Mr.聖杯戦争in外典   作:英鈍

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お年玉二発目。これにて玉切れございます。
いやーやっぱり感想は一番のモチベになりますね。というわけで感想よろしくお願いします!


回顧

 

 自室へと戻った凪斗達。

 その姿は退出する寸前に皆に見せた姿から戻っており、その気配も通常のものへの戻っていた。

   

 先ほどの姿は凪斗が作成した()()()()()()()()()()の四番目に位置する魔術礼装による機能。紅くなった瞳はまた別だが。

 理性を徐々に失うことを代償とし様々な強力な能力を得られるものの、その性質上肉体を変貌させているため使用した後の反動は大きい。今回は脅しで軽く使っただけなのでかなりマシだなと凪斗は感じる。

 

「マスター。伝えなくて良かったのですか?」

 

 軽く背を伸ばす彼に対し、ハサンはあることを問う。

 そのあることとは、『決戦術式/鏡典現世・七天再臨』を使用する上で鏡典英霊達の真名把握に並び知っておかなければならない最重要事項。

 

「鏡典英霊の召喚。その召喚に応えるか否かは()()()()()()()ということを」

「最低限って言ったからな」

 

 それは凪斗が術式を構築する際に真っ先に組み込んだ機構(システム)

 凪斗は己がかの間桐臓硯の如く外道に堕ち英霊達の力を悪逆に使う、己の死後に鏡典英霊達が悪用されるなどの可能性を危惧し、召喚されるか否かの選択肢を英霊達へと委ねた。

 無論、凪斗が現在所有している明雲家の魔術刻印モドキか祖父に譲渡した接続鍵(アクセスキー)がなければ術式は起動しないようにし、もし術式が不正に起動されたとしても彼が戦闘用に調整した人工霊達が抹殺するようにしている。

 

 この機構(システム)上、凪斗による召喚さえも拒否する権利が英霊達にはあるのだが──彼による召喚を英霊達が拒否したことは一度もない。

 

「ダーニックに使わせる気はねぇけど、もし使うなら俺みたいに戦う目的を伝えたりとかすれば、召喚拒否されることはねぇだろうよ」

「何というか、本当に律儀ですなマスターは」

「聖杯とか人理の危機とかそういうのなしで俺の都合で戦って貰ってるからな。そうするのが最低限の礼儀ってモンだよ。後は戦ってくれたお礼に焼肉とか酒とかな! 荊軻さんと飲むと大変なことになるけど……ハハハ」

 

 遠い目をする凪斗にハサンは苦笑する。

 ハサンも記憶を見たことはあるが、傍若無人の元となったあの女傑との飲み会は弱体化した鏡典英霊状態であっても何とも大変そうであった。最終的に凪斗も半裸になって肩を組んで飲み合い結果潰れていたが。

 

 遠い目になった凪斗を元に戻すように、突如凪斗が身につけている勾玉の一つが光る。

 元に戻った凪斗は許可を出し勾玉に封印されている人工霊、広間にて猪と共に現界した一本角の熊──枯瘡(からくさ)が再度現界する。

 枯瘡は凪斗に向かい申し訳なさそうに頭を下げていた。

 

『真に申し訳ございません。儂らも反応は致しましたが足手纏いになると判断した矢先に……』

「大方戦の気配に興奮して濤喰(とうじき)が止める間もなく出たって感じだろ。別にいいんだが、琉穿(るせん)に『お前はもっと彼我の戦力差を考えてから行動しろ』って言っておけ。後『今度また同じようなことやったら半年間戦闘禁止』ともな」

『了解致しました。勿論、あの糞餓鬼には濤喰や玄砕(げんさい)殿と共に強く、それは強く叱りつけておきます故に! お館様とご子息様、呪腕様は気にせず、戦に集中してくだされ。では、是にて失礼致しまする』 

「応……あんま、やり過ぎないようにー……いややっぱキツくやっておけ」

『──────承知!!! お館様からの主命なればそう! 全力でやるとしましょう! 呵呵ッ、腕もとい喉がなりますわ!!!』

 

 そう言い、嬉々とした様子で枯瘡は勾玉へと戻っていった。いつも琉穿に振り回されているためストレスが溜まっていたのだろうか。

 今頃勾玉内では、琉穿が枯瘡に加えて巨大な鯨である濤喰と巨大な亀である玄砕にたっぷり絞られてその巨躯を縮こませ、その様を砂囀(さてん)──鷹型の霊に笑われていることだろう。

