アーチニンジャ:ネオサイタマ奮闘記   作:コースト

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(作者からのおたより:お久しぶりです。本当にお久しぶりです。回復するところか、約3か月も間を空けてしまいました。申し訳ないです。そして、待っていてくださり、非常にありがとうございます。もちろんやる気を無くしていたわけではなく、この間も執筆を続けていました。ただ、プロットの調整を行う必要があり、これからの展開も考えながら慎重に筆を執っていた結果、このような間が空いてしまったのです。長くなってしまいましたね。それでは、第2話です。お楽しみください)

(補遺:ちなみに、次回の分もすでに書き溜めているので、数日後に第3話が投稿される見込みです。それを以て、ここまで待たせたお詫びとさせてください。改めて、ドーゾ)


ホワット・フェールアウト・フロム・ハー #2

 コン、コン、コン。扉が叩かれる音が軽やかに鳴る。

 

「ドーゾ」

 

 戸の向こうから、平坦で中性的な声が私を呼びかけた。

 

「シツレイします」

 

 私はゆっくり扉を開け、「研究室」と名の付いた部屋へとしめやかにエントリーした。

 

「……」

 

 そこは、全てが暗闇だった。いや、光源は確かにある。そう広くないこの空間の最も向かい側の、16枚の光る板だ。一般的な照明と比べればおぼつかぬ弱い光だが、縦横に4枚ずつ隙間なく配置され、遠目にはまるで一枚の巨大な板のように映る。青白い光を放ち、周囲の輪郭を照らしている。

 この部屋の主は、照明も点けない主義なのだろう。彼らからニンジャであることは聞いているがゆえ納得は出来る(ニンジャは夜目が利くからな)が、それでも言わせれば、ずいぶん異質な奴だ。

 ……よく見ると、それらの板は表示されている模様が不規則に遷移していることが分かる。それぞれ、別々に。大量の四角と01の数字が縦横無尽に動いたり増えたり減ったり動いたりしている。

 カタカタカタ……ゴオオオオ……ブウーーーン……何かを細かく叩くような音と、エンジン駆動音にも似た轟音が鼓膜をひっきりなく絶え間なく揺らす。おそらく、そのせいか、頭に滲むような鈍痛が響く。空気は換気のおかげでじめじめはしないものの、妙に生ぬるく、あまり居心地のいい環境とは言えない。

 まあ、文句を言うつもりは無いがな。野暮用のために来たとはいえ、彼らに背く利は無い。

 

「あそこです」

 

 背後から声がかかり、ハッと我に返った。マインドシーカーだ。私が研究室に出入りさせてもらうにあたり、ステディより案内役を宛がわれたのだ。彼女は指をさしていた。その指先から続く軌道を辿り、やがて私はモニターの下で弱弱しい光に照らされる小柄な人物の影を捉えた。

 カタカタカタカタ……なるほど、この細かく刻むような音はその人影から発されていたようだ。

 

「お前がフォーアイズ=サンだな?」

 

 私は彼に近づき、そう呼びかけた。

 そやつは子供めいて小さかった。だがその所作は不思議と大人びており、稚気じみたアトモスフィアはあまり感じない。

 両腕を動かしたまま、彼はこちらを向いて返事をした。

 

「イグザクトリー。知己を得て光栄だ、アクタ・ニンジャ=サン。ヨロシク」

 

 ……うん?

 こやつ、頭に不思議なアクセサリーを被っているな。なんだこれ……リング?黒い輪が、目元から後頭部にかけて一周して覆っている。そして……その前後左右に、何かレンズが埋め込まれている。

 目隠し?いや……違うよな。顔は私を向いているし、盲人とも思えん。

 

「これが気になるかな」

 

 フォーアイズが自身のリングを指差した。

 しまった、バレた。感情が表に出すぎたかもしれない。

 

「これは、我の目そのものなのだ」

 

 フォーアイズはそのリングの縁に両手を添えながら、そう言った。

 ……目、そのもの?

