異世界転生アウラ様   作:全智一皆

1 / 1
序章「転生したじゃない」

■  ■

 断頭台のアウラ。そう呼ばれる魔族が存在した。

 大陸を支配せんと闊歩する、魔族によって構成された凶悪なる集団『魔王軍』。その魔王軍を束ねる最悪にして災厄の存在、魔王直属の配下である七人の大魔族達『七崩賢』。

 その一人こそが、断頭台のアウラである。

 彼女の特徴において最たるは、彼女が扱う魔法にこそあった。

 《服従する魔法(アゼリューゼ)》―――『服従の天秤』という天秤に自身と対象の魂を乗せて互いの魔力を測り、魔力が大きい方が相手を半永久的に操る事が出来る魔法。

 彼女はこの魔法を用いて、数多の軍勢を作り上げた。生ける軍勢ではなく死者の軍勢という、なんと酷いものではあるけれど。

 

 というのも、その魔法にも弱点があった。それを補う為の、死者の軍勢だ。

 操られた側が強い意思を持っているならば、魔法の影響下にあろうとも一時的に抵抗する事が出来てしまう事―――その問題を解決する為に、断頭台のアウラは支配した相手の首を斬り落として死者にするのだ。

 そうする事で、反逆という可能性を消去したのだ。そして、この行いこそが彼女に断頭台という異名を与える切っ掛けとなった。

 しかし、それでも、そうまでしても、決して補い切れないデメリットがある。それは、相手の魔力量が自分よりも多かったならば逆に己が支配されて服従させられてしまうという事だ。

 撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ―――そんな言葉がある様に、公正たる天秤を用いて比べるのだから、自分が相手よりも弱かったならば支配されてしまうのも自然と言うべきだろう。

 だが、魔力の量というのはどれだけ長い歳月を掛けて鍛錬を積み重ねたかによるもの。500年以上という長い歳月の全てを鍛錬に費やした彼女には、人間とは比較するまでもない強大な魔力があった。

 

 しかし、そんな強さを有していながら、それ程までに長い時間を掛けて己を鍛えていながら、彼女はたった一人のエルフに敗北した。

 1000年以上もの歴史を生きた大魔法使い。人類史における魔法の開祖、フランメ直々の弟子にして魔王を討ち倒した勇者パーティーの一人―――フリーレン。

 数多の魔族を葬ってきた事から、葬送のフリーレンと呼ばれた伝説の魔法使いその人によって、アウラは命を落としたのだ。

 驕りによって命を落とした大魔族、断頭台のアウラ。彼女の死は筆舌に尽くせる程度のものでしかないが、しかし何だかんだで愛されてはいる()()()()()()である。

 そんな彼女は、フリーレンに殺されてから―――異世界へと転生していた。

 

「は?」

「は?」

 

 春、それは出会いの季節。とは言うけれども、しかまさかその出会いというのがファンタジーな存在との邂逅だとは誰も思うまい。

 此処は東京。誰もが知る日本の大都会、その浅草辺りに建てられた大きなマンションに数百とある内の一室、そのリビングである。

 最初に呆けた声を出したのは、この一室に住まう主である男だった。

 

「此処はどこ…? 私は、フリーレンに殺されて…」

 

 転生した本人であるアウラはと言うと、突如として変化した景色と場所に混乱していた。

 目の前には見慣れない服を身に纏う人間の男。周りにも見慣れないものが幾つもある。

 殺された筈の自分が生きているのは何故なのか。そもそも此処は何処で、目の前の男は誰なのか。

 何もかもが分からない事ばかりで、魔族である彼女が混乱してしまうのも仕方のない事だと言えるだろう。

 

 だが、しかし。

 

「デリヘル呼んだ覚えはねぇぞ。しかもコスプレかよ」

 

 ことこの男に至っては―――全く混乱していなかった。

 混乱も困惑もせず、ただ冷静に突如として現れたコスプレデリヘル(決してそんな存在ではないのだが)へと鋭い言葉を発したのだ。

 言語は理解出来る。だが自分に向かって言われたであろう言葉の意味を彼女は理解出来なかった。

 だが、意味が理解出来なくとも、その言葉に込められた思いの様なものを理解したのだろう。

 

「よく分からないけど失礼じゃない」

 

 彼女は、混乱も困惑もしながら、そう言葉を返したのだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。