 

「作った身で言うのも何だけど、愉快な連中になったな本当」

「◾️◾️◾️」

 

 魔術使いの仕事での人手増やしと霊基鏡のセキュリティのために作成した霊達。

 源氏武者であった先祖曰く「晴明殿に作ってもらった!」という明雲家の蔵に保管されている玖賀耳之御笠の遺骨を始めとした様々な物品に宿っている思念などを掛け合わせて作り、更には様々な改造を施したためサーヴァントには及ばずとも並の魔術師ならば相手にならない強さを持たせることに成功し、実際仕事で大活躍してくれている。というか凪斗自身が何もしなくとも霊達によって仕事を終える日もある。

 

 しかし、凪斗が『そうした方が面白い』ということで与えた人格と思念の影響でそれぞれの性格に差がハッキリと出た。

 琉穿は先祖が仕留めた魔猪の毛皮を使った結果戦闘狂、枯瘡は同じく先祖が仕留めたとある山の主であったという鬼熊の毛皮に鬼の血などを使った筈だが苦労人な性格など、トラブルは増えたが凪斗の目論み通り面白くなったのだった。

 

「っと、そうだそうだ」

 

 凪斗は思い出したかのように首に嵌めているチョーカーに優しく触れ、語り掛けた。

 

「さっきはありがとな、灑津忌(さつき)。ゆっくり休んでくれ」

 

 労わるような優しい声。

 明らかに何かに対して呼び掛けた彼の声に応じ広間の時のように()()()()()()が顕現する。

 

 ハサンと蜘蛛丸は骨の腕に目を向けることはあれど驚くことはなく、むしろハサンは感心するかのような目線を向け、蜘蛛丸は一度見た後目を逸らして気まずそうにしていた。

 彼の背後より出現した骨の腕はそのまま腕を組み、彼を絞め殺す──ような真似などせず、むしろ割れ物を扱うかのように、愛しいものに触れるかのように優しく抱擁し、その姿を消した。

 

 その一連を見たハサンは言葉を溢す。

 

「よくもまぁ、そこまで愛されたものですなぁ…… あんなことをすれば彼女があそこまでマスターを想うのも納得はできますが」

初恋の女性相手にそこまで想われるってのは、男冥利に尽きるってもん──」

 

 唇に指を当てながら感慨に耽っていた凪斗の言葉が止まり、壊れた玩具のようギギギギと首をハサンへと向け、こてんと首を傾けた。

 

「……あれ、もしかして中国亜種聖杯戦争終盤(あの時)の記憶見た?」

「えぇ。マスターの()()()()も確と」

 

 ハサンがそう告げると、凪斗はばつが悪そうに頭を掻く。

 

「マスター。一応、言っておきますが……」

「わーってるよ」

「マスターは前科が幾つもあります故。韓国にて寿命を削り、更には道満殿がいなければこの世に存在せず、中国ではシグルド殿の原初のルーンストーンと藤原秀郷殿がいなければ魂の髄から髄まで呪われ、ギリシャでは……」

「済まんが説教ならやめてくれ頼むから。もう道満さんにも秀郷さんにも哪吒にも蛍姉さんにも爺ちゃんにもローランのマスター(サリアの姉御)にも、記憶見たニキチッチにもピョートル大帝にも叱られてんだ……」

 

 凪斗は遠い目をして過去を、ロシア亜種聖杯戦争での一幕を思い出す。

 同盟を組んだ、体術の一点で言えば()()()()()()()()老爺の元、二十歳を迎えたことで初めて飲んだ酒。つい飲みすぎて軽めだが初めての二日酔いに苦しむ中朝食を食べていたら人外の力で飛び込んで来るニキチッチ。そして二日酔いの耳に響く「次あんなことしたら、こうだぞ!!!」から始まる説教。尚、話を聞いていたピョートル大帝も参加した。

 

「叱ってもマスターは懲りませんのでなぁ……」

「懲りないっていうかそうしなくちゃいけない状況になってんだよぉ……中国はまだしも韓国とギリシャは仕方なくねぇ? 片や世界の危機、片やアイアス達がペルセウスと戦ってる最中にマスター()を襲撃しに来たリュカオンとか」

「その通りでございますが……何故リュカオンと戦ったので? 令呪でアイアス殿をマスターの元に転移させれば良かったのでは? マスターが令呪で『己のことは構わずペルセウスと戦え』と命令を下したのには度肝を抜かれましたが」

「あぁそれか」

 

