Mr.聖杯戦争in外典   作:英鈍

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生きていたのだよ!
獅子劫さん戦をどんな感じで進めたらいいか悩んでたら思いついたので書いた。


番外編
とある夏の一幕


 

 静岡県のとある街。

 

 一見何事もなく日常を謳歌することができる平穏な土地ではあるが、裏では過去の英雄豪傑──サーヴァントを呼び出し、万能の願望機には到底及ばぬものの、大小様々な奇跡を起こすことができる亜種聖杯を求め相争うという、血生臭い儀式が行われている土地である。

 

 そんな亜種聖杯戦争の中、サーヴァントを呼び出したマスター達は時と場合によっては同盟を結ぶ。しかし、最後に残った二騎で決着をつけるため、水面下では互いのサーヴァントの真名や宝具、マスターの魔術などの手段を暴くため腹の探り合いが行われている。

 

 

 しかし、何事にも例外はあるものである。

 

 

 伝統的な日本家屋。庭が見える畳の一室。

 敷き詰められた畳の上に、大戦が終戦し数十年経ったこのご時世にあまりにも不似合いな多種多様な銃火器がズラリと並べられていた。

 

「これが現代の技術をバリバリに取り入れた結果産まれた現代雑賀の結晶。どう、凄いでしょ」

 

 その銃火器の後ろで腕を組み、自慢気な笑みを浮かべるぶかぶかのマントで体を包んだ銀髪の少女。

 可愛らしい見た目だが、その正体はサーヴァント。

 此度の亜種聖杯戦争でアーチャーのクラスで召喚された三代目雑賀衆棟梁、雑賀孫一()だ。

 

 彼女と銃火器の目の前にいるのは和装の少年と派手な格好をした筋骨隆々の青年。

 二人の目線が向くのは美少女と言える蛍……ではなく、規則正しく並べられた銃火器。

 

 

 一拍置き、二人は叫んだ。

 

 

「「カ、カッケーーーー!!!」」

 

 

 和装の少年──現在五歳である明雲凪斗と彼に召喚されたバーサーカーのサーヴァント、坂田金時は意図した訳ではなく、しかし全く同じタイミングで叫んだ。

 

 だが、それは必然と言える。

 

 二人の目の前にあるのは、そう、謂わばロマン。

 

 少年が憧れる定番の一つ。

 自動車飛行機恐竜怪獣変身ヒーロー戦隊巨大ロボ。

 精神年齢十五歳である凪斗にとって、普通に成人している金時にとって、手入れがし尽くされ金属光沢を輝かせる数多の銃火器はソレらに並ぶモノであった。

 

 目を輝かせる男の子(二人)は蛍に目線を向ける。

 

 

 無言の問いに蛍は──懐から手袋を二双出した。

 

 

「ありがとうございます!!」

「サンキュー蛍!! この恩は忘れねぇぜ! よっし、分かってるな大将ォ!!」

「んなモン言われなくてもアンダースタンドだゴールデン!!」

 

 

「「丁寧に扱う!!」」

 

 

 出された手袋を手に装着した二人はそれぞれ好きな形の銃を割れ物を扱うようにソッと手に取る。見る角度を変える度に目を輝かせ、互いに此処がカッコいいぞと語り合う。

 

「本来ならそう簡単に見せないし、触らせはしないけど……銃にロマンを感じる者(私と同じ)なら話は別。存分に見て触って楽しんで貰えれば私は満足」

「なぁ蛍! このままでも十分ゴールデンだが……ゴールデンに塗装すれば更にゴールデンに──」

「ソレは嫌」

「ゴールデンショック……」

「ゴールデンがゲシュタルト崩壊してるぞゴールデン……」

 

 項垂れる金時を見て苦笑いする凪斗であったが、再び今触っている拳銃に目を輝かせる。

 

「……ライダー戦でも思ったけど、よくこんな沢山の種類の銃を使いこなせるな。俺だと頭パンクしそう」

「オレもソレは思った。戦闘中はモチ頭使うが、オレのバトルスタイルはマサカリとオヤジ譲りのイカヅチ、そしてパワー! 蛍とはまた別、シンプルイズザベストってヤツだ! ぶっちゃけそこら辺の領分は色々使う頼光サンだし」

 

 二人の言葉に蛍は答える。

 

「訓練の成果と慣れとしか言いようがない。凪斗もまだ五歳だけど、魔術使いなら将来沢山の手札を効率的に使えるようになるべき」

「……ハイ」

 

 蛍の辛口な言葉に先程の金時同様項垂れる凪斗。そんな凪斗の頭に金時がポンポンと慰めるように手を当てた。

 

 

「──ところで、凪斗に一つお願いがある」

「え、何?」

(ン?何か空気が変わったような……)

 

 

 

 

 

「私をお姉ちゃんって言ってみてほしい」

 

 

 

 

 

 静寂が辺りを包む。

 

 

 そして先程のように一拍置いて、二人は心の中の声が漏れた。

 

 

「「は?」」

 

 

「聞こえなかった?私をお姉ちゃんって言ってみてほしい」

 

 

「……何故(ホワイ)?」

 

「なんとなく」

 

 蛍の発言に主従は急遽念話会議を行う。

 

(いやどういうこと!? わかるゴールデン!?)

