櫛田に転生したから綾小路の手駒になる   作:星宮ひまり

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 綾小路視点です。
 そして堀北と話し出すと長くなる法則により、過去一長いです。

茶柱「そろそろ脅すか……♠」


9.もすと・いんぷれっしぶ・くらすめいと

 

 

 校内放送で呼び出されたオレは()()ぐに職員室に向かったが、茶柱先生はタイミング悪く席を外しているようだった。

 仕方ないので職員室で茶柱先生を待っていると、(ほし)()(みや)先生というBクラスの担任が絡んでくる。その軽いノリと妙に近い距離感にドギマギ……はせず、やりづらさを感じていた。

 

「聞いたわよ~? 水泳の授業で凄い記録を出したんだってねぇ。綾小路くん、結構格好良いし、モテるんじゃない~?」

「いえ……別に」

「またまた~。あっ、もしかしてもう彼女できた? できたんじゃない? クラスの子は絶対放っておかないでしょ~」

「特にそういうことは……」

 

 櫛田のおかげで女子と話す機会はそこそこあるが、彼女たちはあくまで女友達であり、オレに好意を向けるようなことはない。一番仲が良い櫛田も、特にオレに対して恋慕の情を持っているようには見えないし、やはりオレはモテているとは言えないだろう。

 水泳の授業の翌日に下駄箱にラブレターが入っていたりするようなことはなかったしな。

 

「ふぅん? 意外ね。ウブってわけでもないでしょ? つんつん――いったぁ!?」

 

 スパーンッ! と響きの良い音が星之宮先生の頭から発生する。背後に現われた茶柱先生がクリップボードで頭を(はた)いたのだ。

 

「何するのっ!」

「うちの生徒に妙な絡み方をしているからだ。――待たせたな綾小路。ここじゃ何だ、生活指導室で話そう」

「はい。……指導室って、オレ何かしました?」

「話せばわかる。付いてこい。――いやおまえは付いて来るな」

 

 茶柱先生の後ろに続いて職員室を出ると、なぜか星之宮先生までオレの隣に並んで歩き出した。それに気付いて怒気をぶつける茶柱先生に、星之宮先生は拗ねたように唇をすぼめる。

 

「サエちゃん冷たーい。私も一緒にアドバイスしてあげるのに~」

「これはDクラスの問題だ。おまえは戻れ」

「えー? サエちゃんって個別指導とか絶対しないタイプなのに、指導室で話すだなんて……綾小路くんが特別なのかな~? それとも今年が特別? 下克上でも狙ってたりして」

「馬鹿を言うな。そんなことは無理だし、私は誰かを特別扱いなどしない」

「ふぅん? ……ま、いっか。綾小路くん、またね~」

 

 ヒラヒラと手を振りながら職員室に戻る星之宮先生に、茶柱先生は嘆息する。

 

 その疲れた姿を見てなんと声をかけようか悩んだが、思いついたのは「サエちゃんって呼ばれてるんですね。仲が良いんですか?」というものだった。

 心の中の大天使(くしだ)が「わかりやすい地雷を踏むには、まだ茶柱先生とのコミュニケーションが不足しているよ!」とアドバイスをくれたので、実際に口にするのはやめておいたが。

 

 そうこうしているうちに指導室に到着する。

 

「で、何の話ですか? オレ、できればクラスの話し合いに参加したいんですけど」

 

 後で櫛田が内容を教えてくれるとはいっても、話し合い自体に参加しなかった生徒が白い目で見られる可能性はある。

 すでに友人は複数いるとはいえ、「ノリの悪いやつ」だの「クラスに非協力的なやつ」だの思われてしまうと、グループから切られてしまうかもしれない。それはまずい。

 

「そうか。おまえがクラスに協力的なのは良いことだ。……少し意外だったが」

「はい?」

「いや、なんでもない。それよりもこっちに来い」

 

 茶柱先生はそう言うと、指導室の中にあるドアを開いた。その先は給湯室のようで、コンロが設置されている。

 

「ここ入って、しばらく黙っていてくれ」

「え?」

「いいか、私が出て来て良いと言うまで絶対に出てくるんじゃないぞ。静かに、物音を立てるな。私の言うことを守らなければ退学にする」

「は? なんで――」

 

 こちらの質問は受け付けず、一方的に言われてドアが閉められた。

 無茶苦茶だ。いったい何を企んでいるのやら。

 

 いちおう物音を立てるなと言われたので、携帯端末をマナーモードに設定する。チャットの通知が来て、茶柱先生に怒られたくないしな。

 

 しばらくすると、指導室のドアをノックする音が聞こえた。

 次いで茶柱先生が入室を促すと、誰かが指導室に入ってくる。

 

「失礼します」

「来たな、堀北。まあ座れ」

 

 入ってきたのは堀北だったようだ。……これ、オレが聞いていて良いのか?

