ワールド・クロス   作:Mk-Ⅳ

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第六話

「今度は何だってんだよ…」

 

テロリストが飛んでったと思ったら、空が歪んでそこから見たことのない機動兵器が現れるし、どうなってるんだよ糞っ。

 

「避難したいんだけどなぁ」

 

先程の襲撃で滑走路周辺は混乱しているので、避難が困難な状況になっている。

 

「いつまでもここにいてもしょうがないか。君立てる?」

「あ、はい」

 

側で座り込んでいた金髪少女の手を取って立ち上がらせる。どうにかこの子だけでも避難させないと。

 

「痛っ!?」

 

歩き出そうとしたら背中に痛みが走った。そういや背中怪我してるんだった…。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

「へーきへーき、これくらいどうってことないよ」

 

正直結構痛いけど、女の子の前ではカッコつけるのが男なんですよ。

とか考えていたら、再び頭上からビームが降ってきた。

 

「うおおぅ!?」

 

また!?またなの!?もう勘弁してくれよ!

空を仰ぐと今度は、騎士のような青い装甲を纏った人型がこちらを見下ろしていた。

 

「PT?いや違う。でも、ISやCR―ユニットの特徴とも一致しない。全く別の技術が使われてる…」

「あの、逃げた方がいいと思うんですか…」

 

すっごい目輝かしてるんですけどこの子!技術者の血が騒いでるんですけど!

見入ってる金髪少女の首根っこを掴んで走り出すと、アンノウンがこちらを向くとバイザーが妖しく光り、ライフルを向けてきた。

銃口にエネルギーが溜まっていき、あ、これ死ぬわ。ってあれ何か世界がゆっくり動いてるよ?しかも走馬灯が…てか女装させられた時のしか流れてこないぞ!?おかしいおかしい!もっと思い出すことあるだろォォ!?

 

 

 

『ファイネストカノン!!!』

 

 

 

聞き覚えのある女の子の声と共に、飛来してきた光弾がアンノウンに直撃し地面に墜落した。

突然のことに呆然としていると、目の前に初めて会った時の格好をしたアミタが降りてきた。

その両手には見慣れない銃が握られていたので、先程の攻撃は彼女によるものらしい。

 

「大丈夫ですか勇君!?」

「あ、アミタ!?何してるんだよこんなところで!」

「だって、いきなり警報が鳴って爆発が起こって、心配になってそれでいてもたってもいられなくて」

 

申し訳なさそうに俯くアミタ。怒ってるて思っちゃたかな。

 

「別に怒ってる訳じゃなくって、驚いただけだから、そんなに落ち込まないでよ」

 

慌ててフォローしていると、墜落していたアンノウンが起き上がってきていた。

所々破損しライフルも無くなっているが、見た目程のダメージは受けていないようだ。

 

「ッ!!退がって!」

 

アミタが俺を手で制すると、アンノウンへ振り返り両手の銃を構えた。

ここにいても邪魔になるので、金髪少女と共に少し離れた位置にあるコンテナに身を潜める。

 

「バルカンレイド!」

 

アミタがマシンガンの様に光弾を浴びせるが、アンノウンはものともせずに右手にグリップを持つと、ビームの刃が生成される。

そして弾幕を突っ切りながらアミタへと振りかぶる。

 

「くっ!?」

 

咄嗟に銃を両手剣に変えて防ぐ。

最初は拮抗していたが、アンノウンが体重を乗せていくと徐々に押し込まれてしまう。

 

「ッ…!はぁ!」

 

気迫と共に押し返して弾くが、肩で息をしているし明らかに疲弊している様だった。

多分だけど、まだ本調子じゃないんだ。

対するアンノウンは、ダメージはあるものの余裕を感じられた。

どうにかしないとアミタが、他の人が殺される。10年前の時みたいに何もできず目の前で…!

 

「くそぉ!」

 

自分の無力さに腹が立ちコンテナを殴りつけるも、ただ手に痛みを感じるだけだった。

 

『貴様は無力だ。弱い奴には何もできん』

 

不意にテロリストの男の声が思い返される。

力、俺にも力があれば!アミタを皆を守れる力が!

