『とある線上の世界大戦』   作:ホエール

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最終章 4.

   4.

「そろそろいいかな」

声とともに、青空が引き裂かれた。そして生じるのは衝撃波。突如発生した完全なる真空空間に空気分子は当然、電子から重力場、重力子、ボソンだのニュートリノだのありとあらゆるそれらがいきなり存在しない空間に、水をたたき割ってもすぐ水で埋まるようにありとあらゆる物質や何かが殺到する事で発生した衝撃波が上下左右ありとあらゆる場所に降り注いだ。

 

「なっ、なんだぁ!?」

こっそりとその場を逃げるはずだった『帝政薬学』の研究者はその衝撃波に怯えるように地下通路で小さくまん丸になる。

 

「プロテアーゼは何をやっているんだ。Mk.1にMk.3の製造に予算をだいぶ取りまくってて、こっちは迷惑していたのに、何の役にも立ってないじゃないか! このざまで開発班の連中、追加の量産予算とMk.4の研究予算をさらに要求してたなんてふざけんなって奴だ」

「そうなのですか。それは大変ご愁傷様です」

突如聞こえてきた女の声。振り返れば、そこに北斗七星の入れ墨が顔に入っている事がわかる黒い肌の美女がそこにいた。

 

「我らが猊下のご尊影を見ること無く、あなた方には死んでいただくことになりそうです。その故郷は、常に蠍座にある」

「何をごちゃごちゃと訳のわからないことを!」

「実際に第八天に存在しているからっであって――」  「――そこをどけ!!」

1発、2発と拳銃の引き金が引かれ、だが、女は倒れない。そして

 

「な、んで……」  「彗星の故郷は常に蠍座にある」

自らの胸を見る研究者は、そこから流れ出る真っ赤な鮮血を見た。

 

「おまえは、自分の銃弾に死ぬ」

胸にあいた銃傷は2つ。そのまま、身体から力が抜ける。倒れる。意識はまだある。身体に力が入らないから動けない。

倒れる衝撃。身体が堅い大地にはじかれ、小さくバウンドする。そして、その勢いで血がさらに止まらなくなる。

最後に見たのは、顔に北斗七星の入れ墨の入った女がその場を立ち去る後ろ姿。そこで――意識は途絶えた。

 

 

 

声とともに青空が引き裂かれ、生じる衝撃波は戦場と化した『帝政薬学』の敷地全域を平等に襲う。

例えば、『暗部』の馬鹿。

例えば、『警備員』の部隊。

例えば、『風紀委員』の部隊。

例えば、『帝政薬学』の構成員達。

例えば、『帝政薬学』の実験体にされた可哀想な者達。

例えば、『帝政薬学』の無人兵器『プロテアーゼ』で構成された殺戮群体。

 

「「「きゃぁああああああ――!」」」

――女の子している悲鳴を上げるのは、磐、郭、エステルの3人組。

その女の子している悲鳴に自分に無い何かを感じてちょっとだけ心が痛い絹旗はすぐさま次の攻撃に備えて防御態勢をとる。

 

「むぐぐぅぐぅぅう」  「何だ? 言いたいことがあるのか?」

台車でボロボロぼこぼこ惨状の土地をあっちこっちつれて回っているせいか、顔色が青い2人組のダクトテープぐるぐる巻き少女の1人が何か言いたそうにしている。

その口のテープをはがしてみる。

 

「あいつが、あいつらが来るっ!! さっさと離れないと、あいつら同志討ち上等なのよ! 最低限の情報共有はしているけど、巻き込んだらごめんなさい! って条件でお互い活動することになってる!!」

ジャイロ効果を操る少女の叫び。

 

「あいつらってのは誰?」  「∴P.M.」

「はい?」  「だから、『魔術結社』よ! 正確には『魔術サイド協定破りの処刑人』、私たちと同じ協定破りの『最終解決策』を専従的につとめる殺し屋ども!」

「……そんな結社聞いたこと無いんですけど」  「基本的に日本は学園都市のお膝元よ。よほどの事が無い限り連中は出てこない。こっちが対応するからね」

「で、連中が来るから逃げようはわかった。そいつらの『術式』は?」  

「戦うつもり? あんたの適当な分類で表せば一流揃いよ。私たちだって詳しいことは何一つ知らないわ。それよりさっさとココを離れた方が良い」

「そいつらが逃がしてくれると思う? あんたらだって、私のこと、周囲ごと殺そうとしたじゃない」

ジャイロ効果を操る少女は答えない。実際問題、彼女もまだ任務の完遂をあきらめていないのだ。常にこの拘束を解き、やるべき事を成し遂げる方法を探している。

逃げようと言う提案もそれが半分ある。ここから急いで離脱しようとすればするほど隙は大きくなる。ならざる得ない。

 

