【完結】推しの子if ~あかねちゃんと一緒にアクアを救おうルート~   作:日ノ川

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B小町レベルアップ計画MEM編
登場人物が多いのでいつもより少し長めです


第15話 MEMちょの場合・前編

 仕事開けの夜。

 私は自宅のパソコンで、社長から預かった完成したてのMVを視聴していた。

 

「おー、流石アネモネ。短い納期で完璧な仕上がりだねぇ」

 

 これは宮崎旅行で二本撮りしたMVのうちの一本、なるはやで仕上げてくれると言っていた『スターT』のMVだ。

 すでに仮映像の段階で一度見ていたが、こちらが言った個所の修正はもちろん、CGやVFXも加わってより洗練された作品に仕上がっていた。

 満足してMVを閉じ、早速見た感想を伝えようとしたところで、プライベート用ではなく仕事用の連絡先に、アネモネからメールが届いていることに気付く。

 

 ちょっと見てみて。という簡潔な文書と共に添付されていたのは、先のものとは違う動画ファイルのようだ。

 恐らくは二本撮りした内のもう一方、『POP IN 2』のMVだろう。

 

 苺プロとは業務委託の形を取っていて、正式な所属タレントではない私に直接送ってくるのはコンプライアンス的にどうかと思うが、今回のMV撮影は私の友人のコネを使っている上、規模としては弱小プロダクションである苺プロにおいて、こうした映像関係のチェックなども私の仕事になりつつある。

 もちろん、B小町の活動とは別に業務委託として報酬も貰えるので文句は無いし、そもそもさっきまで私がスターTのMVをチェックしていたのもその仕事の一環だ。

 アネモネはそれを逆手にとり、B小町のMEMちょではなく、苺プロのスタッフに送った体を取るため、わざわざ仕事用のアドレスに送ってきたのだろう。

 

「まあ、今は社長も忙しそうだし、チェックくらいなら大丈夫だよね」

 

 言い訳をしつつ、ファイルを開く。

 正直興味があったのだ。

 自らを商業クリエイターと称するアネモネを、ただのアーティストに戻りたいといわしめたほどの作品に。

 

 

 

「……スゴい」

 

 その動画は何の効果も乗っていない、ただ映像を切り張りしただけの荒いものであり、完成度の点では一本目とは比べ物にもならない。

 もちろん、未完成品なのだから当然だが、それでも印象に残るのは間違いなくこちらのMVだ。

 しかし、本人が言っていたようにかなりアートに寄った作品となっている。

 私に最初に送ってきたのは、ここまで尖った内容で大丈夫か見極めて欲しいとの意図もあるのかも知れない。

 

「確かに尖ってる。でもこれなら、上手くやれば絶対バスる! あの時のルビー神懸かってたもんなぁ」

 

 未完成品とは言え、映像の流れで中心に居るのが誰なのかくらいは分かる。

 いつもとは違う、ミステリアスでダークな雰囲気を纏ったルビーは、一緒に撮影していた私たちを圧倒していたが、画面を通してみてもそれは変わらない。

 何かを訴えかけてくるようなあの瞳が強く心を貫き、爪痕を残す物となっていた。

 このMVの主役は間違いなくルビーだ。

 

「やっぱルビーには何か特別なものがあるんだろうな……」

 

 私とは違って。

 思わず口から漏れそうになる言葉を飲み込み、代わりに苦笑をこぼす。

 

「これがいつでも出来たらスゴいけど、今は元に戻っちゃったからなぁ。ま、そうなったらきっとルビーだけが飛び抜けちゃうんだろうけど」

 

 初代B小町の絶対的センター・アイのように。

 そうならずに済んだのは良かったのか悪かったのか。

 少なくともB小町にとってはブレイクするキッカケを一つ失ったことになるので、良いこととは言えない。

 ただ、私個人にとっては……

 

「やめやめ」

 