 凪斗を懐かしむかのようにリュカオンに抉られた腹や脇腹を摩る。

 

「相手はあのペルセウスだったからな。あそこであの時点での鏡典英霊ならまだしもアイアスが抜けてもし逃げられたら何が起きると思う?」

「それは……」

「手の内割れてる状態で二回戦目。他ならまだしもギリシャでのペルセウス相手にそれは絶ッッッ対やりたくなかったからな。結果的には俺と蜘蛛丸がリュカオンと戦って正しかったって思ってるよ。ペルセウスは仕留められて、俺は無事……無事? ……そう、無事にシグルド達の救援まで耐えられて、更にリュカオンには何か気に入られた。何十回も死ぬかと思ったしヤツカハギは滅茶苦茶使ったけどな!」

「では無事ではないのでは?」

「うん無事じゃなかったわ。俺も蜘蛛丸も瀕死だったわ。道満さんに渡された治癒の符があって良かったわー本当」

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️」

「だなぁ」

 

 蜘蛛丸の言葉に同意する凪斗。

 蜘蛛丸の言葉を翻訳すると『道満様には足を向けて寝られませんね』である。

 

「それに一応、韓国の時は考えがあったんだよ。橙子さんに頼めば義腕義足を作ってもらえるだろうなぁと……金は結構貯まってたし亜種聖杯とか明雲家(ウチ)の蔵から色々出せばあの人も興が乗るだろうし。ほら、千年ものの槍とか、無名だけど鬼の腕とかそういうのがいっぱいある──」

「そういう問題ではありませぬぞマスター。私が言いたいのは『マスターの無茶の度合いが高過ぎる』ことでございます。無茶にしてもマスターはやり過ぎなのですぞ。ほら蜘蛛丸殿もこの通り」

「……そんなまさか」

 

 凪斗が向けば、そこにいるのは首をぶんぶんと縦に振っている蜘蛛丸の姿が。

 蜘蛛丸が凪斗の無茶をする姿を幾度見てきたことか。

 この対応は正常な反応である。

 

(……後でおやつの骨煎餅食ってやる。というかお前も俺も同じだろうが……!) 

 

 リュカオンとの戦いにて魔眼蒐集列車(レール・ツェッペリン)で移植した退()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を始めとしたありとあらゆる力を限界まで酷使し、暴走寸前の状態になった蜘蛛丸。

 ヤツカハギ──霊薬を過剰摂取し一割二割ぐらい人間をやめた凪斗。

 

 親子揃って似たもの同士である。

 

「いやでもあれだけしないと生き残れなかった訳なのは事実だし……」

「そこに関しては素直に認めます。だとしても、無茶し過ぎなのは事実では?」

「いやーあはははは……」

 

 乾いた笑いが出る凪斗。

 彼の目には、ハサンの後ろにそこはかとなく幾つかの幻影が見えた。

 

 腕を組み頷くダレイオス三世とニキチッチ。

 苦笑するアーラシュとテセウス。

 圧をかけてくる滝夜叉姫。

 もう諦めて認めろと言わんばかりに大爆笑している大アイアス。

 

「……ぐぅ!」

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……でもまぁ、今回ばかりは無茶をしなくちゃいけない時もあるだろうよ。『月光大砲』『八龍』レムナント・コードは勿論、賭けになるが()()もするさ。蜘蛛丸も『鉢巻』『百足』を使う覚悟は出来てるだろ?」

「◾️◾️」

「……そのようなことが起きなければ良いのですが」

 

 凪斗は幻影が呆れたような目でこちらを見てきた気がした。

 というか飛び掛かって殴ろうとしてきた滝夜叉姫がアーラシュとテセウスに止められていた。そしてニキチッチは笑顔で拳を振り上げていた。

 その光景を見て、凪斗は苦笑する。

 

「……っと、そういや呪腕さん。一つ頼み事があるんだが」

「何でございましょう?」

「一つ指南して貰いたいことがあってな──」




もう我慢出来ねぇというわけで凪斗の召喚してきたサーヴァント全員真名判明!
感想よろしくお願いします!

余談ですが、例え凪斗の子孫であろうが何であろうが凪斗以外の召喚には絶対に応じないサーヴァントが二騎います。
滝夜叉姫と源為朝って言うんですけど。

あとニキチッチとピョートル大帝からの説教後の一幕を活動報告に投稿しました。よければ見て下さいそして活動報告の方で感想をください。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=323835&uid=418240
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