元連邦生徒会副会長は征く   作:ふしあな

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ふしあなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!副会長でてこねぇぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎ふしあなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
……ふう。それでは続きです。時間は進み、【先生】が来たところからまた物語は続きます。
ちなみに今回出てくる子達みんな口わるわるです。派手に治安が悪いからねしょうがないね。


Prologue

 

 

……私のミスでした。

私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況。

結局この結果に辿り着いて初めて、あなたとあの子の方が正しかった事を悟るなんて…。

 

……今更図々しいですが、お願いします。

先生。

きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。

何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で同じ選択をされるでしょうから。

ですから…大事なのは経験でなく、選択。

あなたにしかできない選択の数々。

あなたにしか救えない生徒がいる事を。

 

責任を負う者について、話した事がありましたね。

あの時の私には分かりませんでしたが…今なら理解できます。

大人としての責任と義務。そしてその延長線上にあったあなたの選択。

 

それが意味する心延えも。

 

だから先生。

私が、私の弟と共に信じて敬愛する大人である、あなたにならこの捻れて歪んだ先の終着点たちとは、また別の結果を。

 

そこへつながる選択肢はきっと見つかるはずです。

だから先生どうか。

 

 

 


 

 

 

「せい、先生!!」

 

「“!?”」

 

貴方は目を覚ます。

背中にある冷たい感覚に、天井が遠いのを見るとどうやらとんでもない寝落ちした様だ。飛び跳ねる様に起き上がるとそこには、仏頂面の少女が貴方を見ていた。

 

「起きましたか?先生。」

 

「“………君、は”」

 

少女の頭に浮かぶ王冠の様な天輪。鋭く尖った耳に細縁の丸眼鏡の姿をした少女に貴方はまだ寝惚けてまとまらない思考を回す。

 

「どうやらお疲れのご様子でしたので…」

 

その少女は気まずそうにこちらの顔を見る。

どうやらこの場所に貴方は呼び出されて以降、気がついたら眠ってしまっていたようだと自覚する。

 

「もう一度改めて現状をお伝えしますね」

 

「私の名前は七神リン。学園都市【キヴォトス】の連邦生徒会長直属の幹部です。」

 

少女の名前は七神リン。

そう貴方は覚えた後、気になる単語があった。

学園都市【キヴォトス】とは一体何なのか。言葉の意味的に何処かの都市であることは確実なのだが、そんな所に私は何故呼び出されたのだろうかと疑問に思う。

 

「そして、おそらくあなたは私たちがここに呼び出した先生の様ですが………。」

 

その疑問を貴方が口にするよりも先にリンが貴方の立場を告げる。そうだった、そうだった。貴方は【先生】である。ここキヴォトスに今日から着任する先生だ。

 

「ああ。推測系なのは、私自身も先生がここに来た経緯を詳しく知らないのです。」

 

権力がありそうな幹部でさえ知らないとなるとそれこそトップしか知らないのだろうか。そう考えると先生は、幹部であっても中間管理職の様に私を迎えに来ないといけなかったと思えば、リンの苦労に同情する。

 

「なんです?……まあ、混乱されるのはわかります。」

 

「こんな状況ですが生憎と時間はそう残されていません。どうか、私に着いてきていただけますか?」

 

先生の同情する視線にリンは首を傾げる。

だがそんな時間は残されていないと足早に先生に付いてきて欲しいとばかりに声を荒げる。切羽詰まったリンの言動に先生は後ろをついて行くのだった。

 

 

 

どうやら先生には先生しか出来ない事があるという話らしい。

その“先生にしか出来ない事”はこの学園都市の命運を分けるほどの重要な事柄であることは間違いない。

 

そしてここキヴォトスは多くの学園が連なってできている文字通り学園都市という説明を受けた。

青い空。そして浮かぶ巨大な輝く円に先生は遠い所に来てしまったんだなと言う郷愁が生まれる。

 

だがそれを見抜いた様にリンは先生なら問題ないと微笑みかける。そう先生は連邦生徒会長と【副会長】の両名がお選びになった方だからであると。

 

貴方は副会長という名称を聞いた瞬間。

頭の鈍痛と共に、誰かの姿が脳裏に浮かぶ。

それが何か。想起するよりも先に、リンと共に乗っていたエレベーターが止まった音がした。

 

