「……おい不知火、名前間違えてんぞ」
『へ?』
「だってコイツ……」
少し間をおいて口から出た言葉は、ホシノの驚愕を、カヤの困惑を掻っ攫った
「暁のホルスだろ。有名だぜ?」
「……何でその名前を知ってるのか、どこで知ったのかは分からないけどさ、今は自分語りをする気分じゃ無いかな」
ホシノは後輩たちに目を向ける。
傷ついた2人後輩の姿、そして胸を撃ち抜かれ今にも死にそうな1人の姿を見て感じた胸のざわつきをグッと堪え、命令を出す。
「シロコちゃん、今すぐに撤退してノノミちゃんの手当を……セリカちゃんはアヤネちゃんを連れて今すぐにシャーレに向かって」
「ッ……!それじゃあホシノ先輩はーー「いや、先輩なら大丈夫。行くよ」
「大丈夫だよ、おじさんすぐに向かうからね〜」
少し表情を和らげた後、ホシノはすぐに険しい表情に戻る。
「さて……それじゃ」
「おいホルス、『すぐに向かう』だぁ?出来ねぇしさせねぇよそんなkーー
フクロが瞬きしたほんの一瞬でホシノは懐まで詰め寄った
セリフを発し切る前……いや、それよりも単語をという方が正しいだろう瞬足
「早く終わらせないとね」
「チッ……やってくれんじゃねぇかホルス!!」
ショットガンによる腹部へのゼロ距離ショット、それをあの一瞬でやりやがった!アタシが聞いた噂通りの化け物度合いだなこりゃ
さて次はどう来る?
盾で突っ込んでくるか?それとももう1発?
「って……!砂蹴りかよ!?」
『カイザー部隊!今すぐ援護を……!』
「させないよ」
吹っ飛んだアタシを死角に両方向からの挟み撃ち、この雑兵ども練度は悪くねぇが……単純なスペックが圧倒的に足りねぇ
頭に対する的確な射撃、それも見えねぇ程の早撃ちで瞬殺されやがった
『嘘っ!?』
「ハッ!雑魚じゃ守護神は討てねぇってか!?……なら」
「銀の弾丸くれてやるよ!!」
手に持っていたリボルバーをホルスの顔面に向ける。
早撃ちにはなかなか自信はある、取り回しだって上だ……それなのに
「は?」
『え?』
完全死角からの一撃、言うならばシールドバッシュだ。
早撃ちだとか取り回しだとかの対策、簡単に言えばそれよりも早く動いてりゃいい。
事前にどれだけ読めるか、これが戦いの鉄則だ。
まあそこまではいい、反撃が来るのはある程度予測してた。
ただよ……盾に強力スタンガン仕込んでるなんて考えられねぇわ。
アタシは粘土みたいに地面に押し付けられる、それも電流を流されながらだ。
つうかまず、砂原+縦持ちで相性最悪な上に徹頭徹尾フル武装ときやがる……今ようやく、こいつが『暁のホルス』だなんて大層な名前で呼ばれてた理由が分かったよ。
フィジカル、知識、準備、フィールド、全部つえぇのを100揃えてきやがる。勝てる訳がねぇわな。そりゃ神格化される訳だ。
だがな、アタシにはプライドってもんがあるんだ
「ほら……どうした、トドメ…させよ……」
「……何で」
「何でアビドスを襲った!!」
「あ…あ、ブラックマーケットで……アイツら…に、ぶつかられたんだよ」
「そんな理由で……!」
「憎いだ…ろ……?ホル…ス!ここで……終わらせたい…なら、しーっかりだ……頭ァ…狙え…!」
コイツは憎い、大嫌いだ、それでも何故か……撃つ手が震える。
キヴォトス人とは言え、頭を何発も撃ったら人は死ぬ。コイツはおそらくアヤネちゃんを、他の人も撃ち殺した。
だから殺して当然で……!!
「そうか……テメェ…が、撃てねぇなら!!」
ピッと、足元から電子音が聞こえた。
これは……爆弾の起爆音!?
逃げる間もなく辺り一体が爆発し、大きな砂埃を生み出した。
私の目の前には、立っている1人の人影……まさか……!