 また暗くなりそうな思考を頭を振って追い出してから、MVを見た素直な感想を添えてアネモネに返信する。

 内容に関しては全く問題なく、そのまま進めてもらって大丈夫なので、仮映像の段階になったら、今度は私ではなく、ちゃんと苺プロ宛に送ってくれるように付け加えておく。

 ある程度言い訳が立つとはいえ、正式な職員では無い私が内容に口を出すのは出すぎた真似だ。

 送信後、改めて自分の宿題に取りかかろうと気合いを入れ、ノートとペンを取り出した。

 

 宿題とはズバリ、新企画の立案である。

 幸いにも明日はオフなので、夜更かしをしても問題は無い。

 ちなみにこれはB小町としてではなく、ユーチューバーMEMちょとしての企画だ。

 

 まだ事件に対する世間の注目度が下がり切っておらず、B小町が活動自粛中ということもあるが、もう一つ、ルビーが言っていたB小町レベルアップ計画の為でもある。

 今までやっていなかった企画を打ち立てれば、B小町としての活動の幅も広がるだろう。

 とはいえあまり冒険し過ぎて悪目立ちするわけにもいかない。あくまで今までの路線を踏襲しつつ、目新しく見えるような企画を考えなくては。

 

──ピコン

 

「ん?」

 

 気合を入れ直した直後、アネモネからもう返事が来た。

 よほど自信があって、返信待ちでもしていたのだろうか。

 そんなことを考えつつ内容を確認して、手が止まる。

 

『MEMちょかなり薄味になったけど良いの?』

 

 この返信で、アネモネが先にこのMVを私に見せてきた本当の意図をようやく理解した。

 MVの主役は間違いなくルビーだが、私とかなちゃんの出番が無かったわけでは無い。

 むしろ、出演時間は三人平等になるよう調整されていた。

 

 それでもルビーが突出して目立ってしまうほど、あの時の彼女の開花したカリスマ性が特別だっただけだ。

 とはいえ、かなちゃんだって負けてはいない。

 恐らくはアクたんを意識していたのだろうが、好きな人が居ると思って振り返ってみてと指示を受けて撮った映像は、同性の私でも思わずドキリとしてしまうほどだった。

 もしルビーがいつも通りだったなら、主役の座は彼女が射止めていただろう。

 

 どちらにしても、私では無い。

 精一杯やったつもりだけど、こうして見てみると華もなければ個性も感じない。

 それは最初に見た『スターT』のMVでも同じだ。

 

 カメラ慣れという点では、天才子役として幼少の頃から芸能界に身を置いていたかなちゃんはともかく正式にデビューして間もないルビーよりはずっと経験があるはず。

 しかも私は年齢的に深夜でも働けることもあって、二人よりずっと多く撮影時間を取り、何度もリテイクを繰り返し、一番出来の良い物を使って貰ったはずなのに。

 こうなるともう、答えは一つしかない。

 

「才能の差かぁ」

 

 アイドルとしての才能が、私とは段違いなのだ。

 

「っ!」

 

 それを言ってしまってはおしまいだ。と言葉にしないようにしていたが、ついにこぼれ落ちてしまった。

 そうするとももう認めざるを得ない。

 B小町の中で、間違いなく私のアイドルとしての格が一番下という事実を。

 今はまだユーチューバーとしての活動のおかげでファン数だけはメンバーの中で最も多いが、それもいつまで保つか。

 

 これから先、三人で活動を続けていけば、二人のファンも増え、中には推し変する者も出てくるだろう。

 そうしていつか必ず二人に置いていかれてしまう。

 そうなったら私がこのグループに居る意味は──

 

「あー、もう! その為のレベルアップ計画でしょぉ!」

 

 自分に言い聞かせるように叫び、その勢いのままアネモネに問題なし。と一言返信すると再度ノートと向き合った。

 

 結局、思いついたアイデアは殆どもう誰かがやっている手垢の付いたものか、あるいは他のユーチューバーやティクトッカーの力を借りるコラボ企画ばかりで、私自身のレベルアップに繋がりそうなものは一つも無かった。