 

 

 

リンの案内の元、とあるフロアに降り立った先生。そこには色々と多くの生徒が立っていた。だがその空気は談笑とは程遠く、どこか不穏な緊張に包まれていた。

 

「ちょっと待って!行政官、見つけたわよ!!散々私たちを無視してくれて!!」

 

どうやらリンはあえて無視しようとUターンをしたその時だった。後ろからリンを呼ぶ声が聞こえる。もはや怒号を上げていると言っても過言ではないその子は、黒いヘイローと紫色の髪と目をしている少女だった。

 

「副会長とも連絡付かないし、なんなら連邦生徒会長でも良いわ!2人はどこ?って………あれ?隣の大人は?」

 

再度出て来た連邦生徒会長と副会長という名称に連絡がつかないという少女の声。何かあったのだろうか?と考えるよりも先にまた別の少女がリンに近づいた。

 

「……お待ちしておりました。首席行政官“殿”」

 

少なくともリンに友好的では無さげな声色に先生は首を傾げる。

特徴的なまでに大きなカラスの様な翼を持った少女。大腿まで大胆にスリッドが入った服を着こなすその少女は赤色の瞳に不信感を込めた瞳でリンを見ていた。

 

「失礼。こちらゲヘナ風紀委員会、万魔殿連名により連邦生徒会には現状の納得できる説明を求めています」

 

その二人に追従するかの様にまた一人と少女がリンに詰め寄る。

亜麻色の髪をしたその少女は肩に風紀と大きく入った赤と黒色の腕章を見るに“ゲヘナ”とやらの風紀委員会に所属している子なのだろうと先生は密かに納得した。

 

「ああ……なんと厄介な……」

 

「本日は暇人の皆様にお集まりいただきどうもありがとうございます。生徒会、並びに風紀委員会の方々。」

 

どうやらリンもただ聞いているだけでは無いらしい。

わざわざ聞こえる様に“厄介”と“暇人”を地味に強調して口にしている辺りどうやら多少はお冠らしい。先生としては現状をまだ掴めぬ以上、口を挟まない事に決めた。

 

「基本的に騒いで大事にし、副会長をいつもわざわざ呼び寄せるなんて面倒なクレーマー体質でDV気質の皆様がここに尋ねていらした事、よく分かっております。」

 

「今、学園都市に起きている混乱の平定の為でしょう?」

 

ん?今なんかこの子すげぇ事言わなかった?と先生はリンの顔を二度見する。

そんな先生の動揺をよそにリンは完全に目の座った顔で3人を見ていた。最早嫌悪感さえ隠さぬ様子のリンに流石の詰め寄って来た少女も眉を顰める。

 

「っ……!言ってくれるわね、副会長の腰巾着風情が」

 

忌まわしいと言わんばかりの表情に吐き捨てる紫色の髪の少女。

どうやら長くなりそうな事を悟った先生は深く思考の闇に潜る事にした。……そう、それこそキヴォトスに来て【副会長】という名前を聞いてからずっと、ずっと訴えている鈍痛の答えを。

 

「………どうであれ、治安が悪化している原因は明白でしょう。」

 

治安を悪化させるスケバンや不良が騒ぎ出している原因なんて赤子でも分かるとばかりに不満そうな顔を隠さず声に出すのは亜麻色の髪をした少女である。矯正局とやらの場所から停学中の生徒が脱走したなど、少なくない混乱が撒き散らされている。

 

「少なくとも連邦生徒会副会長の姿を見ていないと言う事が問題です」

 

赤色の瞳の少女の後ろから銀髪赤目の頭に鳩の翼のようなモノを付けた少女が訝しげに声を上げる。……そうキヴォトスの治安が日に日にどころか数時間ごとに悪化していっている原因は、今まで治安を守っていた存在がここ暫く姿を公にしていないのが問題である。

 

その“治安を守っていた存在”こそ【連邦生徒会副会長】である。

少なくとも連邦生徒会副会長が姿を見せていた時は、登校中の生徒を不良などが襲う事は余程の事でもない限り無かったと言えるほどなのだから今の混乱がどれほど激しいモノなのか理解できるだろう。

