えいりあん・ざ・ろっく! 作:galaxy
イメ画の奴眼鏡かけとらんやんけ……
訂正版上げるので、すみません許してください!何でもしますから!
あっ、どうも後藤ひとりです……。
現在私はライブハウスに向かっている最中。虹夏ちゃんが先導し、その後ろを歩く星野君の背中に私が張り付いている。……なんか、変な匂いだな。虹夏ちゃんは女の子らしい良い匂いがするし、私はカビ臭いけど、星野君の匂いはこう……無機質って感じだ。
そんな彼は物珍しそうにきょろきょろと辺りを見回しており、それを見て虹夏ちゃんが話しかける。
「海外の人からすると、やっぱり物珍しい?」
「あぁ、地球の文化には興味が尽きない」
「地球単位なんだ……。じゃあ、日本に来て一番良いなって思った文化は?」
「食事だ。ここの食べ物はどれも非常に美味だ。それこそ今まで食べたどんな物よりも。賞賛に値する」
「それは良かった! どの料理が一番美味しかったの?」
「む、それは難しい質問だな。……先日食べた唐揚げも美味だったが、やはり初日に食べたオムライスが最も印象に残っている」
「いいねー! 私も好きだよオムライス」
目の前で別次元のコミュニケーションが繰り広げられている……! えっ、二人って本当に初対面なんだよね? こんなに話が弾むものなの?
虹夏ちゃんは話の引き出し方が素人目で見ても上手だし、星野君は星野君で普段は仏頂面だけど別にコミュ障って訳でも無い。それに比べて私は……うぅ。
「あっ、ここだよ」
私が肩を落としていると、ライブハウスに着いた。マンションの地下にあるんだ。なんかアングラって感じ。流石に転ぶと危ないので、星野君から離れて階段を降りる。
中に入るとその暗さ、圧迫感に安心感を憶えた。うちの押し入れの中みたい……。
「へへ、私の家……」
「そうなのか?」
「違うよ!?」
周りを見渡すと他のバンドが談笑してたり、スタッフさんが作業している。……ピアス沢山付けてる人もいるなぁ。ちょっと怖い……!
「やっと帰ってきた」
「あっ、リョウ!」
奥から男……いや女の人か。中性的な見た目の人が歩いてきた。虹夏ちゃんの知り合いみたいだ。反射的に星野君を盾にする。
「この子は星野銀河君。で、その後ろにいるのが後藤ひとりちゃん。ひとりちゃんが今回サポートギターをしてくれることになったんだ」
「へー」
彼女は無表情でじっとこちらを見てくる。あっ、なんか雰囲気的に星野君と似たタイプかも。
「この子はベースの山田リョウだよ。私の幼馴染なんだ」
「どうも、山田リョウです」
「よ、よろしくお願いします……」
「幼馴染……確か幼少期を共に過ごした友人のことを言うのだったな」
「そうそう! 中学からはクラスもずっと一緒なんだよね」
「そうか。私に幼馴染はいないから、その関係性には少し興味があるな」
「……変人?」
「いやお前が言うな」
淡々とした口調でリョウさんがそう言うと、虹夏ちゃんが呆れ顔で突っ込む。こ、この流れに入る隙間が一ミリも無い……! コミュ力がたったの5しかない私には入る資格さえも……。
「ライブまでまだ時間あるし、スタジオで練習しよう。あと勝手に抜け出して店長怒ってた」
「げっ! 帰ってくる前に早く練習練習! ほら、ひとりちゃん行くよ!」
「えっ、あっ、はい……!」
「ごめん、銀河君はちょっと待ってて!」
「了解した」
どうせなら星野君にも着いてきて欲しかったな……。
壁にもたれかかっている彼をちらりと横目で見てから、私は虹夏ちゃんの背中を追った。
◇
私の名は星野銀河。惑星リゾルートから来た調査員だ。
後藤ひとり、伊地知虹夏、山田リョウの三人組を送り出してから十分が経とうとしている。その間に女子高校生と思わしき集団がこちらに視線を向けていた為軽く手を振ってみたところ、何やら顔を赤くして口元を抑えていた。一体なんだと言うのだ。
「あれ? アンタ見ない顔だね」
「む?」
不意に声を掛けられた私は、声がした方に視線を向ける。そこには伊地知虹夏と同じ髪色の歳上と思わしき女性が立っていた。いや、髪色だけでなく顔立ちもどことなく似ているな。目つきが彼女に比べて鋭いが。
「ここに来るのは初めて?」
「そう……いや、はい」
この空き時間中にも私は敬語についての学習を欠かしてはいない。まだぎこちなさは残るが、喋れないことは無いだろう。習うより慣れよ、というやつだ。
「私の名は星野銀河。伊地知虹夏の紹介でここにライブを見に来ました」
「……虹夏がとうとう男を連れてくるとは」
女性は何やら神妙な面持ちでそう呟く。
「もしや、ここは男子禁制の場所でしたか?」
「いや、全然そんなことはないよ。私は伊地知星歌、ここの店長。それよりここで突っ立ってるのもなんだし、こっち来な」
伊地知星歌に連れられてカウンター席に腰掛ける。「飲む?」と差し出されたパックのジュースを受けとるが、飲み方が分からない。仕方なく彼女の様子を観察してみると、背面にある棒を抜きそれを上から突き刺していた。
「……アンタ、もしかしてパックジュース飲んだこと無いの?」
「はい。この星の文化についてはまだ勉強している最中なのです。故に分からないことが多いのです」
「ふーん。最近の奴は変わってんなぁ」
見様見真似で棒を咥えてみる。……何も出ないぞ。
