呪腕のハサン。
暗殺教団の党首、歴代山の翁の一人にしてシャイターンの呪腕を移植し相手を呪殺する暗殺者。
ステータスは低く、サーヴァントとしての能力はまずまずであり、善人からは離れてはいるが、物の道理を重んじ、社会秩序を良しとし、どんな状況であっても裏切らない。
正しく仕える者の見本、一流と呼べるだろう。
俺は召喚した呪腕さんと共に召喚した部屋からリビングへと移動する。まずは自己紹介だな。
「俺の名前は明雲凪斗。これからよろしくな、アサシン」
「凪斗……いい名ですな。よろしくお願いします、マスター。共に聖杯を掴み取り、己が願いを叶えましょう」
「あぁ……ソレなんだが」
「?」
聖杯への願いに言葉を濁した俺に呪腕さんが疑問を浮かべる。
俺は懐からあるメモ帳を取り出し、それを呪腕さんに渡した。
「これは?」
「読んでみてくれ。日本語は分るな?」
「えぇ、聖杯より与えられている故。では────!?」
メモ帳を読んだ呪腕さんは驚いたような雰囲気を浮かべ、その身体には不自然なわたわたとした行動からも動揺していることが分かる。
だが、彼がそうなるのは当たり前だろう。何故なら、そのメモ帳に書かれているのは──
「マスター!? 何故、これに我ら山の翁の
そこに書かれているのは百貌を始め、静謐、耀星、煙酔、影剥、震管……十九名のハサンの情報と其れ等への対策──所謂ハサン攻略本だ。
「アサシン、いや、呪腕さん。亜種聖杯戦争の知識ってのは与えられてるか?」
「えぇ。世界各地で行われている普遍化した聖杯戦争と。しかし、それとこれに一体何の関係が──」
「呪腕さん。アンタはサーヴァント殺しとマスター殺し。どっちが楽だ」
「……マスター殺し一択ですな。急所を抉ったとしても死なずに立ち上がるサーヴァントより、現世に生き、多少の傷で死に至る生者の方が遥かに殺し易い」
「その通りだ。だからこそ、亜種聖杯戦争の初期にアサシン達──アンタらハサン・サッバーハは猛威を振るったのさ」
「……成程。合点がいきました」
流石呪腕さん、察しが良い。
「強き者、有利な者に対策が練られるのは世の常。マスターを殺し過ぎた故にこのような物が作られたのでしょう」
「その通り。そのせいで今はハサンが召喚されることは殆どなくなり、他のアサシンが召喚されるようになって来ている。ハサンの春だったのが一転して冬になったのが現状だな」
「悲しいことですな……しかし一つ疑問が残る」
「何故、私の情報が
やっぱりそこに気づくよな。
「山の翁は十九名。しかしこれに私の異名はなく、代わりの、見知らぬ者の異名がありました」
「……これはあくまで仮説なんだが、並行世界、イフって分かる?」
「……もしもの世界、選択の違いにより発生する世界……」
英霊の座に過去現在未来は関係なく、故に未来や並行世界の英雄であるエミヤも召喚される。
そう、
そう、俺が立てた仮説とはズバリ──
「呪腕さん。アンタが
「……あり得ない話ではありませんな」
俺は仮説を聞いた呪腕さんはローブと布に隠された右腕、シャイターンの腕を見る。
「もしも私がこの腕を移植していなかったら山の翁にならず、別の者がなっていた可能性は高い。無数にいる私の中で、この腕を移植しなかった者もいるかもしれない」
これには静謐ちゃんも当てはまるかもしれないな。
静謐ちゃんは教団によって作られた存在であり、もし教団が『毒の娘』を作る計画を実行、そもそも計画しなかったら存在していなかっただろう。
「マスターの仮説は分かりました。しかし未だに疑問が残る」
「何で召喚されていない筈の呪腕さんの事を知っており、尚且つ触媒まで用意できたのか、ということか?」
「えぇ、私が呼ばれる際。『生きたい』とは別に、ハサンという存在ではなく、明確に『私』を呼びたいという意思も感じました。何故マスターはこの世界にはいない私のことを知っていたのか、私はそれを知りたいのです」
……このことを他人に話すのは久しぶりだな。
俺は
「俺はこれから話すことは全て真実であり、嘘は言わないとこれに誓う。呪腕さんは他言無用ということだけを誓ってくれ。だからこそ、俺が話すことは全て本当であるということを信じてくれ」
「……我らが神に誓いましょう。さぁ、聞かせてくだされマスター」
さて、では話すとしよう。
俺の転生についてを。
◾️◾️◾️
俺は話した。
転生のことを。
この世界が創作物であること。
そして、この聖杯大戦の行く末を。
「なんと……そのような事が起こりうるとは……」
そりゃあ困惑するわな。俺も実際に経験してもしばらく信じられなかったし。
「目下の目標は天草四郎が行う計画──全人類の不老不死の阻止だけど……」
「だけど?」
「
呪腕さんが驚きの声を上げる。
「何故に?」
「ま、叶えたい願いがあるってのもあるけど……呪腕さんにも叶えたい願いがあって召喚に応じたんだろ?」
「なら、それをちゃんと叶えさせるのが、マスターの義務ってもんだよ」
ま、今回はその義務を果たすことは出来なさそうにないな、と付け加えそういうと、呪腕さんは髑髏面で見えないが目を見開いたような感じがし──笑った。
「ハハハハハハハハ!! いやはや、私は何ともまぁ良きマスターに巡り会えたものだ!」
「?????」
いや何で笑ってんだ呪腕さん?え、そんなに変だったか?
「これは失礼。何分、喜ばしかったもので。そういえば、私を呼んだ触媒は何だったのでしょうか?」
「あぁ、コレ」
「────え?」
俺が出したものに呪腕さんはショックを受けたのだろう。ガチで「え?コレで呼び出されたの私」という感じの雰囲気を出している。
俺が取り出したものは、俺が呪腕さんの姿と活躍を魔術で念写した呪腕さんの姿と『呪腕のハサン』という文字が書かれた紙だったのだから、それは当然の反応だろうな。
ちなみに転生したことについて話した相手は全部サーヴァントです。
「ところでマスター。一つ尋ねたいことがあるのですが……………ソチラの世界で、私の人気は如何程でしたか?」
「呪腕さんや初代様含めて、登場してるハサンは大体人気だったよ。俺も好きなキャラの一人に呪腕さんが入ってたな」
「おぉ! やはりアサシンといえば山の翁という訳……お待ち下さいマスター。今初代様と──!?」