7.
リボンが、宙に浮かぶリボンが落ちる。まるで大地に叩き付けられるように。
「わかりません。とても困るので」 「十字教の老人程度が『王』の前に出るか」
風紀委員の学生達は状況の変化についていけない。黒人男性が妙な異能を見せたと思えば、それを乱入してきた老人がどうにも対向したらしい。
老人は拘束服を着けていて、よくよく見ると痛々しい。
「『王』……金枝篇、フレイザーですか!! いやはやこうして実物を見るとは驚きだ! 高貴な生け贄! 『神聖王』! わかります! なるほど、『黄金』の色に染まっていないのも良い!!」
まさか、現物を見ることが出来たとは思わなかった老人が心から驚いた表情と声色を奏で、同時に周囲に漂う四色のリボンへと視線を改めて向ける。
「わかります。確か、中央アフリカの民族社会に……いえ、四色で世界を表現しようとするのはどの文化圏にもある出来事です。ただし、リボンを活用するというのは……皆目見当がつきませんな。ですが、ドゴンと言う民族社会では『王』の付き人が4色それぞれの色の服を着る事で世界を表現している。そして、四色で色分けされたカラフルなミニチュアを世界に対応させ、王は神と一体化します」
「それがわかって、何故『王』に立ち向かう」
「わかりませんか。『神』に使えるこの身はたかだか『神聖なる王権』に跪く道理を持たぬのです」
かつて、人々は王様を名乗る暴力の化身に頭を下げた。それが結局秩序になっていたからだ。平和を作ってくれたからだ。
けれど、暴力で一番になる人が一番で居続けるのは問題だ。暴力の連鎖が止まらない。暴力で一番をとろうとする奴が血を流す事を止められない。
だから、まず、人々は祈りを捧げた。
祈る人々の中に、王様さえ混じっていた。血を流し続ける日々に疲れた。疲れたと言うことさえ許されない世界に疲れ果てた。
祈りが届いたか、わからない。ただ、一番である王様は率先して祈った。祈って、祈って、祈って、最後はみんなのために祈る機械なった。
その日より、即位式とは、人間を卒業し、みんなのために祈る機械になることを意味するようになった。人間卒業式を即位と呼ぶようになった。
「わかります。『神聖なる王権』から、神聖さを取り払って、ただの王権にする歴史の過程を人は近代化と呼んだ!! 故に祈る王とは、古代の絶滅危惧種だ!」
「ならば、なおのことひれ伏せ、古代の王権に。人類の始点に」
その絶滅危惧種から放たれた魔術は、風紀委員も老人もまとめて制圧した。
「最悪」
『
それ故に『王様』とやらに『
「最悪、最悪。さいあくっ!!」 「うわぁ……超関わりたくないです」
「た、助けに行かないと!!」 「これ、今すぐ逃げた方が良い系じゃあ……」
今や姦しい4人娘になった面々を見ながら三宅は自分の『
すぐさまいくつかのアプリを起動し、意識を失った『
「また、0930事件の強制仮死状態か?」 「そんなのわからないよ。敵意に反応する術式なら、とっくに私たちも仮死状態になってるはずだから」
「「「?」」」
また訳のわからないことを言い出したと思う、三宅、郭、絹旗に対して、真剣な表情で確かにと答えるエステル。魔術組2人は話しについていけない3人を置いてけぼりで会話を続ける。
「フレイザーの『金枝篇』ですと、王様という存在は人から外れた存在として定義されてますよね」
「と言うか、偉大すぎるトンデモ大魔術霊装だよね。王様って。『万物の黎明』に言う『遊戯王(プレイ・キングス)』って言う別に学説もあるにはあるけど、基本的には王様は世界と運命と接続する人間を加工した演算交信装置。演算器だから、こちらが数値を入力すれば、シミュレーション結果が出てくるし、交信装置だから問えば世界や運命が何か答えてくれるカモ知れない。王様は本質的にそういう存在で、だから、時に王殺しも合法とされる」
「王様が風邪を引けば世界全体が風邪を引くことに理論上はなってしまいますから、フレイザーは王殺しには8年の周期があったって言うくらいです。即位から数えて8年後に殺されるのが決まっているって考えると『王権』とは世界に対する高貴な生け贄って言うのもまぁ、言い方としては理解出来ます」
「まっ、その辺の奴隷を生け贄にするより、育ちの良いイケメン、美少女の方がありがたみがますよね」
エステル=ローゼンタール。とある理由から学園都市にやってきた魔術師でちょっと前まで、DAと言う『警備員』系の暗部組織に所属していた暗部の魔術師。
富上磐。とある犯罪行為によりフランス、アビニョンで学園都市の『警備員』に捕まった魔術師で、今回の大騒動の原因の一つになった修験道系の魔術師だ。
科学サイドの頂点である学園都市のど真ん中で2人の魔術トークは科学の輩として生きる学生と言う名の能力者、教師という名の研究者達を呆れさせている事に気づくこと無く話を続けていたが、なんだかんだで空気を読む女子社会に生きる2人は自分たちに向けられた視線に気づくと一瞬で口が閉じられる。
「助けに行きたいんだが、大丈夫か?」
三宅の言葉に一瞬の迷いを見せるが、魔術組2人は首を縦に振る。
「おそらくですが、何も知らずに立ち向かえば、それこそたくさんの戦闘機や戦車で攻撃しない限り無駄でしょう。わかっていて、送り出す訳にはいきません」
「つまり、タダの武装した人間程度では無理だよ。下手すれば魔神とも戦えるじゃん。勝てるかどうかは別だけど。せめて知識が無いとね」
そう言って、磐は携帯電話を取りだした。