「シドー…?」
名を呼ぶが、返事がない。それはそうだ。士道の胸には、十香の手のひらを広げたよりも大きな穴が開いている。
ビームの高熱で焼けた肉の匂いが鼻につく。士道とのデートで食べたステーキの匂いとは違う、不快さがこみ上げてくる匂いだった。
頭が混乱して、意味がわからない。
「シ――ドー」
十香は士道の隣に膝を折ると、その頬をつついた。
反応は、ない。
数瞬前まで十香に差し伸べられていた手は、力なく地面に投げ出されていた。
「ぅ、ぁ、あ、あ――」
数秒のあと、顔を上空に向けると、頭が状況を理解し始める。
空中に浮かぶ無数の人影。そのどれもが武装を十香へと向けていた。
先程の一撃は、あの中の一つが放ったものだろう。
いかに十香とはいえ、霊装を纏っていない状態であれば、無事では済まなかったろう。
まして何の防護を持たない士道がそんな攻撃を受けてしまったなら。
「――」
十香は途方もなく目眩を感じながらも、未だに空を眺める士道の目に手を置き、ゆっくりと瞼を閉じさせてやった。
そして、着ていた制服の上着を脱ぐと、優しく士道の亡骸にかける。
次いで十香はゆらりと立ち上がると、再び顔を空に向けた。
――嗚呼、嗚呼。
駄目だった。やはり、駄目だった。
一瞬――十香は、この世界で生きられるかもしれないと思った。
士道がいてくれたなら、なんとかなるかもしれないと思った。
すごく大変で難しいだろうけど、できるかもしれないと思った。
だけれど。
嗚呼、だけれども。
やはり、
この世界は――やはり十香を否定した。
それも、考える限り、最悪最低の手段を以て――ッ!
「――<
喉の奥から、その名を絞り出す。霊装。絶対にして最強の、十香の
瞬間、世界が啼いた。
周囲の景色がぐにゃりと歪み、十香の身体に絡みついて、荘厳なる霊装の形を取る。
そして光り輝く膜がその内部やスカートを彩り――災厄は、降臨した。
ぎしぎし、ぎしぎしと。
空が、軋む。突然霊装を顕現させた十香に、不満をさえずるように。
十香は、空に浮かぶ人影――ソルジャーの群れを殺気を込めて睨みつける。
それに応える様にソルジャーは武装を放ってくる。
自身と士道の遺体を包むように障壁を張る十香。
ビームやミサイルが障壁に殺到するも、障壁は揺らぐことなくことごとく無力化していく。
世界と切り離されたような障壁内で十香は地面に踵を突き立てた。
瞬間、そこから巨大な剣が収められた玉座が現出する。十香はトン、と地を蹴ると、玉座の肘掛けに足をかけ、背もたれから剣を引き抜いた。
そして。
「ああ」
喉を震わせる。
「ああああああああああああ」
天に響くように。
「あああああああああああああああああああああああああああ――――ッ!!」
地に轟くように。
自分の頭を摩滅させるような感覚。
「<
刹那、十香が足を置いていた玉座に亀裂が走り、バラバラに砕け散った。
そして玉座の破片が十香の握った剣に剣にまとわりつき、そのシルエットをさらに大きなものに変えていく。
全長10メートル以上はあろうかという、長大に過ぎる剣。
しかし十香はそれを軽々と振りかぶる――
「よくも」
目が、湿る。
「よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもッッッッ!!!」
横薙ぎに振るわれた大剣から放たれた斬撃が、数十体ものソルジャーを舞い散る木の葉のように吹き飛ばし、粉々に消し飛ばした。
『少佐…ッ!』
『あれがプリンセスの本気という訳か…』
ソルジャーがプリンセスによって、蹴散らされていく光景を目にした部下に動揺が走っている中。勇太郎は冷静に状況を分析していた。
住民の避難が始まっているとはいえ、完了するまで暫しの時間が必要となる。
戦場が開発地であるのが幸いだが――プリンセスの放った一撃はそんな楽観を容易く打ち砕いた。
今までのプリンセスが可愛く見える、超越的な破壊力。
たったの一撃で、インスペクターの半数近くを撃墜する理不尽なまでの力。
勇太郎の予想通り、精霊は全力の半分さえも出していなかった。明らかに手加減されていたのである。
プリンセスが剣を振るう度に大気が軋み、大地が割れていく。
