『とある線上の世界大戦』   作:ホエール

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最終章 3.

   3.

 『汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならん』。

アレイスターが法の書で語った、テレマの基本だ。魔術とは、呪文を唱えて火がついたり水が出るような物では無く、人間と世界の未知の可能性を探すのが目的だ。

ある意味では科学の自然の探求と本質は同じと言えるし、故にアレイスター・クロウリーは魔術を意思の科学と称した。

 

「と言う訳で、元々富士山は平安時代ですと、日本の象徴でも何でも無くて、単なる恐ろしい死の山、冥府魔道の山なんですよ。それが徐々に霊山として扱われ始めるのは地味に鎌倉時代の頃から少しずつって感じで、江戸時代に爆発的に富士山が親しまれるようになったわけ。

実家も元々は別の山、霊山の信仰をメインとしてたみたい。江戸時代の富士山信仰の流行に乗って、信者獲得のために富士山信仰を取り入れたら大ヒット、気がついたら、元の別の霊山信仰をすっかり忘れて、『富士山信仰』を意味する『富士講』の一派扱い。だから、要所要所で富士講とは別の顔が出てくるのが実家って言うか先祖の術式で、私はこれを黄金で簡略化出来ないかな~ってやったのがこの折り紙たち」

「折り紙で簡略化ですか。神道みたいなだなって見えましたけど」

「迂回だよ。元々修験道系の魔術をいきなり記号の意味さえ違う黄金要素を取り入れて使い物になるわけ無いでしょ。三角形の時点で黄金と日本仏教で意味違うのに」

エステルと魔術トークに話を咲かせる2人に話の内容についていけない少女と成人男性が1人。

 

「で、おまえはその富士山信仰の魔術師って事で良いのか」  「良いんじゃ無い? 結局そういう術式だし」

「なんか、適当だな……」  「こういうのは厳密にこだわったって仕方ないよ。最初からこだわるなじゃなくて知った上でこだわりを捨てるって言うのは一番発想が柔軟になる」

「……そういう物か」  「そういう物だよ。こだわりって言うのは良い物だよ。でもこだわることにこだわり始めたら先が無くなるよ」

「しかし、魂魄関連で修験道は頼れないって事で良いんでしょうか」  

「良いと思うよ。……山は異界、場合によっては冥府として見立てられるけど、そういうのは中国系だと道教関係そのまんまな部分あるし」

「そうですか……。父が……探し求めた物はなんだったんでしょうか」

エステルが漏らした台詞で思わず失敗したという認識に思い至ったらしい磐が上目遣いに助けて欲しいと言う視線を2人と1人の男女に送るがそれは無視される。

いまいち事情がよくわからない物に真っ正面から突っ込んで地雷原なんて嫌だからだ。

 

「で、結局学園都市は科学サイドって言う陣営のトップで、魔術サイドというのと超長い間にらみ合いをしている。日本の魔術サイドは学園都市にボコられて大きな組織的活動は超出来ないって事で良いんです?」

「良いと思うよそれで。そういう意味ではこの国はヘタレだよね~。まぁ、学園都市相手じゃ仕方ないとこあるけどさ。魔術師の過半数は三流しかいないのが実情だし」

そう言って、磐が自分が勝手に作ったとする単位を説明する。すなわち

 

三流……拳銃構えたやる気満々のおまわりさんに勝てない

二流……拳銃構えたやる気満々のおまわりさんに勝てる。

一流……完全武装の警官隊と戦える。

化け物……化け物。

 

「いや、化け物って何」  「化け物は化け物よ。学園都市ご自慢のレベル5を超える魔術を操る化け物どもよ。世界がヤバイ理由の一つよ」

「「いやいや……」」

絹旗と三宅が2人でレベル5を超えると言う部分に引っかかりを覚えるが、少しだけ考え直す。レベル5は別に最強という意味では無い。かの有名な第1位だってレベル0に負けたとかいう話が広がったほどだ。

 

「レベル5を超える化け物が本当にいるのなら、超ヤバイですね。そんなのがいっぱいいるんです?」

「うーん、せいぜい数百ってとこだよ。基本的に魔術サイドの過半数は三流、残りの半分を二流と一流が占めてて、そこからさらに圧倒的に少ないのが化け物だよ」

「いや、レベル5以上が数百いるってのが超普通にヤバイ話に超聞こえますけど」

「魔術サイドは科学サイドみたいに学園都市って頂点がいる訳じゃ無い。同じ魔術サイド同士でも勝手に争ってるから、その数百も簡単には前に出てこないし、化け物の中の化け物に至っては自分の世界に引き籠もってるから、基本は気にしなくて良いと思うよ」

自称未来知識がある娘は、ヤバイ連中のせいで世界がヤバイそうだが、基本的には気にしなくて良いとなにやら矛盾する発言をしている。

 

「今の時点では、化け物なんて神の右席くらいしか警戒する必要ないのよ。だから、きっと大丈夫。これから来る魔術師なんて、せいぜい一流程度だから!

そして一応、わかちゃんさまは一流なので!」

「……今の聞いて余計に不安になるな」

「なんでェ!?」  「だって一流は完全武装の警官隊と戦えるレベルなんだろ? ところで君、なんでそんなにボロボロなの?」

「……ハイ。そこの能力者にボコられましたって言えば満足か!!」

「「なんで逆ギレするんだよ」」

 

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