『とある線上の世界大戦』   作:ホエール

23 / 65
第3章『Old Testament.21.5 臨床試験は未来を解析する――No_one_knows_what_the_future_holds._It's_obvious.』


第3章 2.

   2.

 学園都市には、『警備員(アンチスキル)』以外にも治安維持組織がある。『警備員』が建前上、教職員のボランティア活動であれば、もう一つは学生たちのボランティア活動となっており、基本的には学校内で取り締まりを行うことになっている。

もちろん学生たちのボランティアであるが故に危険からは遠ざけられることになっているが、わざわざ治安維持のボランティアに行くような学生たち全員が我慢できるはずもなく。

 

「『警備員(アンチスキル)』の方から応援要請ですよ、白井さん。いきます?」  「当然ですわ」

こうなるのだ。それが、学園都市もう一つの治安維持組織、『風紀委員(ジャッチメント)』である。

風紀委員(ジャッチメント)』の177支部にて、車椅子の女の子とともに常盤台中学(お嬢様学校)の制服に身を包んだツインテール女子――白井 黒子(しらい くろこ)――は送られてきた資料を見ながら『警備員(アンチスキル)』の大人たちが学生たちに頭を下げてきた案件がどんな物なのか想像する。

 

「女の子の護衛兼収容施設の警備?」  「どうやら、戦争の捕虜の人たちとかちょっとやり過ぎちゃった学生達がいるべき収容所からいなくなってるそうなんです」

「……脱走なのでは? ……書類上は完璧すぎて、むしろ脱走ではなく何かしら裏事情がある感じですか」

「そうなんですよ、白井さん。それで今いる捕虜とか学生達とかを即席の収容施設に信頼できる人たちだけで納めて様子を見よう! ってことになってるみたいです」

「……護送は大丈夫そうですの?」  「さぁ? 正直、あちらも人手不足と疑心暗鬼のダブルパンチで一カ所に集めるってだけでも大変みたいです」

初春 飾利(ういはる かざり)。177支部所属の『風紀委員(ジャッチメント)』であり、車椅子の少女だ。

ついこの間(旧約15巻)、事件に巻き込まれたせいで負傷し、今は車椅子で活動している。時期に回復するが、この状況を初春は地味に楽しんでいた。

だって、ちょっと前まで、車椅子生活をしていたのはこれまたとある事件(旧約8巻)で負傷した白井黒子のほうだったのだから。

 

「戦争でロシアにたくさんの人が出撃しちゃったせいであちこちで人手不足のなか、書類が完璧な誘拐劇って考えると、内部の犯行を疑うのも無理はありませんわね」

「だから、少しでも信用できそうな人を総動員するつもりなんですよ。もちろん持ち場を離れられない人は違いますけど。そういうわけで『風紀委員(ジャッチメント)』にも応援要請が次々と。ただし、危ないことにはつきあわせられないから、護送や警備任務には直接はだめでーすって言ってますけど」

「相変わらずのね。ですが、悪い人を捕まえる事で解決するならわたくし容赦しませんの」

大人達が何を言おうと、捕り物に参加するつもり満々の黒子は初春に次の資料を要求する。

 

「あなたのことですから、もっと色々とこっそり調べているのでは?」  「あはは」

「それにしても……外部の女の子の護衛も兼ねている。何者なんでしょう? この子」  

「さぁ? 『警備員(アンチスキル)』でもちょっとした特別扱いを受けているみたいですし、ただ、この子罪状がついているっぽいんですよね。その辺面倒な事情があるようです。あっ、白井さん、今日の3時間後に捕虜の人の護送が始まるそうですよ。信頼できるだろう『警備員』が即席収容施設に連れてくる事になっていて襲撃に備えているとか」

それを聞いた黒子はその護送に参加しようと場所や責任者の名前を聞いて、そちらに駆けつけると連絡しておいてと慌ただしく出発していく。

 

「別に捕虜の人だから、大人の男性で学生じゃないから、『警備員(アンチスキル)』に任せていいのに」

苦笑しながらも正義感の強い白井黒子だからこそ、それでも護送に関わるだろうなと初春は彼女のサポートが出来るように目の前のモニターとキーボードに向き合った。

 

 

 

「子供達が行方不明じゃんか……」

黄泉川 愛穂(よみかわ あいほ)。第7学区の『とある高校』の教師であり、第73活動支部所属の『警備員(アンチスキル)』である。

 

「どうする? いくか?」

工示 雅影(こうじ まさかげ)。同じく73支部の警備員の1人であり、一応黄泉川より立場が上の眼鏡男性である。

 

「当然じゃん」  「そうか、いくなら急いだ方がいい。こっちも笑えないけど、人手不足と疑心暗鬼であちらさんは気が立っている。時間が立つごとに合流は難しくなるだろうな」

「あんたはいかないの?」  「誰がいくか。こっちだって本当は猫の手も借りたい状態なんだからな。幸い大きな事件はないが」

手を振って行っていいというジェスチャーをする男に感謝しながら、黄泉川は装備を調えて、向かうべきところへ。

すなわち例の『即席収容施設』だ。

 

「子供達を救出するじゃん。でも、その前に今狙われている子供を守るじゃん。そしてもしも襲撃があれば、反撃して、逆に尻尾をつかんでやるじゃんよ」

「それもいいが、襲撃が来なければ尻尾をつかむどころじゃないぞ」

「科学捜査は専門家に任せるじゃんよ。何ならうちの居候を使ってもいいじゃんよ」

居候……? と頭にはてなマークを浮かべている眼鏡男性を無視して黄泉川は支部を出て車のハンドルを握る。自分以外にも何人かに声をかけている。

もしも同行してくれるのならありがたいが、来てくれなくても自分だけで行くつもりだった。

予定時間になっても人影は無く、黄泉川は仕方なくエンジンをかけてアクセルを踏み込んで慌ててブレーキを踏んだ。

 

「よかった、間に合った」

男女の集団であった。男女5人ほどの警備員(アンチスキル)の集団が完全武装で黄泉川の前に現れたのだ。

 

「来てくれたじゃん……遅いじゃんよ」  「すいません。状況が状況ですので、完全武装に役に立ちそうな道具をかき集めてまして」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。