『とある線上の世界大戦』   作:ホエール

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『Old Testament.16.5 テトロトドキシンは生命を偽装する――Loss_of_reason_requires_no_sacrifice.』


第2章 5.

   5.

 悪臭。第22学区の地下に足を踏み入れただけで。いったいどういう状態になっているのか。

 

「……血の臭いと……獣の匂い?」  「汗臭いな。仕方ないが」

2人の目の前で大量の駆動鎧が搬入され、大量の無人兵器がトラックに乗せられて運ばれていく。

警備員(アンチスキル)』が総力を挙げて、事態の解決に乗り出そうとしている。化学防護服が続々と用意され、その時が迫っている。

 

「ねえ、肝心のゾンビって捕まえてないの? 拘束している奴の1人や2人っているでしょ」  「もちろんいるだろうさ。多分病院に送る前に最低限の検査を行っている」

「……みせて」  「ダメだ。危険すぎる」

「なら、拘置所にかえりまーすー。ここは危ないからダメなんでしょ。そんなんじゃ何も出来ないじゃん。情報が欲しいのはそっちも同じなんだしー」

「……はぁ……危ないマネをしたら引っこ抜くぞ」  「それでいいよ」

かくして医療用テント――地下空間にあるのも奇妙だが――の中に入り、拘束服をつけ、色々と縛られている学生達の姿を見た。隔離用と思わしき特殊な小型コンテナに収容され常にバイタルサインがモニターされている。

 

「ぞ……暴徒の特徴として脱水症状が見られます。まぁ、こんな有様ですからむしろ当然ですね」

「他に何か無いの?」  「さぁ? ここの設備ではこれが限界ですよ。感染症病棟の開いているきちんとした病院で……」

「……そういえば、外気温はともかく湿度が……乾いているね」  「ん? そうだな」

ゾンビをモニターしている画面に各種情報が表示されているが、その中に隔離空間の気温湿度と外気のそれが両方表示されている。

 

「ねえ、日本の地下で、湿度が乾いているってどういう状態? そんなに強力な空調が機能しているの?」

「……いや、そんなはずは。そうなら低酸素状態なんてとっくに……」

「……お願いがあるの」  「ダメだ、最前線へは」

「そっちじゃない。この手錠を外して。無理ならせめて私のスタンバトンと折紙を返して。最前線には行かない。いえ、むしろせんせーには行って欲しい場所があるから」

少女の強い意志のこもった目線を受けて、三宅はポケットよりある物を取り出した。それは手錠の鍵。そして、懐からはスタンバトンと少女が持ち歩いていた折紙の束。

 

「それで、俺は何処に行けば良い?」  「今わかる範囲で良いの。『DA』って連中の支部がこの学区になかった? そこを家捜しして欲しいな」

「……おいおい、そいつは、いったいどこから聞いたんだ?」

DA、それは『警備員』内部に生まれた厄介な集団だ。事実上の『暗部』と言って良い。

だが、その存在はつい最近明るみになり、彼らは壊滅したハズ……である。

とある科学の一方通行において、登場するその組織は今頃は壊滅しているハズなのだ。

 

「私は最悪の可能性を考えていた。これが……『科学』と『魔術』の複合じゃないかって。こんな風に表に出たのは事故じゃないかって。私の魔術知識はどうしても偏りがある。東アジアのそれがどうしても中心になっている。その上で、この状況には覚えがある。それは本来おかしな事」

「何故おかしいって言える?」

「あれは、清王朝時代の『小説』のだから。今の状況を引き起こしている可能性が高い物は、フィクションだとわかっている事柄だから」

そして、彼女の『ある知識』は叫んでいる。創約と呼ばれた9冊目までの知識が叫んでいる。

 

「『超絶者』……あの連中は私では手に負えない。最悪はそいつらが出てくる。だから、祈っている。出ないでくれって。あそこまでイカレた魔術師じゃ無いただの自信過剰なバカであって欲しいって」

 

 

 

それから、1時間もしないうちに、三宅は第22学区のとある階層をガスボンベ背負って歩いていた。化学防護服は動きづらいがこれがなきゃどうなるか

知ったことでは無い。

そして、三宅はたどりつく。破壊された無人コンビニ跡に。そして、地下への出入り口を発見した。

 

『どう?』  「ビンゴだ。君の言うとおり、ここにはDAの施設があったのだろう。中の確認も必要か?」

『それはしなくて良いよ。危ないから』

「聞いて良いか? 何故DAの事を知っている? 彼らが今回の事件の黒幕か?」

『それは違うと思う……。DAは懲戒免職を食らった「警備員(アンチスキル)」からなる秘密結社で自分たちの行動は学生じゃなくて能力者って言う凶悪なパワーを持った野生動物への躾だと思って行動する暴走した正義感の集団だった。あってるでしょ?』

「……外部の人間がそれを知っている理由が知りたいんだが」

『でもそれだけじゃ無い。DAは自分たちの目的のために学園都市の外部から研究協力者を呼んでいたんだ』

「……まて、その流れだと」  『エステル=ローゼンタール。私が探して欲しいってお願いした2人目の切り札だよ。結局見つからなかったけど。彼女は魔術師だった』

「……DAは以前から『学園都市外の能力開発』との繋がりがあったって事か。おい、まさか……」

『DAが呼び込んだ外部協力者が1人だけ……なんて断言出来る? 私は出来ないよ。だから……』

 

タブレット端末を抱え込み、無線で会話をしていた少女の歩みが止まる。ダブレット端末には三宅が見ているモノが映っている。

だが、すでに少女はそれを見ていない。彼女は己の折り鶴をばらまいて叫ぶ。

 

「『即席原典もどき(I.I.テキスト)』、悪縁は断ち切られるものっ!!」

縁切り、悪縁切りをベースにした防御術式が発動されるのは第22学区1階層の『警備員(アンチスキル)』詰め所。

忙しく動いていた警備員達がいきなり折り鶴をばらまいた少女にいったい何事かと言う視線を向けて、いきなり全員ぶっ倒れた。

 

「やっぱり。少しずつ、この人達を魔術的な意味で支配下に置いていたか。そうでしょ? ハンバー使いさん?」

少女の目線の先には例の未成年飲酒の女子児童がいた。

 

「『意味不明(どういうこと~? 何のことかわかんなーい)』」

「少し離れた安全地帯で高みの見物。私の考えがあたってたねー」

「『理解不能(だから~なんのこと~?)』『聴覚・無事(みみは大丈夫ですかー?)』」

 

「白々しい真似しないでくれる。本当に無関係なら、いきなり大人の人達が倒れて、それを成し遂げたわかちゃんさまみたいな小娘に警戒しないハズが無いじゃ無い」

そう、当たり前の事を突きつけて、少女、富上 磐(とがみ・わか)はスタンバトンを取り出し、その警棒より電撃の火花を飛び散らせながら宣告する。

 

「このゾンビパニック……いえ、『キョンシー』騒動も終わりだよ。その服装は『女魃』、『旱魃』を連想させるコスプレ?」

 

「『攻撃(やれ)』」

 

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