 

 

   ※

 

 

 遠くから、スマホの音が聞こえる。

 

「んー?」

 

 寝ぼけ眼でスマホを取ろうとして伸ばした腕が、テーブルの上に並んだものにぶつかって、ガラガラと不快な金属音を鳴らした。

 その音で目は覚めたが、寝起きは最悪だ。

 

「うわぁ。やけ酒で寝落ちって……」

 

 テーブルの上に散らばったお酒の缶を見て顔をしかめる。

 何本か倒れてしまっているが、飲み干したものばかりだったのが不幸中の幸いか、テーブルや床は汚れずに済んだ。

 そんな中に埋もれるように置かれたスマホを見つけ出して手に取った。

 

 アラームかと思った音は、どうやらラインの通知だったようだ。

 相手を確認して、思わず顔が綻んだ。

 

 グループ名は今ガチ女子会。

 かつて、私がアクたんやあかねと出会った番組『今からガチ恋始めます』のメンバーたちと作ったグループとは別に、女子だけで秘密の話をするために作ったものだ。

 発案者は鷲見ゆき。

 

 同じく今ガチの出演者で、ファッションモデルをしている高校一年生。

 アクたんと並んでメンバー最年少でありながら、番組を上手く回して成功に導き、ちゃっかり彼氏もゲットした小悪魔。

 私なんかよりよっぽど上手く芸能界を渡っている。

 

「あー、もう」

 

 一夜明けてもまだ、思考がネガティブになったままだ。

 振り切る意味で頭を振るが、二日酔いのせいだろう途端に頭痛が走り、思わず眉間に皺が寄る。

 踏んだり蹴ったりだ。

 頭を抑えながら、改めてラインを確認する。

 

「んー?」

 

 思ってもみなかった内容に眉を顰めた。

 

ゆき

『ノブと気まずくなっちゃった!』

『助けて!』

 

 から始まるメッセージには、先に確認したあかねが何があったのか問う内容が記されており、そこから更にゆきが状況の説明をしている。

 話を簡単に纏めると、ノブの女性関係にゆきが嫉妬している構図のようだ。

 

 ノブが二股を掛けている。なんてことはなく、むしろ表裏の無い誠実さのおかげで男女を問わず友人が多く、中には女性相手に勘違いする行動も取ってしまうため、結果ノブを狙う女が増えている。

 牽制したくてもノブとゆきの関係は公表しておらず、世間的にはあくまで元番組の出演者というだけ。

 

 これでは口を出すこともできず、それとなくノブに注意していたのだが、いかなる場合でも表裏なくストレートに感情をぶつけてくるノブにとって、遠回しな物言いはいまいち理解出来ないらしく、ゆきもそうした態度に苛立ってしまい、結果二人の中が気まずくなる一歩手前まできているということらしい。

 あかねも必死に力になろうとあれこれアイデアを出しているが、アクたんとはビジネスカップルであり、そもそもノブとアクたんでは性格が違いすぎるせいか、なかなか良いアイデアが出ず手詰まりになっている。

 

ゆき

『MEMちょ~!』

 

あかね

『助けてー!』

 

 もう限界だと声を上げる二人の悲痛なヘルプを受けて、ようやく脳が覚醒していくのを感じる。

 実際自分も人に誇れるほど恋愛経験があるわけではないが、かつてはガールズバーで働いていたこともある。

 その時に見聞きした経験上、いくつか打開策は思いつく。

 既読がついたことはあちらも把握しているだろうから、急いでメッセージを打ち始める。

 

MEM

『ごめん今起きたぁ』

 

ゆき

『あ、ごめん起こしちゃった?』

 

MEM

『大丈夫』

『新企画練ってて』

『そのまま寝落ちしてただけ』

『そろそろ起きなきゃいけなかったし』

 

 気を使わせるのは良くないと、この話はそれ以上広げず、本題に入る。

 

