手向けにカトレアを   作:さわたり

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第三話「居場所と望み」(2)

「オヴィは、……まあいいや、とにかく準備してて! 周辺は巻き込まないように。攻撃は続けて!」

 

「了解です」

 

「マキナさんは回避に専念……でも、出来るときにはアレを!」

 

「りょ~かいっ」

 

指示のもと、動き出す二人。オヴィが直接混の剣で叩き壊し、その様を眺めつつ、マキナは残念そうに構え。攻撃をいなすぐらいは、マキナの戦闘力でも可能だ。

そんな中、少し遠くから駆けだしてくる、一体。

 

「マキナさん行ける?」

 

「もちろんだよぉ!」

 

その目をキラキラさせたまま構えたマキナの武器、眼の子剣と合わせて装備する……『診の剣』だ。

飛び掛かってくる勢いをそのまま利用して、小さな刺突剣であるそいつを突き刺し。マキナの脳内に、どわっと流入する情報たち。……たった今突き立てた機械の情報である。

 

「名前はぁ~、ああ、古代ガーデン語で読めないなあ! っははは、調べたいことが増えたねぇ!」

 

「どうすれば有利にいきそう?」

 

「ん……燃え、ああ、いや……そうだねえ、低温に弱そうだね。駆動部以外が冷やされるのに弱いみたい」

 

「……。そっか、オヴィ、低温は用意できる? ……いや、さすがに難しいか」

 

「ふふん! それがねぇ~、できるんだあ! この子たち、クーラント(冷却液)があるでしょ?」

 

「なるほど、それを取り込めばいいわけですね」

 

オヴィが、落ちていた機械に剣を突き立てる。その柄の一部が水色に灯ると、続いて爆薬を取り込む。……彼なりに、迷いながらも。

とりあえず、『実験』をしたくなった。……言い訳付きの反抗心なのかは、分からないままだが。

 

「っは!!」

 

「オヴィの事だからヤバめのことしてくると思う! マキナさん離れて」

 

「なんだか僕の扱い、雑じゃありませんかねえ……!」

 

ともあれ、予定通り低温、爆散。

一瞬で霜が広がりつつ、騎士たちもその肌の霜を払い。……機械たちは、動きを止めた。

 

___作戦終了

 

「……上手く行きましたね」

 

「あっはっは! やっぱりねぇ。ふふふ、優秀だなあキミは……」

 

マキナ、優しく診の剣にほおずり。呆れて見ていたオヴィの方へ、ゆっくり向き直る。

リンが少し遠くで他の騎士と話しているのを見ると、無邪気に笑んで。

 

「この子たちが冷気に弱いのは本当なんだけど、ふふ、本当はねぇ、炎の方がよく効くんだぁ」

 

「……そうですか」

 

「でもね、私はそれは提案しなかった! なんでかって言うと……エッヘヘ、貴重な研究物が壊れたらイヤだから」

 

愛おしそうに小型機械を持ち上げ、マキナは尚も笑う。

 

「つ~ま~り~、相手のやりたいこと……今回ならぁ、「君にあんまり暴れてほしくない」っていうのとぉ、「ここを壊してくほしくない」、っていうのかな! それに添わせちゃえば、偉い人なんてお話聞いてくれちゃうんだから!」

 

「勉強に、なります」

 

いや、違う。

そんなことは、知っている。……オヴィは、後先考えないとか、自分の行動がどう思われるか気にしないとか、自分ならやれると無謀に思っているとか。そういう、まあ例えばソウジのような……そういうタイプのアホでは、ないのだ。

 

なら、なぜマキナのような立場になろうとしない?

 

どうして、ヘレニウムという場所で、身動きを固められるのを良しとする?

 

自問自答は、最終的に心のハッキリしない部分をぐにぐにと押すだけであった。

 

「ねえー? ねえ、君ってば!」

 

「……はい?」

 

ボーっとしていると、声を聞き逃す。彼の前で、マキナはおーいと手を振っていた。

 

「ふふん、君……なかなか好奇心旺盛じゃない? 私も同じなんだよね! どうかな?君の面倒ごとを遠ざけてあげられそうだけど……ふふ。私の剣になる気はないかなぁ!」

 

「剣、に?」

 

「出た、マキナさんの勧誘文句。優秀な騎士を見ると、自分の護衛につけられないかって口説き始めるんだよね、このひと」

 

「そりゃあ、私は戦いの担当じゃないからね」

 

