炎炎羅さんを呼び出した会議での第一声、私は『アビドス高校の襲撃』を持ちかけました。
「そのアビドス高校とやらを襲撃するのは異論ねぇけどさ、そんなチビ高潰しても何の意味もねぇんじゃねぇの?どうせならトリニティとかゲヘナらへんをぶっ潰した方がいい気するけどなぁ?」
「意味ならあります。周辺の砂漠地帯はアビドス高校の対策委員会が守っています。対策委員会の生徒は言うなれば少数精鋭、既にカイザーの部隊を数回派遣しましたが、全て全滅させられています。逆に言えば、対策委員会さえ居なければあの広大な砂漠を私の手中に治めることもできるのです。あれだけの土地、いくらでも軍事拠点を建てる事ができますよ」
「へぇ……馬鹿面のクセに意外と考えてんだな」
「頭グリグリしますよ」
先日話し合った際に、基本私が作戦を立てて現場でも音声通信で指揮をとり、権力財力を総動員させ兵士をかき集める事にしました。
炎々羅さんはその先頭に立ち、あの『神秘貫通弾』とやらで敵を戦闘不能もしくは死亡させる役割をしてもらいます。
……アビドス襲撃に関しては私の戦力拡張のためと炎々羅さんの実力把握のためです。今回の作戦はそこら辺の不良を集めて戦力とし、そこまで力を入れているわけではありません。それよりも、私の音声通信で身元がバレないよう徹底的に保護してあります。こんな事をしているとバレたら、連邦生徒会長どころの話では無くなりますし、防衛室長の座も降ろされかねませんしね。
「コホン……アビドスの戦力は現状5人、先生との関わりがある様なので、もしかしたら接触するかもしれませんね。5人の内訳は中衛2人と後衛1人にオペレーター1人、判明していない1人がおそらく前衛でしょうね」
「その『判明していない』とやらは何なんだ?お得意の権限で調べられたりしねぇのか?」
「……データベースに残っている情報、名前などはあるのですが過去数年分の記録が抜け落ちてるんです。おそらく第三者に削除されたのだと思いますが」
「あり得そうなのは『本人を知ってほしく無いから消された』パターンか『学校側が切り札として保有してる』パターンのどっちかか?後者はその高校の人数的に厳しそうな気ぃするが」
まあ……連邦生徒会の情報をいじれる者なんて一握りしかいませんし、その中で「生徒のことを考えて〜」って動機なら先生で確定なんですけどね。その他の情報が無いので流石に言えませんが。
「じゃあ、アタシは駒として精一杯働いてくる事にするよ」
「ええ、よろしくお願いしますね」
◻︎◻︎◻︎
外は結構善戦してる方だな、砂漠地帯の環境に慣れてない上に相手有利の立地で防衛戦やられてる割には上出来だろ。
ただこのままじゃいずれアタシらが負けるな。この高校の奴ら、想像以上に場数踏んでやがる。連携も個人戦闘力も相当上澄みだ。
ちなみに……少数防衛の崩し方って知ってっか?
「シロコ先輩はドローンで、ノノミ先輩はマシンガンで牽制、高校に近づかせない事を最優先に動いて下さい!」
『ん、ホシノ先輩にもさっき連絡しておいた』
『とりあえず目の前の敵に集中!全員返り討ちにしてやるわ!』
こう言う小規模相手の攻略法ってのは大抵、単純な物量で攻略するか、もしくは指揮系統をぶっ潰すかだ。
前者だと高校丸ごと押し潰すくらいの物量が必要だ、防衛拠点ごと消し飛ばしちまったら防衛有利もクソも無いからな。
まぁつまり……この場合は
「オペ潰しさえすりゃ簡単に瓦解すんだろ?」
「嘘っ!?どこから侵入して……」
リボルバーで一発、頭にクリーンヒットだ、こりゃ即死だな。
指揮最大の利点は『全員同時に指示出しできること』だ。戦場では戦闘で手一杯なヤツがほとんどだし、少しのタイムラグがあったり、焦って大声で話せば相手に作画バレかねねぇ。特に指揮ありに慣れてるヤツらは指揮系統を失った瞬間、指示待ち困惑奴隷になるパターンが多い。
後は裏から銃撃っときゃ勝ちだ。
アタシは速攻で戦闘中の奴らに背後から近づき一発撃って2キル目……と思ったら砂に足取られて狙いがずれちまった。
次潰すのはこのミニガンデカパイ野郎、コイツがいるせいで砂地獄で走れないまま集中砲火喰らってヘイローが消えてるヤツらが何人か居る。
だからさっさと潰したいところではあるんだが……案の定瓦礫と砂場が多すぎる。さっきみたいに外しまくったら6発しか入んねぇリボルバーじゃ結構キツくなってくる。まぁこの武器しか持ってきてないんだけどな?