 

「事実、出所不明の武器や戦車などの不法流通が最低でも5000%は超えています。そして彼が保護、更生していた不良などの暴走を含めて、秩序が維持されているとは到底言えません。」

 

そしてその不良、スケバンなどと言った学校から退学や学籍抹消などをされて行き場を失った無辜の生徒たちを更生し、再び自分の足で立ち上がり歩けるように支援をして来たのは単に副会長のお陰と言っても過言ではない。

 

そんな大恩あるレベルでは済まない…自分の命さえも彼の為なら投げ出せると狂信の域にまで至ったかつての不良たちが“副会長を不当の手段で追い出した連邦生徒会を認めない”などと言った名目で暴れている。

 

「…………。」

 

「こんな状況で彼が出てこないわけがないわ!連邦生徒会長含めて貴方たち、一体何したの!?」

 

そんな報告に沈黙するリン。納得できないと青筋さえ浮かべた紫色の髪の少女は、ついに吠える。実際そうだろう。毎日姿を見せていた筈の副会長がある日を境に姿を見せなくなった。あれほど私たち生徒のためにまるで献身的と言っていいほど気にかけてくれていた人がある日突然音信不通になるなんて、間違いなく人為的なことがあると少し考えなくても分かる。

 

そしてその疑いの目の先が彼の所属先であった連邦生徒会に向くのもまた間違いではない話だ。

 

「…………彼は、いえ」

 

沈黙していたリンが重々しそうに口を開く。

今の、今までトップ二人の不在を隠せていたのはこうして疑いの目が連邦生徒会に向くと同時に互いが互いに疑心暗鬼になっていたお陰だろう。もしかしたら自分たち以外の学校のどれかに彼は亡命したのではないか。その疑いを隠せない。何故なら、自分たちも一度は彼を引き抜こうと考えた事はあるのだろうから。

 

「連邦生徒会長並びに副会長の両名は今、おられません。公表いたしますと行方不明です」

 

ここまで来るとこれ以上隠す意味がない。リンは二人の失踪を主席行政官という立場からしても事実である事を強調しながら伝える。……逆によくここまでもったものだ。おそらく後十分もしないうちにクロノスからの速報で囁かれていた失踪が事実になる。

 

「何ですって!?」

 

「…………!」

 

「やはりあの噂は……」

 

居なくなった副会長。囁かれていた失踪疑いが事実である事を知った少女たちは立ち尽くす。もはやこうなってしまってはどうしようもない。間違いなくこれ以上の混乱が起きる事は確定してしまったと言う事だ。

 

「結論から言いますと、今の我々にできる手段は見つかりませんでした」

 

【サンクトゥムタワー】というキヴォトスの行政制御権を司る塔の管理を失い、更には【天秤】という連邦生徒会の分かりやすい権威の形を失い…文字通り連邦生徒会は今や張子の虎にも劣る存在である。

 

だが、それを覆す存在がここにはいる。

 

「そう、それこそこの先生です」

 

「“私!?”」

 

フィクサーである先生。その先生なら何とか出来るはずというリンの説明に、3人の少女だけでなく紹介されたその本人さえも目を見開きリンを見る。とまあそんな様子でも何かおかしい事を言ったのだろうか?と首を傾げるリンの前では特に何の意味も持たなかったが。

 

「はい。……もう一度言いますが、貴方は連邦生徒会長が選ばれたお方。」

 

「行方不明の筈の連邦生徒会長が選んだ……わけがわからないじゃないの…。」

 

居なくなった筈の連邦生徒会長が選んだ謎のフィクサー。それが先生であるという事だ。流石の先生も自己紹介しないわけにはいかないので、互いに軽い自己紹介を行なった。

 

「……先生は元々連邦生徒会長が立ち上げ、副会長が部長になる筈だった部活の担当顧問として呼ばれました」

 

また出て来た副会長という名前。まるで記憶の檻の中から何かが蹴破ろうとする頭痛の痛みに、先生は密かに歯を強く噛む。だがそんな先生の様子とは裏腹にリンの解説は進む。

 

「その部活の名前は……【連邦捜査部 シャーレ】」

 