リンの話す様子と、にこにこしたマキナをオヴィは交互に見る。

……そう、ちょうど転がってきた。自分の居場所を、より都合よくできてしまう提案が。

 

『ご不満があれば、再配属も可能ですよ。……騎士をやめるよう、ご両親に取り合うこともできます。』

 

ジーリオが語った言葉が、突然蘇る。

かつて……荒れていた時、声をかけてくれたのは、アドーネ隊長だ。いろいろ庇ってくれたりもしている。……彼の言う事なら、まあ、聞いてやって良いという気もする。

その感情がそもそも、反抗のゴマカシなのではという自問に、明確な自答はできないが。

 

「僕、は…………」

 

思案。

……マキナの手を取る自分の姿が、少し見えて。

 

その一瞬を、振動が弾き飛ばした。

 

はっと顔を上げたオヴィの目線が、他の面々と重なる。頷いたのちに駆け出し、遺跡から出たその瞬間。

 

「うわぁ!」

 

土煙。

 

振動。

 

衝撃。

 

そして一瞬の、静止。

 

騎士たちが見たのは……いや見上げたのは、巨影。

あまりにも巨大な、木造機械であった。あゆみ進む四角い巨躯が、見下ろした。

光る一つ目が、さらにギラリ。

 

「危ないッ!!」

 

オヴィが咄嗟に取ったのは、木とバネを使った混の剣によるカタパルト。リンとマキナを弾き飛ばしたそこに、鋭い閃光。

 

「光線と来たか……」

 

「うっひょ〜〜!!! これは調べがいのある子だねえ!」

 

「何を喜んでるんですか」

 

距離を取って構え、一行は戦闘体勢へ。

さて、時を同じく。

 

ジーリオは北拠点の屋上から、前線拠点を見守っていた。

 

「……どうする? 団長」

 

そばに立つ緑髪の女は、鋭く険しく、……しかしどこか掴みづらい視線を同じ場所に向けていた。

ここからでも見える、数十メートルを容易に数えるであろう巨大機械。

 

「解体部隊には要請がすでに回っています。……ああ、そうですね、一応なのですが。」

 

「ああ」

 

「大事を取り、対象『第陸八足巨級防衛機械』沈黙までの間ナナカマドの出動判断の決定権を隊長であるあなた……トキワ・カシに移譲します。」

 

「了解」

 

「まあ……彼らが、」

 

ジーリオは、少し揺れる風を前にしながらも眉を動かす様子はない。

 

「クリサンセマム解体部隊が出れば、あなたや我々の出る幕はなく終わるでしょうけれど。」

 

 

 

 

 

一撃目が、機械にぶち当たる。

組みついての()()()()()で、その防壁が一気に削れ落ちる。

 

「……来たっぽいッ! 解体部隊!」

 

「僕たちはどうしますか?」

 

「周辺がかなり大変なことになるし動物たちも気が立つだろうから、各々で前線拠点に戻っておこう。だから僕の指揮する作戦は終了!」

 

頷いて去るオヴィと、解体部隊に協力する気満々のマキナ。……まあ、実際解体部隊の作戦に連れ出されることも多い身だ。

リンも、オヴィともども拠点に戻って俯瞰しようと。そんなタイミングで、すれ違うのはコルニカ。深緑の長髪を揺らしながら、彼女はリンの方を向いた。

 

「……リン。…………あなたが、指揮をすることもできるけれど」

 

「いえ、コルニカ隊長にお任せします。……さすがに、経験値が違うので」

 

「……うん。わかった。もう、いいわ。チフキ」

 

「了解ッ!」

 

敵の表面をいくらかボロくし終えたチフキが、卸の剣を担いで着地、コルニカの隣で次の指示を仰いだ。

 

「私がやるから、別の箇所……特に、関節付近を中心に……時間稼ぎも」

 

「行ってきま~すッ! すりおろすぜ〜!!」

 

また木を伝って駆け出すチフキを見送ると、コルニカは懐からナイフを取り出す。

木と金属部品と、ワイヤーの塊のようなナイフこと、『機の剣』。それをその腕の小手に沿わせれば、仕込まれた遺物から小さな光と信号が放たれる。

 

「……」

 

