ワールド・クロス   作:Mk-Ⅳ

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第五十八話

『天道さん!』

「無事か二人とも?」

 

対峙している漆黒の狩人を警戒ながら、背後にいる五河と夜刀神の安否を確認する。

 

『俺は大丈夫ですが…』

『私も問題ない。それよりなぜ私達を助けるのだ?』

 

夜刀神が警戒した様子で問いかけてくる。まあ、この間まで敵対していたから当然だが。

 

「俺がそうしたいと思った、それだけさ」

 

言葉の意味が伝わっていないのか、キョトンとした顔をされる。いきなりこんなこと言われたら、そりゃそうなるか。

 

 

「なあ、五河。お前なら彼女を――四糸乃を救えるのか?」

『――!」

 

背中越しだが彼の驚きの混ざった息づかいを感じた。

 

『はい、俺が必ず四糸乃を救ってみせます!』

「なら行ってくれ。奴の相手は俺がする」

 

確かな決意の籠った声に満足感を覚えると。漆黒の狩人の様子を伺うも、なぜか動く気配を見せない。

 

『天道さん…』

「頼む、彼女を救ってやってくれ」

 

俺には助けを求めるあの娘の手を掴むことはできない。それでも、掴める者を助けることはできる筈だ。それが、俺がやりたいことなんだ!

 

『シドー。細かいことは分からんが、私の時と同じことをしようとしているだろう?』

『ああ、あいつは四糸乃は、お前みたいに自分の意思じゃどうにもならない力で苦しんでいるんだ…』

『……』

 

五河の言葉を夜刀神は静かに聞いていた。まるで、一言も聞き漏らさないように。

 

『俺は――あいつと約束したんだ。俺がヒーローになるって。俺がお前救ってやるって。だから…!』

『そうか、そうだったな…』

『十香?』

 

フッと笑い出した夜刀神に、五河が怪訝な声を漏らす。

 

『お前の気持ちは十分分かったシドー。ならば行け、邪魔は誰にもさせない』

『!ああ、ありがとう!十香、天道さん!』

 

そういって五河はドームの中へと駆けだしていった。生身耐えられる環境ではに筈だが、不思議と彼なら大丈夫と思えた。

 

「…いいのか、お前はそれで?」

 

残った夜刀神に念のため問いかける。自覚はないようだが、彼女は五河のことを…。

 

『いいんだ。なぜ忘れていたんだろう。――私を救ってくれたのは、こういう男だったと』

 

どこか満足げな様子の夜刀神に、これ以上何か言うのは無粋だろう。それに――

 

『話は終わったか?』

 

沈黙を保っていた漆黒の狩人が、右手で銃床を地面に立てるようにして置いていたランチャーを軽く持ち上げると、右脇に挟んで保持した。

 

「…わざわ待っていてくれたとは、気前がいいじゃないか」

『何、個人的に興味があっただけだ』

 

…ただ観察したかったってことか?なんというか妙な奴だな。

 

「ッ!」

 

ロックオン警報が鳴り、そちらに意識を向けると。ソルジャー数体がこちらに火器を向けてくる。

 

『ハァ!』

 

そのソルジャーへ夜刀神が剣を振るうと、放たれた斬撃が2体を難なく両断した。

 

『こちらは私が相手をする。…悔しいが、今の私では奴には勝てない』

 

悔しそうに漆黒の狩人を見る夜刀神。失礼な言い方になるが、確かに理由は分からないが以前より力が衰えている彼女では奴の相手は厳しいだろう。

 

「分かった、そっちは頼む!」

 

互いに背中を向け合うと、それぞれの敵へと向かっていった。

 

 

 

 

「どうした!それがお主の限界かテイルレッド!」

「くッ!?」

 

互いの刃がぶつかり合い火花を散らすと、勢いに押されてレッドの体が弾かれる。

着地して態勢を立て直している間に、ドラグギルディはその巨体に見合わぬ速度で距離を詰めていた。

振るわれた剣をブレイドで受け止めるも、先程と同様に弾かれてしまう。

 

「そんな力任せの受けで刃こぼれ1つせんとは…頑丈だな、とても人間の作ったものとは思えん!!かつて1人だけ認めた好敵手を思い出す…!!」

「この野郎!」

 