「そいつらがヤバイって事はわかった。それ以上はいらない。知ったところで天狗の思惑になんてのるか」

「……てんぐぅ? はっ、何の意味?」  

「元々は流星を表す言葉だった。色々あって山の神にして魔王を示す用語になってそこから妖怪になった。あんたは人を堕落に導く、魔道の住民よ」

「この科学の時代、科学の世界、学園都市で何言い出しているの? きもっ、これだからオカルトは気持ち悪い」

「気持ち悪くても何でも良い。おまえは天狗だ。おまえの思惑に載れば絶対に破滅する。おまえはそうやって人の破滅を眺める奴だ」

ジャイロ効果を操る少女は手足を拘束されている。指まで動かせないように固めている。目隠しされ、少し前まで口までふさがれていた。

それでも、彼女の言葉は一見こちらを案じているようで

 

「あんたがテープ越しに唇や額で色々と触ろうとしていたのは気づいている。耳を澄ませているのも気づいている。指並みに色々と敏感に物の感触がわかる場所ばかりじゃ無い。唇、額、耳。いくら拘束されているから周りを把握の為にやってるにしては冷静過ぎる」

「だとして、今更あんたに何が出来る。あんたは陣を敷いて待ち構えるタイプだ。そのために折り紙で霊装をたくさん作っているんでしょ。けれどその霊装はどれもこれも使い捨て、所詮折り紙だから仕方ないけど、おかげであんたは弾切れに近づいている。それで何が出来る!」

「自分で答えを言ってるじゃ無い。所詮折り紙だって。ここに人員もいるわ!!」

「「「えっ」」」

巻き込まれた絹旗、エステル、郭に三宅が思わずぽかんとした表情で2人を見る。

 

「その通り、私は陣を張って戦うタイプ、要するに罠を張って戦う魔術師よ。不意の遭遇戦には弱いのが難点ね!! でも逆に言えば敵が来るってのがわかっていればここに陣を張れば良い!! ちゃんとした折り紙じゃ無いから色々精度が心配になるところはあるけど、結局紙切れよ、その辺のレポート用紙だのコピー用紙だのを使ってしまえばある程度の事は出来るわ!! ちょっと準備に手間がかかるけど人手があるから安心!!」

「「「えぇ……」」」

どうやら勝手に色々と手伝ってくれることにされているらしいと気づいた面々は(((えっ、何をすれば良いの。説明全然されてないんだけど)))と困惑しながらも仕方ないと納得しようと――――

 

「――――というわけで皆さん、頑張ってください!!」

「「「その前に、何をどうすれば良いか説明しろッ!!」」」

 

 

 

星々は人々の命運と世界を示している。天の理は人には理解がしがたいほどに遠く、けれど神の愛がそれを時に埋めてくれる。

故に、神は慈悲深く、厳粛で、試練を与え祝福する。

少なくとも聖書の世界観はそれから成り立っている。神がこの世界のすべてを作り出した。神はその気になれば人を一瞬で消し去ることが出来る。

自由意志を削除して、ただの人形にすることも出来る。けれど、神はそれでもなお自分に似せて自由意志を持つ人間を作って存在する事を許した。

罪を犯すことを許した。

神を信じないことを許した。

異教徒が存在する事も許した。けれど、許しただけだ。

 

「あなたね? 境界線を越えて学園都市であれこれ動き回っている魔術師は」

「ふん、動き回っているって物でも無いの。ここの『警備員(アンチスキル)』ってところに捕まっていてね。私日本人だから、国外ならともかくココで捕まると途端に親類縁者に話が行き渡るの。それは困るからお仕事をさせてもらっているだけよ」

「どうでもいい話」

北斗七星の入れ墨が顔に入ったその黒人女性は対峙するのは磐。

その周囲には、四色ボールペンと手で破って作った無数の折り紙っぽい元コピー用紙の紙吹雪。

なにやら、緑色の四色ペンで『緑』と書かれた紙や赤色のペンで『赤』と書かれたりしてて、かなり強引な見立てを行っている感じだ。

そして、見立てで折り紙にされた物がさらにその中で、○や△、そういった図形が無数に描かれている。

 

「水のシンボルですか? ▽は『黄金』では水を表す。その漢字、私には詳しくはわかりませんが逆だ。つまり△では無く、▽」

「土のシンボルかもよ~。だって、折れ線が▽の横一本走ってる」

「……折れ線ですか……」  「何しろ、折り紙だからね。こういう真似だって出来る。さぁ、ここは私の陣だ。おまえ如き木っ端魔術師が踏み込んでタダですむと思って?」

気にせず、北斗七星は前へと進んだ。そして、何も無いハズの露天に大粒の雹が降ってきた。一粒、二粒、三粒と次々と。それはまるで銃弾の様に吹き荒れて!!

 

「故郷は蠍座にある」

たった、その一言で、雹はすべて磐の方に飛んできた。

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