 いやまあ、茶柱先生は聞かせる気でオレを給湯室に(ひそ)ませたのだろうが、堀北にバレた時が怖い。その時は茶柱先生を身代わりにできないだろうか……無理だろうな。

 新生活の準備で研いだというコンパスの餌食にはなりたくないので、オレは努めて息を(ひそ)める。

 

「で、話とは何だ?」

「率直にお聞きします。なぜ私がDクラスに配属されたのでしょうか」

「ふむ……この学校がどのようにクラス分けを行うかは、朝のホームルームで説明したはずだが」

 

 Aクラスから順に優秀な生徒を振り分ける、だったか。その説明に、どうやら堀北は納得がいかないらしい。

 

「……私は入学試験の問題はほとんど解けたと自負していますし、面接でも大きなミスをした覚えはありません。少なくともDクラスに配属されるとは思えないのですが」

「そうだな……堀北、おまえには特別に教えてやるが、確かにその見立て通り、おまえの筆記試験の結果は同率三位で上位とも僅差だし、面接でも高評価だった」

 

 誰も特別扱いしないんじゃなかったのか? と思わず声に出して突っ込みそうになったが(こら)える。

 

 それにしても、堀北は自分がDクラスであることが不服らしい。入試の結果を聞く限り確かに堀北は優秀なのだろう。ここ一ヶ月で読み取った堀北の性格からして、「どうして私がDクラスに」と思うのも無理はないのか。

 

「……ありがとうございます。では、なぜ?」

「そもそもの話だが、堀北。おまえはどうしてDクラスであることが不服なんだ?」

「正当に評価されていないことを喜ぶ者などいません。ましてこの学校ではクラスのランクが将来に大きな影響を及ぼすのですから、なおさらでしょう」

「正当に評価されていない、か。ふっ……おまえはずいぶんと自己評価が高いようだな、堀北」

 

 嘲笑というほどでもないが、茶柱先生のこぼした笑い声には一定の感情が乗っていた。

 ドアを(へだ)てているので実際には見えないが、堀北の顔は(こわ)()っているに違いない。

 

 ここでオレが笑い声でも上げたら……という少し危ない妄想をすぐに打ち消す。きっと堀北からは卒業まで殺意の()もった目を向けられ続けることだろう。いや、その前に「物音を立てるな」という命令を守らなかったことで茶柱先生に退学にさせられるか。

 

 ……そもそも、なんでオレは教師に脅されているんだ……?

 

「おまえの学力が優れていることは認めよう。だがそれはステータスの一つに過ぎない。――この学校は、本当の意味で優秀な人間を生み出すためにある。優秀とは何か、よく考えるんだな」

「……、」

「おまえはDクラスになるべくしてなった。ああ、学校に掛け合っても無駄だぞ。私と同じ答えが返ってくるだけだ。採点及び評価に間違いはない、とな」

 

 黙っている堀北が諦めたのかどうかはわからない。いや、ドア越しに伝わってくるヒリついた空気からして、諦めていない可能性が高いか。堀北の性格的にも、すぐに折れることはなさそうだ。

 

「それに、そう悲観することでもないだろう。朝にも言ったが、クラスポイントによってクラスのランクは決まる。卒業までの三年間でいくらでも逆転できる可能性はあるぞ」

「簡単な道のりとは思えません。茶柱先生の説明に間違いがないのなら、Dクラスの生徒はAクラスの生徒に比べて非常に劣っていることになります。それでどうやってAクラスの評価を上回れと?」

「無謀だな。だが、おまえは自分を優秀だと思っているのだろう? なら、未熟なクラスメイトを導いてみたらいい。そしてAクラスの評価を得て、最初の学校の評価が間違いだったと示してみるのはどうだ?」

 

 普通の学校なら生徒を導くのは教師の役目なのだが……まあ、この学校は色々と特殊なのだろう。

 

「……、今日のところはこれで失礼します。ですが、私はまだ疑っています。学校の評価――いえ、クラス分けの仕方が正しかったのかどうか。正しく振り分けられたとは思えない生徒が、私も含め、Dクラスにはいますから」

「ふむ……ああ、待て、堀北。もう一人、指導室に呼んでいるやつがいるんだが、おまえにも関係のある人物だ。そいつの話は、おまえのためにもなるだろう。聞いていけ」

「え――?」

 

 まさかこの流れでオレを呼ぶのか?