態勢を立て直しつつバックハンドで放った斬撃を、ドラグギルディは悠々と刃の腹で受け止めた。

 

「こそばゆいぞ?じゃれついているのか?」

「(やっぱり、こいつケタ違いだ…!!)」

 

ドラグギルディとの力量さに思わず歯噛みするレッド。以前共闘した際に、その実力をある程度把握していたつもりであったが。いざ刃を交えると予測とこうも違うものだとは、己の認識の甘さを痛感させられた。

 

「そうら、少し早くするぞ!」

「うわあっ!!」

 

一度に数十本の剣で斬られる感覚。

余りの速さに翻弄され、レッドは呼吸をするのも忘れ剣を打ちつけていく。

 

「(!この、太刀筋…!!)」

 

ドラグギルディの剣筋をなぞる内、レッドはその軌跡が何であるかに気づいた。

 

「ほおう!まさかこの数合の結び合いで見切ったか!!」

 

十数秒の打ち合いの後、ドラグギルディは大きく跳び退いて距離を取る。

 

「ドラグギルディ…お前の、剣は…」

「そう、我が振るうは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ツインテールの剣技(けん)」」

 

寸分違わず放たれた言葉が重なり合い響き渡ったのだった。

 

 

 

 

「いや、綺麗にハモッてんじゃないわよ!!」

 

少し離れた位置で戦っているブルーだったが、聞こえてきた相方の声に、思わずツッコミを入れながら回転させて勢いをつけたランスをナイトへと突き出した。

 

『……ッ!』

 

ナイトは剣で受け止めるも、勢いに押されて押し出される。

 

「あんたに構ってる暇はないっての!」

 

ランスと打撃を交えた猛攻を加えるも、ナイトは冷静に捌きつつ、連撃の僅かな合間に反撃していく。

 

 

 

 

「オラァ!」

 

機体背面のアームで串刺しにしてこようとするオータムの猛攻を、紙一重で躱しながら折紙はアサルトライフルを放つも、オータムは両手首から射出したワイヤーを振るい弾く。

 

「そぉらァ!」

 

オータムがワイヤーを鞭のように振るい、折紙は身を屈めて避けると、背後にあった瓦礫が紙切れのように容易く切り刻まれて崩れ落ちた。

 

「ッ!」

 

折紙がテリトリーを壁のように展開し押し出して叩きつけると、吹き飛ばされたオータムは瓦礫に激突して埋もれる。

 

「まだまだァ!」

 

軽々と圧し掛かっていた瓦礫を押しのけると、アーム先端の機銃を浴びせかけた。

 

 

 

 

「キリエ!いい加減にしなさい!自分が何をしているのか、本当に分かっているんですか!」

「当たり前でしょ!いつまでも子供扱いしないでよ。馬鹿アミタ!」

 

互いに双剣形態のヴァリアント・ザッパーを振るい、刃をぶつかり合わせる。

 

「馬鹿!?姉に向かって馬鹿とはなんですか!!」

「馬鹿だから馬鹿って言ったのよ!覚悟を決めたって言ったでしょうがッ!!」

 

右手のザッパーで斬撃を受け流しつつ、キリエは左手側のみを拳銃形態へ変え近距離から発砲した。

それを横に跳んで避けると、距離を取りつつアミタは拳銃形態に変えた両手のザッパーで魔力弾を放つ。

 

 

 

 

「ティアーズ!」

 

セシリアはビットをエムへと向かわせると、自身もライフルを構えトリガーを引く。

 

「…芸がない奴だ」

 

迫るビームを軽々と避けながら。呆れを滲ませた様子でエムは、片手でライフルを構えると瞬く間にビットを1機撃ち落とした。

 

「つまらん」

 

エムがビットを自身の周りに展開すると、シールドを張りセシリア目がけて突撃した。

 

「ッ!」

 

セシリアはライフルとビットで迎撃しようとするも、放たれたビームは全てシールドに阻まれてしまう。

その間に肉薄したエムはシールドを解除し、ライフルの銃口からビームの刃を生成するとセシリアの首へと一閃し――

 

「させるかぁ!!」

 

間に割って入った一夏が雪片弐型で受け止めた。

 

「セィッ!」

「ッ!」

 

一夏はエムを押し返して回し蹴りを放つが、後ろに跳んで避けられる。

 

「チィ!」

 

