アーチニンジャ:ネオサイタマ奮闘記   作:コースト

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ザ・モーメンタリィ・インパルス #1

 あれから七日が経過した。

 その間に色々と見える範囲で分かったことを、今一度整理しようと思う。

 

「ハァ……オハヨ、イシハラ=サン」

 

 目が覚め、起床。寝ぼけ眼をこすり、乱れたキモノを整える。埃に塗れた空気を一晩中吸ったか、喉が紙のように乾いた感覚がする。今は……朝6時だろうな。家が納屋じみているため太陽は見えないが、もう体内時計で分かる。生活リズムは完全に固定された。大体6時に自然と起きられる。このイシハラのせいで。

 

「ああ……。朝飯食うぞ」

「アイ、アイ……ファーア」

 

 口をあんぐりと開けて欠伸をし、緩慢に立ち上がる。両腕を数回ぐるぐると回し、肩の凝りを申し訳程度にほぐした。

 

 ……こやつの名は、イシハラ・ナガタ。モータルだ。中肉中背の私に比べ屈強な体格で、頭二つ分ほど背丈は高い。どちらかといえば口数が少なく、自ら話題を切り出すことは少ないが、私の取り留めのない会話に付き合ってはくれる。だが身の上話はしないし、彼の方から話しかける頻度も多くはない。

 そしてこの時代における私の最初の知り合いで、ルームメイトだ。おいそれと無碍にするなど出来ない。とはいえ仲間と呼称するほど親密な関係ではない。それに、私がニンジャであることも明かしてはいない。

 本来ニンジャである……それもかつてモータルを虐げるニンジャであったこの私が、まさかこんな奴と同等の立場で一週間も生活するとは思わなかったな。最初はプライドが度々邪魔をしていたが……もう適応してしまった。悔しいことに。

 まあ、ニンジャ性を隠匿することは間違った選択肢ではないさ。下手に幅を利かせ恐怖心を植え付ければ、折角無から築けた対等な立場がふいになる。そうなったら面倒臭いからな。ただでさえ私はこの時代のことを何も知らないというのに。

 

「今日はここか?」

「待て……ああ、あそこに居る。もう少し歩くぞ」

「ハァ。いい加減疲れたぞ。おぶってくれないか」

「なら報酬として俺の分まで働いてくれ」

「連れない奴だ」

 

 朝餉を済ませた私たちは、一刻を惜しむように本日の現場へと赴いた。とはいえ、このドリームランド埋立地というのはどこまで進んでも色彩の無い瓦礫の大地しかない。

 その「現場」の判別基準は、同業者が居るかどうか、それだけだ。もしそいつが屑鉄を見つけていれば、そこから更に奥はだいたい未発掘領域だからな。

 ざっくりしたもんだが、実際そのやり方でしっかり収穫はあるし、今さら訝しむ理由はない。

 

「いつも思うが、鶴橋は使わないのか?素手で掘るのは骨が折れるだろう」

 

 労働時、互いに発掘領域を侵犯しないよう、少し距離を取って収集をすることにしている。

 同居とはいえ、資産は別管理だからな。

 離れると会話するのも面倒なため、何かパートナーに聞きたいことがあれば、訊くチャンスは今か移動時間にしかない。

 

「私のやり方があるのだよ、イシハラ=サン。それに鶴橋は重い」

「まあ、それもそうだな。今まで素手で何とかしてたしな……愚問だったか」

「ああ、愚問だ、愚問!もう、水を差さないでくれ!」

「ハァ、全く可愛げのない女だ。平坦だし」

「何だ?処そうか?」

「オラ、始めるぞ。日が暮れる」

「本当に処すぞ?」

 

 ……ところで、さっきモータルとは言ったものの、こやつには特異な点が一つあるのを忘れていた。その筋肉質な体格の印象に応えるかのように、無尽蔵の体力を持っているという点だ。あと、労働に対してごく意欲的でもある。この辺における「労働」などスクラップ集めぐらいしかないわけだが、とにかくそれをやり続けている。恰もそれが生き甲斐であるかのようにな。

