手向けにカトレアを   作:さわたり

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最終話「さよなら愛しき面影よ」(3)

ついに大樹が今一度朽ち果てた。言葉を失うジーリオだが、しかし、彼の託した思いを無駄にはしない。

 

腕だけであった『滅び』はその全身を見せた。……だが、そもそも全身を含めてこのまえの腕と同じぐらい。イチムたちは、ここまで弱らせたのだ。

光の塊のような巨像は、ゆっくりとアリスにもイチムにも見えるシルエットを成す。

 

「……!」

 

全身から放った閃光とレーザーが騎士たちを無差別に吹っ飛ばす。だがもちろん対策をしており、吹っ飛んだ騎士たちもアンティゴネの持っていた光のシールドを持っている。

無傷でぶっ飛ばされた後は、盾をグライダー代わりに軟着地。今一度向かっていく。

 

そして、同じく放たれた光線を刃によるバリアで受け止めたジーリオが、餞の剣を掲げる。そのそばで、プラニスとリンが、星と録を強く握りしめ。

 

「イチム……応えて!」

 

録の剣の記憶、そして、星の剣の光を固めるほどのカトレアの力、そして……餞の剣という、大樹……イチムとのつながり。朽ち果てた今でも、その暖かさは伝わってくる。

 

辺り一面に花が咲くと、その花が光へ変わり、そして、光が剣へと変わる。録の剣の記憶が生み出した、もう一つの、自分の剣。

刃と餞で両手の埋まるジーリオは、剣に光が重なり輝きを増すだけだが……例えば、星の剣。プラニスの手には、光が複製した二本目が握られていた。

 

「イチム、アリス……あなたたちの想いが……死地へ飛び込む私たちへ、手向けにカトレアを咲かせてくれた」

 

駆け出す騎士たち、その全ての手に、イチムとガーデナーたちが与えた輝きが握られていた。

ジールオも、深呼吸ののち。

 

「カトレア突撃大隊、作戦開始!」

 

駆け出したジーリオの横で、ユリが夢の剣を振るう。迫る動物たち、融合ガーデナーたち、いずれも動物なら幻惑が効く。

 

「ありがとうございます!」

 

「お安い御用よ」

 

放った刃がそれら一体一体を丁寧に無力化。遠い敵は、餞の剣がツタでぶち抜く。

縛る暇はないので、今は振り切ることができればそれでいい。しかし、それで簡単に払うことができない、巨体の融合ガーデナーも現れる。

 

「団長、気を付けるんだ」

 

「トキワ!」

 

高速で駆け抜ける緑色の閃光が、両手の瞬の剣をぶん回し、一気に敵を引き裂いていく。

開いた道の先、大量の敵を打ち払うのに適任なのはまさに懐刀たちだ。納刀すると同時にヤナギとラヴィニアがゴリラの融合ガーデナーに剣を突き立て……液状化した弱点を斬り払えば、それは豆腐をぶっ潰すような一撃。最後の抵抗であるレーザーは、海の剣が防いだ。

 

「大丈夫?」

 

「は、はい」

 

「問題ないよ」

 

リンの呼びだす幻影と違い、本物のパトリシアはやはり器用。海の剣ふた振りで作った足場を、トキワに提供する。

そして、ぶん投げた光る水の剣は、プラニスに迫っていた機械を内側から水圧で破壊した。

 

「ありがとね★!!」

 

「どうも!」

 

かなりの巨剣だが、構わず二本体制でぶん回し、あたりに閃光を放つ。かなり無鉄砲に暴れまわる彼女なので危機は多いが、総力戦。それを補うのが、仲間だ。

 

「お気をつけて」

 

「あはは? シルヴァリアだ!!」

 

「ええ、僕ですよ」

 

目の前にいるのが光を気にしないプラニスなら、遠慮はない。鏡の剣が放った閃光が動物たちの動きを止め、プラニスが両腕をぶん回し、ついでに眼の剣の騎士たちも飛び掛かり、道を切り開き。

 

「範囲、広げますよ」

 

「おお! やったねぶっ飛んじゃう☆★!」

 

