Mr.聖杯戦争in外典   作:英鈍

20 / 36
感想と評価うめ……うめ……というわけで投稿。おかわりください。
誤字報告も感謝です。案外自分でもわかんないモンですねぇ。

あと前回主人公の魔術に関して書いたのにほとんどがシグルド関連なのちょっと笑いました。


闘争後

「オラオラどうした木偶の坊! さっきまでの威勢はどこに行った!」

『◾️◾️◾️◾️◾️!』

 

 蜘蛛丸は焦っていた。

 

 サーヴァントの力というのは己が父であり主人でもある凪斗と共に駆け抜けた亜種聖杯戦争で嫌という程学んでおり、その力を軽んじることなど微塵もしていなかった。

 しかし己が力への自負はあった。

 我が力はサーヴァントに届くと、歴史に名を残した英雄達を仕留め得る力があると。

 

 しかし、現実はどうだ。玖賀耳之御笠(祖先)平将門公(祖父)の力を解放しても目の前のモードレッド(赤雷の騎士)を仕留めることは叶わず、あまつさえ守りを抜かれてケイローン(恩師)に深傷を負わせてしまうという失態を招いてしまった。

 

 蜘蛛丸にとって死というのは決して怖くない。

 

 本当に恐ろしいのは、凪斗(父兼主)に見捨てられることだ。

 召喚され(産まれ)、人格を与えられた蜘蛛丸を滝夜叉姫(母兼主)凪斗(父兼主)は存分に愛してくれた。己の生誕を甘味で祝ってくれた。能力を披露する度に褒めてくれた。物を壊してしまった時はちゃんと叱ってくれた。

 その愛に対しての恩を返したいと、普通の土蜘蛛では到底起こり得ない感情が蜘蛛丸には湧いていた。

 しかし、滝夜叉姫は敵によってその命を失い、間際でその力の一端と言葉を己に遺した。

 故にこそ、蜘蛛丸は凪斗に対して滝夜叉姫に返せなかった分の恩も纏めて返したいと誓い、幼き知能を少しずつ向上させ、今日この日まで生きてきた。

 

 しかし、この失態で見捨てられれば、己は滝夜叉姫の意志と力までもを無駄にし、恩を返せないまま死ぬ。

 

 それだけは嫌だ。それだけは、滝夜叉姫が己に告げた最期の言葉を無駄にし、己が産まれた意味すらなくなってしまう、最も愚かで恐ろしいことだ。

 

 故に蜘蛛丸は焦りを募らせる。

 

 そんな蜘蛛丸の脳内に、声が走る。

 

(蜘蛛丸殿、撤退ですぞ。マスターから撤退手順を伝えられたので以下の通りに。──)

 

 凪斗に召喚されたサーヴァント、呪腕のハサンだ。

 撤退という言葉にやはりか、という納得とこれからどのような罰を下されるのか、という焦りが生まれる中、確とその手順を脳に焼き付ける。

 

 あぁ、しかし恐ろしい。

 

 この失態を拭えぬまま、凪斗と顔を合わせるのが。一体どのようにして顔を合わせたら良いのだろうか。

 

 そのような不安が積もりに積り──杞憂となった。

 

(それと最後に、「あまり気にするな」だそうです)

(────!)

(では、手筈通りに)

 

 念話が切られる。

 

 呪腕のハサンの凪斗からの伝言で蜘蛛丸は今までの凪斗のことを思い出し、先程までの己を深く恥じた。

 

 そうだ。我が父は、我が主は、そのような人ではなかったと。

 失態は確かに犯してしまった。しかし、凪斗ならば次にこういうだろう。

 

『次で取り戻せ』

 

 ならば今は己が不出来のみを深く恥じよう。

 次で挽回するために。

 次で信用を取り戻すために。

 そして、滝夜叉姫の遺言に殉ずるために。

 

 割り切った蜘蛛丸に、既にモードレッド(赤雷の騎士)への関心は失せていた。

 

 蜘蛛丸は両腕代わりの大鎌を地面に突き刺し、体勢を固定すると、大きく息を吸った。

 

 一見無防備。絶好の的。

 

 しかしモードレッドは攻撃に出ることはなく、()()()()()()()()()()()()

 

(クソ! 絶好の機会だってのに、()()()()()()()()()()()()!そう思って仕方ねぇ!)

 

 此度の戦闘においてモードレッドの直感はよく冴えていると言っていい。

 何故なら、ここで欲張り、蜘蛛丸に対して攻撃していたら、セイバー・モードレッドは蜘蛛丸を仕留めると同時に、()()()()()退()()()()()()()()()

 

 蜘蛛丸は咆哮を上げると同時、指示通りのモノをばら撒く。

 

 

『◾️◾️◾️◾️◾️!!!』

 

 

 体内で熟成させた玖賀耳之御笠由来の土蜘蛛毒に、将門公の呪を混ぜ合わせた鏖殺の魔霧を。

 

 蜘蛛丸から放たれた紫色の魔霧。

 ソレを見た三騎のサーヴァントは、背筋が凍るような感覚を覚える。

 

(あっぶねぇ!? 予想以上のモン出して来やがった!?)

