「基地が…!もう襲撃が始まってるのですか…ッ!?」
基地のある方角から聞こえてくる戦闘音に、焦燥感に駆られながら避難する人々の波に逆らいながら市街地を駆ける美紀恵。
「(私は、私にしかできないことのためにッ!!)」
自分1人が駆け付けても何も変わらないかもしれない。それでも、昨夜の言葉を胸に彼女は足を止めることなく為すべきことのために駆ける。
「うぅ…」
日が暮れて空を暗闇が覆う時刻。結局逃げる隙を見つけるどころか素振りすら見せられず、柱に縛られたままの美紀恵。
「安心しろ。明日のSSSのアシュクロフト強奪が終われば開放する」
こういった状況下に対する訓練が不十分であることもあり、長時間の監禁に疲労の色が見られる美紀恵に、不意に口を開くヴォルフ。
「ご、強奪ってお仲間は既にお1人掴まってますし、上手くいく筈が…」
「あれはワザとだ。欺瞞情報を流し主力のASTとCNFの戦力を分断させ、自身は内部から撹乱工作をするためのな」
「そ、そんな…」
告げられた内容に驚愕する美紀恵。焦りから、銃口を向けられていることも忘れ拘束を抜け出そうとする。
「無駄だ。お前1人が加わったところで何も変わらん。今はこの場を生き残ることを優先するのだな」
銃口を見せつけるようにしながら、暗に大人しくしていろと告げてくるヴォルフ。それでも美紀恵の目には怯えの色はなかった。
「それでも…それでも、私はもう逃げたくないんです!大したことなんてできなくても、できることをしたいんですッ!!」
決意に満ちた美紀恵の瞳を見据えていたヴォルフ。そんな彼の懐から振動音が鳴った。
「俺だ。――そうか分かった」
携帯を取り出し、何やら話しているヴォルフ。暫くすると携帯をしまい出口に向かって歩き出す。
「所要ができた。事が終われば警察を呼ぶ。何度も言うが命を粗末にせんことだ」
そう告げると廃工場から出ていくヴォルフ。様子を見てみるも、戻って来る気配はなく、本当に立ち去ってしまったらしい。
「(ちゃ、チャンスです!今の内に逃げ出さないとッ)」
周囲を見回し、役立つ物がないか探す。だが、見える範囲には物一つ落ちていなかった。
「(あぅ…な、何もないです…。い、いえ!諦めたら駄目です!何か手が…!)」
それでも諦めずにもがく美紀恵。すると、縛り付けられている柱に違和感を覚える。
経年劣化により、柱の表面が腐蝕しノコギリの刃のようになっている箇所がいくつかあるのだ。
「(これです!これならッ!)」
体を上下させ縄をその箇所に擦りつけていく。柱に接している手も擦れ傷ついていくも、歯を食いしばり痛みに耐える。
「(このくらいの痛みがなんだ!天道隊長はもっと辛くても耐えてたんだ!!)」
記録映像で見た彼は、何度死んでもおかしくない程傷ついても諦めることなく立ち上がっていた。そんな彼の部下としてここで諦めたくなかった。
「(心に決めたたんです、あの人の側にいられるように――強くなるって!!)」
手が血に塗れようとも最早彼女の瞳に躊躇いの色はなく、その顔つきは戦士と呼ぶに値するものであった。
「…流石に起きて来ねぇよな?」
「そう願いたいわね」
倒れ伏す勇を見下ろしながら警戒するセシルとアシュリー。これまでに得られた情報から見て、この状態からでも立ち上がってくる可能性が十分に考えられたからだ。
「うぉ!?」
背後から斬りかかってきた折紙の斬撃を、レーザーブレードで受け止めるアシュリー。
「テメェ、まだやるってのか!?しつけぇ!いい加減諦めろ!」
「諦めたりしない。ここで諦めたら…。今まで積んできたもの捨ててきたもの全部無駄になってしまうから。だから私は諦めない」
決意と共に力を込めて相手の防御を弾く折紙、その気迫に押され飛び退くアシュリー。
「そんな状態でまだこんな力が?てめーいったい…!?」
「あなた達にアシュクロフトは絶対に渡さない。この任務必ず果たしてみせるそして私は必ず精霊を倒す。そのために戦う道を選んだのだから。それに…」
そこで言葉を区切り、勇へと視線を向ける折紙。
「もう大切な人を失わないためにも負けられない」
「なる程、てめーにも背負ってるもんがあるわけだ。かっこいいじゃねーか!」
