Mr.聖杯戦争in外典   作:英鈍

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とある山での戦い

 明雲凪斗とバゼット・フラガ・マクレミッツ。

 ターゲットを同じとする二者であるが、バゼットが先に攻撃を仕掛けたことで始まった戦闘。

 

 この戦闘であるが、因果応報だろうか。先に戦闘を仕掛けたバゼットが劣勢であった。

 

「フッ!」

 

 凪斗が手にする銃から放たれる光線を避けつつ、凪斗に接近する。

 中々の速さではあるが、避けることは彼女には十分可能だ。

 しかし、

 

「ぐっ!?」

(あぁ、もう! 厄介な!)

 

 曲がりくねった光線が避けたと思ったバゼットの死角から襲い掛かる。

 

 バゼットが苦戦を強いられてる理由の一つがこの光線銃だ。

 ただの弾丸なら撃ち落とせばいいものの、対象は魔力で構成された光線。熱の塊。触れることが出来ないため、消滅するまで躱すしかなく、その光線も一直線だけのものではなく、曲線や直角に曲がるもの、三叉に分かれるなど複雑怪奇な軌道、ホーミングとバリエーションも豊富。接近することは容易ではない。中には見た目が変わらずとも威力が段違いな光線も存在しており、その見た目で威力を推し量ることできず、込められた魔力でしか判断できない。

 

 そして接近できたとしても……

 

「ハァッ!」

 

 繰り出される強烈なラッシュ。

 

 硬化のルーンが刻まれた手袋に覆われた拳の群れは、これだけで並の魔術師ならば死に瀕する。

 

 しかし、目の前にいるのは並の魔術師ではない。

 

 

 雑賀衆三代目棟梁・蛍に四代目棟梁とするべく地獄の鍛錬を幼少期より課され、成し遂げた者──明雲凪斗である。

 

「甘ぇ!」

 

 拳全てを正確に捌かれる。

 バゼットの拳は弾丸と形容してもいいように速く、硬く、鋭い。だが、そんな彼女の拳を凪斗は何という事もなく水のように受け流していた。

 

(このままでは……!)

 

 焦りを募らせるバゼット。

 しかし、そんな彼女を嘲笑うかのように凪斗は拳を容易く受け流し、彼女の力をそのまま利用し、投げた。

 

 一回転し、そのまま地面へと叩き付けられるバゼット。

 

「カハッ……!」

(何が……!?)

 

 叩き付けられた衝撃で身体中の空気が吐き出される。

 脳内で何が起こっているのか、未だ状況を理解できない彼女に凪斗は容赦なく追撃を仕掛ける。

 

「オラァッ!」

 

 投げられたことで仰向けになったバゼットの身体へと容赦なく蹴りを入れる。

 

 脳内で何が起こっているのか分からず、仰向けということで踏ん張りも、まともな防御もできないバゼットは吹っ飛ばされ、少し遠くの木へと叩き付けられた。

 

「ゴフッ!」

 

 衝撃で血を吐く。

 叩きつけられた木に背中を預けて、治癒魔術で傷を少しでも回復する。

 

 今までの人生で体験したこともない、あるとすれば幼少期の鍛錬ぐらいだろうか、それ以来の完全な劣勢。此方の手が効かず、相手の手はこちらに効くワンサイドゲーム。

 

 故にこそ、バゼットは彼をこう定めた。

 

 

 

 己の生涯における最大の敵であり、完全なる格上であると。

 

 

 

(──だが、見つけた!)

 

 確かに凪斗の技量は現在の彼女を超えており、体術という点では敵わず、銃の他にも様々な魔術礼装を仕込んでいると考えると勝率は間違いなく低い。あるとすればこちらの切り札である斬り抉る戦神の剣(フラガラック)による打開のみと見ていい。

 

 更に今の彼の目標はあくまでも『無力化』。『殺し』となればここまで戦闘は長引かず、後方に控える彼の使い魔も参戦し、己は簡単に骸を晒していただろう。

 歯痒い。己の力不足に反吐が出る。

 

 だが、彼の技量は英雄の域には、佐々木小次郎の代理や神槍(彼ら)の域には達していない。

 彼らであれば微かに手を変え続け、常に相手に初見の戦いを強いていたであろう。しかし、今の凪斗にそのような芸当は不可能。

 

 

 故にこそある、()()()()

 

 

 それを、バゼットは見抜いた。

 

(えぇ、貴方は強い! 先程の発言も傲慢ではなく自負! 修錬と死闘の末に磨き上げられた確かな実力! 今の私は貴方より格下……ですが──)

 

(勝つのは、私です──!)