(……想像以上ですね……死因から毒が弱点となっているのは把握していましたが……あの中にいたらどうなるのか、考えたくない。そう思わせる程の毒性。ヒュドラには劣るものの十分必殺足り得る……単純な神秘が籠った毒ではなく呪いも混じっているため治癒に専門の方も必要と見ていいでしょう。彼も恐ろしいモノを創ったものです)

(暗殺者として毒への耐性は基本ですが……あれ程までの毒は見たことがありませぬな。『毒の娘』……かの伝説を想起させる程とは……ダークに塗れないかどうか後で頼んでみるとしましょう)

 

 三者三様の反応を見せる中、蜘蛛丸は巨大化を解除し元の大きさに戻ると、渡された重量軽減の魔術礼装で己の体重を軽くし、糸を上手く使うことでケイローンの元へと退避。

 霧のお陰でモードレッドの追撃はなく、無事に凪斗たちの元へと撤退した。

 

 

 ◾️◾️◾️

 

 

 蜘蛛丸達が撤退している中、凪斗と呆然状態から戻ったフィオレは三人の到着を待っていた。

 

「何も援護ができずにすみません……」

「いいって別に。戦闘が不慣れな奴が獅子劫さん相手に生き残っただけでも十分凄いことだし」

(あとあの状態の方が都合が良かったし)

 

 獅子劫に負けた挙句凪斗の初めて見る凄惨な笑顔に思わず呆然としてしまい、結果的になにもできなかったという事実は真面目なフィオレにかなり刺さったようで、声からはその謝罪の意が十分聞き取れる。

 

 項垂れていたフィオレであったが、意を決してある質問をする。

 

「凪斗さんは戦っている時、いつもあのような顔をするのですか……?」

「あの顔って……あぁ、アレか。そういやフィオレに見せたことはなかったな」

 

 いつも初見だとビックリされるんだよな、と呑気に言う凪斗であったが、フィオレは信じられなかった。

 凪斗はどちらかというと戦闘を楽しむタイプではない。

 亜種聖杯戦争の真の勝者は聖杯を手にした者ではなく、最も楽しんだ者であると前に酒の席で言ってはいたが、あそこまでの凄惨な笑みはしないはずだ。

 

「申し訳ありませんが、私はあの笑顔を酷く恐ろしいものだと思ってしまいました。私が思う凪斗さんとはまるでかけ離れてて……」

「──なぁ、フィオレ。戦うことは、怖いか?」

「え?」

 

 凪斗からの突然の質問に戸惑いながらも返す。

 

「怖い、です」

「うん、そうだな。かつての俺も()()()()。まぁ当たり前のことだ」

 

 フィオレは凪斗の言葉に頷くことで同意する。

 彼女は彼のその時の精神年齢が十代であったことを知らないが、戦いという名の恐怖の前では些事だろう。

 例え魔術師の子であっても、騎士の子であっても、戦うことは怖いことだ。

 

「んでまぁ、そん時のサーヴァントに相談したのよ。『怖くて堪らない。どうすればいいか』ってな」

「……それで返ってきた答えが──」

「『ンなら笑っちまえ』だとよ。アイツらしい、ありきたりでシンプルな答えだった」

 

 凪斗にとって、前世で耳が腐るほど聞いたクサイセリフではあったが、今でも思い出せるほどに強烈に遺っている。

 

 

『ならよォ、笑っちまえばいいとオレは思うぜ、大将。人間何事も笑っちまえばいいのさ。人間ってのは強靭(つよ)い! どんな痛みを、悲劇を、絶望を経験しても乗り越えて、ゴールデンなスマイルで希望を掴み、生を謳歌する。それが人ってヤツなのさ!』

 

 

「『怖いのなら笑え』。ありきたりな方法だが、俺には見事にベストマッチ(ゴールデン)! 戦いの度に笑うことを意識してたら、いつの間にか定着しててな。気づいたら戦う度に笑っている奴になったってワケ。後悔なんてしてないけどな!!」

 

 ハッハッハッ!と凪斗は笑う。

 

「それに、少し自慢にも思ってるんだぜ? なんてったってクー・フーリンやアシュヴァッターマンにもイイ面してるって言われたからな!」

「……確かに凄まじい笑顔でしたが、流石に怖すぎじゃありませんか? 下手な霊よりも怖かったのですが……普段との差異も相まって」

「……そんなに怖かった?」

「カウレスが見たら失神するんじゃないかというくらいには……」

 