いつの間にか隣についていたサフランが藥の剣を突き立てると、星の剣が巨大な光の幻影をまとう。それを思いっきり振り下ろせば、道が開かれ。

同じ薬品を、また隣のソウジに与える。

 

「いよし!サンキューリワちゃん!」

 

「頑張ってくださ~い」

 

「トキワ師匠みてっか!」

 

「位置的に見えない。」

 

「あっそ。まいいや! ぶった切るぜ!!」

 

両方の鋭の剣がどんどんと伸び、威力を増し、胴無事に振りぬけば一気に半月状に機械たちが爆炎を上げる。

そんな彼の前に少し走りを緩めてマキナが現れる。

 

「前方の巨大機械は分析済み! 弱点は~あの伸びた眼!」

 

「わっかりやすくて助かる!」

 

言葉通り、前方のヤドカリのような機械へ、伸びた鋭の剣を連続突き! バチバチと悲鳴を上げながら倒れ込むそいつを、コルニカの機械が踏み台にした。

 

「マキナ、他に分析が完了しているのは?」

 

「左前方のトラ型!」

 

「テトラ、足止めして」

 

「もちのろん!」

 

両手持ちはさすがに止められ、融合させた輝きの剛の剣。多少体力強化の薬品を使っているのもあるが、成長の証かその腕の筋繊維をぶちぶち言わせることもなく、トラの脚を払った。

 

「やった!」

 

「チフキ、弱点は脳の位置の機械だから、じゃりって」

 

「了解! 行くぜ!」

 

チフキ相手には大してかみ砕かなくてもフィーリングで伝わる。コルニカの指示通りに頭部を削り、反撃の蹴りついでに足も削り上げ。

 

「シザーリィ。」

 

『了解』

 

後方で車両の上に居る、シザーリィ。狙撃は正確だ。

 

「よっしやったぜ!」

 

「気を付けて、次は、得意分野じゃない」

 

迫るのは、人間サイズ・人間体型の機械たち。それでも簡単にやられるわけではないが、コルニカの場合は小回りが利かない。

そんな彼女のもとに、銃撃が降り注ぐ。

 

「コルニカちゃん、大丈夫!?」

 

「問題ないわ。ニト、上に立って。」

 

「うん」

 

グルんグルん回るコルニカの機械の上で、銃撃。両手の磁の剣に光が宿り、放たれる銃撃は威力・射程共に向上している。そして回転を利用し、ワイヤーを巻きつけて一気に引き裂き。

ニトパールへ飛び掛かる一体は、本人が対応するより先にコルニカが握りつぶした。

 

「サクラさんキャッチして!」

 

「はい!」

 

飛び降りるニトを背中で受け止めつつ、サクラは前方の機械へ飛び回し蹴りをブチ当てる。迫る一体は体の上を滑らせ、後ろの対人戦闘部隊員が眼の剣で叩きつぶす。

 

「っはァ!」

 

「サクラ、横から来ていますわ」

 

「問題ありません!」

 

肘を打ち付け、そして融合ガーデナーには天の剣の斬り払い。……だが、操られていると知れば「悪」としての認識もしづらい。距離を取り、今度はローゼの突き。

ガーデナーの斬撃全てをかわし、簡単な足払いで姿勢を崩し……。

 

「剣術自体は見事ですが、動物の身体を制御できていません。『滅び』のやることは、ガキの積み木遊びと大差ないですわね、児戯です。」

 

頭を衝撃波でぶっ飛ばし、もう片手の貫の剣は心臓を貫き。その間に、迫る一体を貫き。両腕がまるで別の剣士のように敵を打ち払う。

そして、前方の敵たちを見据える。全て、クロエがその鎧で受け止めている

 

「そのまま、お願い致します」

 

「はいっ!」

 

彼女を踏み台にすると、密集していた機械人形と融合ガーデナーのもとへダイブ。あとは、やることは単純。傷ひとつなく、一体一体を貫いていくだけ。

クロエもその怪力で巨大な鎧の剣二本をぶん回し、大きく道を開いだ。しかし鈍重。迫る一体に鎧の展開が間に合わないが。……が、別の一撃が間に合った。風と火薬を混ぜ合わせた、乱暴極まる一撃だ。

