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神炎を纏う黄金の槍が振るわれる。
その槍術は神域に達していると言っても過言ではなく、瞬く間に刺突の数々が繰り出され、相対している者の急所に次々と直撃する。
しかし刺突を受けた者は止まらず。
カルナを悠に超える巨躯。白銀の鎧に身を包んでもなおその恵体は隠しきれず、その身に大英雄の刺突を受けても怯むことはなく、その手に持つ大鎚を振るった。
その大鎚は見た目からでも遥かに重いと理解でき、素人が見れば鈍重に動くと考えるが、この場──神話の戦場にそのように思う者はいない。
一騎当千、万夫不当の英霊のみが、この場に立っている。
一撃二撃三撃四撃五撃六撃──。
カルナの神速の槍に対応する雪崩を思わせる怒涛の連撃。彼のような大英雄でなければとっくに相手は挽肉となっていることだろう。
カルナは宝具『
(神の血は入っておらず、そしてこのような霊基で尚この怪力。黒のセイバーのような混ざっているような気配もなし)
「純粋な人間の限界を遥かに超えた怪力……だが、甘いな」
連撃の隙間隙間に刺突が入る。
白銀の鎧に傷が増える一方、カルナが身に纏う黄金の鎧は傷一つなし。
それでも大鎚を振るう手は止まらず、白銀の戦士──バーサーカー・ピョートル大帝は愚直に大英雄へと大鎚を振るい続ける。
連撃の最中、込められた力が明らかに違う一撃をカルナは捌ききれず彼は吹き飛ばされるが、ピョートル大帝の頭上に複数の赤雷を展開し、発射。
赤雷は命中することなく、大鎚といつの間にか握られていた戦斧により掻き消されたことで牽制や隙などにならず、またも先程の撃ち合いへと戻る。
そして、カルナがまた一つ槍を差し込もうとし──その槍は彼の意図せぬ方向へと向いた。
「ッ!」
刹那、カルナへと無数の矢が飛来する。
此処一番と力が増したピョートル大帝の大鎚を捌きながら、矢を防ぐべく炎の壁を展開する。
並のアーチャーのサーヴァントであればカルナの炎の壁の前に矢は灰へと還るだろうが、その矢は炎の壁を貫通し鎧へと直撃する。
これを見てカルナは確信した。
この矢の射手こそ、先程己の槍を弾いた者だと。
ピョートル大帝との怒涛の撃ち合いの最中に差し込まれた己の槍を視認し、的確に弾くという神業。
炎の壁を容易く貫通し、それでも尚勢いを保つ矢を放つ剛腕。
一瞬
「面白い」
アルジュナや己と同等以上の弓の腕を持つ弓兵。
率直に感じた思いを口に出した彼は、ピョートル大帝をまず片付けるべく動く。
「アグニよ」
炎が燃え盛り、大地が溶解する。
莫大な魔力と引き換えに発現した宝具級の規模と威力を持つ炎が、槍へと乗せられた。
「──!」
同時、ピョートル大帝は迎撃を選択。
一閃/一撃。
槍と大鎚が激突し、一瞬拮抗した瞬間、槍が競り勝ち、競り負けたピョートル大帝ごと炎が呑み込む。
発生し巻き上がる熱風と魔力の嵐。
嵐からはカルナとの真っ向勝負に敗北したピョートル大帝が吹き飛び、地面に激突ししばらく滑った後に動かなくなった。
かろうじて原形を保っている白銀の鎧。握る大鎚はその太陽熱で溶かされてしまい、柄から先が消失してしまっている。
消滅していないことが奇跡のような状態。
観察眼に秀でるカルナの目から見ても、これ以上の戦闘は不可能と判断する程だ。
カルナがピョートル大帝に止めを刺そうとし──槍を振るい、数十本の矢を弾き落とす。
矢の方向から射出の位置を割り出したカルナはその方向へと目を向ける。
アーチャーのクラス適性を持つカルナの目は数キロ先をも見通す程。
彼の目には、こちらに向けて威風堂々と弓を構え矢を番える、左肩をはだけた朱色の着物を纏った武者の姿が映った。
「いいだろう」
その姿を挑発と受け取ったカルナはピョートル大帝を後回しに、先程同様、魔力放出を発動。
超高温の太陽熱が槍の穂先へと凝縮され、槍を構え突き出された肘にも火の玉が灯り、あまりの高熱に槍の周囲の空間が歪み──投擲。
「ハァッ!!」
カルナの凄まじい筋力と技術、肘よりジェット噴射のように吹き出された炎の勢いも加わり、真名解放をしていないというのにも関わらず槍は音速を超えた速度で武者へと襲い掛かる。
穂先へと凝縮された熱も解放され、その投擲の威力は正に必死。かのトロイア戦争の大英雄ヘクトールのドゥリンダナの投擲に匹敵、あるいは凌駕するだろう。
そのような一撃を前にしても先程のピョートル大帝同様、武者は動じず、ただ弓矢を構える。
何か手があるのか。しかし武者以外の鏡典英霊は仕留めようとしたところで邪魔が入ったが、消滅まではいかなくとも戦闘の続行が不可能な状態にまで追い詰めた筈──
そのように考えていたカルナの思考が、止まる。
「──アレは」
カルナの眼前に映るのは五体満足な武者と花弁のように展開された溶解する七重の光の盾とソレに止められたカルナの黄金の槍。解放された熱さえも盾によって武者に届く前に消え去った。
彼の誤算は二つ。
一つが、鏡典英霊の中にトロイア戦争の大英雄が、投擲に対して無敵を誇る盾の英霊がいたこと。