「…でもこちらにも諦められない目的があるの…」
「立ち上がってくるならわりーが、とどめ刺させてもらうぜ…」
不退転の覚悟を見せる折紙に、2人がかりに勝負をかけようとした瞬間。上空から降り注いだレーザーを回避する。
「何だ!?」
「しまったわ…時間をかけ過ぎたわね」
事態を把握している彼女らの前に、CR-ユニットを纏った真那が降り立つ。
「ただのお使いになりゃしねーかと心配してやがりましたが…。ひと暴れできそうで安心しやがりました」
辺りを一瞥し、傷だらけで倒れ伏す勇の姿をみた瞬間。今まで感じたことのない怒りに、真那はセシリーらをキッと、睨みつける。
「さて、好き勝手してくれやがった礼をしないといけねぇっすよね」
『ええ、そうね』
真那の近くに着陸した輸送機から、燎子らASTの面々が飛び出してくる。
「襲撃の連絡を受けてかっ飛ばしてきたけど…。大丈夫、折紙?」
「私は問題ない。勇や他の隊員は気絶しているだけ…」
「そう…。さてさて、あんたらよくも私の部下を可愛がってくれたわねッ。お礼にギタギタにして楽しい尋問タイムとしゃれ込みましょうか」
手を組んで骨をボキボキと鳴らす燎子。他の隊員らも仲間の惨状に、殺気だった様子で戦闘態勢を取っていく。
「ち、調子づきやがって…」
「流石にこの人数を相手にするのは無理ね…。レオ…作戦をプランBに移行よ」
セシルがそう告げると、輸送機の燃料タンクに弾丸が撃ち込まれ機体が大爆発を起こし吹き飛び、爆炎によって起きた煙幕に吞まれる燎子ら。
「輸送機が…!!」
「ご苦労様レオ。引き続きサポートお願いね!!」
『うん…わかった…」
通信機越しに告げると、煙幕の中へと駆けだすセシルとそれに続くアシュリー。
「皆惑わされないで!!敵の本命はアシュクロフトよ!!すぐにコンテナを確保…」
燎子が指示を飛ばしている間に、コンテナの近くにいた隊員から狙撃されていく。
「く…っ、早くコンテナを…!」
急いで態勢を立て直そうとしていると、燎子らの体に異変が起きる。
「な、何!?体が…重く…」
「ふふふ…仕様書通りの能力。少しの間大人しくしててね…」
「一体何が起こって…」
セシルの声のした方に視線を向けると、四つある内の『Ⅱ』と刻印されたコンテナが開放されていた。
「!!コンテナが…!じゃあ、これはアシュクロフトの力!?そんな…」
「そ、マジでてめーらご苦労様だぜ。わざわざあたしらのために遠くから運んできてくれたんだからよ」
「Ⅲ」と「Ⅳ」のコンテナに接近したレオノーラとアシュリーが、それぞれ備え付けられているパネルにてを当てる。
『アシュクロフトⅢ『レオン』認証完了。封印を解除します』
『アシュクロフトⅣ『ユニコーン』認証完了。封印を解除します』
電子音と共にコンテナが開放され、納められていたCR-ユニットがそれぞれに装着されていく。
「さて、それじゃあ…。アシュクロフトの実戦テストを始めましょう」
アシュクロフト『ジャバウォック』を装備したセシルは背部に備えられている獣の爪状のアームを展開させながら戦闘態勢を取る。
「そしてその残る一機のアシュクロフトもいただいて帰るわね…!!」
「ぐ、そうわさせないわっ。こうなったら残る一機は絶対死守よ皆」
燎子らが武器を手に迎撃しようとする。それを見たセシルはレオへと視線を向ける。
「レオ…」
「うん…。セシル…」
レオノーラは背部に装備された複数のレーザーを起動させ、燎子ら目がけて発射させる。
「なっ…!?」
放たれたレーザーは、燎子らの周囲に着弾し大爆発を起こす。燎子と折紙はテリトリーを展開し耐えるも、他の隊員らは対処が間に合わず吹き飛ばされてしまう。
「…これで雑魚は片付いたわね。あなた達だけで…どうするのかしら?」
「ッ…!」
倒れ伏す部下を前に、思わず唇を嚙みしめる燎子。
「これがアシュクロフトッ。圧倒的過ぎる…こちらの通常戦力ではとても…」
「らしくねーですね簡単に弱音を吐いてんじゃねーでやがります!!」
弱気になる彼女を励ますように飛び出した真那は、手にしたレーザーブレードをセシルら目がけ一閃。回避こそされるも、その一撃は地面を大きく抉り取った。
「私らはこんな奴らより