 

 長引いた戦闘。それも凪斗という現代屈指の手練れとの戦い。

 その理由によって普段よりも疲弊した身体に鞭を打ち、接近。ギアをあげて拳を打ち込み続ける。決定的な瞬間を打ち抜くまで。

 

 

 間髪入れず打ち込まれる拳を短剣で捌き続ける凪斗。

 凪斗の特筆すべき点は底無しの体力と途切れぬ集中。

 蛍の『何をするにしても体力がないと意味がない』という方針によりただひたすらに、近道もなく愚直に基礎鍛錬を続けた賜物。亜種聖杯戦争という日中以外は一時も気を抜けない戦場を幾度も生き延びた産物。

 

 しかしそれでも、いつかは綻びが生まれるもの。

 

 

 バゼットが見抜いた凪斗の癖。戦闘のパターン。

 打ち込むごとに精度が上がっていく拳。凪斗の堅牢な防御を、バゼットは見事に打ち抜いた。

 拳に弾かれ、明後日の方向へと向かう短剣。

 

「チィッ!」

(開いた!!)

 

 体勢が崩れる。

 一念岩をも通すが如し。

 バゼットがこじ開けた防御の先。人体の急所の一つ、鳩尾を狙いに定め、自らが培ってきた全てを込める。

 

 拳を硬く、強く握る。

 足を上げ、力強く、そして深く踏み込む。 

 腰を屈め、重心を低く。そして溜める。

 『打つ』のではなく『穿つ』のだと意識する。

 

 

 こじ開けた結果生まれた最大にして最後の好機。

 

 

「破ァァッッ!!」

 

 

 練り上げてきた己の全てを、全力を込めた人生最高の一撃は──

 

 

 

 

「────は?」

 

 

 

 ──すんでの所で、受け止められていた。

 

 想定外。

 思わぬ事態に思考が停止する彼女を置いてけぼりに、崩された体勢を即座に立て直していた凪斗は話す。

 

「流石だな、バゼット・フラガ・マクレミッツ。だがこうは思わなかったのか?テメェが見抜いた俺の癖は、()()()()()()()()()()()()()を」

「────!」

 

 バゼットの特技はトレーニング。自己鍛錬だ。

 故に、彼女は当然把握している。

 

 ()()()()を。

 そしてその弱点をカバーするために、鍛え方を逐一変えている。

 

 そのようなことは、受肉しているサーヴァントに鍛えられている彼も、当然しているに違いない。

 

 何故そのような発想に至らなかったのか。いや、この死闘の中だ。無理もないのか?だが──

 自問自答を繰り返す。

 だが、そのような暇はない。

 

「さーて、執行局に怒られたくねぇし、ちゃんと加減はしてやる。半殺しになるかもしれないけどなぁ!」

(ッ!?不味い!)

 

 予感。

 受け止められた拳を即座に引いてバックステップ、後方へと退避し少しでも距離を離そうとする。

  

 彼の目的から殺す気はないのだろう。

 だが、今感じたのは執行者としての仕事の中で幾度と感じ、回避してきた、紛れもない── 死!!

 

 

 

 

レムナント・コード──

 

 

 

 そしてバゼットが見たのは──

 

 

 

「──『鉄の殉教者(アイアンサイド)』!!」

 

 

 

 ── 鉄の馬鎧を着込んだ軍馬に騎乗し、鉄の剣を手に襲い掛かる、鉄の甲冑に身を包んだ兵士達であった。

 

「ガハッ……!?」

(今のは、何だ!?)

 

 咄嗟に後方へと回避したものの、十数の槍をその身に受けたバゼットは膝を突く。高度な魔術的防御が施されたスーツは容易く貫かれ、その身からは血が流れ出る。

 

 

 レムナント・コード

 

 生き続ける英霊の意志。消滅してもなお彼を守り続ける英霊の力。

 

 サーヴァントの霊基の残滓や欠片を核とし、降霊術を応用することでそのサーヴァントの力の一端を行使することを可能とした魔術礼装。

 『鉄の殉教者(アイアンサイド)』は、ライダー・オリバー・クロムウェルの残滓を使い作られた礼装であり、その機能はクロムウェルが生前率いた鉄騎隊を一時的に現界させるというもの。

 

 バゼットが見た兵士達は召喚された鉄騎隊であり、彼等に攻撃されてもなおバゼットが生きている理由は単に凪斗が手加減をしたためであった。

 

 

(……予想以上に傷が深い! 生死には関わらずとも、これ以上の戦闘行動は不可能に近いか……!)

 

 己の今の状態を正確に判断するも、その結果は『戦闘不能』。

 全力を出し切り、その上で手加減されたとは言え『鉄の殉教者(アイアンサイズ)』の攻撃を受けた彼女はもう限界であった。

 

 一方、凪斗はというと──

 

(アイツの一撃おっっっっも!? アグリュトとかに比べると弱いけど、まともに食らってたら身体吹き飛んでたなありゃ。聖杯回路駆動させといて良かったぁ……強化してなきゃどうなってたか考えたくねぇ……)

 

 先程受けたバゼットの一撃に凄く冷や汗を掻いていた。

 韓国亜種聖杯戦争で交戦した強敵を想起させる一撃。聖杯回路で生成した膨大な魔力で強化していなければ、今頃凪斗の腕は吹き飛んでいたであろう。

 

 流石は若いとは言えど歴代最強クラスの封印指定執行者と言えよう。

 

(とは言え……相手はもう限界だな。いやー良かった良かった。これ以上となるとマジで殺してたかもしれん。それは嫌だなぁ……推しを殺すの嫌だし……まぁやらなきゃいけない場面になったら殺りますけどね!?)