【副会長】、【連邦捜査部 シャーレ】。その二つの単語が繋がれた瞬間。

 

 

────突如、先生の脳内に溢れ出した存在してはならない記憶

 

 

『先生!ようやく合流したぞ!……って、おっほん。連邦生徒会副会長、今この時より連邦捜査部シャーレへの入部をお願いしたく存じます。』

 

『……え?あんな硬い挨拶じゃなくても良いって?……まあ体裁上しっかりしておかないとな!』

 

 

『ああして誰かが笑顔になるのはいつ見ても嬉しいものだな先生!!』

 

『今日も残業か?……よし!なら一緒に頑張るか!え?気にすんなって!どうしてもって言うなら後でラーメンでも奢ってくれ!』

 

『ふぅん。それが先生のやってるゲーム……やってみたいから教えてくれないか?課金……した事ないけどうーん』

 

『……きっと、初めてだ。俺、後ろを任せたいと思ったの……』

 

 

『───────────ぁ……無事か?先生、なら良かった』

 

『先生、最期に言っておくな。……1番、楽しかった!!』

 

 

 

暗転──────────────

 

 

「“……………………ッ”」

 

「何故これほどの超常的な権力を持った機関を連邦生徒会長が用意したのかは分かりませんが……。先生?」

 

リンの説明。シャーレという連邦組織はキヴォトスに存在する全ての生徒を先生の意思と許可の元、自由自在に加入させる事が可能と言ったあまりにも大きすぎる権力。更には、各学校の自治区で活動(戦闘行為を含めて)する事も無制限と言ったどう考えても一人に持たせるには重すぎる権力。

 

そんなシャーレは30km離れたところにある。今は殆ど何もない場所だがその地下には連邦生徒会長の命令で“あるモノ”を持ち込んでいるらしい。とりあえずはそこに先生を連れて行かなくてはならないが……

 

『シャーレの部室?…ああ。今そこ大騒ぎだね』

 

モモカと呼ばれる生徒によると、今シャーレの部室があると言われた地区は大規模な戦闘区域になっているらしい。銃弾の音だけでなく砲撃も行われて、まるで焦土にする気だと言わんばかりの破壊行動が続いているらしい。

 

『掲げられた紅色の狐紋章……間違いなく七囚人の一人【彼岸の災厄狐】狐坂ワカモだね』

 

「……あの厄介オタク……」

 

FOX小隊も副会長も居ないのに良くやるよねーと嘲笑うモモカに、完全に頭を抱えてしまったリン。その戦闘区域にスプレーか何かで書かれた紅色の狐模様。それが意味する人物もよく知っているとばかりの二人に、ユウカは訝しげな顔で問う。

 

「狐坂……っていえ【彼岸の厄災狐】ですって!?」

 

「……七囚人の方ですよね?」

 

「ええ。かの有名な【紅蓮華の決戦】にて敗れた……」

 

「そうなると……少なくとも各学校のトップ層でないと……」

 

ユウカはその【彼岸の厄災狐】という二つ名の危険性を知っているから。スズミはあまりよく知らないが七囚人という言葉がどういう意味か知っているから。ハスミはどうやら【紅蓮華の決戦】という名称と共によく知っている様だ。チナツは冷静に戦力を分析しているのを見るにその【彼岸の厄災狐】の実力を知っている様だ。

 

「“………いや。大丈夫だ。私に任せて欲しい”」

 

「………先生?」

 

先ほどまで頭を抱えていた先生が一転。まるで歴戦の軍師の様な厚みと凄みを持って、怖気付き始めた少女たちを鼓舞する。不思議と先生の言葉には何とかなるというカリスマ性があるように見えたのだった。

 

 

 


 

 

 

 

狐坂ワカモは暴れていた。狐坂ワカモは壊していた。

上がる火炎瓶の炎。鳴り響く銃声の合唱曲。砲撃によって壊れて粉塵を上げる建物という間違いなく戦場の中をその少女はまるで鼻歌を歌うかの様な軽やかさで歩く。

 

「♪〜〜〜 〜〜〜」

 

向かってくるヴァルキューレやSRTの残党をまるで付いた埃を振り払うかの様な気軽さで肉薄にし、一瞬で戦闘不能にまで追い込む。別に自分が手で下すまでもない奴らは勝手に集まって来た不良やスケバンに任せてワカモはただひたすら、思うがままに暴れ、奪い、壊す。

