『とある線上の世界大戦』   作:ホエール

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第3章 8.

   8.

 カメラの望遠レンズが用意され、それとは別に対物狙撃銃がバックより取り出される。

 

「最高のネタを見つけることになるかもしれないわ」

ベニゾエ=ゼリーフィッシュ。後のハンドカフス作戦を引っかき回した『嫌普性』の『暗部』の1人。

元々は自称ジャーナリストのパパラッチ。彼女が思う最高のバエる瞬間の撮影のために遠慮無く被害者を狙撃したりするクソ女。

たまたまなのか、住民がいない学生寮の部屋のベランダでカメラと対物狙撃銃を広げている。

 

「『警備員』と『風紀委員』に暗部系の連中まで集まって何かしているかと思えば、暗部組織とのハチャメチャバトルなんて最高じゃ無い!! でもそれだけじゃつまらない!! もっと、ぐちゃぐちゃに煽らないと!」

対物狙撃銃のスコープの向こう側に女の子を樽のように2人ほど両肩で抱え込んでいる小学生くらいの男の子がいる。

 

「一番最初に捕まったように見えたけど、よくよく考えてみれば、捕まえられるのがあの場所に潜入する手っ取り早い手段よね。計画通りか、それとも土壇場でそういう風に機転を利かせたか。あの男の子やるじゃ無い。でも、欲張りすぎよね。仲間を1人だけとはいえ助けてしまった。おかげで足が遅いぞぉ~」

トレードマークの白いパーカーを脱がされ下着姿で意識の無い女の子と磐の2人を抱え込むが故に歩みの遅い小学生の足下に向けて1発ぶちかます。

 

大きな銃声が、警戒態勢の『警備員』と『風紀委員』を引き寄せる。唐突な足下の破壊が男の子の動きを止める。

 

「ははっ。慌ててる慌ててる。いいぞぉ。その顔。悪い事した悪ガキが大慌てって写真は受けるよね! 世間受けバッチリだよね! これでジャッチメントあたりと大バトルを繰り広げてくれたら学園都市外部でも高く評価されるエンタメ映像なんかがとれたりして。いいねいいねぇ!!」

そんな皮算用でシャッターを押し続ける。

 

 

 

「クソがっ!」

小学生男児は狙撃を警戒しながらもとりあえず仮設のアジトにしていた、雑居ビルの多目的トイレに駆け込む。掃除の看板で中に人が入ってこれないようになってる。

だが、所詮はそれだけ。長くは持たないし、1時間以上も看板が出てたら不審がられるだろう。下部組織が用意してくれた仮設アジトは所詮仮設でしか無い。

 

「あのタイミングで狙撃だけ。他には何も無い。このやり口はベニゾエか! あのくそったれカメラマンめ。今度こそ口封じしてやる」

ひとまず最重要目標であった磐の輸送を清掃員の姿をした下部組織に命令し、下着姿の白パーカーのいつもの服装、すなわち白いパーカーを彼女の顔面に投げつける。

それでやっと寝ぼすけが起きる。

 

「、、、…………、、、」  「起きろ、馬鹿。下部組織連中と一緒にターゲットを運べ。あの2人を助けに行く余裕は無いが、足止めする必要がある。ベニゾエまで現れた」

「…………」  「くそったれ、ターゲットは数人だったのに最優先目標1人だけ、証拠も一杯とられて、もう『ジャーム』は終わりだ。拉致と死体処理専門って評判は壊滅だ!」

白パーカー少女は自分が下着姿であることに一瞬だけ眉をひそめるが、自らおなかに手を当てて、力強く押す。小さなうめき声を上げながら口の中から小型のガスボンベ状の筒を取り出した。筒を叩くと簡単に割れる。中から台所用スポンジを切り刻んだ物をとりだし、それを胸元へ。後はトレードマークの白いパーカーを身につける。

 

「……ちょう、、、だい」  「ほらよ」

何かのジャムのようなそれが包装紙に包まれている。それを受け取った少女はそれを赤いジャムのような何かを台所用スポンジに塗りつける。

 

「アリ、、、ガト」

それだけで彼女の大事な大事な生物兵器達が喜んでいる――気がした。

 

「ふん。ベニゾエをぶっ殺してくる。ついでに警備員の足止めをやるが、その後は知らない。後始末はおまえがやれよ!」

「……わか、、、た。。。いつか、、、また……ね?」  「いつかな!」

『ジャーム』は終わりだ。が、暗部にしては珍しく最後の奉公を決意する程度には責任感があった2人は『ジャーム』として最後の仕事に出向く。

どんな結果が待ち受けて言おうが、もうジャームには戻らない。その認識で2人は出撃する。

 

 

 

「うひゃっー! 当たり前だけどこっちに来たぁ!」  「いったい何ですの!? 対物ライフルなんて代物を出してくる人なんて! ジャッチメントです。こっちに投降なさい!」

ベニゾエはカメラ片手に対物狙撃銃をぶちかまして悦に浸れる人間である。つまり、瞬間移動が使える白井黒子のような人間は想像以上の速度で彼女の身元にたどり着ける。

 

「さっさと移動すればよかったぁ! 写真写りがあまりにも良いから! くそぉ!」  「あなた何者ですの!?」

「ベニゾエ=ゼリーフィッシュ! こう見えてジャーナリストって言うか、プロのパパラッチをやらせてもらってるよ! 悲劇は良い! 最高にバエるよね!」

ダーツでベニゾエの服を地面に固定する形で無力化を図ろうとして

 

「テレポーターって痛みで頭が回んなくなると移動できないんだよねぇ!」

学生寮の一室。その壁の一つが一斉に爆発する。万が一の時に備えた爆弾。

 

「なっ!」  「ハハハッー!」

壁の瓦礫、粉塵、爆風。それらが支配する中、ベニゾエがカメラを鞄に入れ、対物狙撃銃を背負って排水管使って一気に下へと下りる。

そして、降りた先にいた、ただの通行人に対物狙撃銃を特に狙いを定めること無く発砲。弾丸は当たらず、だが、その衝撃波は通行人を吹き飛ばし、重傷を負わせる。

 

「優等生な『風紀委員(ジャッチメント)』なら、そっちを優先しなさーい。しかもテレポーターだしね、病院まで一直線だー!」

「あなた、何を! ふざけているんですの!?」  「まさか、ほらほらその人を急いで救助しないと死んじゃうよ。私を追いかけている暇はあるかなぁ?」

『白井さん行ってください! 今救急車を手配しました! 警備員の人も向かっています! 大丈夫、その人は撃たれたわけじゃ無い。対物ライフルで撃たれたら人なんて木っ端微塵です! だからまだ助かる!』

 

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