 

「オヴィ殿!」

 

「僕の事、危なっかしいと言える立場ですか」

 

「……それは違う話だろう!」

 

やいのやいのと言い合いながら、戦う横で、ローゼのもとにも銀の一筋。振り返った彼女の前に道が開き、ローゼ、突き進み始める。

 

「お邪魔だったかな、ローゼ様」

 

「様はやめる! それに、ちょうどいいのです。負けることはありませんが、数が数なので足止めには十分なものがありました……ですから、頼りになります」

 

「あっは、嬉しいな、あなたにそう言われたら!」

 

いつもの飄々とした姿を繕いきれず、アドーネは純粋な笑みを浮かべていた。その横で「相変わらずっスね」などと笑いながらサリスが駆け出す。

二刀流で離の剣をぶん回し続ければ、敵たちが遠くへ吹っ飛んで行く。要は今は撃退すればそれでいいので、大活躍である。

 

「オヴィくん、ぶっ飛ばしちゃってOK! 俺ちゃんたちを彩る花火にしてあげて……✨」

 

「了ッ……解!」

 

ぶん投げた混の剣は炎、土、火薬。土色の暴風が巻き起こり、道を切り開いた。

 

 

 

「オレたちこれ役に立ってんのか?」

 

「知らない。でも、強いって感じする。行こう、アイ君」

 

地面に突き立てた二本の剣が盛り起こり、目の前の動物たちを吹っ飛ばす。そして張っておいた糸の罠が全てを巻き取り、引き裂き。

あくどい笑みを浮かべたその時、背後から融合ガーデナーの爪が迫っていた。

 

「……ん? なんですか御前達。なんでこんなところに」

 

それを助けた……いや、自覚なく押しのけたのは、アビスであった。

 

「っは……兄様が滅びる世界は嫌か」

 

「御前が兄様の話をするな」

 

そんなことを言いながら、アビスは剣を振るい続ける。

 

「……曰く兄様を見てなかったのは、僕の方らしいですけどね。何言ってんでしょうね、騎士の連中」

 

どんな顔をしているか、フロフキには分からない。

 

「目ざわりです。失せろ」

 

「来たのはてめーの方だろ」

 

そう毒づきながらも、フロフキはアイリーンを連れ、振り返らず駆け出す。一緒に戦う義理もないし、仲間だと思ったことなど一度もない。だが、『滅び』に立ち向かう落ちこぼれが他にも居ると知れれば、小さな勇気は湧いた。

 

「行くぞアイリーン!」

 

「ザコが命令すんな!」

 

「バカはオレの言うこと聞いとけよ!」

 

 

 

 

「そう言えば、ワカバ! 聞いたところ、何人かはこの戦いの後何をしたいか語り合い士気を上げたらしい」

 

「雑談~? 急にどうしたの」

 

裁の剣で動きを止め、シンプルにハサミとしてぶった切り。光の力で威力を増したのは憑の剣も同様で、見た目の変化はさほどでもないが狼の力がかなり増している。

ひとりひとりを足場に飛び跳ね、蹴り倒し、また背中合わせの姿勢で構え。

 

「我々のやりたい事を言っておこうではないか!」

 

「ああ、そりゃ……さ」

 

「隊長殿に」「サクヤさんに」

 

「名前を覚えてもらう!!」

 

そんなふたりの上を跳び越しつつ、魚の剣が金魚を呼びだす。二本で同時に呼びだすのは失礼と感じてか、これも重ねて一本の剣だ。

 

「あのさ、こういう大人数のところで叫ばれると恥ずかしいんだが」

 

「しかしだな」

 

後ろで話しているユウロンを置いて、魚の先導と己の剣術でもって突き進み。その横で、アルテルナが炎を放った。

 

「はァい色男」

 

「あんたは……焔の剣の」

 

「武器は覚えたみたいで嬉しいわ」

 