 いや、いやいやいや、ここでオレが出たら堀北の話を聞いていたことがバレてしまうではないか。勘弁してくださいコンパスの餌食は嫌なんです――。

 

「出てこい、綾小路。早く来ないと退学にするぞ」

 

 願いもむなしく、茶柱先生は退学を盾に脅してきやがった。なんてやつだ。聖職者とは思えない行動である。

 

「物音を立てるな、とのお達しだったので、お茶はできていませんよ、茶柱先生」

 

 オレはわざとらしくやれやれ感を出しながら指導室に戻る。

 

「私は茶を汲んで貰うためにおまえをそこに入れていたわけではない」

「そうなんすか。いやあ、茶柱が立ったお茶でも出せたら場を(なご)ませられると思っていたんですけどね」

「そうか。おまえがそれをやっても、場が凍り付くだけだと私は思うがな」

 

 どうやらオレにユーモアのセンスはないらしい。

 あるいは安易に茶柱先生の名字を弄ったのがいけなかったのだろうか。

 

「どうして綾小路くんが……先生、なぜこのようなことを?」

 

 堀北は給湯室から出て来たオレと茶柱先生のやりとりを困惑の目で眺めていたが、すぐに仕組まれていたことに気付いたのだろう。茶柱先生にきつい視線を向ける。

 

「言っただろう? そいつの話は、堀北、おまえのためにもなると。最後まで聞いていけ。Aクラスに上がるためのヒントになるかもしれないぞ?」

「……、手短にお願いします」

 

 堀北の顔には「そうは到底思えないけれど」と書いてあったが、茶柱先生にそこまで言われたら多少は興味が湧くのか、椅子から上げかけた腰を下ろした。

 

 聞く態勢ができた堀北の様子に茶柱先生は満足げに一つ頷き、それから堀北の隣の椅子に座ったオレに目を向ける。

 

「おまえは面白い生徒だな、綾小路」

「さっきのギャグには誰も笑ってくれませんでしたけどね」

「人の名を弄るようなものはギャグとは言わん。関係にヒビを入れる可能性もある。これからはやめておけ」

 

 呆れたように注意する茶柱先生。これが今日一番この人の教師らしい言動だった気がする。

 

「今後の指導のために生徒たちの入試結果を確認していたんだが……おまえのテストの結果を見て、面白いことに気がついた」

 

 言って、茶柱先生はクリップボードに挟んだ紙を見せてくる。記憶に新しい、オレの入試の解答用紙だ。

 

「国、数、英、理、社、全て綺麗に50点。おまけに今回の小テストも50点。これがどういうことか、わかるな?」

「凄い偶然ですね」

「偶然、か……ふっ。正解率三パーセントの問題を途中式も含めて完璧に答えておきながら、正解率が八割近い簡単な問題をミスしている。偶然か? 本当に? 私には意図的に見えてならないが」

「偶然ですよ、偶然。そもそも点数を調整できるような頭脳があるなら、満点取ってますよ」

「実に憎たらしい生徒だな、おまえは」

 

 どれだけオレが偶然の産物だと主張しようと、茶柱先生は確信を持って言っているようで態度を変えない。

 

「どうだ、堀北?」

「…………、これは……どうしてこのようなことをしたのか、理解に苦しみます」

 

 オレの解答用紙を凝視していた堀北も、茶柱先生と同じでオレが意図的に点数を揃えたと思っているようだ。

 

「偶然だぞ。実は隠れた天才、とかそういうのはない」

「どうだかなぁ。ひょっとすると堀北、おまえよりも頭が良いかもしれないぞ?」

 

 堀北の肩がピクリと跳ねた。目に見えて苛立っている。

 じろり、とこちらに向けられた堀北の視線はコンパス並みに鋭かった。怖い。

 余計なこと言わないで貰えますかね、と茶柱先生に目配せすると、悪魔のような聖職者はにやりと(わら)った。

 

「まあおまえは堀北と違って、その優れた頭脳を評価されていなくても気にしていないようだがな。そもそも学校の評価に興味はないのか、あるいはAクラスの特権を必要としていない特殊な理由でもあるのかもしれないが」

「なんですか、特殊な理由って」

「詳しく聞きたいか?」

 

 鋭くこちらを見据える茶柱先生の眼光から真偽を見極めるのは難しい。

 触らぬ神に(たた)りなし。

 オレは静かに首を横に振った。

 

「やめておきます」

「そうか。まあいい。――話はこれだけだ。そろそろ職員会議の始まる時間だ、ここは閉める。二人とも出ろ」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 指導室から閉め出されたオレは、教室に戻ってしれっと話し合いに加わるか、途中参加を諦めて寮に帰るかで悩んだ。

 だが、その(もっ)(こう)は失敗だった。この時オレは、どちらでもいいから迷わず走り出すべきだった。

 なぜなら、隙を逃さず突いてくる魔王・堀北がいるからである。

 

「さっきの点数、どうしてあんなことをしたの?」

 

 終わった話を蒸し返してくる堀北に、オレはげんなりした調子を見せつつ答える。

 

「言っただろ、偶然だって」

「あの解答用紙を見ても偶然だと思うのは、よほど察しの悪い馬鹿か、人の言葉を根拠もなく信じる盲目的な人間くらいよ。水泳の授業での記録もあるし、あなたもよくわからない人ね」

 

 テストの点数のほうはともかく、水泳の記録を偶然で誤魔化すのは難しい。とはいえこれも『まあまあ優秀』程度で収められることだろう。高円寺よりは遅かったわけだし。

 