そう強く念じた瞬間、何かに引き寄せられる感覚がした。

 

「え?」

 

感覚がした方を向くと、輸送機の貨物庫から呼ばれている気がし、無意識に駆け出していた。

 

 

 

 

 

「やぁ!」

 

勇君に襲いかかっていたアンノウンに斬りかかるも、容易く弾き返されてしまう。

 

「ハァハァ…」

 

キリエに打ち込まれたウィルスは駆除してもらったけど、体に上手く力が入らないし、魔力もコントロールできない…。

せめてアクセラレイターが使えれば…。とにかく勇君や他の人達が避難する時間を稼がないと。

 

「行きます!」

 

片方のヴァリアントザッパーを銃形態へと戻し、バルカンレイドで牽制しながら接近する。

アンノウンはホバー移動で、周囲に散乱しているコンテナへと身を隠した。

 

「逃がしません!」

 

ファイネストカノンでコンテナごと吹き飛ばしたかったけど、最初の不意打ちで魔力を使い切ってしまったので、近接戦で追擊しようと駆け出す。

すると異変に気が付く。コンテナが浮かび上がっている?いや、違う!アンノウンが持ち上げているんだ!

 

「うそぉ!?」

 

予想外の展開に足を止めてしまった私に向かって、コンテナが飛んできた!

 

「わわわ!?」

 

慌てて横へと飛ぶと、コンテナが盛大な音と共に地面に激突する。

あ、危なかったって敵は!?

敵の姿を探そうとした時には、既に目の前まで迫って来ていた。

 

「うっ!?」

 

そのまま敵の突進を受けてしまい、地面をバウンドしながらコンテナに叩きつけられてしまう。

 

「かはっ…!」

 

衝撃で肺から空気が吐き出され吐血してしまう。

意識が朦朧とする中、アンノウンが警戒するようにゆっくりと歩み寄って来る。

立ち上がりたいのに 指先一つ動かせない…。

身動きできない私へ向けて、アンノウンがサーベルを振り上げる。

ああ…。まだ、キリエと仲直りできてないし、勇君ともっとお話したかったなぁ…。

痛みに備えて目を閉じると、何か音が聞こえてきた。まるで、ジェットの噴射音のような…。

 

『アミタから離れろやボケェェェェぇぇェェェェェエエエッ!!!』

 

聞き覚えのある声に目を開けると、アンノウンが紺色の機械鎧に蹴り飛ばされた。

 

 

 

 

 

「これってMK-Ⅱ?」

 

輸送機の格納庫に入ると、奪われたヒュッケバインMK-Ⅱと同型の機体が鎮座していた。

 

「は、はい。通常使用の1号機と、新型のマンマシンインタフェースを搭載した2号機があるんです」

 

俺の独り言に、後を追ってきていた金髪少女が答えてくれた。

やはり技術者であるためか運動が苦手なようで、両膝に手を乗せて肩で息をしていた。

 

「じゃあ持ってかれたのが、1号機でこっちが2号機か」

 

鎮座している機体の肩に描かれている認識番号の末尾に、02と書かれているし。

 

「俺を呼んだのはお前なのか?」

 

MK-Ⅱに触れると、装甲が開いて乗り込める様になった。乗れってことかな?

 

「よし」

「よし、じゃないですよ!あなたPTの操作訓練を受けたことがあるんですか!?」

 

MK-Ⅱに乗り込もうとしたら、金髪少女に呼び止められたでござる。

 

「いや、ない」

「ええ!?なんでそれで乗り込もうとしてるんですか!」

「大丈夫だよ…多分」

「多分!?」

 

まぁ民間人が兵器に乗り込もうとしてるんだから、当然の反応だよね。しかも、根拠が無いときたもんだ。

でも、不思議と戸惑いは無かった。誰かが大丈夫だって言ってくれている気がしたんだ。

MK-Ⅱに乗り込むと、装甲が閉じ駆動音と共に、モニターに外の景色が映し出される。

それと同時に、頭に何か流し込まれる感覚がした。これは、この機体の特性に操作方法や使用可能な武装に関する情報だ。

 