『こういうのはどうかな?』

 

 私が考えた内容に既読が付き、大して時間も立たず、二人ともすぐさま賛成を示した。

 提案したのは、ゆきが直接どうこうするのではなく、私やあかねも含めて今ガチメンバーを集めて同窓会のような形でみんなが集まる場を作り、そこでゆきがさり気なく話を振って、事情を理解している私やあかねからノブに注意するというものだ。

 もっとも素のコミュ力が乏しいあかねにはそうしたさりげない注意ができるとは思えないので、私から話をすることになるのだろうが。

 ゆきのためだ。

 ここは年長者として一肌脱ごう。

 

ゆき

『ありがと~』

 

 お礼の言葉とともに頭を下げるスタンプが一つ。

 顔を綻ばせながら、任せて。と言わんばかりに親指を付きだしたスタンプを返し、ソファから立ち上がる。

 妙な体制で寝ていたせいで体のあちこちがキシキシと痛むが時間がない。

 

 何をするにも、先ずは身支度を整えなくては始まらない。

 まだ鏡は見ていないが、ひどい顔になっているのは想像に難くないのだから。

 

「あーあ。今日こそ企画考えようと思ったのに」

 

 口ではそう言うものの、自分でも声が弾んでいるのがわかる。

 どんなに顔色が悪かろうと、どんな理由であったとしても、久しぶりに大事な友達たちに会える喜びと、口元に浮かぶ笑みだけは止められそうになかった。

 それに、このまま一人で考え込んでいても何も思い付きそうにない。

 みんなとの会話を通じてヒントを探るチャンスにできるかも。

 

 

   ※

 

 

「おー。なんかこの部屋来るの久しぶりだな」

 

 部屋の中に入って早々、室内を見回しながらノブが言う。

 

「よー、ノブ。久しぶり……でもないか」

 

 先に来ていたケンゴが軽く手を挙げて迎えた。

 

「だな。アっくんたちの舞台からだからひと月くらい?」

 

 軽口を叩きながら、ノブは何の迷いもなくゆきの隣に腰を下ろした。

 気まずくなったとは聞いていたが、少なくとも表面上はそうは見えない。

 とりあえず今居る全員で軽く挨拶をしてから、ノブは改めて室内を見回して、首を捻る。

 

「つーか。アっくんは? あん時はなんか体調悪いとかでほとんど話せなかったから、めっちゃ会いたかったんだけど」

 

「あー。アクたんは事務所に呼ばれててちょい遅れるって。先に始めてて良いって言ってたけど……」

 

「いやいや、そこは待つっしょ。せっかくの同窓会なんだから、全員集まってからじゃねーと」

 

 ノブのあっけらかんとした台詞に、誰も異論は唱えない。

 こうして自然とリーダーシップを取るところも相変わらずだ。

 それで嫌みが無いのがノブの人柄の良さを示している。

 こんな調子で女子にも接しているなら、確かに勘違いしてくる子は出てくるだろうな。

 

「でもみんな集まれて良かったよね。今日いきなりだから、流石に無理かと思ってた」

 

 ゆきの言葉に皆確かに。と頷き合う。

 事前にラインで予定を確認しあっていた女子三人はともかく、男子連中の予定に関しては未知数だったので、場合によっては日付をずらす必要もあったのだが、思いの外あっさりと全員の了承が取れたため、当日いきなりの開催となったのだ。

 

 とはいえ、全員芸能人の上、ゆきとノブの交際もまだ秘密。プライバシーが確保された店の予約は当日ではなかなか難しいので、皆で集まったこともある私の家に招待して宅飲み(私以外未成年なので当然お酒は厳禁だが)という形を取ることになった。 

 もちろんこれも半分方便というか、万が一ゆきとノブの件が拗れてケンカになってしまった場合を考えてのことだ。

 店では例え個室であっても周囲に聞かれる危険があるが、私の部屋は配信で使用するため、防音にも気を使っているので大丈夫だろう。

 