「点数は偶然だし、水泳だって昔ちょっと習ってただけだ」

「五十メートルを二十四秒切りって、昔ちょっと習っていた程度で出せるタイムではないわよ」

 

 おかしいな。これで櫛田は納得してくれたのに。

 

「本当に、わけのわからない人だわ。……綾小路くんみたいな例もあるし、学力だけが基準ではないとしても、本当に能力順でクラス分けされているのか疑問が深まるばかりね」

 

 堀北の中でオレは完全に『本来の実力を隠す狂人』として扱われてしまっているようだ。

 

 いつまでも指導室の前にいるのは迷惑になると考え、オレは寮に向かって歩き出す。

 目的地が教室じゃないのは、話し合いに途中から参加する勇気がなかったからである。話し合いで盛り上がっている教室とか滅茶苦茶入りにくいだろうし。

 堀北はまだ話を続ける気なのか、それともただ進行方向が同じだけなのか、オレの隣に並んできた。

 

 それにしても、だ。

 先ほどの堀北の言葉を思い出す。『本当に能力順でクラス分けされているのか疑問が深まるばかりね』――つまり堀北は、自分がDクラスに配属されたことが間違いであることだけではなく、そもそもの採点方法やクラス分けの仕方をも疑っているようだ。

 

「堀北は、学校の評価基準が間違っていると思うのか?」

「そうね……評価の詳細がわからないのもあるけれど、それ以上に朝のホームルームで茶柱先生が言っていた『Aクラスから順に優秀な生徒を振り分ける』という説明が正しいのかどうかを疑っているわ」

 

 堀北は『何をもって優秀とするか(評価基準)』よりも『本当にその評価を参考にして生徒を振り分けたのか』に注目したというわけか。

 

「最初は私だけ採点ミスがあったのではないか、と思ったけれど、よく考えたらおかしなところは他にもあったから」

「と、いうと?」

「あなたも思わない? 茶柱先生の説明が本当なら、櫛田さんや平田くんがDクラスなのはおかしいって」

 

 ――てっきり堀北は自分のことにしか興味がないのかと思っていたが、意外と周囲を見ているんだな。

 という感想はひとまず置いておくとして。

 

 確かにそれはオレも思ったことだ。

 茶柱先生はDクラスを不良品の集まりとまで言ったが、櫛田や平田には目に見えた欠点がない。小テストの点数は二人とも上位だったし、運動も平均以上にできる。コミュニケーション能力は言うに及ばず、リーダーシップだってあるのだ。二人を明確に「劣っている」と言える人間はそういないだろう。

 

 だが同時に、オレは茶柱先生が嘘を吐いているとも思えなかった。

 別に茶柱先生の人柄を信用しているわけではない。ホームルームでの説明のような学校側の人間として発言する時の言葉に嘘が混じっているとは考えづらかったからだ。

 

 とはいえ、あの説明が全てだったとも思えない。

 四月のSシステムの説明で重要な部分が抜けていたように、学校側が意図的に隠している部分があるのだろう。

 

 それに、オレは他クラスのことに詳しくない。もしかしたら上位クラスは櫛田や平田レベルでも(かな)わないほど優秀な生徒で溢れている可能性が……まあ一パーセントくらいはある。

 

「学校側が隠している評価基準があるのかもな。もしくは櫛田や平田にも、オレたちには見えていない欠点があるとか」

 

 その場合、見えている部分を打ち消すだけの欠点がいったいどれだけのものなのか。恐ろしく感じてしまう。

 

「どうかしら。茶柱先生の説明が偽りだと考えるほうが自然だと思うけれど」

「学校側が嘘を吐いてるって言いたいのか?」

「進学・就職率ほぼ百パーセントを(うた)いながら、実はAクラスだけの特権でしたなんて入学後に言うような学校なのよ? 信用できないでしょう」

 

 それを言われるとその通りである。信用なんてまるでなかった。

 

「……まあ、学校側の言う『優秀な人間』の基準がわからない以上、嘘かどうかの判断は難しいだろ。櫛田や平田だって、案外内申点で大幅減点された可能性もあるんだしな」

「内申点――……ああ、なるほど、そういうことね」

 

 オレの言葉に納得する部分があったのか、堀北は呟きながら何度か頷いた。

 

「……いえ、それでも私がDクラスの理由がわからないわね。やはり嘘か採点間違いではないかしら」

「自分がDクラスだったことはまだ納得してなかったんだな……」

「当たり前でしょう。私は内申点もそう悪くないはずよ。生徒会に入るような特別なことはしなかったけれど、マイナス評価も特にないはずだわ」

 

 本当にそうなのかどうか知っているのは学校側、そして小・中学校の同級生くらいだろう。

 オレの予想では、このキツい性格が変わっていないなら、クラスメイトとの衝突が多発していてそれほど高い評価は得られなかったのではないかと思うが。

 