何とか遮蔽裏に隠れつつヘイト買ってるから上出来だが……だんだんと削られてきてるな。全弾発射でゴリ押しでもされたらたまったもんじゃねぇ……
『バリボリバリボリ』
「……おい不知火、今何やってる」
『ああ、貴方の制圧があま〜りにも遅いせいでポップコーンを食べ始めたところですね』
「人様が体張ってる姿をお前は映画鑑賞気取りかよ!?」
『なら早く終わらせて帰ってくれば良いでしょう』
「……クッソ、ああ分かったよ!瞬で殺って終わらせりゃ良いんだろ!」
コイツ……後でロシアンルーレットやらせてやる……マジで。
アタシは勢いよく飛び出しブレ覚悟で弾を1発残して射撃。そのうちの1発が片腕に当たったのは上等だ、マシンガンの射撃精度がガタ落ちする。
だが当然弾数が違ぇ……アタシが選んだのは被弾前提の全力直線疾走、痛みガン無視ならこれが最強だ。
そして近づいて、掴んだ後に窓ガラスを鉄格子ごと突き破って2階から仲良くダイブ、こうすりゃ球数もクソもねぇアタシのレンジだ。
「文字通りブッ跳ぼうぜデカパイ野郎!!」
マシンガンは銃身を横に押して完封、熱溜まっててクソ熱いけど我慢だ。
アタシの残してたラスト1発は胸にヒット、ほっときゃ余裕で死ぬ出血だ。残りのケモ耳2匹は他の不良どもが制圧済みだった。
「おい、お望み通り早く終わらせてやったぞ」
『大したものですねズズズズ今から爆破班を向かわせるのでズズズズ少々お待ちを』
「……何食ってやがる」
『……?ラーメンですが?』
「死ね」
まあ良い……どうせちょっと待ってりゃ校舎ごと爆破して任務完了だ。そしたらアタシも飯食えば良い。……それにしてもだ、アタシがチート弾使ってるとは言え、カイザー部隊を全滅させられるほど強いとは思えねぇ。連携は良い、個々も良い、だが何かが足りない。
この砂漠をたった5人で守ってきたと言われても納得が……ん?ちょっと待て、"5人"?そう言えばさっき話してた時は5人居るって話だったな。
アタシがやり合ったのはオペレーターと後衛、残り2人は武器的に前衛を張れる物じゃない。だとしたら残り1人が情報不足の不明野郎……
『炎炎羅さん!高速でそちらに1人向かっています!』
「ようやく来たか不明野郎。んで、どんくらいの速さだ?」
『えーっと……時速80kmですね』
「砂漠を走れる車でもあんのかアビドスは?」
『いえ、衛星カメラで見ていますが相手は完全単騎、兵器も無しです』
じゃあ何だ、徒歩で時速80km出せるバケモンがこの学校には居るってのか?だとしたらカイザー部隊全滅の件も、このチビ校が今の今まで生き残ってきたのも頷ける。全て『アビドスにはバケモンが居る』と仮定すれば辻褄が通るわけだ。
「……そいつ、名前はなんて言うんだ?」
『えーっと……』
不知火が答えを返す前に、高速で少女が現れ、倒れたアビドス生を庇うように武器を構え立ち塞がった。
『小鳥遊ホシノ、それが5人目の名前です』
ホシノは盾を重々しい動作で持ち上げ、もう片手にはショットガンを持っている。
「後輩たちを傷つけたのは、君かな?」
丁度その時の空は、暁色に染まっていた。
うちのカヤはちゃんと頭いい路線で行きます。
決して超人(笑)路線には舵を切りません。たぶん。