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『学園都市以外の能力開発』は、学園都市とは基本的に方式が違う事は報告されている。
とはいえ、学園都市で能力者と言えば、学生であり、また半分が測定器で判別出来るだけで実質何も無いようなレベル0達だ。
それゆえに『大人』で『高位能力者』の群れには純粋な驚きを持って迎えられた。
「『四枚羽』は――?」
――頼りの無人兵器はまだ来ない。
「敵性勢力の『能力開発』はまるで量産型ですね! どいつもこいつも似たような攻撃を繰り返している!」
「それがわかれば、対処は楽だ!! わかればな! 今、どんな感じになっている!?」
「さっきまで、水の攻撃だったのが今は衝撃波に切り替わっています!」
「『道具依存型』か? わかりずらい『能力開発』ばかりだな。それともそれを応用した兵器か?」
『
一斉に引き金が引かれ、液体窒素と急速冷却剤が大量にばらまかれ、空気を一気に冷却する。
そして、小規模の爆発音の連発。
「水蒸気爆発を食らいやがれ!!」
急激な温度変化に空気の方が絶えきれず、小規模の水蒸気爆発の連続発生。それを目的とする非殺傷兵器『冷却衝撃弾』。
尤も当たり所が悪ければ死ぬし、多用すれば、爆発では無く、夏でありながら南極の様な寒さと氷が支配する狭い空間が出来上がるだけだが。
ばたばたと倒れる祭服の男達、女達を拘束し、そこで少し悩む
「『能力開発』って事は手錠を付けた程度では無力化したとは言えないよな。どうすればいいんだ?」
「『能力開発』で作った兵器に頼ってるだけってのがはっきりすれば問題ないんだが」
とりあえず、『学園都市以外の能力開発』対処用に急遽作った拘束鎧で、拘束後、薬剤で常時眠らせるスイッチを押す。
少なくとも72時間は麻酔漬けで人間である限り絶対起きられないし、その上、拘束鎧をぶち破れる人型生物は存在しないと言う代物だ。
その後は一般市民と同じように気球にくくりつけるだけだ。
「それにしても、いったい何なんだこいつ等は。宗教団体が『能力開発』とは、よくわからん上に、研究者にも見えない」
「我々とは方式が違うそうですからね。ひょっとしたら我々が迷信だと思っていた事柄の中には見過ごしていた『能力開発』のやり口があったのかもしれません。麻薬でラリった頭でやる儀式とかも過去にはあったようですし」
「なるほど。我々の成分分析が及んでいない一種の『投薬』と言う事か」
そんな事を会話しながら、拘束鎧に1人の女を皆で格納しているときに奇妙な物を見つける。その女が持っていた所有物らしい。
それは一見すると奇妙なロザリオもどきに見えた。少し大きめの十字架の中に裸婦像が描かれ、2人の爺さんと樹木がその周囲を囲っている。
女の手から落ちたその奇妙な物を1人がその『
「何かの文化財かもしれん。なるべくテーブルか、棚の上に置いておくべきだろう」
そして奇妙なロザリオ、いや『霊装』の発動に対処出来なかった。
増援の『
「いったいどうなっている。どうして、駆動鎧の頭部が切断されている物ばかりなんだ」
「一応全員生きていますが、どうしてだか、皆反応がありません。いったい何があったんだか」
三宅はその場を改めて見渡す。石造りの建物だが、内部は普通に現代の人間が住む普通の環境だ。
家電製品に溢れ、スイッチ一つで温水が出てくる装置が取り付けられた水道。中世由来と思われる建築様式の集合住宅の一室で
ありながら、明らかに現代の人間のライフスタイルに囲まれた空間に不釣り合いな『
「ふむ、その機械甲冑のおかげで、中途半端に生き残ったという訳ですか。元がスザンナの処刑未遂をモチーフにした術式なので、人間程度の力しか発揮できないと言う問題点ですね」
祭服の男女2人組が新たに現れ、『
「おとなしく武装解除し、こちらの指示に従え! 両手を挙げ、手を首に回して――」
――当然の様にそれに従うはずも無く、『霊装』として持ち込んでいた彫刻の彫られたレンガ片手に男女2人組がともに詠唱を開始する。
『『 灰の山より焼け石を掘り出して―― 』』
「――――気をつけろ! 何かするぞ!!」
三宅の警告より先に、引き金を引く方が早かったのかもしれない。『冷却衝撃弾』が次々と炸裂し、液体窒素と急速冷却剤が空間を強制的に冷やして、水蒸気爆発を起こさせる。仮に水蒸気爆発の衝撃に耐えたとしても、空気が薄くなる。液体窒素の窒素が酸素を追い出して、呼吸を難しくする。
冷えた空気が、体に変調を起こさせる。肺が冷えた空気を吸い込んで、呼吸すると言う行動そのものを何時しか難しくさせる。
「粘着弾用意!」
回転式シリンダーが別の砲弾を選別する。一種のトリモチ、粘着性の流体を用いることで相手の動きを封じつつ適度に打撃を与え、動きを阻害し無力化する。
「撃てッ!!」
一斉に放たれた流体砲弾はサンバラトの術式による阻害妨害によって無力化、次々と銃身から飛び出した瞬間起爆し、駆動鎧の行動を一斉に封じ始めた。
とはいえ、全員の流体砲弾を無力化する事は失敗しており、相手の男女2人組も粘着性流体砲弾により、壁にたたきつけられ、そのまま足を宙に浮かせたまま壁に貼り付け状態となる。
相打ち。
そんな言葉が状況を物語る物であったが、双方ともに相手を殺傷する意図を持たない。
つまり、学園都市部隊も男女2人組の祭服達もこの状況で次の行動を開始する!