「その目、不快よ」

「……どんな目だよ」

「人を見下す目。テストの点数で遊ぶようなふざけた人間にそんな目を向けられていると思うと、衝動的に潰してしまいたくなるわね」

 

 なんて恐ろしいやつだ。というか別に見下してなどいないのだが。

 

「そんな目はしていない。あと、テストで遊んでなんかいないぞ。何度も言うが、あれは偶然だからな」

「本当に、真剣にテストに(のぞ)んだって言い切れるかしら?」

「ああ」

「櫛田さんに誓える?」

「ああ――いや、なんで櫛田?」

 

 そこは普通『天』とか『神様』とか言うところじゃないだろうか。

 ……もしかして心の中で櫛田を大天使と称していることがバレている?

 いや、Dクラスの男子(と一部の女子)の間では櫛田を天使と(あが)めることが普通になっているので、堀北もそれに乗っかっただけかもしれないが……。

 

「そう……そこまで言うなら信じるわ」

「信じてくれたか」

「ええ。――あなたが嘘吐きだということを、ね」

「なんでだよ」

 

 いったい何なんだこいつは?

 まったく、どういう思考でそんな答えに到ったのやら。

 呆れた視線を送ってやると、堀北は何事もなかったかのように「ところで」と切り出した。

 

「点数の操作すら容易な綾小路くんに協力をお願いしたいのだけれど」

「は? 協力?」

 

 なんだろう、凄く嫌な予感がする。

 

「Aクラスを目指すための協力、よ」

 

 ああ、やはり聞き返さずに逃げるべきだった。

 

「……本気で言ってるのか? おまえ、茶柱先生には無理って言ってただろ」

「いいえ、違うわ。正確には『簡単な道のりとは思えない』であって、無理とは言っていない」

 

 言ってるようなものだろ。とは思ったが口には出さない。手刀の構えが見えたので。

 

「……学習したのね。まあいいわ」

「安易に暴力に頼るのはどうかと思うぞ」

「暴力? 何の話かしら。私はただ指を揃えて見せただけよ」

「……、」

「それで……どうかしら。協力してくれるわよね?」

 

 いけしゃあしゃあと(のたま)う堀北だが、断れば確実にオレの腹に手刀が突き刺さることはわかっている。

 とはいえ素直に「はい協力します」とも言いたくない。面倒なことになりそうだし。

 

 言質を取られたらおしまいだ。このまま寮まで逃げ切ってしまおう。

 そう考えたオレが口を硬く(つぐ)んでいると、堀北は不意にこんな話を始めた。

 

「入学式の日、あなたは櫛田さんと昼食に行ったようだけれど、私は日用品を揃えるためにコンビニに行ったのよ。その時、須藤くんを見かけたの」

 

 いきなり何の話だよ、と疑問の視線を送るが、堀北は気にせず続ける。

 

「彼はインスタントのラーメンをあろうことかお店の前で食べ始めた。すると、数人の二年生が彼に絡み始めたの。『そこは俺たちの場所だ』なんて意味のわからない発言から始まり、須藤くんの態度の悪さを指摘し、そしてDクラス所属と聞いて笑った」

「……、」

「二年生は最後にこう言ったわ――『今日くらいはここを譲ってやるよ。(みじ)めなおまえら不良品をこれ以上虐めちゃ可哀想だからな』と。わかるかしら? 朝の茶柱先生の発言もそうだったけれど、この学校ではDクラス所属という評価は侮蔑の対象なの」

 

 能力順にクラスを振り分けたと学校側が言う以上、Dクラスが落ちこぼれの不良品が集まるクラスであるという認識は全生徒に広まっている。ゆえに、そこに所属していると知られるだけで、上位のクラスから馬鹿にされ、下に見られる。

 

 普通の人間は、馬鹿にされたり下に見られたりするのは不愉快だ。

 高円寺のような他人の評価を気にしない精神性を持ち合わせていなければ、この状況を変えたい、少しでも改善したいと思うのは当然のこと。

 堀北はそこを突いて、オレにやる気を出させようとしているのだろう。

 

「確かに馬鹿にされるのは気持ちの良いことじゃないが、目立ったり面倒なことをするのは勘弁だな」

「あなたのお友達が他人から(かろ)んじられる状況を変えてみたいとは思わない?」

「……、」

 

 それは――つまり堀北は、「このままだと櫛田さんが他クラスから馬鹿にされ続けるけれど、あなたは友人として何かするつもりはないのかしら?」と言いたいのか。

 

「ああでも、所詮は相手の趣味の一つもわからないような浅い関係だものね。そんな気概を見せるほどの友情なんて綾小路くんにはないわよね。これから櫛田さんが他のクラスの人に馬鹿にされ、軽く見られ、不良品として扱われても、あなたは見ているだけでなにもしない。いえ、むしろ一緒に馬鹿にされることに仲間意識を抱いて距離を縮められる、なんて(おぞ)ましい考えを持っているのかしら? 下劣ね」

