アーチニンジャ:ネオサイタマ奮闘記 作:コースト
(前回までのあらすじ:イシハラにはかつて別のパートナーが居た。イーハトーヴ。だが、今は行方不明。諦めたとしつつも、どこか彼に未練が残っているように見えたアクタ・ニンジャは、今までの恩として彼女の捜索を始めることにした。集中対策課にもその協力を打診するも、すげなく断られかける。しかし、フォーアイズが協力させてほしいと名乗り出たのだ)
……数分後、研究室。
私と、イシハラと……ステディより伝令役を命じられたネオテリックが、フォーアイズに促されるがままこの狭苦しい部屋へと足を踏み入れた。モニタの放つ弱い輝きだけが唯一の光源であり、それを除けば全き闇が私たちを覆うばかり。
「我の知っている情報を話そうか」
こちらに顔を向けながら、フォーアイズが言った。その両腕は休みなく鍵盤を叩き、モニタはそれに呼応するように次々と表示を切り替えていく。
「ああネオテリック=サン。何度も言うように、煙草は控えてくれ給え。装置に悪影響が出る。バッドマナーだ」
「チッ」
フォーアイズに咎められ、ネオテリックは渋々と煙草を仕舞う。軽い咳払いの後、フォーアイズはどことなく厳かに語り出した。
「イーハトーヴ……我が師。彼女はステータスポイントを知能にオールインしたような発明家で、人間離れした知能指数と浮世離れした思考体系の持ち主だった」
打鍵音を鳴らし続けていた手がやがて止まると、モニターの内ひとつの表示が変わった。青一色の背景に、山吹色の髪を後ろで結わえ、額に角張った黒ゴーグルを掛けた女性の肖像が映し出された。
若く、瑞々しい顔だ。20代前半と言った趣だろうか。
「イーハトーヴの御姿だ」
フォーアイズは言った。イシハラが一歩前に出て、モニタに映ったその上半身をまじまじと見始めた。
「彼女は様々な学問を独自に究め、様々な革新的発明品を生みだした功績を持つ科学者だ。まさにジョン・フォン・ノイマンの生き写しといえよう」
「……そんなに」
私は素直に驚いて見せた。それから少し思案した。人物の比喩は分からぬが、要は極めて高い知能指数の持ち主、ということなのだろう。そんな奴と密接な関係だったというのか、このイシハラという男は? なんたるたらし。
「イシハラ、何か思い出せそうか?」
私は肖像に釘付けとなっているイシハラに声をかけた。返事がなかったので、顔を覗き込んだ。彼は眉間に深い溝を作り、このままモニタと合体しかねない勢いで集中していた。
……これ以上刺激するのは、よしておこう。私もここにイブシの肖像が示されれば、どのような反応を示すか分からないからな。
「彼女の名は理想郷を意味する。彼女は極度のミーイズム思想の持ち主であり、全ての行動は自分だけの理想郷のために帰結していた」
「自分だけの理想郷?」
「つまり、誰の干渉も許さず、自分一人だけで完結する世界だ。彼女は孤独こそが唯一の救いだった。世界からの遮断を望んだ。その過程で彼女はあらゆる道具を生み出し、そして破棄していった。ショッギョ・ムッジョ」
「……ああ、思い出した。……そうだな、フォーアイズ=サンのそれは正しい」
フォーアイズの言葉を、イシハラが継ぐ。
「他人を信じられず、俺のような存在に頼ってまで、自分の理想郷を創成していた。発明品も……理想郷に寄与しえないものは、あまねく破棄された。バイオニューロンチップ、エテル観測装置……例え大衆からすれば、理解を拒むようなオーバーテクだったとしてもな」
「……イシハラ?」
話しながら、イシハラは片手でこめかみを叩いている。今まで朧気だった記憶がいくらか復元されかかっている、といったところか?