「真那…。そうね、こんなことでへこたれてたら対精霊部隊なんてやってられないわね!」
戦意を取り戻した相手を見て、特に真那を警戒しながらフォーメーションを組むセシルら。
「…崇宮真那。世界でも五本の指に入るウィザードって触れ込みは伊達ではなさそうね」
「ああ、まるでアルテミシアみてーだな」
「でも、そんな屈強なウィザードも…。テリトリーを絶たれればどうかしら…?」
セシルが己のユニットに指令を送ると、一斉に攻撃しようとしていた燎子らに再び異変が起こる。
まるで体が鉛でも乗せられたように、何かに動きが阻害されてしまっているのだ。
「く、これって…さっきの…また動きが鈍く…」
「ウィザードが超人たる所以…。それはテリトリーの展開によるところが大きい。強力な身体能力も敵の外部衝撃を緩和する防壁も、全てはテリトリーによる物理現象のコントロールによるもの。このアシュクロフトⅡ『ジャバウォック』は一定範囲内にいるウィザードのテリトリーを阻害する結界を展開できる。この結界の中ではあなた達も普段の十分の一の力も出せないわ」
「な、何ですって…!?」
告げられた内容に驚愕する燎子らを尻目に、アシュクロフトⅣ『ユニコーン』を纏ったアシュリーが、ランスを構えながら背部のブースターを稼働させる。
「そんな状態で強烈な一撃を貰っちまえば、一体どうなるのか――なぁ!?」
無防備同然の燎子ら目がけ、アシュリーはランスを突き出し、残像すら見える速度で突進するのであった。
「これは、一体!?」
基地の正門付近まで辿り着いた美紀恵は、目の前の光景に言葉を失う。
日本人ではない風貌の者達が武器を手に暴れ回っており、それをPT隊始め警備部隊らが鎮圧していた。
「ど、どうすれば…?」
予想外の展開に困惑していると、流れ弾は側にある街灯に当たり思わず身を屈めてしまう。
「と、取り敢えずスーツだけでも着ておかないと…!」
デバイスを取り出し、ワイヤリングスーツを緊急展開させると、彼女の姿を見たテロリストに銃を向けられたしまう。
「わわわ!?!?!?」
発砲されたため跳躍し回避すると、ESOの目の前に飛び出す形になってしまい、相手は驚いた様子を見せるもすぐに手にしていた対戦車砲を向けてくる。
「はわー!?」
不味いと思い慌ててテリトリーで防壁を張るが、飛来してきた弾丸がESOの腕に命中し戦車砲を落とす。
そして、接近してきたM型ゲシュペンストがそのESOを蹴り倒し、マシンガンを向け降伏を促し制圧する。
『――あなたはCNFの…』
「お、岡峰美紀恵伍長です。た、助かりました」
ゲシュペンストを駆るみずはに礼を述べる美紀恵。
『あなたは謹慎中の筈でしょう。ここは危険だから退避していないさい』
「命令違反なのはわかっています!私なんかがいても足手纏いにしかならないかもしれません。でも、大切な人達が命を懸けて戦っているのを、ただ見ているだけなんてもう嫌なんです!お願いします、天道隊長達のところに行かせて下さい!!』
『……』
本来なら本人の意思がどうであれ、現場に立たせるべきではないが。管制から送られてくる戦局から、打開の一手の必要性に迫られていた。
しかし、みずはらPT隊も余力がなく手詰まり状態であったが、美紀恵の揺るぎない戦士として覚悟を秘めた目を見て、彼女の可能性に賭けることを決めるのだった。
『あなたの隊は第三滑走路で交戦中よ。そちらの援護へ向かいなさい』
「あ、ありがとうございます!!」
こちらへ発砲してくるテロリストを、みすはがマシンガンで牽制しながら促すと駆け出す美紀恵。
『ゴースト2より各員へ、彼女の援護を!』
部下へ指示を飛ばすと、美紀恵の進路上にいるESOへ接近し、足払いで態勢を崩すと背負い投げで地面に叩きつけるのであった。
「はぁ…はぁ…」
爆音や、破砕音が響き渡る基地内を駆ける美紀恵。
テリトリーで強化し車両に匹敵する速度を出しているものの、目的地がどこまでも遠くに感じ、焦燥感と手遅れかもしれないという不安を懸命に抑えながらひたすらに足を動かす。
「あっ…!」
目的地の第三滑走路に到着すると、目の前の惨状に衝撃が走る。ASTの隊員ら始め見知った顔が倒れ伏しており。その中から勇の姿を見つけ駆け寄る。
「隊長っ天道隊長!しっかり…!」