頭に装備した木製のカチューシャのようなものに触れれば、口と鼻、顎を覆うマスクが出現。

そしてほぼ同時に、人の身長を優に越した、機械の箱が現れる。

機の剣は、鍵。……その機械へ突き立てて捻ってやれば、みるみるうちにその機械の形状が変わっていく。……人間の乗り込む、パワードスーツに。

 

「ありがとうチフキ」

 

コルニカの乗り込んだそれは、巨大な拳と刃を装備した機械。

機械vs機械、開始。敵の巨大機械に比べればネズミほどの小さなものだが、それでもその一撃は、巨大。薙がれた剣の一撃で、少しだけその姿勢が歪む。

 

「マキナ。……何処が……弱点か、見れる?」

 

「え? それはもちろん見れますよぉ」

 

「じゃあ、いいかしら?」

 

「え? ……あ、あれですかぁ?」

 

「……」

 

「……仕方ありませんねえ、私が、」

 

全てを言い切る前に、事は起こった。

コルニカがマキナを掴みぶん投げたのである。情けない声を上げつつ、マキナ、必死に機械の頭上に着地。

眼の剣を突き刺して、必死に耐えている。

 

「わわわっ、私こういうのは苦手だからあ!! 長くは持ちませんからね!!」

 

「うん。頑張って」

 

「はいはい頑張りますよぉ!!」

 

コルニカの装備には通信機能がある。

機器は発掘量も多くないし、開発も楽ではない。マキナが小さな通信機を耳に取り付けたのも、解体部隊との作戦が多いことの証左と言える。

 

診の剣は、刺す時間に応じて出てくる情報量も変わってくる。時間を稼ぐのは結局必須である。

 

「……!」

 

時を同じくして、オヴィ。

彼とリンも、気の立った怪物や機械に包囲される事態に。……オヴィの剣はそう簡単に同じ攻撃を連発はできない。疲弊が見える中段々と二人は追い込まれていく。

 

しかし、それで終わるわけがない。

 

リボンのような、薄い銀色が這うと、一瞬で機械たちが拘束。

簡単に組み伏せられ、同時に動物たちがぽんぽんと彼方に吹っ飛び始める。

 

「……来たみたいだね」

 

事態を理解したリンが下がり、録の剣を握る。

しかし、一瞬の思案ののち笑んで脱力。そんな必要はないだろうと、気づくのであった。

 

「アドーネ隊長、任せても?」

 

「当然さ……この俺ちゃんにお任せあれってワケ」

 

相変わらず、小型の敵の群れなら慣れたものである。リンも状況の観察と伝達を任され、腕の装置を展開。

 

「リン君、あとはどれくらいかな……!」

 

「向かってきてるのは12体ほどです!」

 

「オーケー、必要なのは撃破じゃなくて撃退だから、深追いはしないことね。じゃあ、みんな奇々怪々追い払いハッピー作戦、開始……! サリスくんは潜り抜けたうえで、第陸八足巨級防衛機械(ビッグマックスゴリクモ君)とも拠点とも違う方に飛ばせるかな?」

 

「はいっす!」

 

「オヴィ君はビックリさせて。君の好きなように」

 

「了解しました」

 

「アドーネ隊長の7時方向、ダングルスクワールの大型来ます!」

 

振り返ることなく、目の前の数体を一気に拘の剣で流すのみ。

そう、彼は分かっている。自らがここまで育て上げた部下が、どういう行動をとるのか。どの位置で構えているときどう出るのか。

 

「邪魔です」

 

混の剣、本日二度目の爆薬と落ち葉の欠片の要素を使い、かるい破裂を巻き起こす。音に驚き硬直するダングルスクワール。

駆け抜けるサリスを一瞥すると、オヴィはまた別の敵の方へ。

彼も、仲間たる者の動きは知っている。サリスに吹っ飛ばされたスクワールを一瞬だけ見ると、オヴィは目の前の機械をアドーネの方へ蹴り飛ばした。

 

「頼みますね」

 

「俺ちゃん、頼まれました✨」

 

「うりゃ~~~~!!」

 

回し蹴りで吹っ飛んだ機械を、片手間にリンが踏みつける。

オヴィの適当に吹き飛ばした先で、アドーネは既に構え、敵の逃げる先を作っている。

サリスの懸命な振り回しには、横やりが入らないようにアドーネが敵の動きを制している。

 

「……さすが」

 

思わずリンは息をのむ。俯瞰することで分かる、アドーネの強さ。

直接戦闘であれば、おそらく彼より強い面々は居るだろう。撃破をこなす意味でも、プロフェッショナルは多い。

……だが、複数の敵を複数の人員で捌く処理能力においては、彼は右に誰かを立たせることはそうないだろう。

 