「俺の役割は助手兼ヨージンボだった。アイツはカラテがからきしだったから、守れる奴が必要だった。……いや、というよりあいつに出来ねえことは全部俺にさせてた。発明品の実験台になり、メンタルケアもした。……だが、それより後の記憶がねえ」
「ふむ。いつから欠けているのかね?」
「……分かんねえ。途切れている。……フォーアイズ=サン、この肖像以外に、なにかねえのか? 映像とかさ。そうすれば、更に思い出せるんじゃねぇかな」
「いや……ない」
フォーアイズはただ、神妙にかむりを振るのみ。
「彼女も自身の情報は徹底的に隠匿していた。この肖像すら、彼女が行政上必要な書類のために取得せざるを得なかったもの。これ以外の情報は……我は持っていない」
「そうか……」
イシハラは落胆しかかった。だが、そうして項垂れかけたところを、フォーアイズは手で制し止めた。
「だが、汝にはまだ存在する」
「……ア?」
イシハラは訝しんだ。フォーアイズはやおら巨大機械の陰へと潜り込んだかと思うと、一本の太いケーブルを取り出した。
「イシハラ=サンの生体LAN端子に直結し、ログを受け取る」
「……生体LAN端子?」
私は首を傾げた。
「ログだと? そんなのあるのか?」
後頭部をさするイシハラ。
「ああ。君をしゅ――手術して分かったことだが、位置情報を始めとした様々な生体情報を記録するロガーがインプラントされていた。以前より埋め込まれていたものだろう。故に過去の情報も記録されているはずだ。それを利用する」
「別にいいが、まあ、うん……」
「おいおい、そンな便利がモンがあったなら何でもっと早く言わねェンだよ」
とネオテリック。苛立たしそうに火のついてない巻き煙草を噛んでいる。
「簡単な話、プライバシーの侵害に限りなく近いからだ。心の内面を覗かれるのに等しい。我としても気が引けるが故、最終手段として後に回したのだ。それにサルベージに手間もかかるしな」
「……なるほどな」
何だ、話についていけないのは私だけか。気に食わんな。だが不用意に無知を晒すのも癪だし、ここは知った風の返事だけをして黙っておこう。
「ただ、今回は汝の座標ログを通し、過去の消息を探るだけだ。不要な情報も目に入るだろうが、それはなるべく記憶しない。これでテウチにできるかな」
「……分かった」
イシハラは了承した。
「では、シツレイする……動かないでくれたまえよ」
イーハトーブがケーブルを伸ばし、屈ませたイシハラにうなじの髪を捲るように指示する。
(……そういえば、生体LAN端子ってなんなんだ?)
今更な疑問を思い浮かべたのも束の間、襟足をかき上げたイシハラを見て、私は驚愕を禁じ得なかった。
穴が。イシハラの脳幹近くに四角いスリットが! マヤモト・ビルのサーバーで見たような!
「……!?」
驚愕する暇もなく、そこに……ケーブルが……挿し込まれた!
同時に、連なるモニタのうち一枚の表示が変わり、大量の文字が流れ込んだ。
「うわッ……」
目が点となり、思わず退いた。
今に始まった話ではないが、異様だ。現代の人間は後頭部にあんな穴をあけているとでもいうのか? そしてあんな得体のしれないものと直結するのか? それがデフォルトの感覚なのか!?
