ブルーアーカイブ RE:teaching 〜男でもあり女でもある先生は嫌いですか?〜   作:白だし茶漬け

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生きる亡霊

 今日の朝は早い。何故ならとある生徒達が朝から会いたとモモトークという通話アプリで連絡してきたからだ。

 

 その生徒達とは今テレビで流れているニュースに関係している生徒だった。生徒達……SRTの皆とサオリ、セリカが来るまで時間がある。

 

 テレビのニュースの音量を上げ、今どうなっているのかの状況を確認する。

 

『続いてのニュースです。様々なチェーン店を担うクサリコーポレーションのオーナーは更なる店舗拡大に向けて事業を……』

 

 テレビに映っているのは昨日出会ったミヤコ達のバイト先のオーナーだ。彼の事を調べた感じ、黒い噂は耐えないが、謎の圧力がかかっているのか詳しい事は特定出来なかった。

 

 バイト先の店長の話によれば、グレーゾーンギリギリの悪徳商法を繰り返してはいるとの事らしいが、それは今はどうでもいい。問題は……何故昨日の事を報道されていないのかの一点だ。

 

 銃撃戦と停電を起こしたのだから、何か騒ぎがあってもおかしくは無い。だが、ニュースではその事が一切報道されてはおらず、何かしら裏があると思わずにはいられなかった。

 

 やはりあそこには悪徳商法なんか可愛いものと思える様な秘密があったのだろうか。

 いくつもの考えを張り巡らせながら、角砂糖5個入れたコーヒーを飲んでいると、デスクの上にある携帯が鳴り、着信は……ミヤコからだった。

 

 直ぐにミヤコに連絡を返し、シャーレのオフィスに来るようにと伝えた。

 

 

 数分後、ミヤコがシャーレのオフィスに足を運んでくれた。

 どこか落ち着かない様子でソファーに座り、こっちの言葉を待っているかのように何も言わず、目を合わせると不意にミヤコが目線をそやした。

 

 こっちの態度を伺いながら泳ぐ目から、自分達が行った事の愚直さを自負していて、罪悪感で胸が一杯なのだろう。

 

 そんな罪悪感を感じるんだったら最初からやるなと言いたいが……先に気持ちを尊重したのはこっちだ。あまり強くは言えず、とにかく話を進めるために向かいの椅子に腰をかけ、向こうから要件を伝えるようにする。

 

 昨日こっちも援護はしたが、ミヤコ達はその存在に気づいていない筈だ。だからミヤコ達にとっては、俺はシャーレにいて何も知らないことになっている筈だ。

 

 だからここで正しい言葉は……。

 

「どうしたの? 何か相談事?」

 

 何も知らない体で「俺」は会話をする。

 少しでもおかしいと思われないように、いつもの接しやすい笑顔を浮かべながら首を傾げる。

 

 ミヤコはその笑顔に対して引け目を感じている様だったが、ミヤコはようやく硬い口を開けてくれた。

 

「先生、私は皆と一緒にオーナーがいるビルへと侵入しました」

 

 そうしてミヤコはとある資料を渡してくれた。資料は少し多く、私はその中から適当な物に目に通すと、そこには予想よりも恐ろしい文言が私の目に映った。

 

「これは……ブラックマーケットへの武器の輸出決済表?」

 _それに少し変な項目があるね。バイト代って……どういう事?

 

 先生が指摘した通り、武器の横流しをしている資料には似つかわしくない言葉『バイト代』。これが最も気になっている所に、ミヤコは口を出してくれた。

 

「バイトというのは恐らく、傭兵みたいなものだと思います。……生徒の傭兵です」

 

 ミヤコの言葉に先生は驚きが隠せないほどの感情を溢れださせ、言葉を失う程の怒りをこみ上げさせた。その怒りは『俺』の体を通してて伝わり、左手が『俺』の意識に反して拳を作っていた。

 

 少しづつだが事の全容が見えてきた。

 

 まずオーナーは主軸とする事業と他に別の事業……いわば副業をしていた。その内容はブラックマーケットや他の企業への武器の輸出と……もう1つ、生徒の傭兵事業だ。

 

 生徒の傭兵として駆り出させて収入を得る……所謂、闇バイトというものだ。酷いやり方で吐き気が出そうになり、とても生徒の前で見せれらないような顔をしているせいか、思わず手で口を覆い隠し、表情を隠した。

 

 これで残る問題は1つ。どこからそのバイトを集めているからだが……これには1つ知ってそうな人物がいる。

 あの夜、そのヒントを口走った警備員が一人居たのだから。

 

 そう考えた瞬間『俺』の意識が薄れ始め、左手が右頬に触れた瞬間、その意識は眠るように落ちていき、真っ暗に染まる。

 

 暗闇の次に見えた光景は、俺とミヤコが対面で話す様子だった。どうやら先生が無理くり俺の体の意識を交代したんだろう。

 

「分かった。あとはこっちでなんとかするね」

 

 先生はこれ以上は子供のやる事では無いと考え、ミヤコに貰った資料を受け取り、ミヤコ達から手を引かせる言い方をした。

 

