2.
女子中学生と思われた少女は、童顔低身長と言うだけでいわゆる花も恥じらうJK、つまり女子高生である。
中学生と間違われるのはイラッとくるお年頃だ。
本人はある事情から、自分を限りなく大人だと思っているが、女子中学生と間違われて苛立っているのは見事に子供の仕草である。
「ちゃーんとついてきた! 大丈夫かー!」
そんな少女は自分を追いかける祭服の一団に喜びを隠せない。
「私のメインの術式はちゃんとローマにも通じる……!!」
彼女は魔術師としては、隠れ潜む事を基本としていたせいか、戦いの経験値は彼女が三流と呼ぶような連中ばかりであったので
ローマ正教のちゃんとした奴ら、一流の複数人相手に何処までやれるか、不安があった。けれど、今その不安は消えた。
「右席だの魔神だの超絶者だのそう言う化け物どもはともかく、一般的な三流、二流、一流の魔術師や能力者相手でも十分やれる!!」
彼女の手には一枚の折紙。それも折り鶴にされている。
「乞ふ、権現様のお力借りしたひ、一即一切、一切即一、智恵の導き、愚鈍なる衆生の道しるべはこれに正しきやと迷ひたれど、さだめて権現様の導きが定めてうたてしありと信じただ、この道進み見る」
高慢なる詠唱。救いを願っておきながら、我が道を歩むと宣言する。自分は愚かだからと開き直って。
『 見つけた!』
後方より聞こえるのはローマの魔術を扱える神父やシスター達の声と足音。
崩れかけた建物と地面が崩落してあらわになった地下道は薄暗く、遠くから聞こえる学園都市の軍事行動の音が反響して不気味なうなり声が響き渡る空間となっていた。
『 学園都市どころか、異教の魔術師が出てきた。火事場泥棒め……』
少女の背中はすぐ側である。彼らは足を速める。霊装を準備し、一撃で愚かな異教の魔術師を排除するべく行動しようとして
少女の向かう先に地下道の出口らしき光が見えた。
「なんだよ、これ」
三宅は純粋に戸惑っていた。あれほど厄介な『能力開発』攻撃を繰り返していた祭服軍団が壊滅していた。
吐瀉物まみれ、虚ろな目で宙をぼんやりと見つめながら全員倒れ伏している。
しかし、その中の1人が狂ったように必死に立ち上がろうとして、一瞬の発光を繰り返すが、人間が光るという異常な風景は倒れ伏してすぐに終わる。
「だ、大丈夫か? 未知のBC兵器の類いか?」
駆動鎧の空気フィルターが正常に作動しているか、つい確認してしまう。
発光した祭服の人間は、脱力したように倒れ込み、吐瀉物をはき出す。いや、それだけでは無い。失禁や脱糞の類いと思われる下半身の汚れが目立つ。
『 お、の……れ』
「お、おい、本当に大丈夫なのか!?」
砕けたロザリオもどきを手の中に持ち、吐瀉物まみれの口をぬぐい、焦点の合わない目で見つめる先に、例の少女がいた。女子生徒がいた。
「み、三宅……どうする?」 「どうするって言ってもなぁ……」
見たままを報告するべきだろう。ありのままを言うべきだろう。だが、どんな風に言えばこの風景を伝えられるのだろう。納得されるだろうか。
『 い、異教の魔術師め、火事場泥棒が!! おまえのような輩は主敵、学園都市よりも度し難い!! ローマに集る山賊もどきが!』
「ごめんね。イタリア語はワカンナーイ。私が使えるのは日本語英語中国語。あっ、中国語のスラングとかは無理だからゴメンネーてへぺろー」
「……よくわからんが、多分その態度は相当煽ってるようにみえるぞ」