「……よし。コピー完了。抜くよ」
数分後、モニタの文字の濁流が止まったかと思うと、フォーアイズはケーブルを抜いた。イシハラは、そのまま何事もなかったかのように立ち上がった。
「イシハラ!」
私は思わずイシハラに駆け寄り、声をかけた。
「お前……大丈夫なのか? 私を認識できているな? この指は何本だ?」
「ア? いや……別になんともねえよ。何を心配してんだ?」
「ム……」
いや、まあ……そりゃあ、そうか。リスクのある行為であったなら、あんな軽々しく実行に移さないだろうな。私が過敏だっただけだ。人差し指と中指を立てた掌を下ろす。
「さて……」
フォーアイズが機械に向き直り、全身を伸ばしてウォーミングアップした。
「では、これより解析作業に入る。一時間は覚悟したまえ」
「長ェな」
ネオテリックが率直な感想を飛ばす。
「事前に取得するデータをフィルタリングできれば、こんな苦労はないのだがね。これでも短い方なのだよ」
「そうか。じゃあオレは廊下で待ってる。そろそろヤニの禁断症状が出そうだしな。ガンバレヨ」
「本来、署内での喫煙も褒められた行為ではないのだが……」
フォーアイズの小言にも意に介す様子なく、ネオテリックは懐を無造作にまさぐりながらドアを開け、いなくなった。
「……私らも、一旦離れておくか?」
「そうしてもらえると助かる。静謐で集中できる空間は貴重だ」
「わかった。イシハラ、どこ行く?」
私はイシハラに話しかけた。
「……んん、どうすっかな……」
イシハラは考え込むように唸るばかり。自分では決められないか。優柔不断な奴め。
そんなんだからイーハトーヴに逃げられてしまったんじゃないか? ……という冗談を言おうともしたが、流石にノンデリカシーが過ぎるために自重することにした。
「……」
私はイシハラの顔をよく観察した。基本的に感情表現に乏しく、私のニンジャ洞察力もなかなか通用せぬ並々ならぬ奴だが、今は珍しくわかりやすい顔をしている。
不安と焦燥、そのどちらか、または綯交ぜ。もの珍しいことだ。
「イシハラ」
「あん?」
私はイシハラの手を取った。
「屋上にでも行って、外の空気を吸うぞ」
「……屋上? ナンデ?」
「いいから、ついてこい! ASAPだ!」
そして、引っ張った。
ネオサイタマの空気質は千年前と比べると雲泥の差もいいところだが、それでも深呼吸すれば、ある程度肩の力が抜けるものだ。
風は冷たいが、ずっと機械の駆動する温室で全身がじっとりとしていた故に、今は身が引き締まる感覚がして心地よい。まさにセイシンテキ。
「お前もそう思うだろ、イシハラ?」
「……アー……」
こちらを一瞥するイシハラだったが、すぐにフェンス向こうの景色へと向き直った。
「まあ……な」
歯切れの悪い返事と共に。
「……」
私はそんなイシハラの横顔を覗き込んだ。眉間を潰し、口をへの字に曲げ、明らかに余裕がなさそうなご様子。全く、どこが「まあな」だ。
「イシハラ、大丈夫なのか?」
私は率直に尋ねてみた。イシハラはじっと立ったまま、何も反応を返さなかった。
「無視をするな、イシハラ。アーチニンジャの尊き言葉を無下にするというのか? なんたるシツレイの極み!」
「……」
「まあ、私は心が広く、器も大きいが故、この程度の不遜は不問に付してやろう。なにせ、お前と私は既に因縁浅からぬ仲だしな」
「………」
「しかし、イーハトーヴって奴は意外だったな。自分の理想郷を作ることにしか興味ない、か。あの見た目からは想像付かないが、よっぽど気難しい性格のようだな。実際、どうなんだ?」
「…………」
「おい、イシハラ! イーシーハーラ!!」
痺れを切らした私は、彼の耳元で割れるような大声を叫んだ。
「ッ!?」
イシハラは全身を跳ねさせ、驚愕に両眼を見開かせながら数歩後退した。
全く、何度も何度もシカトしやがって。自業自得、悪因悪果だ。