「ッ!」
戦闘不能にした筈のサーヴァントの盾が展開されたことに対する驚き。
その隙を突き武者──アーチャー・藤原秀郷の渾身の一矢が放たれる。
かつて龍喰らいの大百足を退治した豪弓。
先程のカルナの投擲のように鏃へと大量の魔力が込められたその矢は龍が如き威容。カルナは炎の展開すらも間に合わず──
「見事」
黄金の鎧に覆われたカルナの胸の左側──心臓の部分に的中し、彼はその衝撃の強さに仰け反った。
黄金の鎧という最強の守りがなかったら確実に己は死を迎えていたことだろう。
言葉にもできない技量。ただ感服するしかないその腕。
これを称賛しないものは余程の捻くれ者か現実を直視できない者だけだろうとカルナは考え──背後に
槍を投擲により一時失い、無手となったカルナは振り返りながらバックステップ。
彼の目には、己が戦闘不能状態にした筈の鏡典英霊三騎が傷だらけの状態でもなお立っていた。
「──そのような矮小な霊基で、その傷で未だ戦い続けることを選ぶ……何がお前達をそこまで駆り立てる?」
彼のもう一つの誤算、それは鏡典英霊達の意志。
明雲凪斗と絆を結んだ霊基により召喚された彼ら彼女らは、己のマスター/かつての同盟者の
「──!」
白き竜に騎乗した、獣の要素が混じった女戦士が、大鎚の代わりに戦斧を握るピョートル大帝が、吶喊してくる光の盾を展開した槍兵が、再び矢を番えた秀郷が。
カルナに攻撃を加えようとし──
「この戦いは終わりだ。オレの敗北というカタチでな」
──瞬間、カルナの目前にて戦斧と槍が寸止めの位置で止められる。
「先程マスターより撤退の指示が下った。オレに下された命令が『三騎の救援』であるというのにだ。それが意味することは、あちらの戦いの幕が閉じたということ。これを敗北と言わず何という」
未だ構える三騎の鏡典英霊を相手にカルナは背を向ける。
「さらばだ……機会があれば、お前達のマスターと会いたいものだ。お前達程の英雄が、聖杯という願望をなしに再び従うことを認める程の絆を結んだマスターを」
カルナがそう言い残し戦場を去るのを確認すると、鏡典英霊達は退去を開始し、姿が消えていく。
アタランテの消滅、アキレウスの撤退、鏡典英霊達の退去を確認した凪斗は、安堵の息を吐く。
(これで一先ず終わり……カルナが来るのは一応予想していたけどマジで来るとは。あの面子を召喚しといて助かったな)
凪斗は今回、霊基鏡ヴァルクルムを作成した時に設定した召喚限界数である七騎全ての枠を使った。
天草四郎に情報を与えないために大量の魔性を召喚することができる滝夜叉姫。
対アタランテにはアルゴノーツにおいてヘラクレスに次ぐ英雄であったテセウスをぶつけ、撹乱のために滝夜叉姫の召喚した魔性と蜘蛛丸を仕向け、呪腕のハサンの宝具で殺す。最後の足掻きの余地も為朝で潰す。
カルナが来る可能性は十分あったため念の為強力な四騎を召喚。
大怪異殺し、トロイア戦争の大英雄、北国の竜殺し、初代ロシア皇帝。この四騎ならば十分と考えたが、ギリギリの状態にまで追い詰められてしまった。
(術式の完成度が足りねぇな。宝具の真名解放まではいけたが……クソッ、まだまだだな)
目指すはサーヴァント時と同じ力を持つ状態での召喚。
決戦術式。その域に至るまでにはまだまだ遠いと実感する。
(さて、後の問題はみんなの霊基の修復とユグドミレニアの奴らへの説明と──ジーク君(仮)か……)
例のホムンクルス。オハンの欠片を使った礼装を渡した彼。
彼が前世見たApocryphaという作品ではジークフリートの心臓が彼へと渡ったが、こちらではそうとは限らない。
(でも、俺としちゃあどっちでもいいんだよな……)
彼からしたら、心臓が渡ろうが渡るまいがどっちに転んでも構わない。彼が生きてさえくれればいい。一度飯を食わせた相手の死体などできるだけ見たくない。
しかし、オハンを渡したのだ。あれは強力な結界を張る礼装。サーヴァントならばまだしもゴルドに突破できるとは思えない。ユーウェインが敗北したあのフェルグスのカラドボルグの一撃を防いだ逸話を利用したものだからだ。
だが──
(万が一があるからなぁ……マジで死ぬのだけはやめてくれよ……?)
凪斗は『万が一』と言えるような状況を何度も見てきた。
アグリュト・パレネ・ギオスセファルによるアルテラの巨神化未遂。
平将門公の未完全顕現。
ソビエト復権派の四陣営同盟。
悪路王の暴走。
何とか防いできたが、今回己が干渉できたのは礼装を握らせることのみ。物理的な干渉はできない。
故に凪斗は彼の生存をひたすらに祈る。
誰よりも、『生きたい』という感情が分かるからこそ。
ロシアのライダーとギリシャのランサーの真名はもう分かったと思います。
カルナさんのエミュが、わかんない……!
調べても、「???」ってなる……
アシュヴァッターマンを期待していた人、申し訳ありませんが怒りの戦士の登場はもうちょい後です。
感想見てて『やっべどうしよ……』ってなってました。もう書き終えてたので。