ヘレニウムの戦いは、すぐに済んでしまった。

 

「……あとは解体部隊の仕事かな」

 

「僕、解体部隊の戦いをみれる場所探してくるので!」

 

そそくさと立ち去るリンを一瞥して、いつも通り気取ったお別れを告げて。

ひとまず、やるべきことが終わり。……そうして、彼はオヴィの方を向いた。

 

「これ、親御さんから手紙だって」

 

いつになく真剣な彼から、オヴィはゆっくりと、その手紙を取る。彼は、どこか遠い目で笑い。

 

また時を同じく、解体部隊。

弱点の探索を終えたマキナを、よじ登ったコルニカが手早く回収。素早く安全な場所に逃がしつつ、マキナは観察をやめない。……ついでに、そのまま研究したい機械が今"解体"されている事実に唇をかむわけでもあるのだが。

 

「隊長、そろそろどうかな!?」

 

「……位置が微妙ね。周辺の装甲は削れる?……位置は、……なんか、あの辺よ」

 

「おっけ~!」

 

ヘレニウムの無言の信頼ともまた違う雑な指揮だが、チフキの野生の勘と、そう遠くないチャンネルらしい。

チフキが飛び降りながら削った位置で、コルニカは問題なしと告げた。

 

「……邪魔は、させないわよ」

 

後ろから飛び掛かる小型機械を握りつぶしつつ、コルニカ、機械へと飛び掛かり、蹴り。

少しだけ揺れたのを確認し、質量の蹴りを回避。光線も全て剣で弾きつつ、また近くの遺跡の上に着地。

放たれた足をむしろ踏み台に飛び上がると、チフキの削った部位へ刃を叩き込む。……まあ、弱点である演算部には遠く届かない。

 

だが、それでいい。

 

コルニカがそのまま関節……これもまたチフキがすでに削った箇所に飛び掛かりつつ斬りつけ、大きく動きを制限。次飛び掛かった関節……ああそうだ、これもチフキに削ってもらった位置。

すべて、予定通りである。

 

「……おとなしく、しなさい」

 

そのまま、刃をねじ込み、大きく姿勢を崩した機械。

だがそれで終わる敵でもない。今度は、露出したパーツに、光が収束し始めた。……目線の先は、前線拠点。

 

それでも、コルニカは冷静。ひたすら冷静に。その耳の通信機に向け。

 

「今よ。シザーリィ」

 

瞬間。

 

ひとつ、線が走り。

 

まっすぐ駆け抜けて。

 

……それが、放たれた一本の銃撃であることに気づくのは、そうかからないことだろう。

同時に、内部の油圧装備が過熱。引火は防がれながらも、気化の膨張により、機械はべこべこと音を立てながら壊れていくのであった。

 

「作戦終了。……お疲れ様」

 

機械を脱ぎながら、コルニカはチフキとマキナへと頷き。……最後に、仲間、シザーリィの待機する狙撃位置へ向かうのであった。

 

……前線拠点の屋上で、二人の男が、それを眺めていた。

 

「……おれたち、……その、出番、…………なかった、ですね」

 

「まあ、少なくとも、僕らが複数人で出る事はなかっただろうからね」

 

「……結局……どっちかは、出番なくなってた、って、話ですか……?」

 

「そうだね。遺跡には機械だけじゃなくておそらく巨大生物もいるし……こっちは騎士団もなおさら対処に慣れてないわけだろ。となると」

 

「……おれたちが、呼ばれる。」

 

「あくまで、可能性だけどな」

 

双眼鏡を片方に渡すと、男は……制服に褐色のリボンを通している方の、男は、踵を返し階段へ向かっていく。

 

「……ぇ……っと、もう、戻ります?」

 

「うん。アレの撃破が目的だから、多分隊長から待機終了が出される」

 

君も来ないのかという視線を受けて、もう一方……赤紫のリボンを通した彼も、駆け寄る。

 

「じゃ、じゃあ……終わったらやっぱり、飲む、感じですか?」

 

「僕がそうじゃなかったことあるかな」

 

「へ、っへへ……確かに…………」

 

 

 

 

 

 

「そうだ、答えを聞かせてもらえるかな!」

 

「……ああ、マキナさん」

 

