾き飛ばされて宙を舞うと地面をバウンドして転がる。

 

「シドおおお!!!」

『ぬぅ!?!?!?』

 

弾き飛ばされた士道を見て十香が悲鳴を上げ、流石のヴォルフもこれには驚愕し動きを止めてしまう。

 

「よくも――よくもシドーをおおお!!!」

 

激昂した十香は、拾い上げたサンダルフォンを振り上げてヴォルフへと斬りかかる。

 

『ぐぬぅ!?』

 

予想外の事態に反応が遅れたヴォルフが、慌ててランチャーを盾の様に構えながら後退する。

 

「うああああああ!!!」

 

振り下ろされたサンダルフォンがランチャーを両断すると、ハウンドの胸部を切り裂いた。刃は内部のヴォルフの肉体にまで浅くだが届く。

 

『チィッ!抜かったか!』

 

傷口から血を流しながらもブースターを吹かし上空へ逃れると、ヴォルフはその場から離脱するのであった。

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