エムのビットから放たれたビームを一夏は、零落白夜を発動した雪片弐型で防ぐ。

 

「一夏さん!」

「熱くなり過ぎだセシリア!協力し合わないと!」

「ですが、あの機体は我がイギリスの…!」

 

強奪されたサイレント・ゼフィルス。その奪還もセシリアに与えられた使命の一つであり。祖国の不祥事を自分の力だけで解決したいという気持ちもあったのだ。

 

「1人で背負おうとするなよ!俺にも少しくらい分けろよ!」

 

そう言い放つと、エム目がけて突撃する一夏。

 

「は、はい!」

 

その言葉に、セシリアは顔を頬を赤く染めながら応じた。

 

 

 

 

「オラオラオラァ!」

「わわ、わ!?」

 

クリスが両肩部の突起を鞭状に変化させ、響目がけて連続で振るい。響は危なげま動作で辛うじて避けるか、腕部の装甲で防ぐ。

 

「隙だらけだ!」

「あ!?」

 

片方の突起でガードした腕を弾くと、クリスはもう一つの突起を槍のように放とうとし――

 

「ッ!」

 

側面から斬りかかってきた翼に阻まれ、跳んで距離を取るクリス。

 

「翼さん!」

「戦えないなら退がっていろ、邪魔だ!」

 

突き放すように言うと、クリス目がけて駆けだし、数本の短刀を投げつける。

突起で短刀を弾いたクリスは、その隙に接近した翼の振り下ろした刀を腕の装甲で受け止めた。

 

「私は…」

 

戦う翼う背中を見て、拳を握り締める響。覚悟を決めた筈なのに、人と戦うことを躊躇ってしまうのだった。

 

 

 

 

「そこッ!」

 

機動の先に置くように、左手に持ったショットガンを放つも、漆黒の狩人は急停止からの方向転換で悠々と安全圏まで退避すると。反撃のビームが飛んでくる。

ビームコーティングされたセイバーで受け止めると、接近しようと機体を加速させる。

 

「なんて機動しやがるんだ野郎!」

 

従来機を大幅に超える機動力を維持しながら、複雑な機動を取ってきやがる!普通ならGで潰されるぞ!

 

牽制で放たれるビームを避けるかセイバーで防ぎながら、距離を取ってくる漆黒の狩人を追いかけるも。機動力が違い過ぎることもあって追いつける気がしない。

 

「うぉッ!?」

 

かと思えば、建物を足場にして反転すると銃剣を突き立てながら突撃してきたので、セイバーの腹で銃剣を受け流すも、勢いを殺しきれず態勢崩して建物に激突してしまう。

 

「クソッ!」

 

慌てて態勢を立て直していると、漆黒の狩人が眼前まで迫っていた。

首目がけて横薙ぎに振るわれた銃剣を身を屈めて避けようとするも、肩口を装甲ごと斬り裂かれた!

 

「ッ!」

 

傷口から走る痛みに顔を顰めながら、頭部バルカンで反撃するも、既に射手圏外まで退避されていた。

 

「チィッ!」

 

ショットガンで追撃するも、掠る気配すらしやしない!

建物の裏側に隠れた漆黒の狩人を追うと、その姿が消えていた。

 

「どこに…ッ!?」

 

頭上から異音を聞き取りセイバーを振るうと、円盤状の実体刃とぶつかり合った。スラッシュ・リッパー!?囮か!

相手の意図に気づいた時には遅く、右側の建物の窓を突き破り、漆黒の狩人が飛び出してくると。右足の爪先から展開したナイフが、腰部の装甲の薄い関節部に突き刺ささる!

 

「ぐ!?ガァ!」

 

ナイフは装甲を貫通し肉体にまで届き、先程とは比較にならない激痛が走る。

だが、その間にも漆黒の狩人はナイフを引き抜くと、爪先にナイフを展開した左足を回し蹴りの要領で振るおうとしているので、自分からぶつかりに行って強引に体制を崩させる。

 

『ムッ』

 

意表を突かれたような声を出しと、漆黒の狩人はバルカンを放ちながら後退していく。

頭部や胴体はセイバーを盾にして防ぐも、肩や脚に数発被弾し、肉体に突き刺さっていく!