 

「それは……一体どういう?」

「フォーアイズ=サンは自分の目をセルフサイバネ置換しています」

 

 マインドシーカーが彼の言葉を継ぎ、補足する。

 

「この輪の四方に装着されたカメラ、これらは全て、彼のニューロンに直結されています。そして、この4つのカメラから見える景色を、彼は同時に見て、並行処理できるのです」

「…………?」

 

 ……本当に、さっぱり、何を言っているのか分からなかった。ニューロン……直結……並行処理……サイバネ……?半分以上理解できなかったが、特に……サイバネって、なんだ?

 

「分かってないようだぞ、マインドシーカー=サン」

「エ?」

 

 しまった、またバレた。そんなに考えていることが顔に出るのか、私は。それともこのフォーアイズとやらの洞察力が特別高いだけか?

 ……クソ、まずったな。そういえば、この49課の奴らに私が旧時代のニンジャだと説明していなかった。常識知らずの箱入りニンジャと思われていたら癪だな……。いや、いま唐突に事実を明かしたところで話がややこしくなるし、これはもう後でいいか……。

 

「……もしかして、あまり頭が――」

「つまり。我は外付けの目が4つあるということだ、アクタ・ニンジャ=サン」

 

 何かを言いかけたマインドシーカーを遮り、フォーアイズが噛み砕いて説明した。なるほど、そう説明されたら多少は理解できるな。原理はともかく。

 

「説明ドーモ。ところで、イシハラの様子はどうなっている?そちらで治療中だと聞いた」

 

 閑話に時間を割きすぎた。いい加減に本題に入らなければな。

 

「ああ、イシハラ=サンか。ふむ……」

 

 僅かな間を置き、続ける。

 

「万事問題ない。彼は今しがた治療を終え、隣部屋にて休息中なり」

「本当か!」

 

 返答に一拍置いたのが意味深であったが、その吉報の前には些細な事だった。

 

「治療?どっちかというとしゅ――」

「HPは全快し、デバフも取り除いて意識は正常に戻っており、状況説明も簡易的に済ませている。まあ、だが詳しいことは汝が説明するがよろしいよ、アクタ・ニンジャ=サン」

 

 紫髪の女の発言を二たび遮り、円形輪で目元を覆う小柄な男は部屋の隅を指差した。仄暗く遠くを見渡せない空間だが、視線を凝らして観れば、うっすらと扉の輪郭を捉えることが出来た。

 

「ああ、良かった……感謝する、フォーアイズ=サン。様子を見させてもらうよ」

「ウム、よろしい。……あ、そうだ。急いでなければ、汝が行く前に、一つ聞いておきたいのだが……」

 

 フォーアイズが私を呼び止める。僅かに逸る気持ちを抑え、耳を傾ける。

 

「彼とは……どういう関係性なのだ?」

 

 …………。

 

 即答できる質問だと思ったのだがな。

 そういえば、彼と私はどういった関係性と答えるのが正しいのだろう。断じて友達や恋人などではない。それは有り得ない。そんな馴れ馴れしい関係では無いはずだから……。

 ……だが、奴は私のことをアッシュと呼んでくれたよな……。

 

「……差し出がましい質問だったかな」

「あやつは、私の恩人だ」

 

 時間をやや費やして考えた末、結局、月並みな言葉に落ち着いた。他に候補があったとすれば、同居人とか、協力関係とかだ。

 

「独りの私を邪険にせず、受け入れてくれた。油断ならない奴だが、あやつのお陰で、私はここに居れるのだろう。もし、イシハラが居なければ……」

 

 私はニューロン内で空想をした。もしもの私を思い浮かべた。人間をモータルとして食い物にし、襲い掛かるニンジャと日夜イクサを繰り広げる、黒に染まりきった私を。十分……ありえたかもしれない未来を。

 

「……とにかく、ヤツのお陰で今の私がある」

「そうか、そうか……なるほどな」

 

 したり顔で頷くフォーアイズ。

 ……なんだ、この意味深長なリアクションは。

 

