『とある線上の世界大戦』   作:ホエール

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第2章 7.

   7.

「『認定・強敵(……あなたを侮り過ぎた事は認めましょう)』」

青い服に白いケープ、顔に緑色の絆創膏を貼った、低身長童顔女子はそう言いつつ、留置部屋に備えついている机に脚をのせる。

スタンバトンの電撃の火花よけには十分な対策だ。確かにスプリンクラーは床を水浸しにさせている。けれども、それはせいぜい2~3センチ程度のものでそれ以上は

以下に排水システムが止まっていると言っても効果が無い。広大な空間を洪水にするにはスプリンクラー程度の水では物足りない。

 

「『全力・排除(私の持つ力の全てを使っておまえをたたきのめす)』」

「安全地帯に引きこもってるのがどうやってー? ミイラを使った霊装なら破壊したよー」

「『制限解除・排除開始(は、こうするのさ)』」

次の瞬間、まるで念動力のように磐の体が後ろに吹き飛ばされた。

留置部屋の向こう側の少女の顔についた緑の絆創膏から緑色の着色料のようなものが垂れて、顔の半身下半分を緑色に染める。

 

「第4級っ!?」  「『地上・頂点(地上をさ迷い歩くく奴らの頂点だ!)』『自分・加工(自分を加工しない道理がどこにある!!)』」

「だとしてもぉぉおおー!」

再び取り出す折り鶴。ただし、今度の折り鶴はいわゆる千羽鶴を連想させる鎖状に繋がった折り鶴。

何もない空中にその鎖を投げ、音を立てて折り鶴の鎖がバラバラになっていく。

 

「『結界・紙片(紙切れで、高度な結界だと……?)』」  

「古代の日本人は紙の折り目を不思議だと思っていたー。感じていた。それが寄せ集まって一つの『異界』が形成されると考えてーさらに折り目が寄せ集まって不思議な形に

なっていくのが神秘的なことだと思っていた。鶴は破魔の象徴、長寿の象徴、清浄なることの象徴。折り目という小さな異界が集まって鶴という『異界』にして『結界』が

形成されていく。そこには当然あるべき呪力が成立すると……少なくともあんたにも『テレズマ』の類がただの紙切れに宿っているのは感じるんじゃない?」

バラバラになった元折り鶴の紙切れには、いくつかには〇×△□の記号が書き込まれている。4色ボールペンを使って白い部分に書き込まれている。

そして、いくつかの元折り鶴には〇×△□ではなく、日本語で文章らしきものが書き込まれている。

また、ある元折り鶴には漢文らしきものがやっぱり4色ボールペンらしきもので色とりどりカラフルに記載されている。

 

「『乱雑・紙片(こ、こんな適当な紙切れに、防御される……?)』」  

「こんな適当な紙切れだけど、どれもこれも立派な魔導書の原典っぽい何かだよ。原典の走り書きをそのまま使い捨ての礼装にしたの」

「『不明・雑魚(はぁ? あんたみたいな雑魚が魔導書を書く魔導師だっての!? ふかしこいてんじゃなわよ!)』」

「私は自称一流の魔術師のわかちゃんさまだよー。さすがに大魔術師と呼べるほどじゃないけどー。だからね、あんたがわかちゃんさまのことを雑魚といえばいうほど

そのわかちゃんさまに倒されるお前は無能カスだ!!」

「『愚劣・無知無能(ほざいてろ!! お前はクソ雑魚カスうんこ! なんにもわかってないゴミカスがァアッ!)』」

 

 

三宅が使用するのは電波センサーだ。電波を放っているものに反応する。尤も今時電波を使わない機器なんて存在しないので、登録したいくつかの電波以外の

あらゆるものに反応してうるさいことになる。

それでも第22学区に設置されている監視カメラ最新のAI解析と併用すれば邪魔くさいノイズを消し飛ばして、怪しい電波を発見する事が可能となる。

それでも検索する数は膨大だが、幸いなことに今の第22学区で携帯電話を初めとする一般人が使用する電波の数は少ない。

メンテナンス用通路を走り回りながら、電波センサーを使い怪しい場所へと走る。

今時電波を使用しない機器類は存在しない。むしろ学園都市のような場所だと電波の無い場所こそ怪しいくらいだ。

故にたどりついたのは、かの後方のアックアと無人兵器達が激突した中心地。

 