 

「――!!」

 

とめどなく流れてくる痛みに意識がブレるも、歯を噛みしめながら繋ぎ止めると、本能的に横に跳ぶと先程までいた空間を数発のビームが横ぎった。

息つく間もなく、突撃してきた漆黒の狩人が突き出した銃剣を、セイバーを投げ捨てながら体を僅かに逸らして刃を右脇に通し。ランチャーの砲身を挟んで受け止める。捕ら、えた!!

 

『それで捕らえたつもりか?』

 

と思っていた俺を見抜いていたように、漆黒の狩人がランチャーを引くと、それにつられて俺も引き寄せられ、無防備だった腹部に蹴りが叩きこまれた!

 

「がふッ――」

 

込み上げてくる嘔気に耐えられず吐き出すと、口の中が鉄分の味に染められる。

動きを止めてしまった俺に対して、漆黒の狩人はランチャーの砲身を押し付けると、ブースターを吹かしながら回転を始めた。

 

「――――!!」

 

抵抗できずに振り回されていると、最大限まで加速すると同時に地面目がけて投げ飛ばされてしまう。

受け身も取れずに、何度も地面に叩きつけれらながら転がっていった。

 

 

 

 

「勇君!?」

 

自分達の戦っている場に吹き飛ばされながら現れた勇に。アミタは驚愕しながらも、拳銃形態のザッパーで弾幕を張ってキリエを牽制しながら、倒れている彼の元へ駆けつける。

 

「勇君!勇君!」

 

勇を抱えながら必死に呼びかけるアミタ。機体の至る箇所に亀裂が入っており、肉体へのダメージも大きく亀裂から血がとめどなく流れ出ていた。すぐにでも治療を受けないと命に関わるレベルであった。

 

「!」

 

殺気を感じ上空を見ると、ヴォルフがランチャーをこちらに向けてトリガーを引こうとしていた。

アミタは、咄嗟に勇を抱きしめ背中をヴォルフへ向けると、プロテクションを展開した。

それと同時に、ランチャーから放たれたビームがアミタの背中に直撃し、プロテクションを破りその衝撃で勇諸共吹き飛ばされるアミタ。

 

「うあぁ!?」

 

勇を話さないよう強く抱きしめながら、自分を下敷きにしてアミタは地面に打ち付けられるのであった。

 

 

 

 

「ッ――!」

 

揺さぶられる感覚と共に意識が覚醒する。俺は漆黒の狩人と戦っていて――

 

「!アミ、タ?」

 

奴の姿を探そうとして視界に入ったのは、すぐ側で倒れているアミタだった。

気を失っている間に、何が起きた?なんでアミタが苦しそうに倒れているんだ!?

 

「アミタ――」

 

無事を確かめようと肩に触れると異変に気づく。彼女の背中が大きく焦げていて、バリアジャケットが破れ肉体まで焼けていた。

 

『お前を庇った結果だ』

 

不意に聞こえてきた声に振り向くと、瓦礫の上に立ちこちらを見下ろす漆黒の狩人がいた。

 

「俺を?」

『気絶したお前を守ろうとして俺に撃たれた。これは、お前の弱さが招いたのだ』

 

その言葉を受けてもう一度アミタを見る。太陽のような暖かい笑顔を浮かべる彼女が、苦悶の顔で痛みに呻いている。俺の、俺のせいで大切な人を傷つけて――!

 

『くぅッ!』

「レッド!?」

 

地面を削りながらこちらへ押し出されてきたレッドが、ようやく息継ぎができるといった様子で手にした剣を構え直す。

周りを見れば、ブルーや遊撃隊の皆も手傷を負いながら、追い詰められるようにしてこちらに集まっていた。

 

『見事だテイルレッドよ!』

 

ゆったりとした足取りでこちらに迫っていたドラグギルディが、足を止めると歓喜を滲ませた声音でレッドに向ける。

 

『こここまで我と張り合えた幼女はお主が初めてだ。何より、あらゆる宝石すら霞む輝きを放つツインテール!本当に、敵として出会ったのが口惜しい!」

 

心の底から喜んでいるように笑うドラグギルディ。その2メートルは優に超える巨体は、それだけで地面を揺らした。

 

『故に教えよう。お主の戦いに隠された真実を』

『真実、だと!?』

『そうだ。テイルレッド、そなたは我らのために用意された守護者(ガーディアン)なのだ!」

 

剣を目の前の地面に突き刺し柄頭に両手を置いたドラグギルディが、語り聞かせるように言葉を紡ぐ。その姿に、俺も含め周りにいた者達は戦いを止め聞き入っていた。

 

『俺がお前達のために用意された、だと!?』

『いかにも。侵攻する前にその世界で最も強いツインテール属性を持つ者に、我らの技術を与え対抗する戦士に仕立て上げるのだ。最もそなたはその前に既に力を手にしていたがな。とはいえ、それはそれで都合がよかった』

 

既に力を手にしていた?どういうことだ?奴ら以外にレッドに力を与えた者がいるのか?