「……じゃあ、顔を合わせてくるからな」

「ああ、イッテラッシャイ」

 

 今の反応が気にならないと言えば嘘だ。しかし、どうでもいいことに時間を浪費してもいられなかったので、一足先に話を切り上げ、私はその扉へと歩を進めることにした。

 

「……フォーアイズ=サン、何で隠すんですか──」

「マインドシーカー=サンは、そろそろステディ=サンに報告に行くべきだと思うな」

「アッ、そうですね。行ってきます」

 

 背後から小さく会話が聞こえてきたが、それを問い質しにいくのも面倒極まったので、スルーすることにした。

 ……あやつ、会話を遮られてばっかりだったな。どんくさいのだろうな。フッ。

 

◆◆◆

 

 ガチャ。

 ノブを回して扉を開け、イシハラが休んでいるであろう小部屋へと足を踏み入れる。

 照明は薄ぼんやりと点いている。周囲は棚で囲まれており、なんの用途に使うのも分からない鉄のがらくたが所狭しと積まれている。普段は物置として使われているのだろうか?……いや、違うな。よく見たら、何かの操作盤らしき機械と、天井の中央から鉄製の腕が吊るされてある。

 ……その下に、ベッドがある。否、ベッドじゃないな。……これは……寝るというより、寝かせておくための台……手術台か?平安時代の知見しかない私にゃ、どうにも描写のしようがないのだが……。

 

「む」

 

 まあ、そのことはいい。何故かって、その上でイシハラが寝ているのを見つけたのだからな。仰向けで、ボロい作業着の代わりに患者服を羽織っている。なるほど治療は終わり、今は休息中という風体だ。

 ……それにしても、額にかなりの傷跡が残っていたと思うが、包帯が巻かれたりはしないし、傷跡もないな。現代の人間は自然治癒力も進化したのか。

 全く、随分と待たせてくれたな。肩をトントンと叩いて声を掛ける。

 

「おい、イシハラ。起きろー。アクタ・ニンジャ=サンが見舞いに来てやったぞ」

「……」

 

 …………ふむ。

 返事、なし。反応、なし。

 

「ん……?」

 

 一抹の疑念を振り払い、私は体を揺すり、無理にでも彼を起こそうとした。

 

「起きろ、イシハラ!何時まで寝てるんだ!」

 

 ……起きやしない。

 

「……おい!」

 

 痺れを切らした私は、更に体を強く揺らし、果てには鼻先を何回かつついてみたが……。

 仰向けで固まっているイシハラは、依然として起きる反応を見せなかった。

 

「……」

 

 何だこいつ。

 ドリームランドに居る時はあんなに睡眠時間にルーズだった癖して、私が起こそうとしても微かな反応すら見せないとは。

 ナメられているのか?それとも、まさか……。

 

「……起きないと、灰にするぞ〜」

 

 ……。

 何を言っているんだ、私は。

 誰も聞いてないよな?まあ、聞いてないだろ。

 ひとりでに咳払いをし、私は改めてイシハラの顔を覗き込んだ。

 

「……あれ?」

 

 ……今、顔をかなり近づけた上で気付いたことなのだが。

 こやつ……寝息を立ててなくないか?

 聴力を研ぎ澄ます。

 

「…………」

 

 ……呼吸音が何一つ聞こえぬ。

 僅かに、顔面の血の気が引く感覚を覚えた。

 おいおいおい、冗談だろ?

 

「おい、イシハラ?」

 

 改めて、イシハラの肩を掴み、体を揺さぶる。応答無し。

 

「イシハラ!?」

 

 今度は両手でイシハラの両肩を掴んで揺さぶった。応答無し。

 

「おい、イシハラ……」

 

 ……揺さぶったところで一向に反応を見せない。狸寝入りならそろそろ起きてくれてもいいだろう。本格的に心配になってくる。瞼を掴み、無理やり開かせてみた。目が見える。瞳孔が……窄まず、開いている、ような。

 あ、そうだった。瞳孔を見るより脈を測る方が生存確認として適してるじゃないか。思いつき、私はすぐ様にイシハラの手首を握った。

 ……脈を、感じない。

 

「……ッ!?」

 

 思わず息を呑んだ。嫌な予感が現実となった。

 そんな。イシハラは治療された筈じゃなかったのか!?あの円形黒メガネめ!私に嘘をつきやがったな!何が万事問題ないだ!こやつの意識がないじゃないか!

