アンケートの結果、今まで通り『マスター』呼びとすることにしました。
ヴラド三世の撮影会から数日後、アヴィケブロンから『ホムンクルスが脱出した。見つけ次第捕らえて欲しい』との通達が全体へと伝わった。
十中八九、後にジークと名付けられるホムンクルスだろう。恐らくアストルフォがもう捕まえているから、現在のホムンクルス達の行動はすべて徒労になる。ご愁傷様だな。
さて、そんな中俺はケイローンの部屋に
「……よし、これで終わりだ。協力してくれてありがとな」
「いえ、お気になさらず。これが
「そうしてくれて助かるよ。敵のサーヴァントが誰だかもわからんしな」
今のところモードレッドとカルナ、それと天草があちらにいるという情報が魔術協会からあったからセミラミスは確定している。
だが、アーチャー、ライダー、キャスター、バーサーカーは未だ確定していない。俺個人としてはバーサーカー──スパルタクスはいて欲しくないな。あくまで個人的な感情としては。
それにアルゴー号の破片は円卓の欠片同様にランダム。アタランテ以外の英霊が召喚されることもある。……ヘラクレスもあり得るってことだからなぁ……
「ユリフィスの次期当主が選定した触媒だから、強力な英霊であることは間違いないけどな」
「判明している時点で円卓の騎士と施しの英雄……彼らに匹敵する英霊が召喚されていると覚悟した方がいいと?」
「そゆこと。ま、隙を作ってくれれば呪腕さんが暗殺するけどな。だろ?」
「……理解はしていましたが、貴方のマスターは随分と貴方に信を寄せていますね、アサシン」
「ハハハ、嬉しい反面、その信頼に応えなければならないというプレッシャーが働きますがな」
えっ、そんなプレッシャーかかってたか!?
無自覚にプレッシャーを与えていたことに落ち込んでいると、ノックが響き、続いて可愛らしい声が聞こえてきた。
「アーチャー、ボクだけど、部屋に誰かいるかい?」
「ライダー? 私以外には……」
「俺と呪腕さ、アサシンだけだけど、何か用か?」
「んー、じゃあ別にいいか。それじゃ、失礼するよ」
扉が開き、見えたのは声の主であるアストルフォと──彼に担がれた件のホムンクルス──後にジークと呼ばれる者の姿だった。
◾️◾️◾️
アストルフォがホムンクルス、後にジークと呼ばれる彼をケイローンの部屋に匿い十数分後。
ケイローンとアストルフォは各々のマスターに呼び出され、俺は倒れた原因の一つが過労である彼に治癒魔術をかけた後、何か腹に納めた方がいいと思い重湯を作っていた。急に固形物を腹に入れると吐くからな。
「ほい、出来たぞー」
「あり、がと、う」
「はいはい、お礼はいいからゆっくりと食べなさいよ」
動くのが面倒臭い時に使っている浮遊するお盆に載せて、ベッドで寝ている彼の前に動かす。
彼は身体を動かして、お盆に一緒に乗せてあるスプーンを手に取ろうとするが、その手すらもプルプルと震えている。そういやそうだったな。
「呪腕さん。アーンして食べさせてあげてもらってもいいか?絵面はアレだけど」
「絵面は余計……とは言い難いですな。女人ではなくこのような髑髏面の男でも宜しければ構いませぬが……」
「だい、じょう、ぶ」
元よりホムンクルスだからな。そんな価値観はないのだろう。
「ふむ、では失礼して」
呪腕さんがスプーンを持って彼の開けた口へゆっくりと重湯を流し込む。
魔術で丁度いい温度に調整し、味付けも少し薄い程度にしたから食べやすいのだろう。しっかり味見もしたし。彼は何も言わずに完食した。
「おいし、かっ、た」
「はい、お粗末様。ゆっくり休んでな」
呪腕さんがティッシュで口元を拭いた後、横になる彼。
……帰る前に、アレを一応渡しとくか。
俺は懐からある物を取り出す。
それは菱形の形をした光沢を輝かせる鉄片に装飾がつけられ、紐で吊るされた簡素なモノであるが、その鉄片は確かに感じ取れる程の神秘を纏っている。この鉄片の正体を知る呪腕さんは驚くような声をあげた。
俺はソレを彼の手に握らせる。
「これ、は?」
「何、御守りみたいなモンだよ。どんな時でも肌身離さず持ってな。きっと、お前を守ってくれるよ」
重湯を作るために持ってきた荷物を纏め、扉を開ける。
「それじゃ。お互い、頑張って生き残ろうな。次会った時は死体じゃないことを祈ってるよ」
◾️◾️◾️
「良かったので?」
「んー何が?」
部屋を出て数分後、呪腕さんが俺に質問してくる。
さーて、何のことやら?
「惚けるのはやめなされ。マスターが彼に渡した御守り……その正体はかのアルスターの王コンホヴァル・マク・ネサが所持していたという伝説の盾、オハン。それのカケラを加工したモノ。防御用の礼装としては勿論、コンホヴァル王を召喚する触媒としても使用できる逸品。何故アレを──」
「あぁ、そこまで言わなくていいよ呪腕さん。ちゃんとわかってるから」
「では何故……」
魔術師相手の仕事で偶然手に入れたやつで張り切って加工したんだよなぁ。ま、手に入れる代償で
アイツの拳硬すぎ。まぁ俺の方が優勢だったんだけどな!こちとら幼少期からサーヴァントの戦闘を見てるお陰か多少は動体視力鍛えられてるからな。
で、結局どうなったのかだって?
俺が『コイツとこのまま死ぬまで
あとバゼットは俺を執行者に推薦すんのはやめてくんねぇかな。幾ら戦闘を合わせられるとしても執行者とか面倒臭いし亜種聖杯戦争の他にも厄ネタ抱えていられるかって話よ。特に魔境を抜きにしても韓国での亜種聖杯戦争が特大過ぎてなぁ……
っと、あの御守りねぇ。
「ぶっちゃけ、俺らが一番楽なのは物語に沿うことだからな。俺らが代わりに入ったことで多少のイレギュラーは生じるけど、少しだけだろうな」
原作での黒のアサシン──ジャックちゃんが及ぼしたことと言えば魂喰いによる被害、アタランテの隠されし宝具、
故に考えられる原作との差異は小さい。十分対処できる。
「彼が辿った結末は数多の奇跡の末。起こらない可能性も十二分にあり得る。なら、その奇跡の手助けでもしとくべきかと思ってな」
「ふむ。で、本当の理由は?」
ハハハ、バレテーラ。
「本当の理由と言っても、大したモンじゃないさ」
彼は魔力供給用ホムンクルスという自我が芽生えることはあり得ない生命として産まれ、奇跡的な確率で自我に目覚め、培養槽から抜け出した。
では、彼は何の感情に突き動かされて培養槽を抜け出した?
決まっている。
それは生物として誰もが備えている原初の感情。
一部の例外を除いた全ての生命が辿る結末を忌避する当たり前。
そして、全ての生命が当たり前に行っているものを
それ、即ち──
「物語とか原作とか関係なく、
バゼットさんは仕事が終わった後、その惚れっぽい一面から一度凪斗に惚れかけましたが流石の凪斗でも気付き、『目を覚ませ』と殴られて鎮火。その後は仕事と私事、どちらでもちょくちょくと交友があります。でもまた惚れる可能性はあるかもしれないしないかもしれない。
ついでに韓国亜種聖杯戦争の厄ネタのヒント
アルテラ 巨神の一欠片
ギガースを祖とする魔術師