『とある線上の世界大戦』   作:ホエール

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最終章 5.

   5.

「こ、恐かった」

地下通路の上に陣取り、やばかったら、通路の天井にあたる大地を崩して地下へと逃げる作戦がはまった磐、最初の一言であった。

 

「何が、陣を張って戦うタイプですか、超出オチじゃないですか!!」  「いや、だってぇ!! 学園都市に殴り込みをかける奴って化け物の可能性があるじゃん!!」

「とにかくココを逃げて、目的地にたどり着ければ良いんですね!」  「そう、それだけで勝てる!!」

周囲にはちぎれた紙切れが所々に転がっている。

陣を張って戦うタイプ。ところで、陣って具体的に何? どういう形状をしているの? 逃走経路さえも陣であると思いつける人は一体何人いるか。

最初の関門で倒せるのなら良かった。無理だから、次に進む。まるでタワーディフェンスゲームのようだ。次々と魔術が作動し、北斗七星の行動を束縛するか撃破しようとするがそれをすべて真っ正面から破壊していく。

 

「第八天は実在するのであって」

「第八天ってなんだァ!?」

「知らん知らん、しらぁぁん!! それっぽい用語はたくさんあるからしらーん!!」

北斗七星の入れ墨黒人女は一歩一歩と踏み出し、それに対して雹が、寒波の暴風が、どこから発生したのか疑似硫化水素もどきのガスが噴射されていく。

それらはすべて空中で曲がっていき、北斗七星の女には決して届かない。

それを逃げながら横目で見る。弾道機動を描いていていたハズのそれらがスイングバイのように加速してねじ曲がっていく。

 

「あたかも罪を犯せる者が如く――」  「――沙門勝道、山水を歴りて玄珠をみがくひならびに序」

磐の魔術と、北斗七星の魔術が衝突する。すなわち、雹が宇宙で人工衛星や探査機を加速させて遠くに飛ばすために行われているスイングバイ、砲丸投げの様に惑星の重力を使って遠心力で加速するその手法で打ち出されていくのをたたき落としていく。

そして、行き着くのは、ちょっとした円形の空間。ウォーターサーバーやコーヒーメーカーが置かれ、軽い数分程度の休憩に使われていたであろうフロア。

そこは様々な紙切れで散らばっている。ココこそが本当の『陣』。……と言いたい。正直北斗七星女が恐くて自信が無い。

薄暗い照明が、青白く光っている。これだけど派手にドンパチしてここは電気設備がまだ生きているようだった。

 

「machinamenta 星々は大地と太陽とともにある」

「詠唱は終わり?」

「……このフロア入ったら終わりなことくらい目に見えている。立体曼荼羅だな、円形と言う事は胎蔵曼荼羅。仏の祝福とやらが私を汚染しにくるだろ」

曼荼羅、大乗仏教、特に密教と呼ばれる物で重要視されている仏教の教えを表した『絵』であり『絵柄』。ただし――――

 

「――曼荼羅が絵になったのは比較的最近。元々はバラモン教の砂絵が元ネタ、そこから仏教寺院の建築技法、内装に発展、そこから原点回帰で砂絵に戻って何時しかそれは絨毯に描かれるようになった。日本に伝わってきたのはその絨毯の曼荼羅。でも土地によっては曼荼羅を建築物で表現しようとした物は今も多い。この丸い部屋は、あなたが手を加えて曼荼羅になっている。違う?」

「胎蔵曼荼羅を知っているんだ……へぇー。まさか東洋魔術に知識があるとは」

「仏教はあの『黄金』連中が面白半分に流行った物だぞ。ましてや、東洋の島国で活動するに当たって最低限程度の知識はあった方が安定性が違う」

「ならもっと周囲を見るべきでしたね!!」

五形五色、円形は完全・円満を意味し、青色は悪しき者を破壊する調伏法を意味する。青白い光りの色。

薄暗い地下通路を歩く、真っ暗闇を歩くのは試練を意味する。

見えてくる光の場に降り立つ事は、再誕。

北斗七星の女が撃破する形で相手をしていた数々の折り紙で作った術式は試練。あるいは仏を象徴する『象徴武器(シンボリックウェポン)』。

 

「踏み出してこないのは残念だけど、それでも十分」

「故郷は蠍座にある」

その瞬間、磐にむかって無数の攻撃が飛んできて、北斗七星の女が真っ白に光った。攻撃はすべて消えて無くなり轟音とともに爆風が吹き荒れる!

後に残るのは今の爆風でさらに荒れ放題になった地下空間と北斗七星の女が消えた風景であった。

 

「ッチ、土壇場で逃げた」

磐が勝った。たったそれだけの事なのに、とても不気味に見えた。

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