「お前が教えてくれたのかMK-Ⅱ?ありがとう」

 

無論ただの機会であるPTが返事をすることはない。それでもお礼を言うと喜んでいる気がした。

 

『あ、あの大丈夫ですか?』

 

外部の音を拾ったスピーカから金髪少女の声が響いた。視線を向けると心配そうにこちらを見ていた。

 

「ああ、大丈夫だ。危ないから退がっていてくれ」

 

軽く腕を動かしてアピールすると、安心したようで指示通り退がってくれたので、機体を立ち上がらせる。

 

「うっし。ちょっくら行ってくる」

 

そう金髪少女に告げると、格納庫の外へ向けて歩き出す。

 

『あ、あの!』

「む?」

『気をつけて下さいね』

「ああ。ありがとう」

 

サムズアップで応えると、格納庫の外へと出る。

 

「アミタはどこだ?」

 

アミタの姿を探すとすぐに見つけられた。

コンテナに背を預けて座り込んでいた。更にアンノウンがサーベルを振り上げて――

 

「アミタから離れろやボケェェェェぇぇェェェェェエエエッ!!!」

 

全身の血が沸騰しそうな感覚と共にメインブースターを吹かし、アンノウンへ突進すると蹴り飛ばす。

アンノウンはそのままの勢いのまま、散乱していたコンテナへ激突したが、んなことはどうでもいい。

 

「大丈夫かアミタ!?」

『え?い、勇君ですか!?その機械鎧に入ってるの!?』

 

アミタがものすっごいビックリしたって顔をしていた。ああ、全身装甲だから俺だって分からなかったのか。

 

「そうだ。それより怪我は?」

『だ、大丈夫です。ッ!?』

「うん、大丈夫じゃないな」

 

体を動かそうとしたら顔をしかめたアミタ。一人で動くのは無理か、早く手当したいんだが…。

物音のした方を向くと、蹴り飛ばしたアンノウンが瓦礫をどかしながら起き上がっていた。

 

「そこで待ってろ。すぐ終わらせる」

『え!?勇君まっ…!』

 

アミタが静止の声をかけるが構わず、アンノウンへ突撃する。

腰のウエポンラックから、グリップを取り出し起動させるとビームの刃が生成される。

接近と同時に横薙ぎに振るうと、相手もサーベルで受け止めるが、その隙に頭部のバルカン砲で頭部を破壊する。

衝撃で怯んだ隙に、サーベルを振り抜き胴体を両断する。

上半身と下半身が泣き別れしたアンノウンは、鉄屑となって沈黙した。

 

「うし、次は」

 

一息つく間もなく戦況を確認すると、まだ半数近くの敵の反応が残っていた。

 

「援護に行きたいけど、サーベルだけじゃなぁ…」

 

ハンドガンでもいいから射撃武器が欲しいな。と思っていたらレーダーに反応が現れた。

 

「ん?」

 

散乱しているコンテナにマーキングがされる。あれに何かあるのか?

 

コンテナに近づき歪んでいた部分を引き剥がすと、機体の全高とほぼ同じ長さの火砲が入っていた。

両手で取り出すと、モニターに「Gインパクト・キャノン」と名前と機能が表示された。

 

「高重力砲か、これなら一網打尽にできそうだな」

 

後は、使うタイミングか。ここは父さん達にも手伝ってもらおう。

メインブースターを吹かして、父さんの下に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「ぬんッ!」

 

勇太郎が駆るゲシュペンストがプラズマカッターを突き出すと、青色のアンノウンの胸部に突き刺さる。

カッターを抜き取り、刺した箇所にマシンガンを浴びせると、火花を散らして仰向けに倒れ機能停止する。

 

「後は6機か…」

 