「な……何しやがる、テメェ!?」
「こっちの台詞だ、この朴念仁! 私が話しかけているのなら、返事をせんか!」
「考え事をしてたんだ!」
「何の考え事だ?」
「そりゃあ……お前。イーハトーヴのことだよ」
「ふーーーん」
私はしたり顔で鼻を鳴らす。イシハラが再び訝る顔を見せる。
「あーあ。水臭いなぁ、イシハラは。なぜ一人で悩む必要がある? この私がいるではないか!」
自分の胸をドンと叩いた。
「困ったときはお互い様だ。悩みがあるなら、とりあえず打ち明ければいいものを。そうすれば、相談に乗れるかもしれないだろ?」
「……ンー」
唸り声。
「それは……そうだ。だがな……」
「それにお前、かつてはこの私に偉そうな講釈を垂れたではないか。『お前の弱点は抱えることだ』と。だが、お前も抱えてばかりのようだな? これでは世話が無いな」
「グッ……」
苦虫を嚙み潰したような顔を作るイシハラ。
やがて観念したのか、フェンスにもたれ、がっくりと項垂れた。
「……アッシュ、実はな……ずっと打ち明けられないでいる秘密があるんだ」
「へえ。そりゃ、どうして?」
「偏見を持たれるのが嫌だからだ」
フェンスの上で両腕に顔を埋めながら、イシハラはゆっくりと言葉を続ける。
「だが、今となっては話は別だ。たぶんそのうち、遅かれ早かれ秘密が露呈する。それで……ずっと悩んでたんだ。今、正直に話すか……それとも先延ばしにするか」
「……」
私は内心驚き、そして心底意外に思った。こやつがおおよそ初めて自分自身の内面をここまで語ったというのもそうだが、その内面が意外だったのだ。
ずっと無口で感情に乏しい朴念仁、という印象だったんだがな。
半分当たりで、半分外れといったところか。
「イシハラ、お前がそんなに繊細かつ不器用な奴だったとはな……」
私は頬杖を突き、からかうように言った。
「内心クール気取りで、実際は失望されるのが怖い寂しがり屋といったところか? なるほど確かに朴念仁だな。ちょっと予想とは違うベクトルだが」
「黙ってくれんか」
「まー安心してくれ給え。私はそういうのは気にしないタイプだぞ。こう見えて海千山千、豊富な人生経験は積んでるつもりだからな。偏見なぞ持たんさ」
そしてイシハラの肩をパンパンと叩く。イシハラは埋まった顔を傾げてこちらを見た。
「むしろ、お前にも人間臭い所があるのかと、いたく安心していたところだ」
私は口角を上げ、笑ってみせた。
「……フッ」
イシハラもつられて微笑んだ、ように見えた。
「なあ、アッシュ」
「何だ?」
極めて穏やかなトーンで、イシハラは言った。
「俺はもともと、存在していない人間なんだ」
「……」
数秒の間。
「……ン? な、なんだって?」
そして、思わず訊き返した。
……いや、聞こえたよ。確かに聞こえた。これがイシハラの秘密なのだろう。だが、何だって? 存在していない人間? 一体全体どういうことだ?
今すぐ詳らかに聞きたかった。私が納得できるまで問い質したい気分に駆られた。気にしないタイプと宣った手前ではあるが、これは些か予想の域を超えている。
しかし、そうスムーズに事は運ばなかった。
『アー、二人とも。諸君』
私のポケットで眠っていたモーターチビが起動し、ノイズ交じりのフォーアイズの肉声を発しながら浮遊し始めたのだ。
『結論から言うが、汝らが向かうべき座標は特定できた。だが、その過程で興味深いものをリークできてな。その……すぐに来てくれないかね』
私は眉間にしわを寄せ、小さく舌打ちした。クソッ、この円形丸メガネめ。肝心なところで割り込みおってからに。
だが、それと同時に訝りもした。たとえチビ越しのスピーカーで音質が悪かったとしても、その声色が尋常のそれではない、ということは何となく読み取れたのだ。憔悴している? あのフォーアイズが?
