『とある線上の世界大戦』   作:ホエール

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第3章 7.

   7.

 決着はついた。暗部組織『ジャーム』の構成員である4人は全員が捕まった。

 

対戦車地雷で護送車を吹き飛ばした男の子。

『発症斜視』という能力を振り回す女。

『迷彩体質』という能力で潜入を試みた女。

そして、『生物兵器化した古細菌』を操る女。

 

「一件落着って扱っても?」  「ダメだな」

警備員達と風紀委員達が集まっている。犠牲が大きすぎると皆心のどこかで思っていた。

最後の大金星を上げた『風紀委員』の功績に報いる形で風紀委員達も会議に参加している。

風紀委員側が初春の功績をなんだと思っているんだと本気で怒ったのだ。もちろん安全を配慮して警備員達がこれほどの大事件から遠ざけようとしたのはわかっている。

だが、それはもう、今更だ。

 

「『暗部』は正直都市伝説だと思ってましたの。確かに怪しげな人たちはいます。でもそういう人たちだけで構築された裏の世界が学園都市に広がってるなんてさすがに……」

「奴らは実行犯だ。つまり指示役がどっかにいるって事だ。そいつをなんとかしなきゃ、連れて行かれた人たちは解放されない」

学園都市は統括理事会の箱庭だ。故に都合の悪いことは教えられていない人々がいて、それに気づいた人もいれば気づいていない人もいる。

多くの場合、『警備員』は前者で、『風紀委員』は後者だ。

 

 

 

そんな会議室の真下のコンテナハウスに1人の少女が横になっていた。

今回みじんも関われていない、むしろ狙われる側、命を狙われるヒロイン枠に収まっていた磐だ。

 

(……この結果で良いはず。うん。だってこれなら『ヒロイン枠』で私は――――)

――そして、自分の内心の何かが叫ぶ。それはエゴが過ぎると。

 

思い出すのは自分の原点。起源。小学生1年のこと。あの頃は何も知らずわからず、ただ幼馴染み達と実家の神社とその周辺でかくれんぼをしていた。

ふと見るのは家の倉。ただし、行政の職員が文化財指定するかもしれないと言い出した江戸時代の倉。

尤も両親も祖父母も渋い顔をしていた。先祖代々続くと書けば聞こえは良いが、数百年使われ続けた倉庫だ。

つまり、よくわからない民芸品だの工芸品だの壊れた道具だのなんだのが埃まみれでうずたかく積もれたガラクタの世界が中に広がっている。

この惨状を文化財だって? 冗談だろ? 石油ストーブの石油ポリタンクだの芝刈り機だの使わなくなった扇風機だのそんな物までいっぱい積み込まれた倉庫だぞ。

とまぁ、家族一同、行政職員の文化財発言に渋い顔をしたのだ。

危ないから入るなと言われていたその場所が、あいている。

 

(……あの日の事は、正しいのかそれとも何も知らないことの方が正しいのか)

その後に起きた出来事を彼女は祝福だと思っている。でも呪詛だとも思っている。

だって、あの後からだ。『死ぬこと』が心より怖くなった。どれだけ実家の古文書に描かれた経文を読んでも聖書を開いてみても、修行とやらに明け暮れても。

いや、生き物なら当たり前だろって思うかもしれないが、そうでは無い。

実感があるのだ。死ぬと言う事がどういうことなのか。そして、この世界は以前生きていた場所よりも『死』が溢れている。

むしろ『死』が救いとなるそんな出来事さえたくさん転がっている。

それも全世界規模で。以前生きていた場所は、少なくとも生まれ育つ場所、つまり故郷ガチャ次第でよほど運が悪いとかでも無い限りはそんなことには絶対ならなかった。

魔神、能力者、超絶者、学園都市、禁書目録。

 

「とある魔術の禁書目録の世界……」

口から自分が生きている世界の名前が漏れる。ああ、なんてことだ。

ファンの間で昔から言われていることを思い出す。冗談半分に『学園都市は治安が悪い』と。あくまでも原作ファンが冗談交じりに言っていた言葉だがそれが一人歩きして、学園都市は修羅の国のように語るアニメファンなんかがいた。

違うのだ。学園都市は設定的にもそして実情として『治安が良い』のだ。原作ファンが語る『治安が悪い』は山ほどの悲劇が溢れているだの学生同士の喧嘩がやたら多いと言う意味合いが強く大通りなど表に限れば、学園都市は間違いなく『世界の中で特別治安が良い』空間だ。

世界全体の治安がクソほど悪いのがこの世界の真実であり、比較的に学園都市は間違いなく世界有数の安全地帯なのだ!

あの学園都市が、世界有数の! 安全地帯で! 治安が良い場所なのだ!!

 

「はははっ……死にたくないなぁ……苦しみたくないなぁ……。どうせ死ぬなら、心から満足して苦しくない死に方がいいなぁ」

それがある種の『原点』。

あの日、両親は倉の中で謎の高熱と蕁麻疹のような何かで全身が覆い尽くされた自分の娘を見て仰天することになる。

だが、当の娘はただ悲嘆と絶望と死への恐怖に満ちていた。

自らの肉体と精神をむしばむ先祖が封印していた『魔導書の原典』に汚染されてもなお、むしろそのことが勝った。

思い出してはいけない魂の記憶を思い出した事の方が彼女にとっては恐ろしい事だった。

 

そして、こう思ったのだ。

 

『自衛の力』が必要だ。

 

『万が一に対応する』方策が必要だ。

 

『トラブルに関わらない』事が一番だ。

 

でもこの世界は間違いなく『巻き込んでくる』。

 

だから、そのとき、『上条当麻(しゅじんこう)』の『ゲストヒロイン』になれば自分は助かると。

 

そのときから、ある意味で彼女のゆがみが始まったのかもしれない。一番最初の願いは何だったのだろう。

 

「せめて、上里のヒロイン枠に滑り込めば、安全を確保出来る。魔神達は上条さんに任せよう。大丈夫原作通りに進めばオッティヌスも僧正達もなんとかしてくれるから、私は原作が原作通りに進むようにすれば良いんだ」

小さな音がした。その音の方向へと首を向けて――――

 

――――数分後、『警備員(アンチスキル)』はもぬけの部屋を見つけた。激しく争った形跡のある部屋を。

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