『とある線上の世界大戦』   作:ホエール

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第4章 4.

   4.

 白井黒子は、正義感の強い女の子だ。自分自身でも時折そう自覚することがある。

何しろ、風紀委員は警備員から要請が無い限り、学校外で活動することは無いからだ。あくまでも学校という閉鎖空間での治安維持が本筋なのが風紀委員だ。

なのに、白井黒子という女の子は身体が動いてしまう。風紀委員の腕章をつけて、困っている人や悪い人が暴れるのを見過ごせない。

 

(だから、よく始末書を書かされましたの。でも、今まで大人達に守られていたんですのね)

高位能力者である以前に女子中学生で、お嬢様であった自分に気づいた。いや、気づかざる終えなかった。わかっていたハズなのに、やっと心の底から理解した。

今日1日、たくさんの人が血だまりに沈むのを見た。遠慮無く人を殺そうとする人達を見た。風紀委員の中に存在するという皆殺し部隊の話も聞いた。

そして、今遠慮無くたくさんの人を殺そうとする人が目の前にいる。

 

「『警備員(アンチスキル)』や『風紀委員(ジャッチメント)』の皆さんは速く逃げてください。じゃないと巻き込んでしまう。無関係の治安維持機構の人達はやりたく無いんですよ。秩序が守れなくなるので。我々は秩序側の人間、つまり『正義』と称される側の人間なのでそれは少し困ったことになる。

安心してください、統括理事会をはじめとする学園都市上層部と世界のお偉方との間で結ばれた約束事を守らせるための活動しかしません。あなた方の邪魔はしたくない」

「ふざけているの!? あなたたちは秩序、正義なんて言葉を使って人を殺すことが正しいと本気で思っているの!?」

白井黒子の風紀委員での先輩にあたる固法美偉が憤慨した様子で研究者風の男相手に一歩も引かない。

 

「うーん。機密情報も絡むので、あまり詳細はいえないんですよ。ですが、ここの人間達は国際問題になる案件で警告を無視していた。だから、処分することが決まったと言うだけの話なんですよ。だから、皆様にはお帰りいただかないと、色々と支障を来す。そう言っているだけなのです」

「ふざけないで、それは人を殺して良い理由にはならない! 身を守るため、正当防衛だって、本当に本当に本当に仕方なくやるから『許される』のであって『認められる』じゃ無いのよ!! あなたたちは立派な犯罪者です!」

「そうですか。それならそれで良いんです。一応手加減しますが、女の子の肌に傷が残ったり死亡してしまうのは許してください」

直後、黒子は先輩をつかんで跳んだ。本能的な行動だった。ヤバイと感じたから身体が動いた。その一瞬の後、オジギソウとよばれる学園都市の殺戮兵器が固法美偉のいた場所の空気を切り裂いた。

空気を切り裂いたので、具体的な威力はわからない。だが、明らかに人に向けて良い物では無い事だけはわかるのだ。

 

「黒子! あなた! 下がってなさい!」  「いいえ、先輩。下がりませんですの」

コンクリの破片でぶっ飛ばされた黒子には痛々しい傷があちこちに目立つ。一応絆創膏などを張っているが、それだけだ。本当は今すぐにでも病院に入れて頭などを強く打っていないか調べるべきなのだ。

 

「この人達をこのままにしておいてはいけませんわ」

それが、黒子が引けない理由。そのすべて。

 

「この人達をこのままにしておけば、どんな悲劇がどれだけの数、繰り返されるか。そして、私はこの人達を止める機会があったのに引いてしまった。そんなことになれば私は、私自身を許せません。お姉様にどんな顔して慰めてもらえば良いのでしょう。だから、この人達をこのままにしておくなんて出来ません」

「弱った。この手の頑固な人間を撤退させるのは難しいなぁ~。勇気と無謀をはき違えてますよ、お嬢さん」

「あなたは、何もわかっていないんですのね」

 

 

 