火炎の力は、この状況下では最大の力を産む。あたりを焼き払い、さらにその横で砂の波が暴れた。

 

「ガルザルク、壁作って」

 

「俺に指図を……」

 

「いいから」

 

状況が状況なら、カスティはそれなりに横柄だ。仕方なしに作った壁を針たちが飛び跳ね、そして針の剣が二本ならその量も二倍だ。

ちょうどいいことに、焔の剣の壁にもなってくれる。二倍の炎を浴びせながら、アルテルナは凶暴な笑みを浮かべた。

 

「野蛮な……」

 

「人のことを言えますか」

 

割り込んだのは、パスオンである。

 

「っは、嘘つき仲間がほざく」

 

「その話、いまするようなことじゃないでしょう!」

 

全身に鎖を巻きつけ、動きが縛られつつも誓の剣の威力はすさまじい。制約が増そうとも、それをカバーするだけの仲間がいる。

 

「狙えますか!」

 

『ええ。』

 

解体部隊と同時に、こちらも攻撃範囲。シザーリィの銃撃が、パスオンに迫った融合ガーデナーをぶち抜いた。威力も射程も上がっている。

 

そして、あたりを雷撃が駆け巡った。そのそばで楽しげにレレルが呪の剣をなぞる。

 

「いや~、いっつも撃ち抜かれて機械壊されて……最悪の必殺技って感じでしたけど、味方なら心強いですねえ」

 

「言っている場合か?」

 

「ゴールドバ~~グ! 頼もしいっすよ!」

 

「調子のいい……」

 

駆け抜けた閃光が、両手に握られた靂の剣を振るい前方の敵を一気に薙ぎ払う。取りこぼしはレレルが巻き取り、呪の剣で全て操ってしまう。

 

「ンハハハ! 愉快、愉快! これは気持ちいですねえ!」

 

「フン」

 

もくもくと斬り進める横で、段々と凍る敵が現れ始める。

 

「グリセレ・グリサコフ、貴様か」

 

「やァゴールドバーグ・パーガトリー。お元気か?」

 

「くだらん」

 

言いながらも、視線だけで「貴様はこっち」と分担が完了。より広範囲を、氷と雷が斬り払った。そもそも眼の剣と二刀流をするタイプなので、霜の剣二本も扱い慣れたものだ。

 

「グリセレさん! 助太刀します!」

 

「みんなも入ってあげてね~、うふふ!」

 

リナリアが追い付き、クワコがその後ろで部下たちを動かす。二刀流&二刀流。すこしグリセレを真似て逆手に持ってみると、これも案外悪くないとリナリア、斬り進め。その上をグリセレが飛び越え、少しどっきりしながらも、並んで連撃を放つ。

数が多く、押され気味になっとき、空を割いた剣が二本同時にあたりを薙ぎ払う。

 

「よォ~やってっか監察官殿!」

 

「フーシェ! 不本意だが、前に出て道を開け!」

 

「前に出んのは、俺じゃなくて剣の方だけどね!」

 

簡単な合図で敵をぶち抜き、そばで戦うドゥーゲンに迫る敵も、軽く串刺し。

 

「なあ、水晶つくりっぱでただの壁ってのも面白くねえだろ」

 

「別に壁なら壁でいいですけど……いや、任せます!」

 

テルトがドゥーゲンの黒水晶を引き裂きコウモリが舞う。鋭い石英の斬撃があたりを薙ぎ、どんどんと、前線を切り開く。

そして。

 

「行くよ、みんな!」

 

録の剣の力それ自体も引き上げられている。全員の剣の複製に力を割いてこそいるが、一瞬の一人召喚なら余裕だ。ローゼの突き、トキワの斬り払い、ジーリオの遠隔攻撃、自身の動きと連動させながら、今まで見て来た、不屈の姿を真似ていく。

 

……『滅び』は、もう目の前に居た。

 

「カトレア突撃大隊隊長アクエイディアのジーリオが命じる! 私に続けェ!!」

 