「吸うんだよ」
「……甘い」
これがりんごという物の味か。成分はどうなっているのだろう。そう思いパックを眺めているとある文字を見つける。
「このパックジュースは子供用だと書いてあります。貴方は見たところ成人女性では?」
「良いんだよ、この味が好きなんだから」
そういうものなのか。それに飲んでいる私も子供ではないのだから、言えたことではなかったな。
パックジュースを少しずつ堪能していると、伊地知星歌が私の全身を観察していることに気づく。
「……何か?」
「えっ!? いや、別に? ……その、星野だっけ?」
「はい」
「アンタ、虹夏とはどういう関係な訳?」
彼女は少し恥ずかしそうにしながら聞いてくる。恥ずかしがる要素などどこにも無いと思うのだが、どうしてだろうか。
伊地知虹夏との関係性か。
「先程公園で出会ったばかりです」
「一目惚れかぁ……」
「一目惚れ、とは?」
「一目惚れは一目惚れだろ」
スマートフォンを取りだし、一目惚れと検索する。一目見ただけで恋愛感情を抱いてしまう現象のことらしい。
まだ私が小さかった頃、クラスメイトの触覚の形がとても綺麗で見蕩れてしまった時のことを思い出した。あれも一種の一目惚れだったのかもしれない。
「よく分かりませんが、彼女にその気は無いと思います。私にもありません」
「ホントかぁ?」
「私が音楽について知りたがっていると聞き、彼女はここまで連れてきてくれた。それだけのことです」
「……アンタ、よく堅いって言われない?」
「……? そこまで硬くはありませんが」
ペタペタと自分の身体を触って確かめる。
「世間知らずで堅物で天然とか、どう育てればこうなるんだか」
「両親からは適度な愛情を受けながら育てられました」
「あっそ。まぁ……変だけど悪い奴じゃなさそうなのは分かった」
彼女はフッと笑みを溢すと、優しく私の頭を撫でた。その手つきはとても優しかった。
『☆◇¥#……』
……思わず故郷の母を思い出す程に。
「おっ、そろそろライブ始まるぞ。音楽の勉強したいんなら、しっかり見とけよ」
「……はい」
その言葉に引き戻され、私の視線は壇上へと向けられる。
「初めまして! 結束バンドでーす!」
伊地知虹夏、山田リョウ、それと……完熟マンゴーと書かれたダンボール? 後藤ひとりはどこだ?
「……なんだあれ」
「これがライブか……!」
「変な印象植え付けやがってアイツら……!」
伊地知星歌が頭を抱える横で、私は少し気分が高揚していた。照明が落ち、ただ舞台のみに光が当たっている。一体どんな音楽を私に教えてくれるのだろう。
伊地知虹夏がリズムを刻み始め、それに山田リョウと完熟マンゴーが続いていく。
瞬間、私の身体にぞわりとした感覚が駆け巡る。生まれて初めての感覚。……だが不快ではない。
曲が進むにつれて私の中のエネルギーが昂っていくのが分かる。私は音楽に対して全く詳しくは無い。しかし分かることがある。これは、確かに人々を熱狂させるに足る物だと。
小さな舞台の上、たった三人で始まったライブ。それに引き込まれるように私の目は釘付けになっていく。それはまるで閃光のように私の視界に焼き付いていったのだった。
◇
「私は今、初めての感覚に興奮している」
「どうしたの急に!?」
ライブが終わった後、私は思わずスタジオに突撃していた。
俯瞰的に見ればライブは失敗。他の観客達は退屈そうにしていた。しかし、私にとっては刺激的で興奮してしまう程だったのだ。
「いやー結構ミスっちゃったけど、銀河君が楽しんでくれたみたいで良かったよ」
「あぁ、とても良かった。……ところで、後藤ひとりは何をしていたんだ? 壇上にはいなかったようだが」
「ぐふっ……!?」
「どうした、何故吐血する」
「えっとね……一応ステージにはいたんだよね……」
伊地知虹夏の口から完熟マンゴーの正体が語られる。興奮は一気に醒め、思わず口からため息が溢れ出てしまった。
「だ、だって、多人数の前で演奏するのは初めてだったから……!」
「……」
「ひぃっ……いつにも増して冷たい視線が……」
「……とにかく、諸君らのお陰で私は音楽の良さを少し理解出来た。感謝する」
それだけ言い残すと、私はスタジオを出る。そして伊地知星歌にも「ありがとうございました」と一声掛けてからライブハウスを後にした。
「……結束バンド。次が楽しみだ」
私はそう呟くと、いつも軽い足取りで帰路に着く。帰ったらバンドについて色々調べてみよう。
「ほ、星野君! 置いてかないでくださ〜い!」
◇
地球調査レポート#2
調査に大きな進展があったので記録しておく。
私は今日、初めて音楽という文化に触れた。音楽は、私の想像を遥かに超える物だった。ライブで得た感覚はまるで閃光のように私の中に焼き付き、今もなおその熱が残っているように感じる。
私はこの感動を故郷の皆とも共有したいと強く願った。
今日拝聴した結束バンドの音楽は、ジャンルで言えば『ロック』に当てはまるようだ。一般的にギターサウンドを強調したロックは、その激しい演奏とエネルギッシュな歌声で聴く者の心を揺さぶるように出来ているらしい。
あそこに更に歌が加わった場合、一体どのような音楽が生まれるのだろう。
私は、それが知りたくて仕方がない。