「そうだ。バイト代はどうだった? ちゃんとお金もらえた?」

「それはまだです。デモなどの対応があるので後日渡してくれるようで、今日は店もお休みらしいです」

「そっか……うん、分かった。バイト疲れたでしょ? 今日はゆっくり休んでって」

 

 先生はミヤコの頭をポンと撫でて労り、ミヤコは驚きながらも嬉しそうに頬を染めた。

 ……こういう風に先生は生徒の距離感が近い。俺なんかでは取れない距離を軽々と近づき、生徒の壁を超えている。

 

 フランクと言えば聞こえはいいが、距離感が女子同士のそれだ。俺が同じような事をするとどうしてもぎこちなくなるし、これで合っているのかと不安になる。

 というか、セクハラで訴えられそうだ。

 

 ……俺なんかいらないと思ってしまう。

 

 今のこの状況が俺に相応しいと突きつけられているようで……このまま消えた方が良いのでは無いかと考えたその時、目線が変わって目の前にミヤコがいた。

 

 まだ頭を撫でている所で俺に意識を無理やり渡され、思わずミヤコから手を離す。

 

(先生! なんでいきなり主導権を!?)

 _だって、撫でたそうに見えたから

(そんな訳ないですよ!)

「先生?」

 

 ミヤコの声が耳に入り、狭くなった視界が広がり、彼女の姿がハッキリ見える。

 白兎のような髪と、俺をじっと見つめるつぶらな瞳はどこまでもまっすぐで。

 

 純粋で、汚したくない美しい瞳だった。

 

「……ごめん、なんでもないから気にしないで」

 

 これ以上生徒達を汚させる訳にはいかず、私は資料を持って机の上へと置き、ミヤコ達の手を引かせた。

 ここから先は、本当に汚い大人の役割なのだから。

 

 

 

 

 

 

 生徒が寝静まったであろう満月の夜更けの中、誰にも気づかれないような薄暗い路地裏で男達2人の声が聞こえる。

 

「クソっ! かなり上等なガキだったのにとんだ損だ!」

「ええ。ですが、馬鹿なガキはまだまだ沢山いますよ。何せ、行く宛ての無いバイトはまだまだゴロゴロ転がっているのですから」

 

 月明かりの元に照らされたのは、ミヤコ達がバイトをした所の店長と、そのオーナーだった。

 

「しかしまぁ、バイトと評して裏では融資先の警備員のバイト集めとは。よく考えたものだ」

「ええ。しかもキヴォトスの生徒はそれはもういい弾除けやボディガードにもなりますし、しかも格安!」

「ははっ! まるでその為に生まれたかのような物だ! まさに金の成る木……いや、金を持ってくる鴨かな?」

 

 ……本当に薄汚かった。どうやらあの二人は結託して武器の密輸や横流し、そして生徒を使っての金策をしていたのだろう。

 

 表向きは生徒を使っての重労働をさせて店としての利益を得て、裏では生徒を傭兵……いや、奴隷の売買と同じような事をしていた。

 

 そんな事実を知っただけでも腸が煮えくり返る程だったのに、あの2人は生徒達を奴隷の様に見ていた。

 

 許せない、子供達の未来を汚す大人()は今この場で始末しなければならないと、【私】はそう決意した。

 

「んっ……。それじゃあ始めますか。ごめんね、体借りちゃって」

 ー別に、気にしないでください

「ありがとう。……じゃあ行こっか」

 

 最後の審判の時は来た。ビルの影から現れるように足音を殺しながら内ポケットにあった拳銃に手を添える。

 まだ撃たない。だってこれは審判だ。相手の選択によっては生かす。それが審判。

 赦しを得るチャンス。

 

 どうか、どうかこの引き金を引かせないでと願いながら、私は彼らの前に姿を現す。

 

「は~い。奴隷商人さん。ご機嫌いかが?」

 

 私の声に反応して彼らが振り返った。ロボットなのに人間の様に驚く様をみて、本当にここ(キヴォトス)は不思議な場所なのだと痛感する。

 

「な、何者だ! 警備は何をして……」

「それってこれの事?」

 

 配線が剝き出しになったロボットの頭を転がし、二人の画面の表情が激しく変わり続けた。

 彼らにとっては、自分と同じ人種の生首が転がったのと同類だった。

 

 まぁ、これは私が作った脅し用の道具。本物は今頃スリープモードで良い夢を見てる頃だ。

 それっぽく似せただけだけど、暗闇は細部は見えない。これは警備の首だと判別できれば、今のように脅すことは出来る。

 だけど、流石に凝視すればバレる恐れがある為、二人が怯え切った事を確認し、転がした玩具を目立たない所に蹴り、私に注目させるように銃口を向ける。

 

 みっともない大人が子羊の様に震える様は本当に無様だった。人間だったら、鼻水を垂れていた所、目の前の奴隷商人はそれすらない無機質な感情を見せた。

 いや、画面では冷や汗をかいているから、驚いてはいるのかしら。

 

「お、お前は一体……」

 

 オーナーが震える声でそう告げると、私は顔を覆い隠す仮面の下で微笑みながら自分の事を告げる。

 

「私は亡霊。何者でもない、ただの亡霊よ」

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