「(このままでは島がもたんな…)」
最新の技術をもって建造されたブルーアイランドであっても、全力を出したプリンセスが暴れ続ければ耐えられる保証は無い。
仮に耐えられたとしても、世界のライフラインの要である示現エンジンを破壊されれば、それで終わりである。
ならばやることは一つ。プリンセスを打ち倒すしかない。
『ゴースト1より全部隊へ。これより我々はプリンセスを撃破する!』
勇太郎の言葉に、通信越しに緊張や不安が走るのを感じ取る。
手加減された状態でも手も足も出なかったのだ。本気となったプリンセスに、勝ち目があるのかと言われれば、あると断言することはできない。
しかし、それでも――
『我々が何者であるか忘れたか!その背に何を背負っているのか忘れたのか!我々は軍人だ!力を持てぬ人々の矛となり盾となるものだ!敵が何者であろうとも、強大な力を持とうとも戦う義務がある!』
理不尽であることは理解している。逃げろと言うべきなのだろう。それでも――
『総員突撃ッ!人間の底力を見せてやれェ!!』
『了解ッ!!!』
人は時に命をかけて戦わねばならない時があるのだ。
父さんの号令と共に、戦域にいる全ての部隊がプリンセス目掛けて殺到していく。
俺達も加わるべきだが、その前にやらねばならないことがある。
『一夏、お前はその場に離脱しろ!残りは俺に付いてこい!』
そう。一夏を退避させることである。
本気となったプリンセス相手に、今の一夏を戦力として組み込む訳にはいかない。経験を積ませる云々と言っていられる状況では、なくなってしまったのだ。
『俺だけ逃げろって言うのかよ、勇兄!』
『そう言っているんだ!お前がいても足でまといにしかならん!!』
『ッ!?』
突き放す様に言った、俺にショックを受けている一夏。
すまないが、こうでも言わないとお前は納得しないだろう。
『突っ込むぞ!狙いはプリンセスだけだ!インスペクターは無視しろ!!』
俯く一夏を残して、プリンセスへと向かっていく俺達。
それを阻む様にソルジャーが立ちはだかった。
『勇!インスペクターはこっちで引き受けるから、あんた達は精霊を!』
『了解!』
日下部大尉らASTがソルジャーを抑えてくれている間に、プリンセスへと接近する。
『オォッ!』
『ハァッ!』
俺がサークル・ザンバーで、風鳴が刀で斬りかかるも、プリンセスは大剣で難なく受け止めた。
『邪魔だァァアアアア!』
『ガァッ!』
『クッ!』
軽々と押し返されると、怒号と共に大剣が振るわれる。
飛んできた斬撃は躱すも、衝撃波によって吹き飛ばされる。
機体各部の損傷が、深刻であることを示すアラームが鳴り響く。
脳に送られてくる情報から、機体の状態を確認しながら体勢を立て直す。
クソッ!掠っただけで中破までもっていかれただと!?直撃したら跡形もなく消し飛ぶぞ!
『バルカンレイド!』
『往きなさいティアーズ!』
アミタが銃形態のヴァリアントザッパーから魔力弾を連射し、オルコットがビットを展開してライフルを構えるとビームを放つ。
だが、プリンセスを覆う障壁に阻まれかき消されてしまう。
『消えろ、消えろ、消えろォォオオオオ!』
『うあぁ!』
『キャァ!』
アミタとオルコットも俺や風鳴の様に衝撃波で吹き飛ばされてしまう。
『あああああああッ!』
『折紙!?』
折紙がミサイルとアサルトライフルを放つも、やはり障壁に防がれてしまう。
蠅を払うかのように振るわれる斬撃を、武装をパージしながら回避すると手にしたレーザーブレードで切りかかる折紙。
『お前の…!』
折紙の振るったレーザーブレードを、プリンセスが大剣で受け止めると火花を散らす。
『お前のせいで、士道はぁああああ!!』
憎しみのこもった声で叫びながら、叩きつけるようにブレードを振るう折紙。
斬撃を受け止めながらも、プリンセスが苦悶の表情を浮かべている。
『ああ、そうだ!私のせいでシドーは死んだ!私が殺したんだぁ!!』
悲痛な叫びをあげながらプリンセスが大剣を振るい、その衝撃波で折紙の身体が吹き飛んだ。
『精霊ィイイイイイイイイ!!!』
『アァアアアアアアア!!!』
怯むことなく再度プリンセスと切り結ぶ折紙。あいつ我を忘れてやがる!