(さっき蛍が言っただろ!? 何となく、つまり気分だ! オレッち達が黙っちまったせいで妙な空気になっちまったし、こいつはノットゴールデン! アチラさんも目がキラキラだし、早く言っちまえ大将!)

(いや俺精神年齢十五歳なんですけど!?)

(十中八九あっちのが歳上(ウエ)だ! ソレに大将の外見(ガワ)は五歳の子供(ガキ)! 変な意地張らずに言ってくれ! 空気がシルバーどころかブロンズになっちまう!)

(……あぁ分かったよ! 言えば良いんだろ!?)

(そうだ! やるんだ大将! 今、ここで!)

(あぁ! 勝負は今、ここで決める!)

 

 

 覚悟をキメた凪斗は蛍に向き、そして──

 

 

「ほ、蛍姉さん……?」 

「─────」

 

 

 凪斗の口から放たれた言葉に蛍は目を見開き、見開いた目を閉じ、数回頷く。

 そして再び開眼すると、凪斗の両手を握った。

 

 

「あなたに凄く素晴らしい提案がある」

 

 

「あなたも雑賀にならない?」

 

 

 放たれた言葉に凪斗は思わず言葉が漏れた。漏れてしまった。

 

 

「……はい?」

「あ」

「よし、これで言質はとった」

 

 己の失言に今更気づくも時既に遅し。

 

「まずは雑賀流基礎訓練から始める。私も子供の頃から熟してきた。最初は少しキツいけど、見た感じ才能はあるし後々慣れてくるから大丈夫」

「え、ちょ、ま」

「それじゃあ早速始めるとする」

 

 庭へと連れて行こうとする蛍に抵抗しようとするも、五歳児とサーヴァントじゃその差は火を見るよりも明らか。

 当然凪斗は念話で金時に助けを乞う、が。

 

(すまん大将。オレには無理だ。強硬するオンナを止められる男なんて、世の中には誰もいねぇのさ)

(ゴールデーーーン!?)

 

 いつの間にか水などを用意していた蛍の元でひぃこら言いながら訓練に勤しむ凪斗を縁側で眺める金時の横に、よく冷えた切られたスイカが置かれる。

 

「おっと、すまねぇな婆さん」

「いえいえ、お気になさらず」

 

 手に取り、一口。シャクっとみずみずしさが伝わる音と共に口の中で冷たさと甘さが広がる。

 

「元気ですねぇ」

子供(ガキ)は元気でナンボだからな」

「えぇ、全く」

 

 金時の隣に座った老婆──蛍のマスターである彼女と共に、金時は庭で訓練に勤しむ二人を、尊いモノのように眺める。子供が戦い、血を見るということは嘆かわしいことではあるが、少なくともその手に武器を握る機会はごく僅からしい。

 それと同時に、金時はある男を──共に平安の世を脅かす魔を退治していた源氏武者のことを思い出す。

 

(……お前の子孫が術師になってて、更にはよくわからんところからきた魂が宿ったなんて、びっくり仰天だぜ)

 

『金時殿! 土蜘蛛の巣はあちらとのことです!』

『民の安寧を脅かせし悪鬼、滅ぶべし!』

『やはり槍ですな、槍突いてよし薙いでよし投げてよし特に投げてよしが!』

『なぜ戦うのか、ですか? 愚問ですな。我ら源氏武者は民のために、ありふれたモノを守るために戦うのです!』

 

(……やっぱり、全然似てねぇな)

 

 記憶の中でのあの熱血と凪斗の性格は大違い。

 きっとあの熱血ならば『鍛錬こそが民を守る唯一にして最大の近道!』と言って蛍がドン引きする程までに訓練に熱中するだろう。

 

 ふと、空を見上げる。

 

 澄み切った青空に雲が一つ二つ。

 夏の匂いを感じられる良い風が吹き、風鈴が音を鳴らす。

 口に含むスイカはとても美味い。

 

(数十年前に人同士のでっかい戦争が起きてたって話だが──)

 

 

「──オレ達はしっかり守れたらしいぜ。◾️◾️」

 

 

 スイカを食べ終えた金時は口に含んだ種をプププと地面に飛ばす。老婆はその行為を咎めることなくむしろ笑う。釣られて金時も笑うと、休憩している二人の元へ向かった。

 

「よぉし! 訓練の休憩がてらいっちょオレッちと相撲なんてどうだ!」

「それ休憩って言えんの?」

「言うさ、相撲は心のオアシスだからな! それとも……ビビってんのか?」

「───ハァァァァァア!? んな訳ないんですけどォ!? 上等じゃコラァ!」

「その意気でこそオレのマスター(大将)だ! 行司は頼むぜ蛍!」

「任された。初めてだけど、あの金太郎の相撲の行司をするのは凄くわくわくする」

「遠慮なくぶちかましてこい、大将!」

「言われなくても!」

 

 

 

「──はっけよい、のこった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

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