「こいつぁ……ひどい。どんな化け物と戦ったんだ? ここまでくると怪獣映画だな」

いくつも積み重なった無人兵器だったもの。そして、ついに見つけるのだ。

無人兵器達の中に紛れて、ぶっ壊れた4脚の輸送ロボットが1つ。ただし妙ちくりんなボンベのようなものを抱え込んでいる。

大口径の機銃弾を受けたらしく、1発は耐えたハズの特別性のボンベが、やはりぶっ壊れている。

 

「これが、すべての原因か」

『――聞こえているか、三宅』  「聞こえています。それと映像を送りますが、間違いなく全ての元凶を発見しました」

『――……なるほど、これが今回のゾンビ騒動の原因か? 他にも暗示や何かを多用されている痕跡があるが、少なくともコレが直接的な』

「ええ、おそらくはそうなんでしょう……。『吸水性ポリマー』によく似た化学物質がここから流出したのが今回の騒動の直接的な原因でしょう」

アンチスキルの科学技術は数時間程度の時間さえあれば未知の毒性物質であってもその正体や最低限程度の対処法は判明できる。

 

(くしくもあいつの排水を2~3時間ほど止めて擬似的に洪水を起こせば良い……制圧用放水を多用すれば良いはあたっていたか。……後始末が地獄だな)

ばらまかれた化学物質はごく微量であれば、くしゃみで肺への浸透をかろうじて防げただろう。代わりに鼻くそがやたらデカくなるがその程度で済んだ。

だが、ある一定量を吸い込むと途端に大変な事になる。吸水性ポリマーの様に水分を大量に急襲するそれは肺から水分を……つまりは事実上血を吸い取るのだ。

体は脱水症状を引き起こし、生きたままミイラ化し始める。

水分を貧血と急性脱水症所により、彼らは何時しか幻覚を見始め、行動もおかしくなっていく。

 

『――だが、効果はそれだけじゃ無い。特殊なタンパク質が見つかった。いわゆるBDNFの一種だ』

水分と引き替えにこの化学物質は内部に内包している特殊タンパク質を血中に取り込ませる。

脳由来神経栄養因子(B.D.N.F.)』の一種として人口的に設計されたと思われるその特殊タンパク質は脳に到達すると途端に反応を示し、結果、脱水、肺は壊され、

血液は凝固を初め、それでもBDNFによって無理矢理活性化される脳みそや各種細胞達。

 

『――この化学物質を作った奴らは意地が悪いぞ。尤もそれでなんでゾンビになるかはさすがにまだメカニズムがわからん。恐らく暗示や他にも薬物などそう言うあれこれを

併用していると思われるが、その併用している技術体系がよくわからない。おそらくは「外部」由来の特殊な技術だろう』

「ですが、BDNFとは厄介です。それ自体は人体が精製するよくある物質に過ぎませんよ。特殊な人工BDNFだからといってそれを体内から排除しようとして他のBDNFまで

巻き込めば、どんな身体的脳的損害に繋がるかわからない。肺に溜まった悪趣味ポリマーだけならどうとでもなるんでしょうが、いえ、本来はそれだけでも大事ですが……

この事態が収束したとき外科的措置が必要になる学生達が何人出てくるか。肺に溜まった血を吸って堅くなった石がゴロゴロなんて普通はとんでもない事態です」

『――DAの遺産だろうさ。DAの研究施設を全部徹底的に急ぎ捜索しなければいけない理由が増えた』

DAの事件は9月のことアックアの襲来は10月の事だ。未だ、アックアと激突した無人兵器が転がっているようにまだ数日と立っていない。

まだ見つかっていないDAの施設が第22学区から見つかる可能性は十分にあった。

 

『――だが、こんな最悪の事態が起きて施設の存在が判明するとは……』

「……それ以上に問題があります。『警備員(アンチスキル)』よりさきに連中の遺産目当てに動いた奴らがいた。いえ、奴らの残党かもしれない。

そいつらが、野放しにされている……」

『――「暗部」……あの連中への対処はモグラ叩きだ』

突如、轟音がした。三宅のすぐ側の建物が崩壊している。

 

「いったい? ゾンビだけじゃなくて、他にも何かあるのか?」

 

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