ブルーアーカイブ RE:teaching 〜男でもあり女でもある先生は嫌いですか?〜   作:白だし茶漬け

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初めまして。そして他の作品で知っている方におはようございます。そして 会えないときのためにこんにちは、こんばんは、そしておやすみなさい。

作者の白だし茶漬けです。

この作品は、もし先生が戦闘のプロフェッショナルだったら?とか、そういうn番煎じみたいな事を自分なりの解釈で書こうと思った小説です。
感想等はご自由に書いてもよろしいので、よろしければ最後までご愛読して頂くととても嬉しいです。


男でもあり、女でもある先生

 

 唐突に言うが、私は男でもあり女でもある。

 

 体は男だけど心は女、という事では無く、私は男と女、両方の性質を持っている。

 

 顔は女みたいで可愛い部類に入り、声も少し高い。顔だけ見れば女だ。 

 

 体だってそうだ。手足には少し傷がある細い手足……だが、私には男である証拠の棒と玉がある。  

 

 え? だったらそれはただの男の娘だって? まぁ確かにそうだ。だけど、私には女性の部分があるという根拠がある。何故ならこの胸だ。めちゃくちゃ膨らんでいる訳では無いけど、手で掴めばフニっとした柔らかい感触を確かめながら指が沈む。

 

 因みに胸筋とかではなく、正真正銘の脂肪の塊の胸だ。揉むとムにっとした触り心地がいつでも楽しめるのは男の夢だ。まぁ、自分で自分の胸を揉んで感じるのは自慰と変わらないし、なんか虚しい。

 

 そんな男でも女でもある私がこんな体になったのは理由がある。

 

 それは女である師匠。いや、先生の体をくっ付けた物なのだから。

 

 顔も、声も、手も、足も、命さえもくっ付けて今を生きている。世界で最も歪な存在と言ってもいいだろう。

 

 男であり女。

 

 男の体に女の体。

 

 1つの体に2人の命。

 

 何がどうなってこんな体になったのか分からないし、気がつけばこうなっていた。前の事は覚えておらず、唯一分かっているのその代償として先生は居なくなってしまったという事実だけだ。

 

 その事実はとても受け入れ難い事だった。親を亡くし、ずっと俺を育ててくれたのは先生だった。

 

 先生はまさに、字の通り、先生だった。生きる上での心得、生きていくために必要な知識を教えてくれた。先に生きた者としての責任や責務を果たしていた。

 

 あの人がいるから生きていられた。ここまで来られた。

 

 そんな私は今、海に敷かれたレールを走る電車に乗っている。周りには誰も居なくて、別の車両にも人は居ない。唯一の存在は、私と目の前にいる白い制服を着た女の子だけだった。

 

 いや、それよりも気になるのは上に浮かぶヘイローの様な物だった。

 

 後付け……では無い。間違いなく彼女の頭に浮かんでいたそれを見たら普通驚く事だが、不思議と驚きはしなかった。

 

 まるで今まで何度も見てきたかの様な感覚だ。俺自身、あんなもの見た事無かった。

 だが、この体は知っていた。あれこそ生徒の命でもあり、生徒が生徒として証明する物だと。

 

 ゆらりゆらりと揺れ動く電車はまるでゆりかごの様で、目的の場所につくまでには寝てしまいそうになる。だけど、寝てしまったら目の前にいる女の子と会話が出来なくなる。

 

 会ったことある様な……無いような、そんなふわふわした考えから、とある事を口に出す。

 

「君は誰?」

 

 柔らかい口調でそう訪ねた。そして彼女は笑った。

 

 ただそれだけだった。何も言ってくれないし、言わなくても分かるでしょ? って言われた様な気がした。

 

 結構記憶力は良い方だと自負しており、目を閉じて記憶を巡った。

 

 瞳を閉じた闇の中には、見た事ない女子生徒達の思い出が蘇った。

 

 砂漠の中にある廃校寸前の学園。

 

 ある一人の女王と共に過ごす少女たち。

 

 謀略と策略が渦巻き、利用された悲しき子供達が引き起こした最悪の事件。

 

 追放された兵士達と、私欲に染まった子供の小さな戦争。

 

 白い髪で狼の耳を持った生徒に拳銃を向けられた記憶。

 

 他にも数々の知らない記憶が頭を過ぎる。

 

 見た事も聞いた事も感じた事も無い光景が頭の中に入り込む。

 

 いや、正確には【これから起こるだろう出来事】であり、同時に先生が体験した実際の出来事だと、理解した。

 

 何故なら今の俺は先生と一緒なのだから。

 

 そして彼女の名前や性格、彼女が願っている事、そしてこれから私にやらせようとしている事を思い出した。

 それと同時に電車が止まり、窓の外から見える青空が赤く染まり、目の前に座る女の子も胸に銃を撃たれた穴を開け、白い服が赤黒く染まっていた。

 

 だけど彼女は笑っていた。まるで希望が目の前にあるかのように。

 

「先生は貴方を選んだのですね」

 

「……俺は先生にはなれないよ」

 