空気弾、粘着性流体砲弾、冷却衝撃弾、そして、非殺傷を諦めた榴弾。
防御術式としてのサンバラトの術式と攻撃手段としてのスザンナの処刑術式。
「三宅っ!! 時間がかかりすぎだ! ガスを使う!」
「ま、まてっ! 今ガスを使うのは、倒れた味方にも!」
その場に相応しくない声が聞こえたのはその時だ。
「あ、あぁ~あ。可哀想に。幸い駆動鎧が盾になってくれたからなんとか命は大丈夫かー。いやダニエル書モチーフ術式、まぁ大丈夫かー」
「女子中学生……?」
幼い顔立ち、学生服、その少女は典型的な日本人女子生徒に見えた。ただし、制服の上に白衣をまとい、頭には折紙で兜を折って乗せている。
学校内ならともかく、ここでは明らかに奇妙な出で立ちであり、フランスの中でいきなり出くわすのはどう見ても『変』であった。
『 異教の魔術師!?』
祭服の男女の側も彼女に驚きとだがそれ以上に敵意を持ったらしい。
女子生徒は倒れた駆動鎧の様子をうかがい、とりあえず中の人が無事である事を確かめ安堵の表情を見せる。
「何をしている! 危ないぞ!! 学園都市か!? それともただの観光客か!?」
女子生徒の制服は実は学園都市の学校では無く、都市外の公立高校の物なのだが、その場にいる誰もがそれは知らない。ただ、日本人の女子生徒が
戦場のど真ん中に現れたと言う状況だ。そして、学園都市の『
祭服の男女が彼女に指先を向ける。これまでの戦いでそれは危険の兆候。
「危ない!!」
『
「――ありがたいけど、大丈夫かー」
いつの間にか、少女の手には鈴。そして、彼女は両手を叩く。柏手。手と手がぶつかる拍子の音と鈴の音が響き渡り、スザンナの糾弾に使用される霊装が真っ二つに破断される。
攻撃の無効化。
アンチスキルの三宅はその風景を見ながら、つい、こんな風に思った。(あっ、そんなんでどうにでも出来るんだ)と。
『――四枚羽到着まで残り70秒!!』
アンチスキル達が待ち望んだ戦力、無人兵器の2機編隊がもうまもなく到着する。
けれども、どうやら、あちらも援軍を求めていたらしい。祭服の一団が追加で現れたのはその直後であったからだ。
「おじさんたち、これ借りるね。あと頭守って」
少女が倒れた駆動鎧の連発式グレネードランチャーを勝手に持ち出したのは直後であった。止めるまもなく彼女は壁に向かって引き金を引き――
「「「――なっ」」」 『 !? 』
突如として床が崩落した。駆動鎧も祭服も少女自身も落下していく。だが、三宅は確かにみた。少女が笑っていることに。
(こいつが、何か仕掛けを!)
かくして、落下の衝撃と砕けた土壁やレンガと言った瓦礫が降り注ぐ。そんな状況を把握し、すぐに動けるようになったのは、追加で現れた
祭服の一団がほんの2~3秒だけ早かった。
祭服達は、この状況を作り出した元凶、すなわち、落下の中にあって、優雅に地上に降り立ち、そのままその場を立ち去る女子生徒を追うことにしたのだ。
彼らの目には駆動鎧が瓦礫の中でもたもたしてそう……というイメージで見られたのかもしれない。
実際にはめまぐるしく変わる状況の中、安全な装甲に守られている事も相まって数秒の違いが出ただけだが、『
「きゅ、救出!! 女子生徒らしき人物を確認。日本からの観光客、或いはどこぞの部隊が招集した能力者か!? 敵が女子生徒を追っていった!!」
無線に現状の報告とともに、『
すなわち、『女子生徒』の救出の為に。かくして、1人の女子生徒とその女子生徒を追いかける祭服の一団、そしてその後ろに『
言う状況に一気に状態は変化した。