「……、」

「黙ってないで何か言ったらどうかしら」

 

 なるほど。人の嫌なところを的確に、過剰なほどに突いてきやがる。普段から毒を吐きまくる人間だからこそ、スラスラとこのような言葉が出てくるのだろう。

 

 ここまで言われて奮起しない人間はそういない。

 

 友情、親愛、恋慕……まあなんでもいいが、プラスの感情を向ける相手が(おとし)められる状況で、それを改善する能力を持ちながらも立ち上がらないのは、その気持ちに偽りがあるからだと認めるようなもの。と、相手に勝手に想像させることまでできる。

 

 オレが口にした『やりたくない理由』も『目立ちたくない』『面倒が嫌』という軽いもの。天秤にかけたとき、友情とどちらに傾くのが自然かは論じるまでもない。

 

 だからといって、オレが堀北に協力するかは別の話だが。

 

『力を持っていながら、それを使わないのは愚か者のすることだ』

 

 あの男の言葉が脳裏に()ぎる。

 

「……、なあ堀北」

「なにかしら」

「おまえ、友達いるのか?」

「――は?」

 

 (しん)の臓が凍り付くほどに冷たくドスの()いた声だった。

 オレは慌てて言い訳をする。

 

「いや、なんというか、さっきの堀北は真に迫っていたからな。もしかして、そういう経験があったから言葉に重みができたのか? というかそもそも、オレを焚きつけるためというよりは自分が奮起するために言ったように感じられ――ぐえっ」

 

 ドスッ、とオレの腹に堀北の手刀が突き刺さった。

 なにするんだよっ、というオレの抗議の視線に対し、堀北はキッと鋭い――しかし、どこか妙な感情の混ざった――視線で刺し返してくる。

 

 それから数秒間睨み続けてきた堀北だったが、ふと目を閉じ顔を伏せると、妙に湿ったため息を吐いた。

 

「――いるわ。いないとも、言えるけれど」

「……、どういうことだ?」

「さあ、ね。本当に、どういうつもりなのかしら」

 

 なんだそれは。意味がわからない。

 だが――……いや、どうだろう。()()()()()かなければ、真相はわからない。今、堀北に()いてもおそらく答えてくれないだろうが。

 

「それにしても、綾小路くんが協力すると言ってくれてよかったわ」

 

 少し考えるために黙っていたら、急に堀北がそんなことを言い出した。幻聴でも聞いたのだろうか?

 

「おい待て、オレは協力するなんて一言も言ってないぞ」

「しないの? しないなら、私はあなたのことを卒業までずっと意気地無しで下劣な人間として軽蔑し続けることになるけれど。それとも何かしら、櫛田さんに言われないと動けない指示待ち人間なのかしら。少しは自分の意志を持ったらどう?」

「オレは事なかれ主義だからな」

「そうやって人は友達を失っていくのね。理解したわ」

「……、」

 

 堀北はなんとしてでもオレを協力者にしたいらしい。

 あまりにしつこくて(へき)(えき)するが、オレがなんと言おうと堀北が諦めることはなさそうだ。それだけ強い意志のようなものを感じる。

 オレは大げさにため息を吐いて、言う。

 

「……そもそもAクラスを目指すって、相当大変だぞ。全体的な授業態度の改善だけじゃなく、遅刻魔やサボり魔の更生もしなきゃならない」

「それではマイナスを無くすだけでしょう。できて当たり前のスタートラインよ。必要なのはプラスの評価。中間テストで良い成績を取る必要があるわ」

「それがわかっててなおAクラスを目指すのか? 正直Dクラスは周回遅れにも等しい状況だぞ」

 

 クラスポイントの差だけではない。Dクラスの生徒の多くは、大幅な意識改革が必要だ。

 それに中間テストで良い成績を取るとは言うが、小テストの赤点組――学力底辺層は赤点回避に手一杯だ。Dクラスはそもそも『クラスポイントのために少しでも高みを目指す』なんてことができるレベルにないのである。

 

「だとしても、それは諦める理由にはならないわ。私は、与えられたDという最底辺クラスの評価を(くつがえ)す必要があるのだから」

 

 どうしてそこまでAクラスに(こだわ)るのか。

 普通の人間は不良品と(さげす)まれるのは嫌だし、Aクラスの特権は欲しいと思うだろう。だが、堀北ほどAクラスの評価を熱望するのは、何か特殊な事情でもあるのかと疑ってしまう。

 

「それに……ポイントを獲得する方法は、中間テストだけではないはずよ。学校側は競争を促すために、何らかの試験を課すと思う。それも、クラスポイントが大幅に増減するようなものをね。でなければ、一年の五月時点でAクラスの逃げ切りが確定してしまうもの」

 

 希望的観測な面もあるが、堀北の言うとおり、おそらくそういったクラスポイントが増減するような試験はあるだろう。

 