 まあ、金属を集めれば集めるほどカネが貰える勤労のメカニズム上、その自由時間を惜しんでひたむきに労働に励む選択肢は理解できる。しかし理解し難いのは、その金を貯める素振りを見せない点だ。

 こんなスラムに落ちぶれる奴は皆、ネオサイタマに行きたがっている。私にとっては何もかもが未知の、あの大都市に。その為には種銭がいる。それを最低限確保するためにスクラップ集めに勤しまねばならない。金を集めるために働いてるんだ、全員もれなくな。

 なのにこのイシハラという男、この前予想した通り、ここにずっと骨を埋める覚悟でいるとみてほぼ間違いない。数日の調査で分かったことだが、ネオサイタマに行けば、缶詰より安い値段で缶詰より美味い食糧にありつき放題らしいんだ。なのにあえてここに留まり、千円のソレで食を済ますことを是とする。

 明らかにネオサイタマに行きたがってないんだ。

 詳しい話は後述だが、これは私にとって非常に都合が悪い。

 

 ……ここで私がそういった状態なのかも改めて整頓しておこうか。

 私の名はアクタ・ニンジャ。またはアッシュピット。平安時代に好き放題やっていたが、主にナラク・ニンジャによるよんどころ無い事情で不本意ながらこの2032年にタイムリープし、更にその折、始末の悪いことにニンジャ力の大半を喪失した。

 それを知らなんだ私は軽率に強盗を働こうとし、居合わせたモータルの家主に普通に返り討ちに遭った。ズタズタにされた。プライドごとな。ああ、今思えば、ここで早めにお灸をすえられたお陰で、今はそこまでモータル嗜虐欲が表出してないのかもしれない。

 話を戻そう。具体的に喪失した能力というのはというと、主に肉体に関係する部分が大半だ。ニンジャ脚力、ニンジャ聴力、ニンジャ反射神経。ニンジャになることで増強される技能は実に幅広いが、自分はそのうち、主に身体能力が関連する部分がモータルレベルにまで落ちている。

 ……逆に言えば、それ以外は無事なのだ。私のアイデンティティであるユニーク・ジツは問題なく使え、とあるニンジャの投げたスリケンを目で追えたことから反射神経も無事、視力も聴力も概ね無事。

 原因はよく分からない。分からないが…膂力に纏わる能力が弱体化していることから、この身体に何かしらの変調が出たのだろう。ネオサイタマではなく、このドリームランドという劣悪な環境に私が現れたことにも因果があると踏んでいいか。うーむ、前例がなさすぎて全く分からん。

 やはり、千年のブランクが足枷になっている……のが、定説だろうか。それではジツが問題ないことへの解釈がやや強引になるが……。

 まあ、この手のはそのうち分かってくるだろう。思案考察が趣味って訳でもないし、今考えるのはやめだ。無益だ無益。だいたい推理材料もないし。

 

「そろそろ腹が減ったな。アッシュピット=サン。昼、食うぞ」

「お、ようやっとだな。そろそろ掘り尽くしたところだったわ」

 

 イシハラが山積のスクラップと共に作業を切り上げた。私もこやつに負けず劣らずほどに積まれたスクラップを傍目に、ジツを行使していた手を休ませる。周囲には深く陥没した地面。底を注視すれば灰の池が臨めるだろう。

 

「毎回思うが……素手でよくそこまでやれるな?」

「ああ。非力で華奢な女子にはこのやり方が適しているのさ」

 

 もちろんこの穴はこれまで何度か描写した通り、チリアクタ・ジツによる産物だ。触れたモノを内側から高温高速で燃やし、灰に変化させるジツ。金属材とそれ以外が玉石混交しているこの瓦礫製の地面から金属を手際よく掘り当てるには、「それ以外」を燃やせばよいのだ。

