14.
「学園都市は……『科学サイド』は君たちの領分だっただろ」 『――――』
「やれやれ、まぁ、我々も出撃予定だったから良いけどね」
3人組だった。男が1人。女が2人の3人組だった。
「さぁて、平和を取り戻そう。境界線さえ元に戻れば世界は平和になる。『幻想殺し』の少年をぶち殺せば世界は元に戻る。が、その前にまずは眼前の石ころを蹴っ飛ばそう。愚かな科学者とそれに協力する魔術師どもを皆殺しにしよう」
半裸の黒人男性が1人。ただし、全身に刻まれた美しい模様の入れ墨も相まって美術品の彫刻を思い起こさせる。
女性用の競泳水着に見えるタイトな服を身につけ、顔に北斗七星の入れ墨が入った黒人女性が1人。
局部だけ見えづらくなっているバニースーツにも見える衣装の白人女が1人。
男女3人がビルの屋上から戦場を見る。『帝政薬学』という戦場を見る。
学園都市特有の風力発電の風車がすぐそばで回っている屋上から、3人組の男女が、崩れた建物と崩れかけた建物、そしてそこで耐えない銃声や爆音を聞きながら見る。
「聖書曰く、光りあれって最初に神様は言ったらしいな。なら、俺がそう言ってもいいかな?」
「良いと思いますよ。猊下」
半裸の男の言葉を肯定するのは北斗七星入れ墨の女。
「『光りあれ』ってな」
何者かが地下トンネルを歩いている。『帝政薬学』の『プロテアーゼ』の残骸が転がる地下トンネルを歩いている。
タブレット端末で何かを操作しながら目的地へと突き進む。
タブレット端末には学園都市の爆撃機と無人兵器がロシアでどういう活動を行っているかと言う情報が表示されている。
目的地にたどり着いた。『帝政薬学』の『第3実験室』を記載された部屋だ。
その部屋は、色々なカメラやセンサー、そしてモニターに囲まれた部屋だった。
その部屋の中心にこの科学的な部屋に不釣り合いな代物が鎮座している。
それは、石棺だった。それも妙な模様が、石の箱を覆い尽くす植物の蔓にも見える模様が石の箱の全体に刻まれている。まるで、箱が開くのを封じるように。
タブレット端末から小さなアラート音。対象を発見、『
攻撃準備命令を発令しますか? そんな小さなアラート音。
当然のように指先はYESのボタンを押すが反応しない。『統括理事長が指定した「攻撃禁止対象」に該当します』との表示。
タブレット端末を持つ男、そう、その男は若い眼鏡の男性研究者のイメージ図を書けと言われたらきっとこんな感じというある意味で特徴が無く特徴しか無い男だった。
『
その男は、タブレット端末を机の上に置いて、懐から小さな石細工のネックアクセサリーを取り出す。使い方は習っている。どのみち使い捨てだ。
石細工に呼気を吹きかけ後は指で何度か叩く。すると石細工のネックアクセサリーが勝手に歌い出した。歌と言っても現代的な例えばポップスだとかロックだとかでは無い。
研究者風の男が近づくたびに石棺が小さく震える。
「まもなくですよ。連れてきてください。だから、待ってますから」
『協定破りの処刑人』は、世界が二分されているが故に科学サイドのの人間と魔術サイドの人間がいる。
彼らは一応双方で最低限程度には顔見知りとなっている。
だから、物事を企む処刑人が科学と魔術で手を組むことが絶対に無いとは言い切れない。故に――――
「――世界をもう一度、平和にします。第3次世界大戦だの『幻想殺し』だの『神の右席』だのそんな面倒な物は全部吹き飛ばして、科学と魔術の境界線の乱れを取り戻します」
石棺が勝手に開かれた。中を覗いてはいけない。中を覗けば汚染される。魔導書の原典とはそういう物だ。
「大丈夫、大丈夫。もうじき禁断の知識とやらを広めたがるクソみたいなおまえの役目が来る。だから、もう少し待ってろ」
そういって中を見ないようにしながら、石棺を閉じる。石で出来たふたは重たく大きい。だが、繊維に練り込まれたナノデバイスは着ている服その物をちょっとした強化服にする。
その力で石のふたを持ち上げ、石棺を閉じる。
「エリス……。君のような悲劇がこれから世界中で広がるかも知れない。それは、ダメだよな」
男のその言葉とともに、タブレット端末が再び小さなアラーム音を鳴らす。
『ロシアの戦略核兵器を2発確保。指定された場所に輸送します』
第4章『Old Testament.21.5 第1法則は宇宙の根幹とする――If_abandoned,_even_a_fool_is_sad.』
終