 

『なんで、そんなことを!』

『侵略者を追い払う戦美姫(いくさびき)。その存在は世界を上げて讃えられる女神となり、誰しもがその者のツインテールに魅せられる!そして、世界は我らの念願たるツインテール属性が支配する狩場と化すのだ!!』

 

ドラグギルディの言葉に、俺は衝撃を受けた。そうか、元から存在するツインテール属性だけでは限られた分しか手に入らない。だから、人間が家畜を養殖するように、ツインテール属性を意図的に増やしたのか!

 

『じゃあ、今までの戦いは…!』

『たとえ負けようとも奴らにとって益があった。ある意味マッチポンプと言える』

『我らはまんまと掌で踊らされていたと言うのか!』

 

衝撃を受ける一夏の言葉に、折紙は冷静さを装いつつも硬い声音で応じ、風鳴は己の迂闊さに憤りを見せる。

 

『あんたまさか、今まで弱いエレメリアンばかりだったのは…!』

『フ…(いたずら)に同志の命を散らすことを望みはせぬ。可愛い部下、教え子たちよ。勝ってくれるならそれが一番よかった』

 

ブルーの言葉に、黙祷するように目を伏せるドラグギルディ。その姿から、部下を思いやる心に偽りがないことが感じ取れた。

 

『結果的に部下達は、『無敵の守護者(ガーディアン)』の偶像に一役買ってしまったがな。そしてそれを見過ごしたのも否定はせぬ。我とて指揮を任されただけの将兵。効率のいい方法が見つかれば、それを使わざるを得ぬわ』

『何で…あたし達にわざわざ説明したのよ』

『テイルレッドのツインテール属性が本物だからだ。剣を交えて分かった。この幼女は、心の底からツインテールを愛していると。できれば、小細工などせずに戦いたかった…これは、せめてもの手向けよ。世界が滅びた後で全てを知り、絶望に暮れぬようにな』

 

諦観を滲ませながら問いかけるブルーに、申し訳なさそうに語るドラグギルディ。

 

『……』

 

途中から何も言わずに聞いていたレッドは、構えていた剣を降ろし俯いていた。無理もないだろう、今まで世界を守るために戦っていたのに、逆に世界を破滅させる存在となっていたのだからな――

 

『礼を言うぜ、ドラグギルディ』

『何!?』

 

顔を上げたレッドの表情は、靄が晴れたような清々しいまでの笑みだった。そんな彼女の姿に、ドラグギルディは目を見開き驚愕する。

いや、それは俺達もであった。ファントムタスクの連中ですら揃って驚愕の色を浮かべているが、漆黒の狩人だけは喜んでいるようであった。

 

『手向けどころじゃねぇ。これでもう、何の憂いもなくなったよ』

『何言ってるの、もう、戦っても無駄なのよ!?』

『いいや、無駄なんかじゃない。こいつらが一斉に奪おうとするってことはだ。世界に芽吹き始めたツインテール属性は…見せかけやその場凌ぎじゃない、本物なんだ』

 

困惑した様子のブルーの言葉を、軽く首を横に振りながら否定するレッド。

 

『俺が今日ここでお前を倒せば、ツインテール属が世界に浸透して、得しただけ。万々歳じゃねか』

『な、なんと…』

 

ドラグギルディが呆気に取られたように後ずさり。ブルーは肩を震わせ、やがて――

 

『ぷっ…あははははは!!』

 

腹を抱えながら笑い出した。

 

『あー…あんた、本物だわ。ツインテール馬鹿どころ、もう本物の馬鹿よ!』

『細かいこと考えるのは苦手だからな。世界の終末だの何だの、スケール大きい話はもうたくさんだ。俺は、俺の愛するもののために戦う!!』

 

レッドは胸を張って言い放つと、剣の切っ先をドラグギルディへ向けると駆けだしていった。

 

『…流石は彼女の子と言ったところか。さて、こちらも続けようか』

 

瓦礫の上から降りてきた漆黒の狩人がゆっくりと歩み寄って来る。

迎え撃つため立ち上がろうとするも、力が入らず膝を着いてしまう。クソッ!動け動けよこのままじゃ誰も守れないじゃねぇかよ!!