 

「…………」

 

恨みの声も、嘆きの声もワカモには決して届かない。

最終的な狙いはあの連邦生徒会のビルである事に間違いはないが、それまでの道も全て壊し、焦土にする気概でワカモは破壊という音楽を奏でていた。

 

「………来られませんのね。」

 

つれないお方。とワカモは空を見上げながら呟く。

そう、ワカモがここまで執拗に全てを灰燼にしようとする理由などたった一つしか無かった。今も尚、ワカモの心と身体を灼き続けるあの孤高なまでの青色の眼差し。

 

(本当に……あのお方は………)

 

居なくなったのだろうか。

そう呟くワカモの脳内に浮かぶ一人の影。その姿は“連邦生徒会副会長”であった。

ここまで来て今更の話だが、ワカモと副会長の間には唯ならぬ因縁があった。それはまるでヒーローとヴィラン。魔王と勇者と例えられるほどに決して混じる事のない二人は、ワカモにとって絶対的な運命であったと思い出す。

 

ワカモと副会長(FOX小隊含めて)は何度もぶつかり合った。それこそ数えきれないほど小競り合いをし、何度も何度も武器を交えた。ワカモが率いるスケバンや不良たちの軍勢と副会長とSRTの軍勢と言ったまるで合戦の様なぶつかり合いもあった。

 

何度も、何度も、何度も。痛み分けを続けた果てに。

遂に副会長はワカモを追い詰めた。互いに消耗し切った末の決戦。後にそれが【紅蓮華の決戦】と言われたが、そんな生優しいモノではなかったとワカモは疼く身体を抑えながら何千回、何万回と再生した決戦の過去を思い出す。

 

血と硝煙と汚れに汚れ仮面も殆ど破壊された私と、同じ様に汚れていた彼と彼の命令が下るまでただ私の喉元を噛みちぎらんと猛る戦意と高揚を抑えながら睨み合ったFOX小隊。どちらとも言わず、私たちはただ相手を貪り尽くさんと壊し合った。

 

戦いの先。美も醜も、善も悪もない。まるで自分の勝利を満たすためだけにあるかの様なあり様の決戦。……この高揚をこの時の絶頂をワカモは決して言葉にしたくは無かった。言葉などと言った無粋なモノでは決して片付けられる訳のないこの熱。それは一つの傷となって今もワカモの心も身体も灼いているのだ。

 

(……居なくなった、ですか)

 

そんなわけが無いと身体に宿したネツが訴える。

あの人が居なくなるわけがない。あれほど私とぶつかり合ったのだ。あれほど私を追いかけて、執念の果てに私を捕らえたのだ。

 

なら私が檻から居なくなったのなら追いかけて来ないのはおかしい。

今更だが別に脱獄しようと思えばいつでも脱獄出来た。だけどそれをしなかったのは彼との決戦で満たされたから。少なくともあの敗北を私は穢したくなかったのだ。そんな歪んだ純情がワカモにはあった。

 

だがそんな中、日に日に大きくなり矯正局の中にまで聞こえてくる副会長の失踪の噂。……その瞬間、ワカモは檻を蹴たぐっていた。確かめなくてはならない。事実を知らなくてはならない。

 

(あなた様を必ず、表舞台に引きずり出してやる……っ!!)

 

姿を隠したとしても私が暴れて、壊したのだなら彼は必ず私を捕らえにやってくる

そうであるはずだ。そうで無いとおかしい。……だからワカモは最初に彼の所属である連邦生徒会が所持するタワーを墜としに来たのだ。

 

ほら。お前の不倶戴天の敵はここに居るぞという恋文。

私をもう一度捕まえて屈服させないとこのキヴォトスがめちゃくちゃになるぞと言わんばかりの歪んだ破滅願望にも似た破壊衝動。それだけが今のワカモを突き動かす原動力であった。

 

「───────────!?……ああ。なるほど」

 