「よう、美紀恵じゃねぇか」
必死に声を美紀恵に、残るコンテナを回収しようとしていたアシュリーが声をかけた。
「な、何ですかその装備…それにそのコンテナ…。ま、まさかもうアシュクロフトは…」
「ああ。こいつはありがたく頂いてくぜ。安心しな、そいつらは命までは取ってねぇからよ。まあ、天道勇については保証できねぇがな」
タフ過ぎて手加減できなかったからな、と付け加えるアシュリーに、セシルが呼びかける。
「いつまでお喋りしてるの?戻るわよアシュリー」
「てな訳だじゃーな!!」
「ま…待ちなさい!!」
落ちていたレーザーブレードを手にすると、去ろうとするアシュリーらを呼び止める美紀恵。
「…あ?」
「アシュクロフトは人々の平和を守るための要!!あなた達には渡しませんッ」
「…根性は認めてやるが、もうどーしよーもねーよ。状況わかってんのか…?てめー1人で何ができるってんだよ!!失せな!時間の無駄なんだよ…!」
抵抗しないなら見逃すと仄めかすアシュリー。その目にはどこか優しが含まれているように見えた。
「…いいえ、戦います!アシュリー。私はあなたのことを友達だと思ってます!!」
「はぁ!?」
突然の告白に、驚き担いでいたコンテナを落としそうになるアシュリー。
「な、何言ってんだテメー…」
「短い間でしたけど、あなたと一緒にいて凄く楽しかったです。もう一度あなたと一緒に遊んで笑い合いたいんです。ユウキだってそれを望んでいますッ!!」
「ッ!」
ユウキの名が出ると、ばつの悪い顔で頭を乱暴に掻くアシュリー。
「あれは作戦のための演技だ。オメェらと仲良くなったつもりはねェ!!」
「嘘です!だったらどうしてそんな辛そうな顔をするんですか!?本当のことを言って下さいアシュリー!!」
「ああ、うぜぇ!!どうしても退かねーってんなら容赦しねぇぞ!!」
コンテナを降ろすと、背部に懸架していたランスを手にし構えるアシュリー。
「セシル、レオ!すぐに追いつく、先に行ってろ!」
「…敵地に残していくわけにはいかないわ。レオ周囲の警戒を」
「う、うん。わかった」
こちらの意を汲んでくれる親友らにワリィな、と告げるとブースターを点火し、ロケットの如く加速すると瞬時に美紀恵へ肉薄するとランスで横薙ぎに殴り飛ばす。
「あグっ!?」
受け身も取れず、地面を数度跳ねる程吹き飛ばされる美紀恵。
「(やっぱり強い!!ただでさえ力の差があるのに、今の彼女にはアシュクロフトがある!勝ち目なんてないのかもしれない。でも…!!)」
「さっきの威勢はどうしたァ!!こいよ美紀恵ェッ!!」
彼女の技量なら苦なく追撃できた筈なのに、その場に留まり挑発するよう煽るアシュリー。まるで美紀恵が立ち上がるのを待ち望んでいるようであった。
「(それでも、どれだけ絶望的な状況であろうとも、もう呆れたりしません…!!)」
ふらつきながら立ち上がり構える美紀恵。迷いも恐怖も感じさせない力強い目で見据えてくる彼女に、アシュリーは自然と口角を吊り上げていた。
「へっ…この期に及んでいい目をするじゃねーか!!でもまあ、こいつで終わっちまうかもな!!」
獰猛な笑みを浮かべながらブースターの出力を上げていき、力をためるように前傾姿勢を取りながら踏ん張る。
それに対し、美紀恵はブレードを正眼に構える。
「(…集中するのです。状況を的確に判断し、より良い選択を…)」
僅かな変化も見逃すまいと相手を美紀恵。
アシュリーは最大まで出力を高めると踏ん張りを解き、引き絞った弦から放たれた矢の如く突進を開始する。
「アシュクロフトⅣユニコーンの持つ最大速だ!!お前じゃ捉えられねェよ!!」
「(速すぎる…。テリトリーを視覚に集中しても全然見えない…。これは、絶対に躱せない…。なら…)」
進路上の地面を削り飛ばす程の速度で迫る彼女に、美紀恵はブレードを手放し突き出されたランスを両手で掴んで受け止めた。
「なぁ!?何だと!?!?」
「動きはみえなくても、攻撃する際必ず私の体に武器は触れます…。その瞬間だけに集中すれば…!!」
「嘘だろ!?突撃型のユニコーンの最速だぞ!?それを通常装備で止めたって言うのかよ!!」
