10.
大空を超音速輸送機が飛び回り、アビニョンの町を溶断していく。
『
学園都市の武威と高慢と言うべきその風景を双眼鏡片手に見る人間達がいる。
「……醜い」
逃げ惑うローマ正教。それを捕まえようとする『
ここに用は無い。もはやここまで直接的にぶつかられるとどうしようも無い。
今できる事は……
「あれか」 「ああ、そうだ」
コンテナだった。そのコンテナに次々と何かが運ばれていく。それは特殊な樹脂で固められた何かだった。
「間違いない。あの中身は生きている」 「ただの捕虜として収監するだけですめば、こちらも対応せずにすむんだが……」
「そんなの無理に決まっているでしょ?」
男が1人、女が2人。全員が特徴的な格好だった。男の1人は黒人で、半裸。ただし全身に入れ墨が入っており、その模様の美しさから彫像にも見えてしまう。
女の1人は顔に北斗七星の入れ墨がやはり、入っていて、女性用の競泳水着に見えるタイトな布一枚。
最後の1人にいたっては、局部だけ見えづらくなっている殆ど透明なバニースーツの女だった。
その3人組は手にした双眼鏡を投げ捨てる。すると双眼鏡はスローモーション映像のように空中でゆっくりバラバラになっていき、吸い込まれる様に数百メートル離れた所へと飛んでいく。
そして、バラバラになった双眼鏡は数百メートル離れたところで倒れ伏している魔術師たちの手の中に収まっていく。まるで手の中の双眼鏡が持ち主が倒れて今壊れたかのように。
……いや、元々そうやって壊れていたのだ。それが何故かちゃんと機能してて、3人組の手の中に収まっていたに過ぎない。
3人組は歩く。町の外へ。
「ふん、良い気味だわ。頭パーのオカルト如きがこちらの配慮をむげにするから」
「ダメだよ。そんな事言っちゃったら……」
2人組の学生と同じく2人組の白衣の男女であった。高層建築の屋根の上に4人組。
1人は女子高生でありながら、ぼろぼろのランドセルを背負っている。
もう1人も女子高生であったが、こちらは何故か一輪車に乗っている。
1人は、白衣に眼鏡、若い男性研究者のイメージ絵を書けと言われたらだいたいこんな感じになるんじゃ無いかと言う男。
最後の1人も白衣。ただしその下には真っ赤なドレスという格好の女性。
携帯電話を取りだした4人組はそれぞれで電話をかける。
「……確認しました。『ケース2-1』です」 「見た感じ、多分あちら側もここで偵察しているで――」
「「「――『魔術サイド』の『処刑人』」」」
『科学サイド』と『魔術サイド』を分ける不可視の境界線、それをこの世界では『協定』と呼んでいる。
では、仮に誰かが協定を破っていた時、誰がそれを守らせるのだろう?
「『学園都市』の奴らもいたな」
3人組は歩きながら、つぶやく。ここではダメだ。ここまでグチャグチャだと今更過ぎて『執行』もクソも無い。
「奴らも偵察にでも来ていたか?」 「さぁ。奴らは我らとはやり方が違う。そう、例え同じ――」
「「「――『処刑人』だとしても」」」
科学サイドと魔術サイド。双方の『協定破りの処刑人』達はそれぞれ違うルートでフランス南部の町、アビニョンを離脱する。
ここでするべき事は無い。だが、これからするべき事は見つかった。