 凪斗の戦闘時の笑顔は長年接している者ほど普段とのギャップで凄まじく感じる。かのライネスさえも『本当に彼か? 別人と言われた方が納得できるのだが』とコメントした程だ。

 

 そんなに怖いの……? と、長年の付き合いがあるフィオレにさえ言われたことに軽くショックを受ける凪斗であったが、気配を察知し上を見る。

 

 丁度三人が帰ってきたようだ。

 三人とも傷を負っており、特にケイローンの片腕の傷は酷いものだ。

 

「おーお帰り。随分と痛手を負ったみたいだな」

「えぇ。甘く見ているつもりはありませんでしたが、ここまでの深傷は予想外でした。世界は広いものですね」

「全くだな」

(凪斗さんが言うと説得力がありますね……)

(貴方が言うと説得力がありますね……)

(マスターが言うと説得力ありますな……)

 

 三人に同じことを思われているとは知らない凪斗は蜘蛛丸と呪腕のハサンを引き連れて、三人が戦った場へと向かおうとする。

 

 疑問に思ったケイローンが質問を投げかける。

 

「何故あそこへ?」

「後始末」

「……そういうことですか。確かにあの霧を放置するのは危険ですね」

「そういうこった。二人は先帰っててくれ」

「分かりました。行きましょう、マスター」

「えぇ。凪斗さんも、お気をつけて」

 

 凪斗の言葉を受け、フィオレとケイローンの主従は先にミレニア城塞へと帰還していった。

 

「さてと……蜘蛛丸」

『◾️◾️◾️!?』

 

 二人の姿が見えなくなった頃、凪斗は蜘蛛丸に声をかける。

 ドキン! と心臓が鳴ったような感じがした蜘蛛丸は後退しかけたが、踏みとどまり、覚悟を決めて凪斗を見つめる。

 

「今回の失態──というかサーヴァント相手に犯さない方が難しいから別にお前への信頼は落ちはしない。それでも失態は失態。次で取り返せよ」

『◾️◾️◾️!!』

「いい返事だ」

 

 蜘蛛丸の叫びを聞いた凪斗は安心そうに笑うと、物陰へと目を向ける。

 

「そろそろ出てこいよ、ルーラー」

「……やはり気付いていましたか」

 

 物陰からルーラー・ジャンヌ・ダルクが姿を現す。

 サーヴァント同士の戦闘を察知し、此処トゥリファスに姿を現したのだ。サーヴァントではない蜘蛛丸が戦闘に参加していたことに対しては目を見開いていたが。

 

「そりゃまぁ。こちとら十二回亜種聖杯戦争に巻き込まれてんでね。サーヴァントの気配には敏感なんだよ」

「…………ご愁傷様です」

「…………言うな、言わないでくれ……」

 

 凪斗の経歴はオルレアンの聖処女、人間要塞とまで謳われる彼女であっても同情もの。心配する顔はガチのものであった。

 

「それで何か残りの用はあるのか?」

「えぇ……一つだけですが……」

「んじゃ、ついでに後始末手伝ってくれ」

「え?」

 

 聖杯戦争の調停者たるルーラーに対して『手伝え』。これには流石のジャンヌも戸惑う。

 

「え!? ルーラー手伝ってくんないの!? 一般の方々に被害が出るかもしれない霧を!? 調停者であるルーラーが!? 放置する!? まさかそんなこと……」

「やりますやります!? そもそもそれが残りの用でしたしそんな放置するなどという気持ちはありません! 時間はかかりそうですけど!」

「はい決定ー。んじゃさっさと済ませよう」

「感情の落差激しくないですか貴方!?」

 

「いちいち感情の落差(そんなこと)で戸惑ってたら生き残れねぇんだよ!!」

 

「…………」

「さ、行くか……」

 

 

 実感が籠った嘆きと哀愁漂うその背中に、ジャンヌはそれ以上ツッコむ気にはなれなかった。




最後少し雑になったかも……

後始末の仕方
1蜘蛛丸が霧を吸い込みます(この際民に被害を及ばせることを拒む将門公が手伝ってくれます)
2 浄化用の鏡に呪いを吸収させます。
3 微量になるまで1と2を繰り返します。
4 最後にジャンヌが洗礼詠唱を唱えればもう安心!

ちなみにクー・フーリンは凪斗にとって八回目、エジプトでの亜種聖杯戦争で敵マスターにライダークラスで召喚されました。アーチャー・トリスタンを倒し、最後に凪斗の召喚したセイバー・◾️◾️◾️◾️との死闘の結果僅差で敗北。めっっっっっっちゃイイ笑顔で退去しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。