巨大な拳と光線をかわし、喰らっても何度でも立ち上がり、剣士たちは己の持てる力全てを振るう。蚊や蟻が群がるかのように、うっとおし気に振り払うが、それでも何度でも己の身体を引き裂く騎士たち。

 

「ぅおおおおああああ!!」

 

人間のものにも、動物のようにも、どこか楽器の音にも聞こえる、そんな咆哮を放って、全身から光を放ち……。吹き飛ぶ、騎士たち。……だが、諦めない。立ち上がり、もう一度構え。

 

ジーリオが餞の剣に呼びかければ、光の複製を通して、全員に声が届く。

 

「皆さんの剣を、貸してください!」

 

ジーリオが剣を掲げ、それに応えるようにそれぞれが剣を天へ突きあげる。遠くで、フロフキも、アイリーンもアビスも、仕方ないからと応え……皆、皆が剣を掲げる。

 

光の剣が空へ舞い、ジーリオの後ろに現れる植物の巨人のもとへ集う。剣を掲げる、上半身だけの巨人。

優しく、穏やかなその暖かさが、誰のものかジーリオは知っている。

 

 

刃、

餞、

録、

瞬、

楔、

涙、

海、

魚、

憑、

裁、

誓、

鎧、

拘、

混、

離、

機、

卸、

狙、

剛、

飛、

晶、

霜、

眼、

焦、

星、

藥、

鋭、

診、

貫、

天、

磁、

砂、

靂、

呪、

蝙、

鏡、

針、

焔、

響、

糸、

合、

夢、

 

そして、花。

 

他にも、数多の眼や、それぞれの剣が空を舞う。すべての剣をかたどった光が集い、それは、大きな剣のように。

 

「はァ!!!」

 

ジーリオの掛け声に合わせ、それぞれの想いが放たれる。まず、横に薙いで一撃。振り下ろして、一撃。

 

そして突きのように放てば、それぞれの剣が、思い思いの軌道で……自由な騎士たちのように、好き勝手に『滅び』をぶち抜いていく。

 

「行けェッ!!」

 

それぞれの想いと、声、叫びが乗せられた、剣たち。

 

「ぅ、お……あ、」

 

最後は、閃光、そして爆発。

 

『滅び』が、消え去った瞬間であった。

 

 

 

 

滅びを打ち倒し、何かが変わったかと言うと、あまりそうでもない。

 

融合ガーデナーたちの意思を尊重し、地下で暮らすという彼らには必要以上の干渉はしない。……それに、技術者のガーデナーばかりでもないので、遺跡の分析は相変わらず騎士たちの仕事である。

 

それに、『滅び』が好き勝手せずとも凶暴な動物は現れる。幾分か平和になったが、ジーリオのもとに差し出される書類も、ネチネチ文句を言うグリセレも変わらない。

 

「大変ですね、団長」

 

「残念ですがリン、あなたも大変ですよ。一部の黒百合は、刑務作業の一環として監視付きの戦闘員になったんです」

 

「ですから、人事としての仕事も増えると。分かってますよ」

 

疲れ気味に、リンは笑った。

 

「そうだ、パスオンやユリに頼んでいた調査、どうですか? 正式な進捗は、本人たちにまた聞きますが」

 

「ああ~……。団長と、アルテルナが予想した通りでしたよ」

 

「つまり、ガーデナーが匿っていると」

 

「英雄の一員として迎えているという感じらしい……けど調査中である、と言う感じらしく。最新の話じゃないんで、細かいことはパスオンに」

 

「ありがとうございます。やはり、ガーデナーのもとに、黒百合が」

 

「組織的ではなく、あくまで居場所……住んでいる村、ぐらいの認識だと思いますけどね。でないと、アイリーンとフロフキがそこに居るのは、変ですし」

 

「あー、二人もそこですか」

 

悩ましげにこめかみに触れつつ、目に写ったアドーネの人事資料で、考えが動く。

 

「アビスは……」

 

「いまだ不明です」

 

「…………なるほど。」

 

悩みの種は消えない。ジーリオは、もう露骨に大きなため息をつくようになった。

 

「……ほら、僕たちが守った世界ですよ!」

 

