5.
研究者風の男の武器は学園都市の殺戮兵器、オジギソウ。それだけなら、原作読者は『メンバーの博士』を思い出すだろう。
だが、『メンバーの博士』とは明確に違った点が一点あった。浮かんでいるのだ。宙に。2本の足は地面につかず身体がふわふわと浮いている。
そんな男がオジギソウによる攻撃を繰り出す。なるべく殺さないように手加減しているせいもあってか、風紀委員の面々は今のところは無事だが、それだけでもある。
「よくわからないけど、何かしらのナノデバイスによる攻撃みたいね。特定の周波数に反応してそういう振る舞いをする合金か何かが飛び交っている」
透視能力を有するが故に、そういった物がわかりやすく見える固法美偉はだからこそ指示を出す。
「風よ。あの極悪兵器を吹き飛ばして!」
『はい』
無線機より、流れてきた『
それだけで、オジギソウによる攻撃の頻度は劇的に低下した。
「うーん、やはり『オジギソウ』は改良の余地がありますね。……困ったことに技術開発の重要人物がもう死んでいるとかで、知恵を拝借出来ないことですが」
「『テレポーター』相手にあの余裕、まだ何かあるわ! 白井さん! 注意して!」
「無意味ですよ」
白井黒子が『
だが、ダーツが服に突き刺さった次の瞬間にはバラバラの金属粉やマイクロプラスティックにされてしまう。
「……もしかして、その服……」
「さすが透視能力者。わかりますか。そうです、この服はオジギソウを始めそういった諸々を使用して作っています。この服自体が私の武器です。他にもありますが、これが私のメインウェポン。その程度のダーツで私を拘束し無力化出来るとは思わないようにした方が良いですよ」
取り出したのは1枚のハンカチ。だが、そのハンカチは手を使わずに勝手に暴れ回り、そして、研究者風の男の手の中から飛び出した。
まるでどう猛な小動物が人間に襲いかかるかのごとく、飛び出したハンカチは固法美偉の顔面めがけて走る。ハンカチの四方、端の部分が脚のように躍動し、跳びかかったハンカチをとっさに警棒でぶん殴る。
それだけでハンカチは2つに裂け、明らかに身体に悪そうな重金属の粉のような何かを周囲にまき散らしている。
「あなたを裸にひん剥けば状況は変わるのかしら?」 「ハハハッ面白いことを言いますね。痴女と勘違いされてはあなたの人生大変になりますよ」
「この私相手に空振りさせるなんて良い度胸なのよ」
ボロボロのランドセルを背負った白いブレザーの女子高生が、薄暗い会議室の入り口で少し怒った口調で現れる。
「若作りおばさんには運動がつらかったー? ひょっとして」 「ァアっ?」
磐の煽りにあからさまな青筋を立てるランドセル女子高生。
「JKにもなってランドセルを背負い続けるなんて、何? ロリコン御用達だったりするー? 小学生と見なすには老け顔すぎるかなー?」
「男か女かわかりづらいちんちくりんがよく吠えるの。もしかして、隠れショタコンがショタ趣味なのを誤魔化すためのオナホ商売? やべー需要特化の性癖すぎるのwww」
「「……殺す」」 「2人とも何をしているんだい」
そういう場面では無いのに思わず突っ込みを入れてしまう三宅。
紙飛行機のミサイルとガラス破片の段幕がすぐさま双方で展開された。紙飛行機のミサイルと行っても鋭利な紙のナイフ程度な物で傷をつける事は出来てもすぐさま致命傷になるような攻撃力があるわけでは無い。だが、少なくともガラス破片のようなそれを迎撃したり防御したりする力にはなる。
(さっさとこい、じれて入ってきなさい!!)
磐は内心そう叫んでいる。そう、彼女の本命は一種の儀式魔術だ。相手を自滅させる儀式魔術だ。相手に所定の場所まで歩いてもらう必要がある。
(自分は一流の魔術師だ! 一流じゃ無きゃ……
そして、所詮一流程度でしかない。一流を超えた化け物級じゃないと、原作に出てくる上澄み魔術師どもと対等に渡り合うことも出来ない。
「それじゃあ、私は、無様に死ぬしか無いじゃ無い。嫌だ、嫌だ、苦しんで死にたくない、死んでも魂でぐちゃぐちゃにされるなんてもっと嫌だ」
「一体どうした!」
「私は、死にたくない。まだ一杯やりたいことがある。最悪死ぬことは受け入れるとしても、苦しんで死にたくない、全部終わりにしたい。なのにこの世界はそれが無理だ!!
苦しんで死ぬのは、私じゃ無い。おまえが代わりに死ねッ!! 『vita432(都合の悪い死を拒絶する)』!!!」
魔法名。殺し名。状況がよくわからぬ一人の大人の男を差し置いて、一気に場は殺し合いと化した。