作戦が終わり、平穏の戻る拠点。

マキナは、襲撃でうやむやになった『自分の剣になる』という誘いの答えを求めていた。

 

「そう、ですね。あなたとは気が合いそうですし……いえ、少し奇特な方ですが」

 

「えーそれ本人に言っちゃうかな~」

 

「まあ、ともあれ、……この前の一件で僕は研究という物が楽しく、まあ、言えばワクワクする物だと確かめることが出来ました。考える機会をあなたがくれたと言ってもいいでしょう。ありがとうございます」

 

「え、それじゃあ!」

 

眼を輝かせる相手を見て、オヴィも笑んで。

 

笑みながらも。

 

「すみません」

 

そう、笑んでいる。彼は、はっきり、次の言葉を告げる理由があったから。

 

「僕には、僕にふさわしい居場所があるようですので」

 

「まあ、そうだよね~……。でもいいの? 君の感じだと、また怒られちゃうんじゃないかい?」

 

「……少し認めたくないのですが、…………まあ、それが楽しい側面もあったんだと、思ってるんです」

 

「なるほどねえ」

 

ちぇ、と悔し気に言いながらも、軽い「それじゃあまた」と一緒に、相変わらず楽しそうにマキナは去っていく。

オヴィはその様子を眺めつつ、向かうべき先……と言っても寮なのだが。

ともあれ、歩み始めて。

 

そこで、ジーリオに声をかけられた。

 

「……団長?」

 

「お急ぎでないならでいいんですが……。」

 

「ええ、大丈夫ですよ」

 

「その、手紙とか……前お話したようなことについて、なのですが。」

 

「……両親からのものですか」

 

「ええ。……必要でしたら、気の利いた罵倒を考えることもできますよ。……例えば、えーっと、すみません品がないのですが……『自己嫌悪で自分に対してサノバビッチ(インラン女の息子)と吐いたら、あんたもけなせて一石二鳥だぜ!』とか……。」

 

「……。団長、意外とそういうこと言うタイプなんですね」

 

「多少無理して言ってるんです。」

 

冗談を挟みながらも、すこし恐る恐るという様相の団長。しかしそれとは対照的に、オヴィはカラッとした様子で、淡々と告げる。

……何処か、嬉しそうな声色で。

 

「この手紙、燃やしてしまってください」

 

「……なるほど。」

 

「これを読んで、少し考えたんですが。」

 

くつくつと、らしくない笑い声をあげて、そしてオヴィは続ける。

 

「両親の事、想像以上にクソどうでもよかったので」

 

これまた、らしくもない物言いなんかをしてみて。

 

「……ご自身で燃やされないのですか?」

 

気にした様子のジーリオに、彼は応える。

 

「まあ、悪くない提案ですが……僕が燃やすと凝ってるうちに違反行為に触れてしまうと思うので」

 

「なるほど。私としては困りますね。」

 

「僕としても。……そう、ですね。ええ、まあ、僕のいたいばしょ(ヘレニウム)に居るためには、こういう事ぐらいは気にしないとな、と。…………改めて、考えて、一緒に戦って、思ったので」

 

「……ふふ。」

 

「…………。何が面白いんです」

 

「いえ、素直になられたなあ、と。」

 

「気のせいですよ」

 

さて、別れを告げると、二人は元のやるべきことに帰って行った。

たまたま……と言っても、団長への報告があった以上、偶然というほどでもないが。とにかく、その場でひっそりと聞いていたリンは、ジーリオを追いながら、オヴィを一瞥。

 

「そっか、君に詰まってるキラキラは……気づいてないだけで、すでにいっぱいだったんだね。ふふ、大事な仲間と一緒に居たいなんて素敵じゃないか」

 

空虚などと、的外れを言ったことに改めて心で、詫びつつ。

やりたい放題の末アドーネと出会った身で、それで彼が見捨てることはない、なんて信頼。……彼なりのコミュニケーションでもあったのだろうと、納得もある。

 

そんなリンの清々しい気持ちをよそに、オヴィは翌日作戦中の大爆発を、咎められることになるのだが。

 

それでも、リンも、アドーネも、オヴィ自身も。本気で興味本位だったんだろうと、そういう認識で、事は終わった。

まあ、おかげさまでマキナのような言い訳力を身につけてしまった、なんてオチはあるが……。




コルニカのロボットはツイッターにありますが、とりあえずエイリアンのパワーローダー想像すれば合ってます
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