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ロッコ・ベルフェバンに呼ばれ、聖杯大戦の赤のマスターとして参戦することになった獅子劫界離は、他のマスターを見て圧倒されると同時にそりゃそうだなという納得が湧いてくる。
『魔術協会一級講師』フィーンド・ヴォル・センベルン。
『疾風車輪』ジーン・ラム。
『
『
どれも一流の魔術師達。それに加えてフィーンド以外は戦闘に特化しているフリーランス。仕事をこなしている際に一度は聞いたことがある名ばかりだ。
そして自分を含めた七人目は聖堂教会の第八秘蹟会から派遣されたシロウ・コトミネという男。知らぬ名ではあるが、監督役に抜擢されたということは多少の実力があるのだろう。
そこで獅子劫は疑問を覚えた。
聖杯戦争と言えばで真っ先に出てくる名がいないのだ。
亜種聖杯戦争経験数最多、依頼で共にとある魔術組織を潰したことがある、あのMr.
「おい。アイツ──明雲凪斗はいないのか? 聖杯戦争と来ればアイツがいると思ったんだが」
「……あ奴ならば参戦しておるよ」
「なら何でこの資料に……おいおい、マジか?」
獅子劫は一瞬疑問を覚えるが、すぐに凪斗の体質を思い出し、冷や汗が流れる。
その様を見たロッコは溜め息を吐く。
「ユグドミレニア──"黒"の陣営でな」
「……アイツにユグドミレニアの縁なんてあったか?」
「いや、ない。フィオレとその弟とのみじゃな。特にフィオレとは親しげではあり、もしあ奴らが交わっていたら可能性はあるが……」
「本人の性格的にありえない、か。それにアイツ前に酒の席で愚痴ってたからな。『童貞捨てたいけど捨てるなら美人が良い』って贅沢なことをな」
「縁談の話を悉く断っておるからな。極一部、魔術師としての能力や家系のみならず、本人の人柄にも惚れてる者がいたというのに贅沢な奴よ。まぁそ奴らは未だに諦めていないがな」
ぶっちゃけ凪斗はモテる。
九百年の歴史を持つ家系。
では何故悉く断っているのか。
理由は単純明快。怖いから。
結婚は人生の墓場とよく言い、その後の人生に不安を感じているのだ。
果たして自分は結婚相手をちゃんと愛せるのか、子供をちゃんと育てることができるのだろうか。
そんなありふれた不安があるため、未だ縁談の話を全て断っているのだ。ちなみに現在二十三歳である。
「相変わらずアイツの体質は分かんねぇな……聖杯が真っ先に凪斗の奴を探してるんじゃねぇのか?」
「あ奴の扱いはユグドミレニアに派遣されたスパイということになっておる。情報を流すことを頼んでいるが……」
「十中八九無理だな。サーヴァントとあの八枚舌相手にそんな隙はないだろうよ」
「うむ。故に、ロード・エルメロイII世はただ生き残ることを重視しろと伝えたそうだ。あの若さで
幾ら数多の英霊と共に戦い、そして生き抜いたと言えども凪斗は現代に生きる魔術使い。流石にサーヴァントには無力……そうロッコは考えていたが、獅子劫はそうではなかった。
「アイツを聖杯戦争で敵に回すなんて勘弁して欲しいぜ全く……」
「我らが召喚したサーヴァントの真名やスキル、宝具を把握している可能性が高いからな。情報戦で既に不利になっている」
「いや、違う。それもあるが、俺が危惧してんのはあいつの切り札だ」
「?」
獅子劫は思い出す。
ある魔術組織を潰した時のことだ。その組織の所業から怒りを抑えきれず、そして解禁した時の凪斗のあの力を。
「アイツの切り札だが、
「……真か!?」
「アイツの口から直々に聞いた。あれは封印指定になりかねない力だな。おっと、これは他言無用で頼むぜ?」
獅子劫の言葉にロッコは汗を流しながら頷く。