『なぜ、シドーが死ななければならなかった!?どうして私ではなかったのだァ!!』
余りにも痛々しい叫び。この世の全てを憎むようなプリンセスの声が心に突き刺さった。
『貴様がその名を呼ぶなァアアアア!!』
『黙れェエエエエ!!!』
鍔競り合いの状態から押し出されて体勢を崩した折紙にプリンセスが大剣を振り下ろした。
『折紙ィイイイイ!!!』
折紙の下にまで飛翔すると、体当たりの要領で折紙の身体を押し出す。
そして迫り来る大剣の腹に、ザンバーを叩きつけて剣先を僅かに逸らすことで、辛うじて直撃することは避けられた。だが衝撃波によって折紙もろとも吹き飛ばされてしまう。
『グッ!』
受身も取れずに地面に叩きつけられる。その衝撃で意識が飛びそうになるのをつなぎ止めると、身体を起こしながら自身の状態を確認する。
まず衝撃波をモロに受けた左腕の装甲が砕け、包んでいた腕が原型をとどめない程にグチャグチャになっていた。もはや痛覚を感じないまでに破壊されているのが救いか。
他の装甲も辛うじて原型をとどめている状態になっており、何本か骨折していようで身体を動かすたびに激痛が襲ってきた。
『精霊ィ!』
俺が壁となったため比較的軽傷で済んだ折紙が、フラつきながらも起き上がろうとしていた。
『折紙!』
そんな折紙の肩を掴むと、地面に押し倒した。
『ッ!離して!』
拘束から逃れようと暴れる折紙。片腕が使えない状態では抑えきれないので、馬乗りになる。
『落ち着け!今行っても殺されるだけだぞ!』
『それでも、あいつは許さない!私から大切な人を奪う精霊は!!』
そう言って俺を振り落とそうとする折紙。駄目だ、完全に憎しみに囚われている。言葉だけじゃ彼女を止められない。だったら!
右手を振り上げると折紙の頬をひっぱたく。パチンッという音が響くと、折紙が見開いた目で俺を見る。
『憎しみに囚われるな!命を捨てようとするな!誰かを悲しませる戦いをするな!』
『私が、私が死んでも。悲しんでくれる人なんて…!』
『俺がいる!』
『!?』
『少なくともここに一人いんだよ!お前が死んだら悲しむ奴がよ…!もう母さんの時みたいに、大切な人を失うのはごめんだ!俺にそんな想いをさせないでくれよ…!』
涙を堪えながら叫ぶと、大人しくなる折紙。その目から憎しみは消えていた。
『…ごめんなさい』
『わかってくれたんならいい』
立ち上がると折紙に手を差し出す。今の彼女なら、もう心配はいらないだろう。
『いけるか?』
『問題ない』
力強く握り返してくる折紙を立ち上がらせると、プリンセスへと視線を向ける。
アミタ達がどうにか抑えてくれているが、かなり押されている。このままじゃ長くは持ちそうにないな。
『いくぞ折紙!』
『了解』
互いに飛翔すると、アミタ達の加勢に向かう。
『うらぁ!』
風鳴と剣を交えていたプリンセスに、折紙とタイミングを合わせてサーベルとブレードを交互に振るうも、後ろに跳んで距離を取られる。
『勇君、腕が!?』
『大丈夫だ、まだやれる!それより来るぞ!』
俺の左腕を見たアミタが絶句するが、何でもないように振舞う。正直治るかどうか怪しいがな。
そうしている間にもプリンセスが、大剣を構えて突撃してくる。
『やめろぉおおおおお!!』
突然響いた声にプリンセスの動きが止まった。
『一夏!?』
退避させた筈の一夏が、手にしているマシンガンを撃ちながらプリンセスへと突撃していく。
『何をしていますの!退がりなさい!』
オルコットが制止しようと声を荒げるも。聞こえていないのか、止まることなくプリンセスへと向かっていく一夏。
一夏が放った弾丸は、殆どが外れるか障壁に弾かれる。
『うぉおおおお!』
マシンガンを投げ捨てると、実体ブレードを呼び出し斬りかかったが大剣で受け止められる。