 朝のホームルームで櫛田がポイントを増やす機会があるのか質問した際、茶柱先生は「あるぞ」と肯定した後、「()()()()()()次の中間テスト」と言っていた。その言い回しに注目すれば、中間テスト以降にもポイントが増減する試験があると推測できる。

 クラスポイントが変動する機会がなければ、そもそも「卒業までの三年間でいくらでも逆転できる可能性はある」などとは言わないはずだしな。あくまでも可能性であって、現実的かどうかは微妙だが。

 

 クラスポイントを増やすだけでなく減らす試験もあると考える理由には、ポイントでクラスのランクが入れ替わるという競争を促すようなシステムであることに加えて、プライベートポイントとの連動のこともあるだろう。

 五月以降は皆、生活態度を改めるため、今後それでマイナスされるようなことはほとんどないだろう。それなのにポイントを増やす試験ばかりだと、時を経るごとに学校が生徒に支給するポイントが膨大なものとなっていってしまう。そんな事態は学校もさすがに避けるはずだ。

 

「仮に今後そういう試験があったとして、Dクラスが勝ち抜けるとは思えないな」

「そうね、四月の様子を見る限りでは難しいでしょうね。でも、それは私たちが動かなかった場合の話よ」

 

 こともなげに言い放つ堀北だが、いったいその自信はどこからやってくるのか。

 まあ、自分が優秀だと自負しているゆえの態度だろう。実際、一定以上の能力も才能も有しているはずだ。

 ただ、致命的に不足している……というか、はっきり言って対人関係に欠陥が見られるため、それを自覚し、改善できるかどうかが堀北の今後を左右するだろう。

 

「たいそう自信があるようだな……って待て、『私たち』ってなんだ。まさかオレも含んでるのか?」

「いちおう、ね。影響は五パーセントくらいだけれど」

「誤差の範囲かよ」

「充分大きい値じゃないかしら? 仮に卒業までにクラスポイントを1000稼げたのなら、50ポイントはあなたのおかげで増えたことになるのだから。プライベートポイント換算で5000ポイント。綾小路くんにしては充分な成果ではないかしら?」

「少ないだろ……アルバイトでももっと稼げるぞ」

「あなたがテストの点数で遊ぶようなことを続けるならその程度に収まるでしょうね」

 

 つまり馬鹿にされるのが嫌なら本来の実力を出せと言いたいのか。

 堀北はどうしてもオレを『真の実力を隠している系の強者』にしたいようだ。

 ……まあ、そもそも実力がないと思っている人間に対してこれほどしつこく協力を要請したりしないか。

 

「……オレよりも頼れるやつはいるだろ。櫛田とか」

「あなたのその櫛田さん推し、正直気持ち悪いと思っているわ」

「えっ」

「冗談よ。一割くらいは」

 

 九割は本気なのか……ちょっと、いやかなりショックだ。

 女子からの精神攻撃が予想外に痛かったことに落ち込んでいると、堀北がどこか不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

「そうね……櫛田さんを頼るかどうかは、櫛田さん次第じゃないかしら」

「は? いや、おまえのほうから頼めば櫛田は普通に協力してくれるだろ」

「さあ、それはどうかしら。少なくとも、今の彼女は信用ならないわね」

「……、」

 

 堀北は、櫛田を嫌っているわけではないはずだ。

 隣人として堀北を、友人として櫛田を見てきたが、この推測はおそらく正しい。

 

 だが――櫛田と堀北の間には、オレの知らない()()がある。

 とはいえそれが何なのか、正面から()いても堀北は答えてくれないだろう。

 

 オレは櫛田と友達だ。一番仲が良いと言える。……向こうにとっては一番ではないだろうが。たぶんみーちゃんか井の頭が一番だと思う。いや、櫛田本人は友人に順番を付けるような性質(たち)ではないが、客観的に判断して、だ。

 ともあれ、オレは堀北よりは櫛田のほうが仲が良いはずなので、詳しい事情を聞くなら櫛田を相手に質問したほうが良さそうだ。

 

 そう思い、オレは櫛田に個人チャットでメッセージを送ろうと携帯端末を取り出し、指を動かす。

 

 

『おまえと堀北って()()()()昔からの知り合いなのか?』

 

 

 送信――する直前で、オレは思い直す。

 

 入学式の日、櫛田は堀北と初対面だと言っていた。

 ……いや、違うか。

 正確には初対面だとは言っていない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 平田主催の自己紹介に参加しなかった堀北の名前を櫛田が知っていたことに違和感を覚えて「堀北と知り合いなのか?」と()いたオレに、櫛田は「ネームプレートを見て知った」と答えた。

 

 だが、それはおかしい。

 

 櫛田がオレたちの近くに来たときには、堀北はすでにネームプレートを片付けていたからだ。

 それを指摘したオレに対して、櫛田はこう答えた。

 