弾切れとなったマシンガンを手放し、レーダーで戦況を確認すると、半数近くのアンノウンは撃破したが、こちらもゴースト中隊4機にAST3機と消耗している。

テロリストとの連戦で疲弊しているとは言え、アンノウンの性能はかなりのものである。何か手を打たねば全滅してしまうが…。

 

「やはりIS学園からの援軍は来んか…」

 

予想通り上層部は、IS部隊を出撃させるのに二の足を踏んだようだ。こういう時に動かさないから、タダ飯喰らいとか呼ばれてしまうのだ。

愚痴っていても仕方ないので、赤色のアンノウンが放ってきたビームを回避して接近する。

どうやら青色が近・中距離型で、赤色が遠距離型らしい。そして完全な自立稼働型の無人機のようだ。均一された動きに、正確な攻撃、多少の被弾をものともせず襲いかかってくる。

 

「だから読みやすくもあるがな!」

 

AIであるがゆえに行動には一定のパターンがある。それさえ読めれば、動きが手に取るように分かる。

高度を下げていた赤色が放つビームを、最低限の機動で回避するとカッターを振り上げる。

すると、アンノウンはライフルを手放し、僅かに後退する。

ライフルだけを切断すると、攻撃後の隙を突いて抱きついてきた。

そして、背後から青色のアンノウンがサーベルを構えて突撃してきた。俺ごと刺そうとしているらしい。

 

「洒落くさいわッ!」

 

振りほどこうとしたら、青色のアンノウンが別方向から飛んできた機影に蹴り飛ばされた。

 

「ヒュッケバインか!?乗っているのは誰だ!」

 

頭突きで拘束を解くと、飛んできたヒュッケバインへと向き直る。

 

『俺だよ父さん!』

「勇!?それに乗っているのお前か!?」

 

ヒュッケバインの通信から聞こえてきた息子の声に、目ん玉が飛び出んほどに驚く勇太郎。

 

『細かいのは後!とにかくあいつらを一箇所に集めてくれ!こいつで吹き飛ばす!』

「む、それはGインパクト・キャノンか…」

 

ふぅむと顎に手を当てて唸る勇太郎。

データでは広範囲を重力で押しつぶす武装と記載されていた。確かにこれなら奴らを一網打尽にできるが…。

 

『うだうだ悩んでる暇ないでしょ!俺を信じてくれ!』

「…いいだろう。ゴースト1より全機へ!アンノウンを指定ポイントへ集めろ!」

『え?それはどういうことですか少佐!?』

『というかヒュッケバインが起動しているのですが、誰が乗っているんですか!?』

「説明している暇は無い!行くぞ!」

『『りょ、了解!』』

 

釈然とはしていない様だが、命令に従ってくれる燎子やみずはに感謝しつつ、機体を加速させる勇太郎。

 

 

 

 

 

「発射シーケンスはこうか!」

 

モニターの表示通りに砲身を腹部のコネクターに接続し、エネルギーのチャージを開始する。

レーダーで味方と敵の位置を確認しながら、父さんからの合図を待つ。徐々に敵の輪が縮まっていき…。

 

『今だ、撃て勇!!』

 

合図に合わせてトリガーを引くと、キャノンの砲口から重力の砲弾が打ち出される。

砲弾は空中で纏まっていたアンノウンの中心部で一旦拡散し、アンノウンごと収縮して押しつぶしていく。

そして砲弾と共にアンノウンは消失した。

 

「終わった…のか…」

 

敵の反応が消えるのと同時に、猛烈な眠気が襲ってきた。そういやアミタの看病してて寝てなかったんだった…。それに背中怪我してて血も結構流れてるわ…。

もう、無理…お休みなさい…。

 

 

 

 

 

基地が見渡せる丘の上で、戦闘を眺めていた少女と鴉はアンノウンが全滅するのを見届けていた。

 

『なる程、この世界の人間も余り侮れないようですね。今回はここまでです、行きますよれい』

「……」

 

鴉が飛び立って行くと。少女は無言で空を仰ぐと、その場を去っていったのだった。

この日から、少年の運命は大きく動き出していく…。

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