『もうやめてくれ!こんなことをしたって、死んだ人は帰ってこないんだぞ!』
『うるさい!黙れェエエエエエエ!!』
一夏を蹴り飛ばすと大剣を振るい、斬撃を飛ばす。
直撃する寸前で回避行動を取ったことで、ギリギリで斬撃は回避するも、衝撃波によって機体が大破してしまった。
『うぁあああああ!?』
『一夏ァアアアアアア!!!』
落ちていく一夏を助けに行こうとするも、プリンセスが放つ斬撃によって阻まれる。
意識を失っているのか、一夏は機体を立て直す素振りを見せずに、森へと墜落してしまった。
戦場となっている開発地が見渡せる建物の上に、降り立ったテイルテッドとブルーが降り立つ。
避難警報が発令された際、響達と避難するふりをして、離れると変身して駆けつけたのである。
「なんだ、何が起こっているんだ!?」
テイルテッドが、現状を見て困惑の声をあげた。
1人の少女を囲む様にインスペクターと軍が展開され、それぞれがそれぞれを攻撃しているが。少女が手にした大剣を振るうたびに両者が吹き飛ばされている。
少女が攻撃する度に建設途中の建物が地面と共に砕け散り、開発地はさながら地殻変動が起きたかの様な有様となっていた。
『どうやらあの精霊を軍が止めようとしているのを、インスペクターが無差別に攻撃しているみたいです総二様』
「つまり三つ巴って訳ね」
戦況を分析していたトゥアールの説明を聞いたブルーが、戦場を見回す。
「取り敢えず、あの精霊ってのをなんとかした方がいいわね」
ブルーの目が精霊――プリンセスで止まる。
単独でありながらインスペクターと軍を同時に相手取り、一方的とさえいえる蹂躙をしている姿は、まるで災害を目の前にした様な錯覚をレッドは覚えた。
「なんとかって、どうするんだよブルー?」
「そんなの決まってるでしょ?ぶっ飛ばすのよ」
そう言ってウェイブランスを召喚すると、軽く振り回すブルーに、なんともいえない顔をするレッド。
「やっぱりそうなるのか…」
「他に方法があるっての?」
レッドは、精霊についてトゥアールが調べてくれた情報から、どのような存在であるか知ることができた。
『世界を殺す災厄』と呼ばれ、人知を超えた力を持つ生命体。確かに、目の前で繰り広げられている光景を目にすれば、そう思うのも無理はない。
この世界を守るためには、戦う必要があるかもしれないとトゥアールからは言われていた。それでもレッドは、人と同じ姿をしている者と戦うことに、抵抗を感じているのである。
反面ブルーはそこら辺は気にした様子もなく。寧ろ、自分より強いかもしれない存在と戦うことにやる気を出している様であった。
そんなブルー――愛香にトゥアールが『愛香さんは地球人でなく、他の星からやってきた戦闘民族じゃないんですか?』と言って、殴られて天井に顔を埋め込まれていたのは余談であるが…。
「戦いたくないんなら、下がっていていいのよ?」
突き放す様にも聞こえるが。レッド――総二が元々争いごとを好まない性格であることは、ブルーは重々承知しているからこその言葉なのである。
人外であるエレメリアンの様な変態や、無人兵器で構成されているインスペクターの様な侵略者ならともかく。人と同様な存在であり、明確に人類と敵対意思を示していない精霊相手では無理もないと言えよう。
「いや、俺も行くよ。どちらにせよ、このまま放っておく訳にはいかないんだ」
こうして話している間にも、精霊の攻撃によって周囲への被害が拡大していた。
軍の頑張りのおかげで、今はまだ人のいない開発地にとどまっているが。人々が避難しているシェルターのある居住区にまで範囲が広がれば、取り返しのつかないことになるだろう。それだけは阻止しなければならなかった。
