転移したらおかしな怪獣娘たちのいる世界だった   作:クォーターシェル

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第1話 『恋愛!怪獣娘』

「よし!これでこのゲームは全クリだ!」

 

液晶画面の前でそう言う俺。俺が今プレイしていたのは所謂ギャルゲーだ。タイトルは『ウルトラ怪獣擬人化計画~恋愛!怪獣娘~』である。そのタイトルで察するだろうが、題材となっているのは人気と長い歴史を誇るウルトラシリーズに登場する怪獣達を美少女化させたシリーズ、『ウルトラ怪獣擬人化計画』だ。

 

このゲームのストーリーは擬人化計画でもメインになっているアニメとはまた別のストーリーで、ギャルゲーとしてはポピュラーな学園ものである。主人公は舞台となる円谷学園がある町に転入してきたという設定で、学園生活を送りながらヒロイン達と仲良くなっていくというもの。まあ、よくあるギャルゲーのストーリーだ。

 

難易度自体は低いのだが、登場キャラは多くてまたほぼ全てのキャラが攻略可能となっている。しかし円○プロもよく恋愛ゲームを出す選択に踏み切ったものだ。お陰で俺は夏休みを通してこのゲームをプレイしてしまったが。

 

「18禁版とか出ないかな……。いっそ要望を送ろうか……」

 

まあ、出たとしてもR-18版だろうから俺はまだ買えないが。18禁版『ウルトラ怪獣擬人化計画~恋愛!怪獣娘~』…………ちょっと気になる。

 

「まっ、とり合えずネットにレビューを書きこんどくかな」

 

勿論ネタバレは無しでだが。そんな事を考えているとエンドロールが終わり、画面にメッセージが表示された。

 

『全てのキャラのルートを攻略した事で、特別ルートが解放されました!プレイしますか?→はい いいえ』

 

「ん?特別ルート?」

 

特別ルートなんてものこのゲームに存在したのか?攻略サイトにはそんな情報微塵も無かったが。

 

「まあ、とりあえずはいを……」

 

『特別ルートが解放されました!プレイしますか?→はい』

 

『了解いたしました。これから特別ルートに入ります。是非とも素敵な人生を!』

 

……んん?なんだ?めまいがするぞ……。俺の視界がどんどん暗くなっていく……。

 

気が付くと俺は全く見知らぬ部屋にいた。周りを見渡して見ると、どうやらここは誰かの部屋の中らしい。今のところ言えるのはこの部屋の持ち主は俺に近しいセンスの持ち主だと言う事だ。俺は室内を探索する。部屋の広さや間取り的に此処はどうやらアパートの一室のようだがうーん、何処かでこの部屋を見たような気がするんだよな……。しょうがないので俺は外に出てみる。

 

ドアを開けると、俺の予想した通り俺の居た所はアパートの一室らしくそこそこ古びた感じのアパートが街に建っているのがわかった。この部屋は203号室か……、2階だな。とりあえずアパートの表に回ってみるか。アパートの表に回り、表札を確認すると『金城荘』と読めた。金城荘……?ちょっと待て、あの部屋の間取りにこのアパート名……俺の記憶が正しければ俺が先ほどやっていたギャルゲーに主人公の自宅として登場していたんだが……。

 

「いやまさかそんな訳ないよな……?」

 

と、俺は道路を挟んだお向かいさんを確認する。そこには『メトロン屋』と書かれた看板の商店があった。

 

「まさかのマジなのか……!?」

 

俺は、ゲームの世界に転移したとでも?