「あァクッソ……目ぇ覚めたけど痛えな……クソ」
「何で……まともに立って…」
「アホ、まともに見えるかよ。爆弾の痛みでアドレナリンだして無理やり痺れマシにしてんだ……おかげで耳がイカれたのか、お前の声も聞こえねぇから何とか唇で読むしかねぇ……」
大丈夫だ……相手は満身創痍、こっちは銃弾一つ喰らってない……
まだ私が圧倒的に優先だ
「アタシはフェアに生きるのがモットーでな?1人殺したら、その分一回死ぬくらいの苦痛を受けなきゃなんねぇ。ただ、無抵抗でヤられんのは趣味じゃねぇから……真正面から殴り合ってる」
「アタシらはまだ、死ぬまで殴り合ってねぇだろ?」
「馬鹿馬鹿しい……さっさと終わらせてやる」
「ハハッ……言っただろ?『出来ねぇし、させねぇよ』ホルス。こっちはな、伝説の暁のホルスと対面して、最高にボルテージぶち上がってんだよ!!さっさと終わらせるなんてさせられる訳ねぇだろ!!」
不味い……早く向かわないとノノミちゃんも失血死に……
先生ならアヤネちゃんを何とかできるかもしれない……でも道中不良に襲われたら……手負いのセリカちゃんじゃ守りきれない……早く、早く!
「ん……ああちょっと待て、電話だ」
突然スマホを取り出し通話を始める。
なんて身勝手なんだと思いつつ、ここからすぐに立ち去ろうかとも考える。ただ、それでも私の怒りは足をここから離さない。
「はいはい……は?は?はァ!?……いや待て、中断ってどう言う事だよクソアホ!!『基地設営終わったからもう良い』って!?はァ!?あ!!クッソアイツ切りやがった!!……バカアーホ死ね!!!」
「……どうしたの」
「……そのさ、カッコつけたこと言っておいてワリぃんだけど……」
少し言い淀んだかと思うと、持っていたリボルバーを投げつけてきた。
「撤退命令出たからよ……その弾入ってる分、身体中どこでも好きなとこに撃っていい。それで一旦解散させてくんねぇか……?」
「本当に?……頭に撃つかもしれないよ」
「大丈夫だ、アタシの都合だしな」
私の中で何かが吹っ切れる。多分それは『助けに行くための、怒りを抑えるための言い訳ができた』事。
撃つ時間すら惜しい、足が動くようになったのだから、最善を尽くさなければいけない。
「……良いよ別に。次会った時に、確実に殺すから」
「あんがとな、寿命が伸びたぜ」
そうして私は全力で、後輩達が向かった方へ走り去って行く。
「……行ったか。………そろそろ…痩せ我慢も……限界だな」
そして私が私が後ろを向くと、遠くに倒れたあいつの姿が見えた。
「おいゴミ」
「目覚めて一言目がそれですか」
ベッドから目を覚ました瞬間、飛び起きて不知火に褒め言葉をかけてやる
あーーー!!コイツ撃ち殺してぇ!!
「倒れてる貴方をわざわざ連れて来てあげたんですよ?結構な優しさだと思いませんか?」
「どうやって運んだんだ?どうせ砂原車で引き摺ったとかだろうが」
「お姫様抱っこです」
「おお!良いなそれ!撃ち殺す理由が一つ増えた!これで2957個目だぜ!!」
「私も、貴方から誹謗中傷でむしり取れる金額がどんどん増えてきますよ」
「裁判したら金取る前に公開処刑じゃねぇかなアタシは」
「フフッ、違いありませんね」
机の中に入れておいた煙草とライターを手に取り火をつける。
そこらの"悪い"大人から高値で買ったものだ。このキヴォトスでは、火薬で鉛玉を飛ばすのは合法なのに草を燃やして吸うのは違法らしい。
納得いかねぇなマジで
「……未成年は煙草吸っちゃダメなんですよ」
「キヴォトスはルール無用なんだよ」
「寿命縮まっても良いんですか?」
「……アタシは自分の事、寿命で死ねる程穏やかな人間だと思ってねぇ。予想だけどさ、アンタもだろ?」
「ええ、大正解です」
不知火の奴、アタシといることに少し慣れたのか返しにキレが出てきやがった。そろそろ舌でも切っておくかな。
「あの」
「なんだ?」
「一本くれませんか?」
「……チッ、貸し一な」
「もう一つ良いですか?」
「今度は何だよ不知火」
「多分……私の方が早死にすると思います」
「……そうかよ」