 姿を模していても所詮は他人。俺はあの人にはなれないし、あの人の様にはいかない。

 

 あの人はどんな時でも俺を導いてくれた。

 

 あの人は俺に生き方を教えてくれた。

 

 憧れはあれど、あの人の様に誰かに何かを教えたりなんて出来ない。

 

 不安という壁が目の前に表れる様な錯覚も起こし、この電車から降りて目的地に行かないようにも考えた。

 幸い電車は止まっており、ドアも開かれていた。今なら降りれる。降りてこのままのうのうと暮らすのも1つの選択肢だ。

 

 だが、俺はそれをしなかった。いや、出来なかった。

 

 このままこの電車を降りるという事は、先生に対する裏切りと分かっていたからだ。

 

 遠いのか、遠くないのか知らないが、ある日一発の弾丸に撃たれ、胸に穴が開いて血の池を作った先生のあの姿を思い出す。

 

 流れ出る生暖かい血と鉄の臭いが体を汚し、冷たくなっていく先生の体温は忘れられない。

 

 手足も動かず、なんの役にも立てなかった俺を庇って先生は死んだ。そんな先生は俺に呪いを残した。

 

 _いきなさい

 

 この5文字の言葉が俺を縛る。どこに行けば良いんだ? 何を目的に生きれば良いんだ? 

 

 この体になってでも生きる意味はあるのか。行く宛はあるのか? 居場所なんて……あるのか? 

 

 この電車が行先が答えだと言うのなら……俺はいきたい。この呪いでも希望でもある言葉を胸に留め、電車の扉は閉まり、ゆっくりと電車は走り出した。

 

対面に座っていた女性が口を開けた。

 

「……私のミスでした」

 

「ミス?」

 

「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況。結局、この結果にたどり着いて初めて、あの方が正しかったことを悟るだなんて……」

 

「あの方って……先生の事?」

 

 ⿴⿻⿸はコクリと頷いた。

 

 俺の先生は、ここでも先生として生徒を導いていたらしい。あの人は……どこまで人を救えば気が済むんだろうか。

 

 そして、その果てが俺だ。

 

 先生の顔を継ぎ接いで前とは断然違う顔になり、先生の右腕と左足をくっ付け、あの人の命があるからこそ今俺は生きている。

 

 そして今、あの人の代わりに俺がいる。あの人の代わりに……生徒達を導く先生になるんだ。

 

 俺が……人の未来を奪う側だった俺がだ。

 

 様々な銃を手に取り、その引き金が数々の命を奪った。

 

 一発の弾丸が頭を撃ち抜き、頭の中にある物が弾け飛んだ光景を何度も何度も見てきた。

 

 スコープ越しには動かなくなった死体、むせ返る鉄の臭いが混じった赤い血と声にならない断末魔。飛び散る肉片が体に付くことなんて日常茶飯事だった。

 

 不意に自分の両手を見つめると、そこにはどれだけ綺麗な水で洗っても決して拭えない血塗られた手があり、その血の鏡から懐かしい男の顔が浮かび、何かを訴えていた。

 

 人殺しに何かを教えられるのか

 

 生きる事を諦めたお前に生きる事を教えられるのか? 

 お前はあの人にはなれない

 

 あぁ、これは俺だ。懐かしい俺の顔だ。

 

 今ではもう見れない俺の顔。懐かしさで乾いた笑いが込み上げて来そうだ。

 

 確かに言っている事はご最もだ。反論の余地も無い。けど、列車はもう後には戻れないし、俺は託されたんだ。

 

 俺はこの託された呪いと一緒に生きていくと誓い、この血塗られた手を生徒達に触れさせる訳には行かないと踏み、黒い手袋をはめた。

 

「黒がお好きなのですか?」

 

「綺麗な白を汚す訳には行かないからね」

 

 それに、俺に白は似合わない。今後支給されるシャーレの制服は白らしいけど、後で黒に差し替えようと思っている。

 

 もう少し理由があるとするならば……男の子は黒が大好きだし、黒は女を美しく見せると言う。この体を使うのなら、美しくはありたいと思ったからだ。

 

 赤い空から青い空へと変わり、海もクリアブルーの美しい景色が広がった。

 

 するといつの間にか目の前に座っていた女の子は消えていた。ふと窓の外に映るビル街を見た。

 

 海の上に立ち並ぶ様々なビルに、一際大きく、空に届きそうな巨大なタワーが1つあり、その上には何やら丸い円が空に浮かんでいた。明らかに今まで生きていた世界とは別の世界だとひと目でわかる。

 

「……来たよ、先生」

 

 窓に微かに映っている自分の顔を見つめ、そう呟いた。

 

「美味しい物とかあると良いんですけどね」

 

 _すっごく美味しいラーメン屋があるわよ? 

 

「ラーメンか〜。醤油が好きだから醤油があるといいなぁ〜」

 

 鏡越しに映る先生と話しながら、学園都市キヴォトスに向けての思いを馳せる。

 

 こうして『私』は先生になった。

 

 

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