そうして夢想していた中、聞こえて来た破壊とは別の銃声。

よく見える白い制服と多学校の制服の生徒たち。ようやく介入しに来たかとワカモは不満そうに顔を顰める。まるでその表情は頼んでいたモノと別のものが出されたかの様な、メニューに描いてあったモノを頼んだら随分劣化したものが出されたかの様な不快感。

 

「そこまでして出てくる気が無いのなら……是非も有りませんね」

 

ワカモの想定なら副会長が姿を現し、この場をヴァルキューレかFOX小隊が鎮圧し、私とまた【紅蓮華の決戦】を再開する予定だったと言うのに一向に彼が姿を現さない。……流石に塔の内部まで傷付ける予定は無かったのだが、期待していた私の期待を裏切った罰だと思ってくださいとワカモはビルの硝子ドアを蹴破り、中に入っていった。

 

「…………なるほど、これが例の……」

 

このビルの内部には連邦生徒会長と副会長によって秘密裏に置かれていた物があるという話だったが、おそらくそれらしい物は見つけた。あくまで聞いた中ではそこには副会長の私物も安置されていると言う話だったが、どこにも無い。

 

「とは言っても何が何だが……これでは壊すにも……」

 

かと言っておそらく連邦生徒会長が置いたであろう物にワカモが触れてもうんともすんとも言わないとなれば本当に侵入し損であるとワカモは退散しようと身を翻したその時だった。

 

「“彼は、ここには来ないよ”」

 

後ろの階段から、声が聞こえたのは。

 

「………あなたは、彼の何です?」

 

誰かの声。間違いなく副会長よりも、どの生徒よりも年上の声にワカモが苛立ち混じりに問う。

 

「“そうだね…強いて言うのなら”」

 

「“彼の先生だよ”」

 

一体どう言う意味でそれを言ったのだろうか。

まるで彼の理解者面して語るその声に憤怒さえ滲み出るその瞳で彼の先生だと嘯く誰かの姿を見た。

 

「………なるほど」

 

少なくとも嘘では無い様だと当初の怒りを無くしてワカモは呟く。

先生の瞳には、嘘偽りなく彼の姿があった。どうやらこの大人も彼の事を探しているのだろう。

 

「良いでしょう。今のところは、今のところは引かせていただきます」

 

今のワカモの胸の内から怒りは消えていた。

それが何なのか、少なくともいつものワカモの対応とは大きくかけ離れた穏便な様子を見るに、少なくとも先生の姿の何かワカモは見出したのだろうか。それはワカモだけが知っている。

 

「………また、お会いしましょう。【先生】」

 

 

 


 

 

 

 

─────我々は望む、七つの嘆きを。

 

 

─────我々は覚えている、ジェリコの古則を。

 

 

色々と問題があったが、シャーレの部室に乗り込んだ先生とリン。

連邦生徒会長が残したと言われるモノ…通称“シッテムの箱”。どの生徒にも使うことが出来なかったが、先生なら使うことができると言い手渡されたのがこのシッテムの箱だった。ほとんど衝動的と言って良いほどに先生はシッテムの箱のパスワードを入力し、気がついたら電子の世界に入っており、そこにはシッテムの箱の専属秘書であるA.R.O.N.A……通称アロナという少女の元、今の情報を共有する事にした。

 

「ふむふむ……つまりは連邦生徒会長が失踪して……」

 

「“副会長も居なくなったね”」

 

「副会長も居なくなった……ってえー!?」

 

この子、アロナはいっぱい色んな情報を知っていると胸を張っているがどうやら連邦生徒会長が失踪したことは知らなかったみたいだ。…それにわざとと言って良いほど連邦生徒会長の情報だけが無いとなるとおかしな話だが、今は置いといて。更に追加で副会長も居なくなったよ。と伝えるとそれまで話を静かに聞いていたアロナが復唱した途端、カチューシャ毎驚くかの様に大きく背を伸ばした。

 

「“……何か知っているの?”」

 

「知っているも何も!連邦生徒会副会長と言ったら有名ですよ!」

 

曰く、ここキヴォトスにおいてその名前を知らない人は誰もいないほど。

多くの生徒に慕われ、尊敬される彼はキヴォトスの秩序を守る番人。各学校のトラブルの解消だけでなく、企業間の軋轢さえも治めてしまう正義の人。勿論、それだけでなく落ちぶれて行くだけの不良などの更生にも手を広げる超人。

