6.
「さすが、ローマ正教。『C文書』だけ都合良く運ぶわけ無いよな」 「はやく、バレるよ!」
「わかってるって」
少年少女の魔術師だった。ローマ正教がフランスの町で稼働させた大霊装『C文書』だが、それらを守る戦力が配置されるようにローマ正教がこれまで押収したり、或いは作り出した強力な霊装の数々が戦力の一つとしてバチカンより運び出されている。
イカれた個人主義者やぶっ壊れた愛国主義者達、つまり――『魔術師』たちに取ってはお宝獲得のチャンスである。
学園都市が制圧した建物。
学園都市は少ない兵力を補うべく多数の無人兵器を投入しているが、逆に言えば無人兵器のセンサーさえごまかす何らかの技術を持っていれば、学園都市が制圧した建物に放置されたそれらの霊装を手に入れる貴重なチャンス到来である。
上条当麻という1人の『主人公(しょうねん)』がいる。彼は右手に『幻想殺し』という能力を宿し、その右拳で科学サイドと魔術サイドの狭間で助けを求める人に手を伸ばした。
それが巡り巡って、学園都市とローマ正教の本格的な対立と武力衝突を引き起こし、今に至っている。元々対立自体はそこにあった。火種はいくらでもあった。
上条当麻という少年に悉く、自分たちの陰謀や活動を邪魔されたローマ正教――正確にはそれを操っていた『神の右席』――が火種に怒ってガソリンをぶち込んだ。
でも、そんな事、ローマ正教以外の魔術師からしたらありがた迷惑でしか無い。
科学サイドは学園都市という頂点が采配しているが、魔術サイドには大勢力のパワーバランスしか存在しない。
その中でも抜きん出て強いローマ正教がロシア成教と手を組んで科学サイドの頂点と勝手に戦争を始めた。魔術師達にとって、この戦いはそれが全てだ。
おまけに魔術師狩りばっかやってる魔術サイドの大勢力、イギリス清教が学園都市の同盟者面していると言う面倒くささ。
「こういう役得くらい無いとやってらんねえよな!」
2人組の魔術師、いや、もはや単なる泥棒2人組はローマ正教の霊装の数々を持ち込んだボストンバッグに詰め込んだ。
本当はちゃんと封印処置だの何だのとそう言う手間暇が必要だが、今はそんな時間無い。どうせ十数分間だけだと開き直っている。
元々は美術品専門の強盗団の一員を出発点とするその2人組の魔術師からしたらセンサーをごまかすのもこうやって持ち出すのも手慣れた物だ。
もっとも
『――ふむ。なるほど、そうやって扱っても良いのか』 『 いや、この2人が特別手慣れているだけでは?』
『――かもしれないな。であれば、この2人組は「被験体」ではなく、まずは「知識協力者」として扱うべきか』
『 それが良い。「魔術」なる知識体系の解明には多くの「知識協力者」と「被験体」が必要だ』
まもなく2人の少年少女に訪れる破滅の原因は間違いなく、学園都市の技術レベルを過小評価した事だろうが。