 ……まあ、このジツが効くのは可燃物のみであるが故、石材なんかも残るがな。だがある程度淘汰されるため、屑鉄を集めるには圧倒的に都合がいい。私はこの横紙破りと言える方法で楽にカネを稼いでいる。

 無論、イシハラにはこのジツも明かすわけにいかぬ。故に私は素手で穴掘りをしていると解釈してもらっている。まあ……そうなると、何故掘った後に出来る瓦礫の山がないのかとか、色々不自然な点はあるが……こやつはそれで納得してるし、それでいいのだ。

 このイシハラっていう男、察しも物覚えも悪いしな。

 

「何にする?ミソ・スープか、激マズのラーメンか、缶詰か」

「お前……わざわざ私に訊くなよ。どうせミソ・スープ以外提案しても渋るだろうに」

 

 今は帰路についている。雲越しに太陽が真上に見えて、一番明るい時間帯だ。昼の労働を終え、スクラップを納品し、飯にありつく。このルーティーンは、ここ一週間安定して変わっていない。

 

「ご尤もだ。いや何、飽きてないかと思ってな」

「飽きてるぞ。だがもうその感覚にも慣れた」

「適応していってるな」

「そうかもな。だが私はそのうちネオサイタマに行くつもりなんだぞ」

「ああ」

「カネを貯めてな」

「ああ」

「……私としては、お前も付いてきてほしいんだが」

 

 私の当分の目的は、ネオサイタマに居を構えることだ。

 何故かと聞かれ答えられるほど確固とした理由があるわけではないが、まあ……このドリームランドという場所にずっと骨を埋めたくない、というのが一つ。あとは……私の喪失した力の行方とか、愛弟子のイブシ・ニンジャの生存の是非とか、調べたいことも山積だ。それらを情報収集するなら、こんな所より向こうの大都市の方がマシだろう……という、ぼんやりとした理由でしかない。

 とはいえ、様々な理由を鑑みても、ネオサイタマには向かうべきだろう。その為にも私の顔見知りで、現代人であるイシハラが付いてきてくれれば有難いのだが……。

 

「いや断る。行くならお前一人だ」

 

 やっぱりだ。にべも無い。

 

「ハァーッ……」

 

 本当に……頑固な奴だ。そろそろ踏み込んでみてもいいか。

 

「もう一週間以上も共暮らししている仲だろ?なんでこんな場所に留まってるんだ?そろそろ教えてくれてもいいだろう?」

「……」

 

 少しの間があった。

 

「元々ネオサイタマにいた。だがそこで憎たらしい目に遭った。だから行きたくないんだ」

 

 ん、案外あっさり教えてくれたぞ……?表面的な情報だけで、本当に知りたい部分は全く明かしてくれなかったが。憎たらしい目ってなんだ?そう訊こうとした瞬間、今度はイシハラが割り込んできた。

 

「はい、答えた。じゃあこっちからも質問させて貰おうか。俺をそこまでして連れていきたい理由は何だ?」

「…………」

 

 ん?

 これは……。

 

「アー……私はキョート出身で、ネオサイタマの常識を知らないんだ。それに人間関係もないし。未知の領域を一人で探検するのは……勇気がいるだろ?」

「まあな」

 

 いや……気のせいか。それかたまたまだな。

 

「だから……一緒に来てほしかったんだ。決して他意はなく、それだけの理由だ」

「成程ねぇ」

 

 ……今の質問に対しての返答、出す情報は多少分別したが、それでも嘘はついていない。私は、本能的に正直に返答した。

 何故か?この会話の流れが、古のニンジャ作法である問い返しそのものだったからだ。

 相手に質問をされた時、それなりの情報を与えれば、自由に質問を返すことが出来る。そうすると、相手側は礼儀として、どんな情報でも正直に答える義務が生じてしまう。これが問い返しの流れだが……こやつ、最小限の情報だけ吐いて、私に疑問を投げかけてきた。あたかもこの作法を予め習っていたかのような手際だった。