『今じゃなくて、最初だよ。バスを降りて、教室に来た時。茶柱先生が来るまでの間にね』

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 いや、確かに櫛田はDクラスの生徒の名前をこれで覚えたのだろう。

 だが、全員は無理だ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『最初に皆のネームプレートを確認していた』という言葉は嘘……というより、少し盛った表現だったのだろう。オレの「全員の名前を覚えているのか」という質問にも肯定していたが、これもただ見栄を張っていただけと解釈できる。

 

 それはいい。別に不自然なことじゃない。

 だが、堀北のことだけは別だ。

 

 

 なぜなら――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ――否、確認などできはしない。

 それでも名前を知っていたのは、櫛田はもともと堀北のことを知っていたから。

 

 そう解釈するとつじつまが合う。

 二人の間に何かありそうなことも、入学式の日に櫛田から声をかけられた時に堀北が()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことも、櫛田が話しかけてくる時とその他の人間が話しかけてくる時で堀北が全く違う感情を見せることも――。

 

 ……さて。

 それを考慮すると、オレが送るべきメッセージは変わってくる。

 

 櫛田に対する一番の疑問。そしておそらく、堀北との間にある『何か』に関わる重要な事柄。

 それを今、問いかけよう。

 

 

『入学式の日、おまえはどうして堀北と初対面のフリをしていたんだ?』

 

 

 送信完了して、ふと、グループチャットのほうがかなり動いていたことに気付く。

 すぐに櫛田からメッセージが返ってくるようなことはなかったので、今のうちにそちらを確認しておくことにした。

 

「……なるほど。話し合いはひとまず終了したみたいだな」

 

 呟くと、堀北はまるで見てきたかのようにこう答えた。

 

「どうせ授業中の私語の禁止、遅刻や欠席の注意、生活態度を改める……なんて基本的なことをいまさら(かか)げ直したただけでしょう?」

「よくわかったな。まさか、おまえにも教えてくれる友達がいたのか?」

 

 八割の驚愕と二割の困惑で堀北を見ると、彼女は露骨に深いため息を吐いてみせた。

 

「教えられなくともそのくらい予想が付くわ。あとはせいぜい中間テストに向けて勉強会を開くくらいかしら。発案者は当然平田くんで、櫛田さんも教師として名乗り出た。どう?」

「……正解です」

「でしょうね」

 

 言って、つまらなそうに鼻を鳴らす堀北。彼女にとってこの程度のことは誇るまでもないのだろう。

 

「無意味なことだわ。最も注意しなければならない人間が、その話し合いに参加していないのだから」

 

 堀北が言っている人間とは、須藤、池、山内たち通称『三バカ』のことだろう。小テストでのワースト・スリーであり、遅刻や授業中の私語・居眠りの常習犯で、特に生活態度が悪い三人だ。

 

「意味がないとまでは言わないが、確かに須藤たちはどうにかしなきゃまずいな。このままだと確実に赤点だろうが……あいつらが勉強するかは、ちょっと微妙だし」

 

 平田主催の勉強会と聞いて、須藤たちは参加するだろうか?

 ……いや、さすがに参加するだろう。自分の退学がかかっているのだ。崖っぷちの状況を理解しているのなら、藁でも掴みたいはず。

 それに、櫛田が先生役をすると知れば、櫛田狙いで池と山内は参加するだろう。それで勉強に集中できるかは……ちょっとわからないが。

 

「……ああ、そうだ。堀北は先生役しないのか?」

 

 堀北の小テストの点数は90点で同率一位。主催者の平田からも歓迎されるだろう。

 

「様子見かしらね」

「様子見って……やらないのか? 中間テストで良い成績を残すためにはそういう協力をしていくべきだと思うが。Aクラスを目指すんだろ? 人に協力を強制する前に、自分でも動けよ」

「問題がなければ参加するわ」

「問題、ねぇ……」

 

 例えば――それこそ、須藤たちが平田の勉強会に参加しないような事態になったら、ということだろうか。

 仮にそんなことがあったとして、堀北はどのようなアクションを起こすのか。そして、どのような結果になるのか。

 

 いや、それよりも――。

 

 櫛田と堀北の間にある『何か』。

 それがどのようなものなのか。明らかになったとき、櫛田が、堀北が、どのような感情を見せ、動くのか。そしてそれが、オレを含め、全体にどのような影響を及ぼすのか。

 

 少しだけ、興味があった。

 

 




 ガバは時に人を絶望に陥れるのである。

Q.転生櫛田と綾小路が初日に一緒に昼ご飯を食べたことは堀北は知らないはずでは? 転生櫛田が綾小路をお昼に誘う前に堀北は教室を出ていたよね?
A.実は堀北は教室から出てはいたけど、そのあとすぐに立ち止まり、廊下から二人の様子を窺っていました。混乱する思考を整理するためと、状況把握のためです。そのあと見つかる前に移動しましたが。
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