 

「やってくれたな、フォーアイズめ……!」

 

 怒りに打ち震えながら、私はイシハラに片手を添え、拳を握りしめた。このケジメとオトシマエは、しっかりと付けさせてもらおう。先だって結んでおいた協力関係がほつれようとも厭わん。

 

「イシハラ待ってろよ、仇は必ず……!」

 

 彼にそう言い、私は憤りの形相で部屋の扉に手をかけた。

 

「アッ、ま……待て、待てって!アッシュ!」

 

 そんな私を背後から呼び止める声があった。唐突だった。

 ノブを回そうとしていた手を止め、私はゆっくりと声の方向を向く。

 

「……」

 

 あれっだけ反応を見せる素振りもなかったイシハラが起き上がり、私に目を合わせていた。気まずそうな、微妙な笑顔と共に。

 私は……呆然とした。

 

「……生きていたのか?」

 

 腕を脱力させ、だらんと垂らしながら訊く。

 イシハラは頬を掻きながら、気恥ずかしそうに言った。

 

「あーっと……まあ、そのなぁ……悪かった。死んだフリしてた」

「ハ?」

 

 その衝撃の発言に、私は口をあんぐりと開けざるを得なかった。

 

「……あのフォーアイズって人から色々聞いたよ。俺はあの人にここで治療されるまで……意識を失っていた。そして、お前もここに連れてこられていると聞いた」

「……」

「で、寛いでたら、ちょうど扉の向こうからお前の声が聞こえてきて。からかってやろうと思ったんだ」

「それで、やったのがシニフリってことか?」

「まあ……そんな感じだ」

 

 ……どうやら、驚いたらチョージョーってぐらいのつもりでやったことだったが、私が予想よりも焦ってしまったせいで、慌ててネタばらしする羽目になった……とのことだ。

 

「だ……だが、瞳孔は散大していたし、脈も止まっていた!それにあれだけ揺らしたのに……どうしてもっと早くバラさなかったんだ!」

「ウーン……そうだな……。隠し芸なんだよ、俺の。実際、分からなかっただろ?」

「……」

 

 隠し芸って……そんな理論まかり通ってたまるか。

 ハアアアア。大体どこで使うんだよ、そのスチャラカ芸は。

 

「そういう事だったのか……イシハラ」

 

 ……まあ、こやつとこうして再び話せるのは本当に良かった。言いながら、私は大きく息を吐き、胸を撫でおろす。そして両腕を広げながら、一歩、また一歩と彼に近づく。

 

「そういう事だ。心配かけて悪かったな。俺はもう、この通り元気だ」

 

 イシハラも、肩をすくめながら私のほうを見る。私も口角を上げ、笑みで返す。

 

「ああ……元気そうで良かった、本当に!」

「ああ」

 

 そして緩慢な歩みから速度を上げ、イシハラに駆け寄った。そして言った。

 

「遠慮なく殴れるみたいでよかった!」

「……ア?」

「イヤーッ!」

 

 そして飛び掛かりながら引き絞った拳を突き出し、イシハラの顔面を全力で殴り飛ばした。

 

「グワアアーーッ!?」

 

◆◆◆

 

 ……ここは「会議室」と呼ばれている場所だ。灰色のタイルが敷かれ、長机と回転椅子が並べられた床に、年季が経っていて僅かに黄ばんだ壁、曇った窓、そして微かに明滅する蛍光灯。換気はされているのか、埃っぽい空気は感じない。

 窓から伺える外の夜空は、すっかり墨めいた黒一色である。今は何時だろうか。

 