「まぁでも、仮にも芸能人が当日即集まれるってのは良いことなのかどうか」

 

「それな! でも、今だからこそって感じもあるよな。あかねとかもうちょっとしたら忙しくなるんじゃね?」

 

「そうそう。黒川さん映画の主演も決まったらしいじゃん」

 

 東京ブレイドの舞台を観た後と同じく、さんにアクセントを置くケンゴの言葉に、あかねは顔を真っ赤にさせて耳を塞ぎ、悲痛な声を上げた。

 

「黒川さんはやめてよーっ!」

 

「あはは。でもホントにオメデト。もちろん見に行くからね」

 

「うん。ありがとう」

 

「舞台と違って映画ならあかねたちも一緒に見れるし、その時はまた全員で集まろうぜ」

 

「良いねぇ。そん時には、俺らも予定のすり合わせしないといけないくらい忙しくなってると良いんだけどな」

 

 再会してすぐに当時の調子を取り戻して、軽口を言い合う皆の様子を見ながら思う。

 やっぱりこのメンバーは良い。

 芸能人同士の集まりの場合、やはりそれぞれの立場や売れ方によっては、嫉妬が生まれてしまうものだ。

 

 このメンバーでいえば、先ほどからいじられているあかねが一番の出世頭だ。

 東ブレの舞台も好評のまま終了し、とうとう映画の主演まで射止めた。

 女優としてこれ以上無いほど順調なステップアップを果たしている。

 そんなあかねのことを、多少茶化しはしても、純粋に喜ぶことができるのはこのメンバーだからこそだろう。

 もちろん私も同じ気持ちだ。

 

「でも大丈夫なのぉ? 内容はよく知らないけど、相方いるんでしょ。一緒に見たらアクたん嫉妬しちゃわない?」

 

「んー。内容はまだ言えないんだけど。たぶん、大丈夫だと思う」

 

 その返答におや。と思った。

 あかねの言い方は、内容的に問題が無いから嫉妬されないと言っているように聞こえる。

 アクたんとあかねの交際はあくまでビジネス上のもの。そのことはここにいる全員が知っている。

 それを見越してのイジリだったのだが。

 

(もしかして。本当に二人になんかあった?)

 

 ルビーが言っていたのは事実だったのか。

 いざそうなるとアクたんに本気で好意を寄せている同僚たちのことが気になってくる。

 

「別にどんな内容でも嫉妬なんてしねーよ」

 

 考え込む私の横からぬっと姿を見せたのは、見慣れた仏頂面。

 

「おー、アっくん久しぶりー!」

 

 すぐさま立ち上がり出迎えたノブに連れられて、アクたんが部屋の中に入ってくる。

 アクたんはそのまま空いているソファに座ったが、ノブもまた元の席に戻らずそのままアクたんの横に座ってしまう。

 単純に久しぶりの再会に浮かれて話をしている途中だったので座っただけだろうが。

 

「勝手に入って良いっていうからそうしたけど、正直こういうの感心しねーぞ。鍵とチェーン掛けといたからな」

 

 思い出したように私を睨む。

 少々神経質な言い方だが、実際アクたんが入ってくるまで気づかなかったのだから何も言えない。

 

「あー、ごめんごめん。今度から気をつけるね」

 

 返事をしながら、こっそりと様子を窺ったのはあかねとゆきの二人。

 

「むー」

「むぅ」

 

 嫉妬しないという台詞が不満なあかねと、ノブが自分の隣ではなくアクたんの下に行ってしまったことが不満なゆき。

 

(これはまずい)

 

 アクたんは気づいた上で放置しているのかもしれないが、ノブはまったく気づいていない様子だ。

 

「さ、さーて。それじゃ全員揃ったことだし、始めよっか」

 

 不穏な空気を換えるため、やや強引に話を進め、私はみんなが持ち寄った飲み物やお菓子をテーブルの上に並べ始めた。

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