「了解だ、すぐに向かおう」
私は頷き、チビを掴んで懐に仕舞った。
「行くぞ、イシハラ」
「分かった」
そして私たちは屋上の扉を開け、階段を下った。
「イシハラ」
「あン?」
降りながら、私はイシハラを傍目に声をかけた。
「後でその続き、話してくれよ。何時でもいいから」
「……分かった」
イシハラは頷いた。
「やあ諸君、よく来てくれたね」
私らとネオテリックは、再び研究所にエントリーした。……するや否や、ネオテリックが肩を怒らせながら、フォーアイズの椅子に寄り掛かった。
「で? ミジェット、何を見つけたってんだ? オレの煙草一本無駄にした価値は、あるんだろうな?」
……どうやら、煙草に火をつけた瞬間に招集されたため、丸々一本捨てざるを得なかったらしい。
「すまない。だがタイミングが悪かったと思ってくれ。喫緊性があったものでな」
「何を見つけたんだ?」
イシハラが尋ねると、フォーアイズがモニタの画面を切り替えた。
「音声ログだ」
「音声ログ……いやあンた、座標ログのサルベージしてたンじゃねぇのかよ」
「ああそうだ。その座標ログの傍に、暗号化された文字列が不自然に挿入されていたのだ。それを解読すると、このログデータをダウンロードするURLが導き出された」
「……なんじゃそりゃ」
ネオテリックが腕を組む。
「ロガーに後から誰かが手を加えたって事か? つまり……イーハトーヴって奴がか?」
「……それは、音声ログを聴いてみれば分かることだ」
「分かったよ、とっとと再生しろ」
フォーアイズが頷き、鍵盤のキーを押すと、近くのスピーカーから音が流れ始めた。
まず始めに聞こえたのは、耳を劈く轟音だった。何かが破壊されるような……強い衝撃にさらされたかのような、割れ歪んだ音の連続。
「……何だこりゃ」
私が疑問を口にする間もなく、そのノイズの中で声が流れ始めた。
『こちらイーハトーヴ! これを聴いている人が居たら、誰か助けてほしい!』
……早口で、極めて憔悴している、女性の声だった。記録当時の状況が常軌を逸した修羅場であったことは想像に難くない。私は隣のイシハラの顔を一瞥した。鳩が豆鉄砲を食ったように、目が点になっていた。
『家にロクデナシが来ちゃったんだ。今はナガタくんが相手してくれているけど、多分太刀打ちできない! アタシはこれからアンカー作りを強制させられる! だから助けてほしい。場所は――』
只ならぬノイズを背景にのべつ幕なしに喋り続けていたその声は、一際大きい轟音によってかき消された。重い足音と共に、新たな声が割り込んだ。
『貴様の番犬は無力化した。これ以上の抵抗は無駄と心得よ、イーハトーヴ=サン』
……男の声だった。
……聞いたことのある、男の声だった。
『あ……あッ――』
彼女の声ならぬ叫びを最後に、そのログは再生を終了した。
「……いかがだったかね、諸君」
フォーアイズが椅子をくるりと回す。
「これってつまり、イーハトーヴは誰かに襲われて……その中で何とか記録したログ、ってことか」
とネオテリック。
「ご明察だ。そしてナガタはイシハラ=サンの下の名だ。つまり、イシハラ=サンが主人に迷惑をかけまいと抵抗している極限状況の中で録音したものだと思われる。だが……彼は今ここに居る。イシハラ=サン、覚えは?」
「……」
頭を抱え、考え込むイシハラ。やがて、細い糸を手繰り寄せるように、一つ一つ言葉を紡いでいった。
「……そいつは突然やってきた。イーハトーヴの世界に、突然土足で入り込んで……彼女を支配下に置こうとしていた」
「ふむ。それが……彼女がログで発していた『アンカー作り』というものだろうか」
「多分……そうだ。彼女は拒絶し、俺はそいつを退こうとした。だけど……無理だった。そいつはニンジャだった。桁違いに強かった……」
「なるほどな……で、イシハラ=サン。その襲撃者とは、一体誰だか分かるかね?」
「……」
首を横に振るイシハラ。
「それが……そこだけ分からねえんだ。また途切れている。型抜きみたいに。それ以外は何となく思い出せるのに、なんでだ……?」
「イブシ」
譫言めいて、私はそう言った。全員の視線が集まる。
そう。私は、あの襲撃者の声に聞き覚えがあった。それどころか、耳なじみの深い声だった。
「アレは……我が配下、イブシ・ニンジャの声だ」
(補遺:そういえば2周年を迎えていましたね。オメデトゴザイマス!別名義で何本か小説を載せてはいましたが、何だかんだここまで続いたのは初めてです。これからも少しずつ、アクタ・ニンジャの物語を紡いでいく所存です)