第3次世界大戦、魔術サイドのローマ正教とロシア成教が手を結び、国々を動かして科学サイドの頂点、学園都市相手に始めた壮大なドンパチだ。

けれど、通常の軍事兵器を用いた戦いでは学園都市優位に常に戦況が進み、異能の力、つまりは魔術を用いても一握りの化け物クラスを除いて学園都市の無人兵器の質と数の暴力に押されている。

 

「私は勝手な単位として、一流、二流、三流を作ったんだよー」  「一体なにを!?」

三宅がいきなり語り出した磐に困惑しながらランドセル女子高生と対峙する。

 

「要するに、異能の力、一つの魔術、術式だけで、やる気満々、拳銃を持った警察官相手に戦えるかって基準で相手の戦力をはかるって感じー。

三流は勝てない。拳銃を持ったやる気満々の日本のおまわりさん相手に勝てるほど魔術を操れている訳じゃ無いー。

二流は勝てる。拳銃を持ったやる気満々の日本のおまわりさん相手1人にまぁ、なんとかがんばって勝てるー。

一流は完全武装の警官隊相手に戦えるー。やる気満々の日本のおまわりさんレベルを超えた人達相手に勝ち負けでは無く対等に戦えるレベルぅー」

「で? そのあなたの勝手に作った単位がなんだって?」

「要するにー私は自称とはいえ、一流の魔術師でーあんたの能力は拳銃より怖くない!!」

磐の懐から紙飛行機が次々と飛び立つ。行き先はランドセル女子高生。紙は以外と鋭く容易く指を切る。その要領で、突き刺さることを目的とした武器としての紙飛行機。

ランドセル女子高生はそれに対してただ、突っ立っているだけだ。そして、突如として発生した放電現象に紙飛行機は次々と打ち落とされたり燃えさかったりした。

 

「「なっ」」  「これはあまり使いたくなかったなのよね。能力の応用って奴なの。とっても疲れるの」

そう言いつつ、放電現象は徐々に肥大化していく。地上でありながら、雷と同じような大きな雷鳴が響き渡る。

次々とエネルギーが変換され、静止状態が運動状態へ。

 

「加速させる能力じゃ無い。どういうことだ……」

三宅が短機関銃の銃口を下げる。金属が使われているそれは通電性、つまり電気を流しやすいが故に電気エネルギーを引きつける。

一度は見破ったはずの能力の正体。けれどそれは間違いだったのか。

三宅がそんな状態なのに対して、磐の方はせわしなく次の手を打つ。すなわち新たな紙飛行機ミサイルを解き放つとともにそれらの紙飛行機には防御用の折り鶴がセットで

ついている。雷鳴が紙飛行機を迎撃し、それに対して紙吹雪の防御が次々と花開く。

そして、紙飛行機のミサイルや紙吹雪が晴れた後にあるのは紙吹雪のゴミがそこら中に散らばる中庭。

 

「後片付けもしないなんて行儀の悪いこね」

ランドセル女子高生以外にその場には誰もいない。無数の紙切れが視界を遮りどさくさに紛れて2人組は逃げ出している。

とはいえ、行き先はなんとなくわかる。

 

「あれだけ、地下だ、屋内だって叫んでいたんだもの。そっちでしょ」

自信満々に近くの建物の扉を開く。工場はまるでカギ括弧、つまり『』のような形で建物が並び今はその中心、中庭にいる。そして』の形をした方の建物へ。

が、その扉の反対側、つまり『の側の建物の壁、2階の配管に必死にしがみつく2人組。

 

「「はぁ~」」

2人して安堵のため息。磐はそうするべきだと思ったら、屋内特に地下で戦うことを主張したが、あれだけ大声で主張していれば敵にだって聞こえる事は嫌でも

わかっている。あのまま逃げたところで即座に追いつかれる可能性の方が高い。結局扉を使わず、配管を頼りに壁をよじ登り、建物2階の壁に張り付いている。

三宅が引き金を引いて、分厚い強化ガラスの窓を割って磐とともに中へ。

 

「で、どうするんだ?」  

「私の一番の十八番でアレを倒すー。どうせ私を追いかけてくるでしょー。本当は地下が良いけど、仕方ないから、適当な会議室を探してカーテンでもブラインドでも

何でも良いから暗くしてくれればなんとかする」

 

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