 

「……マジか」

 

俺が頭を抱えていると、メトロン屋から人が出てくる。俺のよく知っている相手だ。ゲームの話なのだが。

 

「メトロン……星人さん……?」

 

ウルトラシリーズではお馴染みの宇宙人であるメトロン星人だった。それも『ウルトラ怪獣擬人化計画』にて擬人化された姿で、である。

 

ギャルゲー『恋愛!怪獣娘』において、メトロン星人は主人公の向かいで商店を営んでいる設定だった。無論、彼女も攻略可能なキャラの1人である。それ以外にも商店で色々なアイテムを購入したりできる便利な扱いな立ち位置なのだ。こちらに気づいたメトロン星人は、

 

「おや、この間引っ越して来た子だよね?確か名前はハジメ君……だったかな?」

 

と言ってくる。ハジメ……、俺が『恋愛!怪獣娘』で使っていた名前だったな……。俺は本当にゲームの世界に来ちまったのか……。俺は取りあえず名前を訂正しようとするが……、あれ?おかしいな、自分の名前が思い出せないぞ?これかなり深刻な事になってないか?俺は取りあえず、

 

「はい。そうですけど……」

 

と話を合わせる。

 

「うん?何か考え事かな?」

 

「まあ、そんなところです」

 

「……まあいいさ。これからよろしくね!」

 

メトロン星人さんはそう言うと店の中に戻って行った。……まさか自分がギャルゲーの世界にやってくるとは思いもしなかったぜ。しかしこれからどうしよう……。そう思っているとメトロン星人さんが再び店から顔を出し、

 

「ハジメ君、そういえばもうすぐ学校の時間の筈だけどここで油を売っていていいの?」

 

学校か……、こんな状況で行ってる場合なのか分からないが、取りあえず流れに身を任せて行ってみるか?しかしどっちに行けばいいんだ?そう思ってると、頭の中に地図が広がり、学校への道が分かるようになった。

 

「……便利だな?」

 

そう呟く俺に

 

「どうしたの?」

 

とメトロン星人さん。それに対し俺は

 

「あ、こっちの話です。そうですね学校に向かいます!」

 

と答えて学校に向かう事にした。後方から

 

「頑張ってねー!」

 

とメトロン星人さんの声が聞こえる。俺は手を挙げてそれに答える。

 

「さて、どんな学校生活になるのやら……」

 

そう呟いて俺は学校へと歩き出した。……まあ、ゲーム通りに進むとは限らんが。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「うーん、なんだろう。彼とはほぼ初対面なんだけど……」

 

「彼の事を考えているとやけに身体が熱くなるなあ……」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

特別ルートを解放したらゲームの世界に転移してしまったらしい。うーん、こんなSFあるだろうか?取りあえず俺はこれから通う事になりそうな学校に向かう事にした。

 

脳内のマップを頼りに歩いていくと、科学特捜隊の基地そっくりな建物が見えて来た。あれを見ると、俺はゲームの世界に来たんだと否が応でも自覚させられる。あれが、主人公の通うことになる『円谷学園』の校舎だ。

 

「さて、ここからどうすべきか」

 

この学校に通う気は無かったのだが、しかしこうなってしまってはしょうがない。俺は取りあえず校舎内に入る事にした。正門の辺りに来ると、『恋愛!怪獣娘』では教師の1人という立ち位置になっているパワードバルタン星人が居た。パワードバルタン星人はこちらに気づくと、

 

「あーっ!ちょっと、もう時間的にギリギリよ!転入早々遅刻は感心しないわねえ」

 

と言って来た。やっぱり俺は『恋愛!怪獣娘』の主人公の立ち位置で転入生ということらしい。

 

「すみません。道に迷ってしまって……」

 

俺はそう適当な言い訳を言うが、パワードバルタン星人は疑わしげな目でこっちを見て来る。しかしここで押し問答をしても仕方がないと思ったのか

 

「まあいいわ、早く教室に行きなさい」

 

と言って校舎内に入るよう促してきた。俺はそれにしたがって校舎内へと入って行った。

『恋愛!怪獣娘』の主人公は、この学園に転校してくる所から物語がスタートする。そしてそこで様々なヒロインと仲良くなり、最終的に特定のヒロインと結ばれるというのが大まかなストーリーだ。とりあえず俺は教室を目指す。確か1年○組の教室だった筈……、