 いや、こやつにはニンジャ性も、ニンジャオーラも全く感じなかったぞ。とても……ニンジャとは、思えん。ウーム……まあ、問い返しは便利だが、作法が偶然成り立つ可能性もあるしな。偶々か、偶々。

 

「まあ、大体の事情は分かった」

「……要はお前、私が何らかの事情でお前をネオサイタマに連れ帰す使者だとかと思ってたのか?」

「アー……鋭いな。概ねそんな所だよ」

 

 うわ。こやつ……初対面の際のやり取りを覚えていれば、そんなわけないとすぐさま分かったろうに。いい加減ムカついてきたな。忘れてた方が都合は良いが、この鈍感っぷり……むしろ腹に据えかねるぞ。

 

「オイ」

「ああン?」

 

 私はイシハラを止めた。

 

「本当に初めて会った時のことを覚えてないのか?」

「……まあ、そうだな」

「何でだ?」

「言っただろ。俺は忘れっぽい体質なんだよ」

「……以前、お前の家に強盗が来なかったか」

「来たな」

 

 それは覚えているのかよ!

 

「アレは、私だよ」

「…………」

 

 イシハラが私をまじまじを見てくる。何だ?今さら私の顔に見惚れたか?

 

「お、思い出せないのか?そこまで聞いても」

「いや……」

 

 そして自分の顎に手を当て、したり顔を作った。

 

「ようやく言ってくれたなと思ってな」

「……は?」

 

 思わず眉をひそめた。イシハラは何食わぬ顔で続ける。

 

「最初から気付いてたとも。いくら何でもそこまで忘れっぽくはない」

「何で言わなかったんだ……」

「様子見していた。仮にも危害を加えようとした奴だったしな」

 

 うん……?いや、それは、何というかおかしい気が……。私が疑り深いだけか?

 

「……私を素直に跳ね除けりゃよかったじゃないか」

「お前、それは出来るか?周囲の視線もあったろうに、女の要求を断ったとなれば、俺は軽いムラハチを受けるだろ」

「そういうもんなのか……?」

「なあアンタ、自分以外の女を見たことあるか?」

「……」

 

 そういえば……いないな。ここにいるのは男だけだ。

 

「居ないだろ?女ってのはどれだけ出来損ないでも、少なくとも()があるからな。ここに左遷される奴は滅多に居ねえんだ」

「…………」

「お前、恵まれてる方だよ。話しかけた奴、皆愛想良かっただろ?貴重な女と話す機会なんだ。チヤホヤされてんぜ?」

「…………」

 

 んー……そうかぁ……どことなく違和感を感じていたが、そういうものなのか……。確かに……一回、口説かれたしな。そう考えると、今自分の置かれている環境が、急に薄気味悪く感じてきた。

 

「ま、つまりお前は割と偶像めいて見られてんだ。だから俺も断らなかった。改心してるんだったら本当に断る理由も無いしな」

「寝込みを襲う可能性もあっただろ」

「自慢じゃないが、俺は寝ていても警戒心が強くてな」

「つまり臆病ってことか」

「言うじゃないか」

「……ハァーッ」

 

 本日、何度目かわからない溜息が出た。

 

「なんかもう、拍子抜けしたよ。独り善がりで勝手に気にしていた自分がイディオットみたいじゃないか」

「へぇ、気にしていたのか」

「黙れ。つまり私を忘れたふりして様子を伺って、周囲に伝わらないように私が丸くなったのかどうか伺っていたと」

「ああ、まあ、そういう感じだ。一週間経ってもお前はずっと素直だったし、俺もそろそろ明かそうかと思っていた」

「…………」

「まあ、これも半分ぐらい嘘だけどな」

「そうか」

 

 ハァ、まあ安心した。それじゃあさっさと帰って……。

 

「……」

 

 ……一瞬歩もうとした足が止まった。

 は?今、嘘と言ったか……?

 

「……なんて言った、今……?」

「さっき言った事。半分本当だが、半分は嘘だ。ちょっとカマをかけてみたが、お前は効果覿面だったな」

「え、いや、ちょっと、待て」

 

 何だ?「覚えていた」という部分で欺いていたか?それとも「女だからチヤホヤされている」のが嘘なのか?こいつ……何だ?