確かに精霊とは戦いたくはない。だからと言って、見て見ぬふりをすることはレッドにはできなかった。
「あんたならそう言うと思っていたわ」
レッドの言葉にブルーが微笑むと、建物から飛び降りてプリンセスへと向かって行く。
ツインテール馬鹿であるが。彼は例え敵であっても思いやれる優しさがあり、誰かのために迷わず立ち向かえる強さを持っている。
そんな彼だから――
『こんな時に何乙女回路を作動させてるんですか!場をわきまえて下さい、この淫乱バーサーカーは!』
「人の思考を読むな!?あんた後でしばくわよ!」
通信機越しに野次を飛ばしてくるトゥアールに怒鳴るブルー。
色々と台無しだが、瞬時に思考を切り替えると、宙にいるプリンセスへと地面を蹴って飛び上がり、その背中にランスによる突きを放った。
軍との戦いに集中していた筈なのに、ブルーの気配に素早く反応したプリンセスが大剣を振るうと、ランスと互の刃がぶつかり合う。
ランスを押し込もうとするも、ブルーが想像していた以上の力でプリンセスが逆に押し返してくる。
このままでは不味いと判断したブルーが、身を引いて距離を置いた。
『ツインテイルズ!来てくれたのか!』
「はい!俺達も手伝います!」
紺色のPTのスピーカーから聞こえてきた勇の声に、レッドが応えた。
『気をつけろ!奴の力は今までのエレメリアンとは比較にならん!』
「わかりました!」
焦りを含んだ勇の言葉に、確かにそうだとブルーは考えた。
先程の一撃だけでも、相手が途方もない力を持っていることを感じ取ることができた。恐らく、ほんの僅かなミスでも死に直結するだろう。
それでも逃げるという選択肢が無い以上、前に進むだけである。
「消えろォオオオオオオオオ!!」
悲痛な叫びをあげながら大剣を振るうプリンセスに、遊撃隊とツインテイルズが一斉に攻撃する。
しかしいくら攻撃しても、プリンセスに傷をつけるどころか、こちらのダメージが増えていくだけであった。
「(くそっ!どうすれば!)」
ブレイザーブレイドを振るいながら、必死に思考するレッド。
精霊の存在を知った時、レッドは話し合いによる共存はできないかと考えた。
愛香には呆れられ、トゥアールには可能性は低いだろうと諭された。愚かだと嗤う者もいるだろう。それでもレッドは諦めたくなかった。
そのためらい故にプリンセスからの攻撃に対して反応がワンテンポ遅れてしまった。
「しまっ…!?」
斬撃からの衝撃派を避けきれず、吹き飛ばされ地面に叩きつけられるレッド。
追撃しようと大剣を振り上げるプリンセス。逃げようにもダメージが大きく、身体が動かなかった。
ブルーがこちらに向かってきているが、間に合わないだろう。
「アアアアア!!」
プリンセスの悲痛な叫びと共に、振るわれた大剣から放たれた斬撃がレッドへと迫っていく。
ブルーが手を伸ばし、勇達が逃げろ!と叫ぶが、もはやどうにもならなかった。
――ああ、俺死ぬのか…。愛香の奴泣くんだろうなぁ。それにトゥアールも…。
死が迫っているのに、どこか他人事の様に考えるレッド。
人間突然訪れる死というものには、存外実感が沸かなかったりすることもあるのだ。
「ヌゥオオオオオオゥッ!!!」
斬撃が届く刹那。聞き覚えのない…いや、どこかで聞いたことのある野太い声と共に、何者かがレッドの前に降り立つと、手にしている大剣で斬撃を斬り払ってしまった。
「危ないところであったな、テイルレッドよ…」
「お前は…!」
2メートルはあろう巨体と竜を思わせる外観に、自身の身長と同等の長さを持つ剣を手にした異形の存在。
「我が名はドラグギルディ!地球侵攻部隊隊長を務める者なり!!」
以前、アルティメギルが行った世界への宣戦布告の際に、その姿を晒したエレメリアンが、レッドを守る様に立ちながら高らかに宣言したのであった。