ワールド・クロス   作:Mk-Ⅳ

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第六十七話

「二課へ、所属不明勢力から攻撃を受けた。これより迎撃する!」

『交戦を許可します。それと、鳶一さんも襲撃を受けて交戦中だから、そちらの援護には向かえないわ。現在崇宮さんが急行中だから無理しないでね』

「了解、崇宮には折紙の援護を優先させて下さい」

 

二課オペレーターの友里さんと通信しながら敵を見据える。

ビルの爆破はこちらを釣るためのものか。解体予定のものとはいえ、こうも大がかりに仕掛けられるとはただのテロリストではないか?

 

『ハアッ!』

 

跳びながら蹴りかかってるくる少女に、一歩退がり回避する。

空を切った蹴りはコンクリートを軽々と砕き砂塵が舞う。テリトリーで強化されているとはいえ、かなりの威力だな…。足技が主体ってところか?

大振りで相手に隙ができたところに、サーベルを横薙ぎに振るうも、身を屈めて避けられる。

そこから逆立ちしながら独楽のように回転して放たれた蹴りを、上半身を後ろに逸らして避けると、回転の勢いを利用して跳び、前転しながら繰り出された踵落としが迫って来る。

 

「ッ!」

 

後ろに大きく跳びながら、左手にマシンガンを持ち発砲する。

迫る弾幕に対し、少女は余裕の笑みを見せながら軽々と避けながら突撃してきた!

 

「ええぃ!」

 

着地を狙って放たれた蹴りを左腕で受け流し、カウンターの斬撃を放つも。当然のように最低限の動作で避けられ、逆に槍のように繰り出された蹴りを受け止めざるを得ず押し出される。

間違いない、この少女こちらの動きを初動から見切って動いているな。それにさっきの弾幕を難なくすり抜けてきたことといい、動体視力が優れているのか?

 

『お察しの通り、テリトリーで強化された私の『眼』はどんな動きも捉えるわ』

 

思考を読んだようで、自信満々に語る少女。そして、体を左右に振りフェイントを入れながら接近してくる!

鞭のように振るわれる蹴りの連撃を、避けるか受け流しながら隙を見て斬撃を放つが、逆にカウンターの蹴りが脇腹に炸裂した。

 

「グッ…!」

 

内臓にまで響く衝撃に苦痛と吐き気を感じるも、歯を食いしばりながら耐える。

 

『ハァアアア!!』

 

好機と見た少女はすかさず追撃の連撃を放ってくる。

次々と叩きこまれる蹴りを受け、装甲がへこんでいき衝撃が肉体を蹂躙しながら、徐々に体が押し出されていく。

 

『これで、終わりよッ!!』

 

勝機を掴んだと確信した少女が、渾身の力を込めた蹴りが腹部に撃ち込まれた。

 

「ッ…!」

 

蹴り飛ばされないようコンクリートにめり込む程に踏みしめながら耐えるも、込み上げる吐き気を抑えられず吐血するが、大振りで硬直している少女の足を右腕拘束した。

 

『!?』

「…俺も、眼には自信があるんだよッ!!」

 

予想外の展開に驚愕で目を見開く少女。確かに攻撃を受けてはいたが、致命的なものは念動フィールドをピンポイントに張ってダメージを軽減していたのだ。…流石に最後の渾身の一撃はかなり効いたが、それでも賭けは俺の勝ちだ!

左腕のバックラーを起動させると放電を始める。

 

「取ったァ!!」

 

無防備な少女の腹部にジェット・マグナムを叩きこむと、体をくの字に曲げながら吹き飛んでいく少女。

テリトリーで防ぎはしたが、咄嗟のもののため最低限のダメージしか防げず、受け身も取れずに地面に叩きつけられ転がっていく。

 

『――が、ハァ…!』

 

腹部を両手で抑えながら苦悶の表情で悶える少女。勝負ありだな、拘束して保安課に引き渡そう。

警戒しながら歩み寄ると、殺気を感じるとアラートが鳴り響き後ろに跳ぶ。先程まで頭部のあった空間に銃弾が通り過ぎ道路に突き刺さった。

 

「狙撃かッ!」

 

次々と急所目がけて飛来する弾丸を、サーベルで切り払いながら建物の影に隠れる。

顔だけ覗かせると、倒れていた少女の姿は消えてしまっていた。

 

「…逃げられたか」

 

やはり、相手は1人ではなかったか。

襲ってきた少女と狙撃手の動きは正規の訓練を受けたものだったし、技量はASTに劣っていなかった。どう見てもただのテロリストではないな。

 

『――勇聞こえる?』

「折紙か、聞こえている。こちらは敵の撃退はできたが、捕縛はできなかった」

『こちらも同様。ただし、岡峰伍長が負傷した』

「何!?容体は!?」

『軽傷だから落ち着いて、今合流する』

「…分った、俺もそちらに向かう」

 

いったい何が起きたって言うんだ?