 

うん、あった1年○組だ。俺が教室に入ると教卓の前の席に座っていた子が話しかけてきた。

 

「やあ!君が噂の転入生君だね?あたしは『バキシム』だよ!よろしくね!」

 

ウルトラ怪獣の1体で細かいカテゴリになると『超獣』に分類されるバキシムだ。お出かけの時には異次元の裂け目のようなよくわからない構造の日傘を持っている。因みにファンの間では劇中でバキシムが初登場した際に少年に化けていたことから、男の娘ではないかとネタにされることがある。俺は

 

「ああ、よろしく」

 

と返事をしながらちらりと教室を見渡してみる。怪獣が擬人化してるので奇抜な服装の子が多い。そして女の子ばかりである。そう、『恋愛!怪獣娘』では主人公以外の男性は登場しない。テンペラー星人が連れているシンバルザル等のサブキャラの中に男性が声を当てているキャラも存在するものの、そういったキャラも性別が無かったりする徹底度だ。

 

「なんだか、馴染めるか不安だな……」

 

女子校の中に放り込まれた気分だ。まあ実際そうなのではあるが。その時パワードバルタン星人先生が教室に入って来た。そして、

 

「今日は授業を始める前に転入生の紹介をするわ。こちら、今日から皆の仲間になるハジメ君」

 

と俺の紹介をする。俺は

 

「ハジメです。よろしくお願いします」

 

と無難な挨拶をする。そして、先生は

 

「じゃあ、ハジメ君の席はゼットンの隣よ」

 

と言う。教室を見渡すと確かに黒髪ロングと触覚が特徴的な怪獣娘ゼットンの隣の席が空いていた。ゼットン。ウルトラ怪獣の中でもトップクラスにメジャーな存在である。劇中で初代ウルトラマンを初めて倒したという唯一無二の称号を持ち、ウルトラシリーズを知っている人間なら初心者でも大抵がその名を聞いたことがあるだろう。因みに『恋愛!怪獣娘』においても彼女のルートに入るには比較的高い難易度があり、全キャラの中でも好感度が沢山必要なキャラである。俺はゼットンの隣に座り彼女に

 

「よろしく」

 

と挨拶する。ゼットンはこちらを一瞥し、

 

「どうも」

 

と返してくる。うーん、ぶっきらぼうな子だ。まあ、ゲームでの彼女の性格を考えれば当然かもしれないが。俺は窓から外を眺める。怪獣達はこちらの事など気にせずに呑気に暮らしているようだ。この光景だけ見ていればここが人類にとっての異次元だという事をつい忘れそうになる……。

 

「それじゃあ授業を始めまーす」

 

先生が授業の始まりを告げる。あっ、今気づいたけど教科書家に置いて来たわ……

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

放課後になり、俺とゼットンは連れ立って歩いていた。先生に校内を案内する様に言われたからだ。それで、隣の席のゼットンが案内役となった訳である。

 

「一年生が主に使う教室はこんな所ですね」

 

と校内を案内するゼットンはそう言う。

 

「ああ、ありがとう」

 

と俺はお礼を言う。俺達は校内の部屋の1つに入る。

 

「ここは空き教室ですね。現在使われていなくて、物置として使っています」

 

とゼットンは説明する。

 

「成程」

 

と俺は相槌を打ち、

 

「じゃあ次行こうか」

 

とゼットンに言う。するとゼットンは

 

「ところで……」

 

と言う。なんだろう?