それが副会長であるとアロナも知識上では知っていた。

 

「“やっぱりすごい事をしているんだね”」

 

「はい!我が弟ながら……とても、凄いと思います!」

 

そんな話で盛り上がりつつ……話は二人の失踪が一体どんな事を引き起こしたのだろうかとシフトチェンジしていった。

 

「“えーっと確か……”」

 

『“サンクトゥムタワー”の最終管理人が居なくなった事で連邦生徒会の行政管理権が失われた状態です。』

そうそう。サンクトゥムタワーの制御が誰も出来ないと言う事で、行政管理権を失っていたとリンが言っていた様なと先生は思い出す。どうやらこれが無い事で混乱から戻らないと言うのもあるのだろうか……

 

「サンクトゥムタワーの問題は私が何とか出来ますよ?」

 

「“本当?!”」

 

そう考えていると横からアロナが声をかける。

どうやらアロナは超凄い高性能らしく簡単にサンクトゥムタワーへのアクセス権を手にすることができるらしい。早速やって見せましょう!とアロナは両腕を空へと伸ばして、何かを受信するかの様にむむむ……と唸っている。

 

「サンクトゥムタワーのadmin権限の取得完了」

 

これでアロナがサンクトゥムタワーの管理者となった。それはつまり先生がこのキヴォトスの支配者であるも同然である。そうやって喜ぶアロナに先生は静止の声をかける。つまりはそのadmin権限を連邦生徒会に譲渡すると言うことなのだ。

 

「……でも本当に良いのですか?連邦生徒会に制御権を渡してしまって…」

 

「“大丈夫。承認する”」

 

きっと問題は無いだろうと先生は連邦生徒会に返すつもりで譲渡する。

アロナにとっては連邦生徒会にいる筈の副会長になら渡しても良かったかもしれないという謎の信頼があったがその人が居ないとなると渡して良いのか疑問が過ったが、それでも先生が信頼しているのだからと無条件で連邦生徒会に横流しする。

 

それでようやくキヴォトスの混乱解消の第一歩目が始まったのだった。

 

「“そういえばアロナ……”」

 

「はい?どうしました?」

 

「“【天秤】ってなに?”」

 

リンが言っていた副会長に関係のある言葉【天秤】…連邦生徒会の分かりやすい権威の形と言っていたが、実際はどうなのかと聞いてみた。副会長が居なくなっていると言い、何かと違いすぎると先生はアロナに聞いた。

 

「天秤……ですか。それだとおそらく……」

 

アロナは知っている事を話す。

連邦生徒会が持つ【天秤】となるとひとつしかない。それは副会長の持つ文字通りの天秤。基本的に表立って語られることは無いがこれは知る人ぞ知る的な扱いである…いわば副会長の象徴みたいなモノだ。

 

「秩序を維持する…という形のモニュメントみたいなモノですね!」

 

「“………なるほど”」

 

どうやら話によるとそれも副会長の失踪時点で姿を消している様だ。

そんなモノを副会長が持っていたとは先生も知らなかったからどう言うものか聞いていると、どうやら【大人のカード】みたいな直接的な“何か”を起こす代物では無いのを考えると探すのは二の次で良いかと一応頭の中に書き残しておく。

 

とりあえずの目標は決まった。

まずは失踪したであろう副会長を探すところから始めないとなと先生はシッテムの箱の中から出てくるのだった……

 

 

 

 

 






先生

貴方は、先生だ。


【存在してはならない記憶】

貴方に刻まれた決して消えることのない悪しき夢の名残。
貴方はいつかの何処かで“彼”と友好を築き、親交を共にした。



狐坂ワカモ

瞳を焼くほど眩しい圧倒的な聖者
それ故の孤高。彼に愉悦アイを教えるのは─────


【彼岸の厄災狐】

七囚人の一人。矯正局に収容となった今でもその名前は悪名高い。
一度相対すれば最後、彼女を一時的に退けることは出来たとしても“彼”の様に敗北させるのは相当な難事になる事を覚悟しなければならない。

特徴は紅色の狐紋章に、傷が付けられたままの狐の仮面。



……なんとか、続いた(ガクッ

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