「やはり否応もなしに入れるべきだったか……」
「ま、時既に遅し。仕方ねぇよ。じゃあな」
獅子劫は前金代わりにヒュドラの幼生のホルマリン漬けを貰い、時計塔の廊下を歩きながら思案する。
(アイツは他の魔術師みたいに変なプライドとかねぇからな……それでいて実力自体も異常な程に高い。円卓の騎士を召喚するにしても、真名を知られている可能性もあるし、サーヴァント戦の経験も豊富。面倒臭いどころじゃない相手だが、やるしかねぇか)
獅子劫はそう思いながらも覚悟を決め、向かった。
聖杯大戦の地、トゥリファスへ。
◾️◾️◾️
フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアは上機嫌であった。
その凛とした顔は通常より少し緩み、動きもどこかそわそわしている。
そんな様子にフィオレの弟、カウレスは理由を何となく察していた。
「姉ちゃん……凪斗さんが来たのがそんなに嬉しかったのか?」
「えっ!? き、気付いてたの!?」
「気付くに決まってる。俺も凪斗さんが黒のマスターとして参戦することは嬉しいけど」
カウレスの指摘にフィオレは顔を赤らめさせ手が行き場をなくしたように忙しなく動く。
凪斗──明雲凪斗は二人にとって馴染み深い存在だ。
フィオレが
カウレスにとっても姉とはまた違う、少し駄目な兄のような印象だ。
しかし、この聖杯大戦では一番頼りになる人になるだろう。
亜種聖杯戦争を十二回経験し、生存。
中には優勝したものもあり、対サーヴァント戦においてのエキスパートと言える。バーサーカーに関して力になれず済まないと言っていたが、敵の情報を得られるかもしれない時点でプラスになっている。
時計塔から離れ、親交のある人と再会出来たこともそうではあるが、カウレスは凪斗が此方に来てくれたことが素直に嬉しかった。
フィオレも聖杯大戦には乗り気ではなく、令呪と大聖杯の抗いがたい誘惑でマスターとなったが、友人と離れ離れになってしまった。そこに既知であり、世話を焼きつ焼かれつつの関係である凪斗が来たのがうれしかったのだろう。
しかし、だ。
「いつも思うんだけど、あの人の絡み酒って結構キツいよな? 大丈夫か?」
「気にしないで、カウレス。あの人が経験した亜種聖杯戦争はどれも激戦であったと聞きます。なら、少しは愚痴を吐く相手がいないと潰れちゃうかもしれないでしょ?それに、あの人の愚痴の中には面白い話が幾つかあるから、聞いてて楽しいわ」
(やっぱり……)
あのドゥリーヨダナの一人称がわし様だったとか、シグルドが眼鏡を掛けていたですって、と話を続けるフィオレの声を流すカウレスは気付く。
凪斗はいい人だ。
フィオレに絡み酒をしないように禁酒しようとする努力は感じられ、実際何回かやって期間は延び続けている。結局酒に手を出してしまうが。
なぜ、そうなのか。
その答えは──!
(姉ちゃんは、駄目男製造機──!)
今考えてみれば絡み酒の後に数日当たりが強くなる程度で、叱ることはしていない。その当たりさえ本当に少しだ。少し散らかった凪斗の工房の整理を少ししているところも見たことがあるし、酔い潰れた凪斗のために食事を作ったこともある。
恐らく、凪斗はそのようなフィオレの甘さに無意識に甘えてしまうのではないか。しかし、絡み酒をしてしまった後に、数日は後悔してしまっている。
(いつか必ず、姉ちゃんのこの
そう考えたカウレスは両者のために、そう心の中で密かに誓うのだった。
フィオレの駄目男製造機は独自設定なので悪しからず。
でも何回も絡み酒してそれでも付き合いを減らさないのはすごいと思います。
ちなみにヒロインは未定です。