Mr.聖杯戦争in外典   作:英鈍

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もっとしてくれてええんやで


良心姉弟

 現在トゥリファスミレニア城塞。

 

 日本の自宅から切り札とか色々準備しながら呪腕さんとの交友を深めて戻って来ました。

 流石は呪腕さん。俺の召喚して来たサーヴァントって比較的接し易い奴ばかりだったけどダントツで接し易い。アーラシュとタメ張れるぞこれ。

 

「それにしても、ダーニックのあの顔はないだろあの顔は」

「まぁまぁマスター。落ち着きなされ。ランサー殿は私の能力を知り満足そうにしていたではございませんか」

 

 そう、ダーニックの野郎。

 俺が何を召喚したのか聞いてハサン・サッバーハと答えたら明らかに失望の目を向けてきやがったのだ。あんの糞爺……呪腕さんのことを何一つ知らん癖に。裏切らない、公私混同をしない、人格者ってだけでも優良物件なんだぞ!? 一回しか聖杯戦争を経験していない素人め!

 一方ランサーは呪腕さんの能力を高く評価してくれた。流石公王。

 

 俺がダーニックへの苛立ちを隠し切れずに歩き、それを呪腕さんが宥めているという奇妙な光景が続いていると、二つの人影が此方に向かってきていた。

 

 あれは……人影を察知したのか呪腕さんが気配を消す。

 

「フィオレにカウレスか! 久しぶりだな!」

「お久しぶりですね、凪斗さん」

「久しぶりです」

 

 ユグドミレニアの数少ない良心、フィオレとカウレスだ。

 

 フィオレとカウレスは二人とも俺とは長い間交友関係があり、フィオレとは同じ降霊科(ユリフィス)接続強化型魔術礼装(ブロンズリンク・マニピュレーター)の開発に関して相談を受け、その繋がりで時々カウレスと会うこともあったのだ。

 

「何で凪斗さんが此処に? 時計塔の魔術師なのに、此処にいても大丈夫何ですか?」

「あぁ……これ」

 

 俺は右手に刻まれた黒の令呪を見せる。

 

「ユグドミレニアじゃないのに何でか黒の令呪が刻まれてな。直ぐにダーニックに囲われて、今回は黒のマスターとして参戦することになったって訳だ」

「……その体質は相変わらずですね。大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫……多分、きっと」

 

 フィオレが気の毒そうな目を向けて来る。

 

「サーヴァントは召喚したんですか?」

「あぁ、召喚したよ」

 

 俺の言葉と共に呪腕さんが気配を出し、姿を現した。

 

「うわっ!?」

「きゃっ!?」

「アサシン。真名をハサン・サッバーハと申します。これからよろしくお願いしますぞ、お二方」

 

 突然俺の隣に出現した黒いローブを纏い髑髏面を付けたサーヴァント──呪腕さんに二人が驚く。

 

「はっはっはっ。そのような反応を頂ければ暗殺者冥利に尽きますな」

「いやいや、かなり気配出してたでしょ。本気出したら目の前にいてもわかんないじゃん」

「それはそうですな。例え正面であっても存在を悟らせないのが一流というものですよ、マスター」

「……随分と親しげですね」

「あぁ、呪……じゃなかった。アサシンの人柄が良いってのもあるけどな。二人とも気を付けろよ? サーヴァントの地雷踏んで自滅したマスターなんて何人も見てきたからな!」

「私はそのような裏切りなどしませんけどね」

 

 二人で笑っていると二人が何か恐ろしいものを見るような目で見てくる。誠に遺憾である。

 

「あ、そうだ。凪斗さん、何か、バーサーカー向きのサーヴァントで良さそうな奴の触媒ってありますか?」

「バーサーカー向きねぇ……」

 

 確かカウレスは魔術師としての能力が低いからバーサーカーを召喚するんだっけか。んじゃ負担の少ない奴……あれ、なくね?

 てかそもそも俺が召喚したバーサーカーって金時一人だけだし……うーん。他の召喚した奴もバーサーカーにしたら燃費悪くなるだろうな……いや確かロシアの亜種聖杯戦争で同盟相手から貰った奴があったな。確か……

 

「敵が召喚してた奴なんだけど、ピョートル大帝っていける? 格めっっちゃ高い奴だけど」

「……ピョートル大帝ってロシアの初代皇帝じゃないですか。流石に……」

「んじゃ力になれそうにないな。すまん」

「いや、大丈夫です。自分で見つけますから。でもやっぱり、凪斗さんが味方にいるのは頼もしいですね」

「えぇ。私がよく見る凪斗さんは、その、アレでしたけど……」

 

 俺は自然と土下座の体勢をフィオレに向けてとっていた。

 

「ホントにごめんなさい。今度何か高いもん奢ります」

「いえいえ、気にしないで下さい」

「いやでも流石にそれだけじゃ済まされないから!何度も迷惑かけてる身で何もないだと逆にこっちが気にするから!」

「本当にそんなに気にしなくてもいいのですけど……では、また今度困った時は頼らせていただくということで。では、失礼します」

 

 フィオレとカウレスの姿が見えなくなるまで、俺は土下座を続けた。

 

 やっと土下座の体勢を解いた俺に呪腕さんが質問する。

 

「……マスター。あの少女に一体何をなされたので?」

「……酒に酔った勢いで色々と愚痴を吐いてました……」

 

 そう、俺はどちらかというと絡み上戸で愚痴を吐き、更には記憶に残らないタイプなのだ。

 そして何と運が悪いことにフィオレが何度か相談をしに来た時にそうなってしまっており、何度も愚痴を吐いてしまったらしい。

 それでも何の文句も言わずに大丈夫ですか? って聞いてくれるフィオレはマジでホントにいい子……数日少し当たりキツくなるけど俺の所業からしたらマシよマシ。

 

「……マスター。私は教義に反し、そしてこの呪腕の影響もあるため酒は口にしませぬが、酒を少しずつ断ちましょう。その方がお互いのためになります故」

「……何回か失敗してるんだよなぁ……」

「それでもでございます。女性──しかもあのような見目どころか人格まで麗しい淑女に絡み酒など言語道断ですぞ!」

「……はい」

 

 呪腕さんやっぱり見た目に反してすっごくマトモ!

 禁酒頑張らないとなぁ……

 

 あっと、そういえば。

 

 

「あの二人、呪腕さんの目から見てどうだった?」

 

 

「──カウレス殿は向いていますが、フィオレ殿は向いていませぬな。異端に反する道──表を歩む方が彼女の為となりましょう」

 

 

「──やっぱりか」

 

 

 全く、才に反した道を歩んだ方が身のためになるとは、運命とは酷いものだな。

 




主人公はフィオレちゃんには頭が上がりません。
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