「……改めて宣言させていただこう。我がネオサイタマ警察49課特殊N案件集中対策部に、新たに二人もの戦力が加わった」

 

 ステディがホワイトボードの正面に立ち、そう言った。

 ネオサイタマ警察49課特殊N案件集中対策部?今まで49課としか紹介されなかったが……ああ、49課のさらに下位の組織ってところだろうか?随分と冗長で覚えにくい部署名だな。

 

「恐れ入るが、二人とも、改めて名乗ってもらえないだろうか」

 

 赤毛の女が私とイシハラを交互に見る。

 名乗れという空気だ……。もう何度もやっただろう、面倒だな。

 

「ドーモ、アクタ・ニンジャです。またの名を、アッシュピット」

 

 座ったままの姿勢で、私はステディとその部下3人に改めてオジギをした。……そういえば昔、あまりにも強い名前にはパワーが宿るとか言った覚えがあるが、私のカイデン・ネームを聞いても誰も怯みすらしないよな……。

 力がなくなって、名前のパワーも霧散したのだろうか。なんだか気が散ってしまうな。

 

「ドーモ、イシハラ・ナガタです」

 

 頬から額にかけて包帯を巻いているイシハラも立ち上がり、規律正しいアイサツをする。なんだ、これでは立たなかった私が不愛想みたいじゃないか。いけ好かぬ。

 

「ご苦労。この二人のうち、アッシュピット=サンは実際貴重な人材だ。この集中対策部において、我々が捕えるべきターゲット……フォールアウトと、ごく強い関連性が確認されている。彼女は我々のキーパーソンとなり、貢献してくれるだろう」

「……なあ、質問をしていいだろうか?」

 

 ここで私は手を挙げた。ステディが促す。

 

「その……ネオサイタマ警察……なんとか……対策部って、具体的にどういう組織なんだ?」

「フム」

 

 私の問いを聞き、彼女は腕を組む。

 

「その疑念も尤もだ。では、情報交換より先にそちらの説明から執り行おうか」

 

 そして、立ち上がった。座っているマインドシーカーとネオテリックの間まで移動し、後方で腕を組み、言う。

 

「ネオサイタマ警察の中でも我々集中対策部は、簡潔に言えば、我々が把握しているニンジャの中でも、特に狂暴で手に負えない奴を制圧するための部署である」

「そうだ」

 

 ネオテリックが頷く。紙で巻いた煙草を吹かしながら。

 

「とは言え、その歴は警察署そのものと比べたら赤ちゃん……いや、胎児みたいなもんだけどな。そもそも、設立された理由がアイツ……フォールアウトだし。スゥーッ……フゥ」

「今のところ、そのフォールアウトとやらを殺すために創られた部署って所か」

 

 イシハラがまとめた。話についていけているのは、フォーアイズの状況説明の賜物だろうな。

 

「……というか、ステディ=サンの説明は便宜上って感じで……本当は、フォールアウトを倒すための部署って感じです……。というのも、ステディ=サンがヤツの危険性を上に提唱したら、すぐさま独立した部署として分裂したって感じなので」

「…………」

 

 マインドシーカーが説明するにつれ、無感情のステディの顔面に苦々しい表情が浮かぶのが見えた。まるで、その事実を快く思っていないような反応だ。

 

「どうした?そんな暗い顔をして」

 

 私は率直に訊いてみた。

 

「……いや、何でもない。上層部はヤツの危険性を理解していない……そう思っただけだ」

 

 ただ眉間を潰しながら、ステディはそう答えるだけだった。その顔は……今までの表現力の乏しさからは一変して、憎悪と憤りを含蓄しているような……そんな、印象を受けた。

 ……フォールアウトに、強い感情を抱いているのか?

 それも……敵愾心を。

 

「……」

 

 なんとなく、心が細い針で刺されるような感覚を覚えた。

 

【続く】




(補遺2:そういえば拙作が一周年を迎えていたのを忘れていました!オメデトゴザイマス!)
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