『とある線上の世界大戦』   作:ホエール

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最終章:『Old Testament.21.5 無限級数が世界を祝福する――Sacrifices_in_the_Name_of_the_King.』


最終章 2.

   2.

「ふぅ……」

2度にわたる『小惑星想定戦略防衛レーザー攻撃』によってやっと赤いドレスに白衣を着込む女を撃破した『風紀委員(ジャッチメント)』『000支部・特別例外処理班』。

つまり『はかいこうせん』を2度にわたってぶちかましてやっと赤ん坊の泣き声は沈黙した。姿は見えないが、直撃を食らって生きてる奴なんて基本的にいない。

その数少ない基本を覆した例外、レベル5第4位はもう学園都市にいない。

 

「さて、他の連中が目覚める前に私たちは撤収しよう」  「わかりません。私はどうしろといいのかな?」

「知らないよ。逃げたいなら勝手に逃げたら? でも無人兵器や『警備員』の増援が大量に向かっている。機銃掃射で粉みじんにされたくなかったらこのテレポート娘が運ばれる方向まで歩くと良いよ」

家庭用お掃除ロボットのようなロボットに意識の無い白井黒子が乗せられ、移動始める。

風紀委員の皆殺し部隊は、だからこそ本来の風紀委員に存在を知られてはいけないのだ。

ある意味では、あるべき風紀委員の姿を体現している『白井黒子』という『風紀委員』の女の子はそういう黒い物と関わってはいけないし、関わるべきでも無いのだ。

 

「それにしても、赤子の声がすっかりやみました」  「そりゃ、発信源を潰したしね。あとで服についたナノデバイスを除去して貰うと良いよ」

「おや、服ですか」  

「繊維にナノデバイスを大量に仕込めば、服そのものが色々なデバイスになる。それを活用して全身の骨で骨伝導させてたのよ。クソみたいなテクノロジーだよね」

4人組の正義の殺し屋は種明かしをしながら、その場を離れゆく。

それを背後に見ながら、元司祭現捕虜兼実験体の老人は黒子の後をおって動き出す。拘束服が邪魔してその一歩一歩が小さい。向かうべき先は遠い。

 

「わかります。だから良いんです」

『神の子』が茨の冠をかぶらされ、自らを処刑する十字架を担いで運ぶあの苦難の道のり。

 

「あれより、軽いのだから、『神の子』の偉大さをより深く感じ取れるのです」

強い信仰心は基点となる。人が人として生きる基点となる。尤も信仰対象を間違えれば、基点もおかしくなる。

聖書の一言一句を信仰するか、それとも聖書に描かれる教訓を信仰するかで、人の生き方は変わる。

法律を守るとは、法律の単語一つ一つの意味を国語辞書で調べてそれを守る事か、法律を作った人々が守りたい物と思った物を守るか、どちらが正しいか。

 

「わかります。これは試練なのです」

司祭だった男は自らを奮い立たせ、一歩一歩と前に進む。それを先導するのは傷ついた白井黒子を運ぶロボット。

奇妙なその風景に、ドローンのカメラでそれを見る初春はただ一言。

 

「なんですか、これ」

それはそれとして、今逃走した4人組の解析を始める。ドローンは最初からは見ていない。何しろこのドローンは電子戦対策をされた特注品で、初春がこのドローンを投入したのは、2棟ある建物のうち片方が吹き飛んだ後だ。やっと黒子を見つけたら謎の4人組が離脱をはかる瞬間。

当然通常の情報網に4人組は出てこない。しかし、奥の手なんて一杯ある。

 

 

 

『警備員』の黄泉川 愛穂。彼女は状況の悪化と流れる血の量から目を背けたかった。

でも、決して目を背けない。これは学園都市の現実なのだ。子供達を食い物にする悪い大人達の世界の一端にやっと手を伸ばせるのだ。

ただ、だとしても『警備員』の被害が大きすぎる。死亡事故こそ起こってないが、『風紀委員』からも負傷者続出だ。

 

「どうすればいいじゃん。ミイラ取りがミイラなんて冗談じゃ無いじゃん」

『小惑星想定戦略防衛レーザー攻撃』のきらめく光り。あの光りは誰が何をしたのか。アレの元にどれだけの犠牲がいるのか。

 

「ふざけるな、どんな理由があろうが人の命を好き放題もてあそんで良い理由にもそれを許して良い理由にも見逃してもいい理由にならないじゃん」

故に、

 

「5分。5分で色々と立て直すじゃん。そして、今度こそ全員検挙してやるじゃん」

結論は最初から決まっていた。問題なのは何をどう立て直すかと言うその一転のみ。またも最初に話が戻ってしまった。

そこに差し出されるのは紙パックのリンゴジュース。

 

「頭が煮えたぎると何も思いつかなくなるぞ」

『警備員』の同僚だった。気遣ってくれた同僚に感謝の意を伝え、貰ったリンゴジュースを飲み始める。

リンゴの香りが強く、フレッシュな味わい。尤も学園都市おなじみのテクノロジーによってリンゴの風味を作り出した果汁ゼロ%飲料なのが少し残念。

それはそれとして、舌先で感じる甘みと酸味。頭がクリアになっていく。グチャグチャだった何かがさわやかな風の中、飛んでいく。

 

「……子供達に銃口を向けちゃいけないじゃん。大事なのはまずそこじゃん。子供達を食い物にしている大人達を捕まえるのは当然だけど、まず子供達を助けるのが先じゃん」

方針は決まった。

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