 

「じゃ……じゃあ、私を思い出したのはついさっき、ということか?」

「その通りだ。それまでは本当に覚えてなかった。お前が白状してくれた時に即興で演技してみたんだが、どうだったか?」

「いや……どうだったと聞かれてもな……」

「ああ、お前が貴重な女だから優待されてるってのは、マジだ」

 

 ああ、そうなのか……。その部分が「本当の半分」なら、もう半分……私を覚えていたってほうが嘘か。整理できた。

 ……即興で二重に私を欺いたのか?嘘と本当も交え、説得力も持たせながら?こいつ……。なんて二枚舌だ。どんな胆力をしているんだ。

 あ、いや、それよりも!これが本当に嘘ならそれはそれで疑問点が浮かぶだろ!

 

「ああ、騙されるところだった!お前、じゃあ私のことを本当にたった一晩できれいさっぱり忘れていたってことになるだろ!?そんなわけないよな!?」

「あるんだよ、それがな」

「えッ……いやッ……!?」

 

 それを即答で返すか?しかも肯定でか!?その「忘れっぽさ」に何の事情もないのか!?ただ本当に忘れっぽいだけなのか!?

 

「……それに何の伏線もないのか?」

「昔っから忘れっぽいんだって言ってるだろ」

「そういう適当でズレた返答で思考を停止させにかかるのは止めろッ!」

 

 ああ、クソ……なんだこの独特な話術は。話の主導権を握れない。

 

「お、お前、今までもそういう風に私を掌の上で躍らせてたんじゃないだろうな?」

「本当にそうなら、今こうやって明かしたのは墓穴掘りの行動だろ。今までのは、お前がどの立場か見極めるためのペテンでしかないって。気持ちは分かるが信じてくれよ」

 

 ……それも私を信用させるための詭弁でしかない、としか思えないぞ、もう。

 ああ、クソ。もう、考えるのが面倒になってきた。というよりも、シンプルに腹が立ってきたな。

 スクラップの詰まった箱を置く。

 

「ちょっと、そこで待っててくれ。状況を整理したい」

「アア?……分かった」

 

 そして頭を抑えるジェスチャーをする。考えるような唸り声も上げつつ、周辺を軽く徘徊し……イシハラの横をすれ違うかに見えた……その直前、

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!?」

 

 ノーモーションで脛にローキックを放ってやった。気持ちいいぐらいクリーンヒットした。

 屑鉄箱を思わず取り落とし、痛みに耐えるイシハラ。骨が折れぬよう手加減したとはいえ、さしものこやつもこの苦痛には堪えるか。いやあ、愉快愉快。高笑いが抑えきれないな!

 

「アハハハ……ハハハッハハハ!スッキリした!」

「おうおう……派手にやるじゃないの。グッ……いてえ」

「ザマミロ!よし、まだお前の言い分に納得はしていないし聞きたいこともあるが、もうこれできれいさっぱりチャラだ!これに懲りたらもう生意気な態度をとるんじゃないぞ!」

「ハイ、ハイ……」

 

 私は自分の分の箱を再び手に持ち、痛みに喘ぐ(実際は俯いて呻きもなく耐えているが)イシハラをよそに瓦礫の平原を進んでいった。痛快な気分だ。あのイシハラにやっと一泡吹かせてやったぞ!どことなく軽やかな足取りで例の集落に向かって行った。

 話し込んでいる間にすっかり日が傾いてしまっている。今日のスケジュールは一時間ほど後ろ倒しのコースだな。夜の分の労働も早めに切り上げる必要がある。結果的に稼ぎ少なくなってしまった。残念だ。

 だが、読者諸君よ、誤解しないでいただきたい。これは私のせいではない、イシハラが自分の保身のために、余計な嘘を吐くからだ!だからここまで口論が長引くこともなかった!そう思うであろう?思うよな?

 

【続く】

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