 

「貴方、私に何かしましたか?」

 

「何を言っているんだ?」

 

と俺は言う。ゼットンは

 

「貴方が隣に居ると、胸の辺りがその……なんかキュンとするのですが」

 

と言う。

 

「何を言っているんだ?」

 

と俺は思わずさっきと同じ言葉を言ってしまった。

 

「やっぱり何かしましたね?」

 

とゼットン。俺はそれに

 

「何もしてないよ!?」

 

と答えた。よく見るとゼットンの表情はあまり変わってないが、ほんのりと顔が赤い。なんと言うか、『恋愛!怪獣娘』で“彼女のルートに入っている場合の”表情そっくりである。そしてゼットンは俺の側に近寄るとこう呟いた。

 

「――キス、しましょう」

 

「えっ「ちゅう♡」んうっ!?」

 

次の瞬間には俺とゼットンの唇が重なっていた。

 

「んうっ、れろっ、くちゅ」

 

「んっ!?むうっ!」

 

ゼットンは俺の口の中に舌を侵入させて絡めてくる。俺はそれをなんとか引きはがそうとするがゼットンは離れようとしない。ゼットンの唾液が俺の舌に絡みつく。頭がボーッとしてきた所で、ようやく俺は解放された。お互いの口から銀色の橋が架かり、そして消える。ゼットンはトロンとした目になっており、そしてこう呟いた。

 

「キスってこんなに気持ちいいんですね……、もっと欲しいです」

 

なんかその台詞何処かで目にしたような……すると

 

「ッ!?」

 

突然頭が痛くなる。俺は思わず頭を抑えた。ゼットンを見やると彼女も頭に手を添えている。彼女にも頭痛が?そう思っていると、俺の脳内に記憶が走馬灯が如くフラッシュバックする。これは、『恋愛!怪獣娘』でのゼットンルートか……?彼女と迎えたイベントやエンディングの情報が頭に流れ込んでくる。しばらくすると頭痛は段々と引いてきた。頭を抑えながらゼットンの方を見ると、彼女にも同じ痛みがあったのか頭を抑えながら息を荒くしている。

 

俺は頭痛の余韻で頭がボーっとしてる中、ゼットンと目が合う。次の瞬間、俺の体勢は大きく崩れた。何かと思ったらゼットンが視界を占領している。彼女に押し倒されたらしい。

「ああ……、何故今まで忘れていたのでしょう?愛しき貴方との日々、何物にも代えがたい思い出、本当に愛おしい全て……」

 

ゼットンがそう呟くが、その意味が分からない。いやまてよさっきの頭痛とフラッシュバック……。そう思考する俺にゼットンは続ける。

 

「そうです。何かに阻まれてはいましたが、今こうやって貴方と触れ合うのも久しぶりですね……♡」

 

ゼットンが密着してくる。むにゅうと彼女の胸が俺の胸に押し付けられ形を変えるが俺はそれどころでは無かった。混乱のただ中に居た俺はゼットンの言葉の意味を考える。日々、思い出――そして、この世界はギャルゲーの世界。そこから1つの仮説が思い浮かんだ。……もしかして、個別ルートの記憶が彼女にも!?そうこうしている内にゼットンが俺に密着するのを止めた。至近距離に居るのは変わらないが。そしてゼットンは

 

「愛しています。貴方を、心の底から」

 

と俺に愛の言葉を囁いてきた。俺はそれに

 

「その、ちょっと待ってくれ。今は色々と混乱しててだな……」

 

とゼットンを制止しようとする。しかし、ゼットンは

 

「待ちません。それに私達はまだ、行き着く所まで行ってはいないでしょう?今までそんな事考えもしませんでしたが、先ほど貴方との記憶と共に“やりかた”が分かりました♡」

 

と言って、俺の身体……、主に下半身に注視する。その目にはハイライトが無く、ハートマークのようなものが窺えた。ゼットンは再び俺に近づく。

 

「いやほんとにまってその場の雰囲気でそういうことやったら絶対後悔するって話が――」

 

しかしゼットンは動きを止めることは無かった。そして……

 

「レッツ……、侵略です♡」

 




生牡蠣様許可ありがとうございました。

駄文閲覧ありがとうございました。感想お待ちしております。
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