「前面から突進してくるのはわかってるのですから、防性テリトリーを前面に集中して高めれば防せ――がっ!!!」
言葉の途中で血の塊を吐き出し、片膝を突いてしまう美紀恵。
「へっ超音速の突進だぜ?いくら防性テリトリーを集中させようが、衝撃は体中を駆け巡る…ただじゃすまねーよ。ワリィがこれで終わり――」
ランスを掴んでいた手を振り払い止めを刺そうとしたアシュリーを、背後から真那が強襲しレーザーブレードで斬りつける。
斬撃こそテリトリーで受け止められるも、衝撃で正面から地面に叩きつけられるアシュリー。
「あ、あなたは…」
「新人が気張ってるのに、私が寝てるわけにはいかねーですね。ほら新人!何をぼさっとしてやがるです!!とっとと行きやがるですよ!!」
「行く!?ど…どこへ?」
意図が読めず困惑する美紀恵へ、折紙が上半身だけ起き上がらせながら声をかける。
「最後のアシュクロフトを起動させて…」
「折紙さん…!」
「私はもう…起き上がれない。あなたが起動させるしかない…!」
「ああ!?行かせるわけねーだろ!!」
「それはこっちのセリフでやがります!!」
阻もうとするアシュリーを、テリトリー上からブレードを突き刺し抑える真那。
「さあ早く!!私とアシュクロフト1機あれば、この戦い負ける筈がねーです!!」」
「で、でも…」
「…今のあなたなら使いこなせる。だから、行って…」
「わかりました!私、行きます!!」
2人に促され覚悟を決めた美紀恵は、最後のコンテナ目掛け駆け出す。
だが、そんな彼女へセシルが迫っていた。
「そうはさせないわよ!!――ッ!?」
美紀恵へ蹴りを放とうとした彼女に、勇が体当たりをし態勢を崩した隙に羽交い絞めにし拘束する。
「なっこの男まだ動け――!?」
予想外の乱入者に驚愕するが、それ以上に彼から匂う焦げ臭さに目を見開く。
「あなたまさか、アシュリーから受けた傷をサーベルのビームで焼いて塞いだの!?正気!?死ぬわよ!!」
そう、彼は腹部からの出血を止めるため、サーベルの出力を調整しバーナーのように傷口を炙って強引に塞いだのである。
「死なんさ、この程度ではなッ」
「隊長ッ!」
「止まるな、行けェッ!!」
「はい!」
コンテナまで後一歩まで迫る美紀恵だが、レオの放った砲撃を受けてしまう。テリトリーで直撃こそ免れるも、その衝撃でコンテナに頭から叩きつけられてしまう。
「美紀恵ッ!!」
「悪いけど、大逆転とはいかなかったわね」
勇が意識を削いだ隙に、蹴りを入れ拘束を解くと猛攻を加えていくセシル。
「(…駄目、でしたか…。い…いえ、まだです!!諦めた、り…しません…)」
コンテナに張り付きながらパネルに手を伸ばすも、力が抜けていき擦り落ちていく美紀恵。
「(でも、もう体が…。意識がなんだが、遠のいて…。い…嫌です、こんなところで…終わりたくない…。力を、立ち上がる力を、私に…!!)」
力が…必要ですか?
「(?誰、ですか…?)」
あの3人を止め…。仲間を、大切な人を守るための力…
「(力…。ほ、欲しいです!!勇さんの、皆さんのためにもッ。立ち上がる力を…立ち向かう力を…!!)」
では…私と手を取り合いましょう
「(手を…?)」
さあ、もっと手を伸ばして…そう…もう少し…
まるで、何かに導かれるように力を振り絞り手を伸ばすと、コンテナのパネルに触れる美紀恵。
『アシュクロフトⅤ『チェシャー・キャット』認証を開始します――認証完了。封印を解除します』
コンテナが開放されると、内部に納められていたユニットが彼女へと装備されていく。
「嘘だろ!?あんな深手で動きやがったのか!?!?」
予想外の事態に敵味方問わず驚愕している中、アシュクロフトを纏った美紀恵の傷が瞬く間に消えていく。
「凄い。やられた傷が塞がって、立ち上がる力が…!これがアシュクロフトの力ですか!!」
体を軽く動かすと傷など負っていなかったかのように問題なく動き、それどころか今でにない力が体の奥底から湧き上がってきていた。
「これならいけます!アシュリー!あなた達のアシュクロフト…返して貰います!!」
「へっやってみやがれ!また返り討ちにしてやらァ!!
指さしながら叫ぶ美紀恵に、アシュリーは受けて立つと言わんばかりにランスを構えるのであった。