彼女を元気づけるように、リンは窓へと手を広げる。果てしない森の広がる、ガーデン。

美しいという思いは、何があっても消えない。

 

「しかし、先にこの星にいたのは『滅び』の方であったと言います。あの時は奮い立つことができましたが……」

 

「僕たちが考えても、仕方のないことだとは思いますよ。ああするしか、なかったんです」

 

リンはそう言うと、飾られた花をひとつ手に取る。

 

「せめてもの償い……じゃありませんけど、滅びに供えてみませんか?」

 

「……そうですね」

 

ふたりは、長めの休憩も兼ねて列車に乗った。

ジーリオは、よく気まぐれに中央部の大木へと寄る。中央拠点建設用に駅を作っているが、動物や機械が多くあまり工事は進んでいない。

 

ともあれ、ジーリオは小さな花を大樹の前へと置いた。

 

「イチム、アリス……そして『滅び』よ」

 

「……」

 

非道な手段も使ったし、それに憤ったし……それでも『滅び』は生きるために戦った。誰も捨てることのできないエゴ。

死んで譲るなどと言うのは、折り合いをつけたとは言えないだろう。

 

ジーリオとリンは、ただ弔いを送り、目を閉じた。

 

今までの数多に、想いを馳せながら。

 

 

 

 

 

おしまい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「塔は……『滅び』への勝利? でも、結局やることがあまり変わってないから不自然よね。本当にそれだけだったのかしら」

 

ジーリオは時折、そんなことを独りごちる。

 

当然答えも出ないので、彼女は研究室のひとつへと向かった。何か成果がないかと、余裕を作っては休憩がてら眺めに行くようにしているのだ。

今回はハリーと連絡を取ったようで、彼女が鋭の剣について話を聞いている。

 

「ハリー。いらっしゃい」

 

「おお、団長! 今度、マクベスと来る予定なんですよォ。彼の巨体で入れるか次第だけれど……まあ機械の納入口ならいけますね。いつも歓迎してくれてありがとうございますねえ」

 

「いえ、技術者の方に話を聞けるのは嬉しいので」

 

「ンマ、ガーデナーの主幹技術であるナノマシンについては、根本を知るわけではないですけどね。応用技術に口を出せた程度なもので」

 

そんなことを言いながらも、鋭の剣に対するアドバイスはやはり興味深いもののようでソウジは楽しげだ。どこかほほえましく眺めたジーリオのもとに、珍しく焦りに焦った様子でマキナが飛び込んだ。

 

「団長……団長見っけた!!」

 

「マキナ?」

 

「これ、見てくださいよぉ!」

 

マキナの差し出すモニターに、ウサギの融合ガーデナーが映し出されている。……豊かな黒髪と、その幼げな顔立ちの男。ジーリオは奪い取るようにモニターを掴んだ。

 

「……イチム!?」

 

「ガーデナーは、なぜかイチム・リリィズをなんか、崇めてる?みたいで……」

 

ざわつく二人のもとに、ハリーがにゅっと首を突っ込んだ。

 

「これは……排斥派の拠点ですねえ」

 

「排斥派?」

 

「地上を、ガーデナーが奪い返すと息巻いてる連中……今のすっくないガーデナーだけで保守できるような土地に見えんでしょうかねえこのガーデンが」

 

呆れたような彼女の言葉を聞き、ジーリオは青ざめた。

 

「滅び相手に力を使い果たしたガーデナーを、サルベージ……まあ助け出す力を持ってる技術者がいるみたいでしてねえ。…………イチム・リリィズもそうでしょねえ」

 

「助けて……それから、」

 

「ンン……洗脳してるのか、そもそも記憶とかないのか。単に説得? よくわかんないですけど、なんか、このひとらの側に着いてるんですって」

 

皮肉なことに、アルテルナを数百倍過激にしたような連中に、イチムは囲われている。……そもそも、イチムそのものなのか?

 

汗が伝うジーリオだが、一度深呼吸。

 

「調査を、しましょう」

 

彼女は、餞の剣を握り締めながらも冷静にそう告げた。

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