 

『……』

 

目の前まで来た漆黒の狩人は、つまらなさそうに俺を見下ろすと、何か思いついたように目を細めると。アミタに視線を向ける。

 

『そこの女を置いて逃げるのであれば、お前のことは見逃してやろう』

「!?」

 

置いていく?アミタを?自分だけ助かりたいなら見逃す?そんなのー―

 

「…ざ、け…んな…」

『ム?』

「ざけんじゃねぇエエエエエ!!!」

『ッ!!』

 

渾身の力を込めて立ち上がり、無防備な漆黒の狩人の顎に頭突きをかましてやると、宙を舞って地面に激突した。

 

『ヴォルフ!?』

 

近くにいたアミタの妹さんが、慌てた様子で漆黒の狩人に駆け寄ろうとすると、倒れたままの状態で手で制止しおった。

 

『面白い、そうでないとな。さあ、もっと足掻いてみせろ!!』

 

なんかしらんが歓喜するような様子で、ゆっくりとだが起き上がっていく漆黒の狩人。

対応しようとするも、先程の一撃で力を使い果たして再び膝を着いてしまう。駄目、なのか?俺じゃあいつには勝てないのかよ!!

 

『勇、君…』

 

ふと、右手に何かが触れる感覚がした。視線を向けるとアミタが手を重ねていた。

 

『あなた、なら勝てます…。だって、あな…たは…私の、ヒーロー…ですから…』

「――ッ!!!』

 

そういって優しく微笑むアミタ。装甲越しなのに手から彼女の温もりを感じる。俺を信じてくれる心を感じる!そうだ、失いたくないんだ!守りたんだ!負ける訳にはいかない!!だから――

 

「俺を勝てせてくれ、MK-Ⅱゥウウウウウウウウ!!!」

 

漆黒の狩人がランチャーを構え、トリガーに指をかけるのと同時に、力の限り叫んだ瞬間。亀裂の入っているモニターに何かが浮かび上がってきた。

 

『何!?』

 

漆黒の狩人が驚愕の声を上げる。放たれたビームが俺に触れる直前に、見えない壁に阻まれたようにして四散したからだ。

 

「これは?」

 

何が起きたのか分からず唖然としていると、モニターに浮かび上がっていたものが鮮明に映った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Uranus system boot up

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『搭乗者の念動レベルが一定値へ到達しました。リミッターの一部を解除します』

 

突然響いてきた音声に戸惑うも、モニターに新たな表示がされる。

 

『念動機能が使用可能となりました。装備検索、念動力対応兵装を確認。本機との連動処理を行います』

 

セイバーが映し出されると、Connectと文字が追加される。それと同時にあるイメージが脳内に流れ込んでくる。

 

「来い!」

 

そのイメージ通りに念じながら、離れた位置に突き刺さっていたセイバーへ右手を伸ばすと、一人でに宙に浮かぶとこちら目がけて飛んできたので柄を掴むと立ち上がる。すげぇ!ウィザードになったみたいだ!それに力が湧いてくる、痛みはあるけど体が動く!

 

『…それが、その機体の真価という訳か』

 

警戒しながら、こちらを伺っていた漆黒の狩人が驚嘆した様子で呟いている。

 

「行くぞ!俺は負けない!この背に守りたいものがある限り!!」

 

セイバーを軽く振るい、漆黒の狩人目がけて突撃する。

刀身に念を送るイメージをすると、淡い緑色の輝きを放ち始める。そのセイバーを刃の届かない距離で上段から振り下ろすと、纏っていた念が斬撃となって漆黒の狩人へと向かっていった。

 

『ぬおぉお!』

 

横に転がりながら跳んで回避されるも、余波で吹き飛び地面を転がっていく漆黒の狩人。そして斬撃は、背後にあった建物を綺麗に両断するのだった。

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