 

 戦闘中とは一変し騒ぎ立てる凪斗の心の中。

 

 しかし、凪斗の予想に反し、バゼットは立ち上り、拳を構えた。

 

「ハァ!?」

「……まだ、私は……負けて、いません……!」

 

(おいおいマジか。手加減したとは言えあの状態で『鉄の殉教者(アイアンサイズ)』を受けてるんだぞ? あり、え、ん……いやまさか!?)

 

 凪斗の心の中で答えが出る。

 

「霊薬か……! 無茶をする……!」

 

 正解。

 バゼットは苦肉の策で、念の為と仕込んだ霊薬を服用し、強引に己の身体を回復させた。

 凪斗も亜種聖杯戦争で霊薬を服用し、聖杯回路の活性化などは行うが、あの状態で戦闘状態にまで立て直せる霊薬となると反動も大きい。凪斗も同じような効果の霊薬を服用したことがあるが、その際の反動は大きかった。

 

「ていうか……()()、それでいいのか?」

「えぇ、構いませんとも。確かに今私が立っているのは霊薬のお陰……真の私の実力ではない。ですが、今の私にとって貴方は最大の敵。ならば、躊躇うことはありません! さぁ、ファイナルラウンドと──」

 

 

「いやいや、ターゲット。お前その状態で封印執行できんのか?」

 

 

「…………あ」

 

 バゼットは学校で『お前。これ持ってきた?』と問われ、そしてそれを見事に忘れたことに気付いたかのように反応する。

 

 これには凪斗も驚愕。蜘蛛丸も『オイオイマジですかこの人』みたいな雰囲気を醸し出している。

 Stay night(未来)の彼女ならばこうはいかなかったかもしれないが、今の彼女は十代後半。まだまだ若い時期である。熱しやすくなっていたのかもしれない。

 

「……俺もお前を殺したくないし、そもそもお前と殺すまで()りあうの面倒臭いし……」

「……私は対象の封印執行をこのような状態で成すことは不可能……」

「……共闘、する?」

「………………はい。先程までの態度はどうか、水に流してくれると有り難く……えぇ、はい……協会に問われてもどうか御内密に……虫の良い話だと理解していますが、何卒…………」

「……うん、そうしとくわ」

 

 一転してぐだぐだな雰囲気となり結ばれた共闘関係(凪斗におんぶにだっこ)。

 

 自分が先に警告なしに攻撃し戦闘を仕掛け、相手側から共闘を持ち掛けられるも自ら拒否、挙げ句の果てに戦闘の果てに敗北し共闘関係を呑むことになり、それまでの過程は殺そうとした相手に黙っていて欲しいと要請。バゼット・フラガ・マクレミッツが凪斗に頭が上がらなくなる瞬間であった。

 

 

 その後は蜘蛛丸が容赦なく毒霧を吐いて工房に仕掛けられたトラップを破壊したり、ギリギリで生き延びた魔術師を脅して工房内を自由に漁ったり、バゼットが凪斗に惚れかけ鎮火させられる事態が発生したが、それはまた別の話である。




ここまでで力尽きました……中途半端で申し訳ねぇです。許してください。
いやぁ……うん。やっぱり戦闘描写って難しいですねぇ。

クロムウェルは韓国亜種聖杯戦争でカウンターとして選抜され、召喚されたサーヴァントです。
色々あって凪斗の二騎目のサーヴァントとなりました。
韓国亜種聖杯戦争の召喚サーヴァントはこんな感じ。 

セイバー・アルテラ
ライダー・オリバー・クロムウェル(カウンター)
キャスター・蘆屋道満
アサシン・◾️◾️(カウンター)
バーサーカー・呂布奉先(カウンター)

『万が一』が起きてしまった未来
セイバー・アルトリア・ペンドラゴン

呂布は抑止力と狂化、マスターの気質によって裏切りはしてません。どれか一つ欠けてたら……まぁ、ご想像にお任せします。

ちなみに凪斗が使っていた光線銃の正体ですが、為朝が己の霊基と頼光さんに斬り落とされた半身、更に亜種聖杯の願いを使い、為朝の持つ技術の粋を結集して作り上げられた凪斗専用にして最強のレムナント・コード、『月光大砲』です。
普段は拳銃ですが、拡張ユニットでその姿と機能を変えることのできるロマンの塊。それを見た蛍姉さんと受肉したローランは目を輝かせた。
為朝「余談ではあるが、当機が最も拘りし機能は変形・合体機構である。マスターより返答『流石は為朝!分かってるぅ!』……当機より返答……だろう?」

感想と評価くだちぃ!(久々の乞食)
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