通信を終えると、逸る気持ちを抑えながら、合流すべく行動に移すのであった。

 

 

 

 

「…折紙からの命令を無視して独断で行動したと?」

『…はい』

 

折紙らと合流し、事情を確認していた。

俺の問いに、申し訳なさそうに答えている岡峰伍長の体には、打撲痕は切り傷が至る所にできており痛々しい姿となっていた。

 

「何故、そのようなことをしたんだ?」

『私も隊のお役に立ちたくて、それで…』

「その結果、敵の襲撃を受け味方を売ろうとしたと」

『ッ!』

 

俺の言葉に怯えるように体を震わせる伍長。

彼女は敵の襲撃を受け応戦するも、力及ばず敗北し『CNFの情報を教えろ』という脅迫に応じそうになった。辛うじて駆けつけた折紙によって阻止されたが、伍長の行動は何一つ許されるものではない。

 

「伍長、歯を食いしばれッ」

『は、はいッ!』

 

機体を格納しながら告げると、伍長は目を覆いながら耐えるように身を竦ませる。そんな彼女の頬を引っぱたいた。

その衝撃に耐えきれず、地面に倒れる伍長。

 

「伍長、お前のしたことは重大な背信行為だ。身勝手な行動は部隊を危険に晒し、果ては市民の平穏を脅かすことに繋がる。まして、自分の身を碌に守れない者が誰かを守れると思うなッ!」

 

…とか偉そうなことを言っているけど、俺自身最近身勝手な行動で大勢の人に迷惑をかけてるけどな!あの後父さんにぶん殴られたし始末書を書いたけど、それでも自分を許せず独房に入ろうとした。それはやり過ぎだと止められたのだが。

ともかく、やらかした身としては、彼女には同じ過ちを繰り返さないために厳しく当たらねばなるまいて。

 

「暫く謹慎を命ずる。別命あるまで待機していろ」

『ッ!はい…』

 

この世の終わりのような雰囲気で項垂れる伍長。組織人の軍属である以上一夏らのような外部協力者のように優しくしてやる訳にはいかんのだ。

同じ寮に住んでいる折紙に連れて帰るよう視線で伝えると、頷いて承諾してくれる。

これ以上この場で俺にできることはないので、後続部隊や警察を誘導すべく俺はその場を離れるのだった。

 

 

 

 

現場から離れた路地裏にて。勇を襲撃した車椅子の少女が、腹部を片手で抑えながら壁に背を預けて座り込んでおり。スナイパーライフルを担いだ気弱そうな少女が介抱するように寄り添っていた。

 

「大丈夫、セシル?」

「ええ、レオ。それより援護ありがとうね」

 

顔色が少し悪いも、心配してくれる仲間を安心させようと車椅子の少女は微笑む。

 

「おい、セシルがやられたって本当かよ!?」

 

そこに、美紀恵を襲撃し折紙と交戦していた小柄の少女が慌てた様に駆けつけてきた。

 

「大したことないから、落ち着きなさいアシュリー。そんな大声を上げたら隠れている意味がないわよ」

「わ、悪ィ…」

 

指摘にハッとしたように手で口元を抑える小柄の少女。とは言え、本気で心配してくれていること自体は素直に嬉しくはあるのだが。

 

「それにしても、本調子でないのにあの強さ、覚悟はしていたけど天道勇の強さは本物ね」

「癪だが鳶一折紙もやりやがるぜ。ま、そっちはあたしが本気を出しゃぁ問題ねーけどな」

「それでも、真正面からぶつかるのは得策ではないわね。敵は彼らだけ(・・・・)ではないのだから」

 

何かを憂慮するように語る車椅子の少女。その言葉に他の2人は緊張を孕んだ顔つきになる。

 

「これからはプランBに移行するわ。アシュリー、あなたがメインで動いてもらうことになる。私もレオもサポートするけど最悪見捨てざるを得なくなるわ」

「構わねぇさ。それくらいしないと勝ち目なんざないからな」

 

憂うような車椅子の少女に、小柄の少女が片目をつぶりながら胸を叩いて答えるのだった。




原作だとタイプTTはジェット・マグナムを使えませんが。好きな武装でもあるので、本作だと使用可能にしています。
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