前書きで前回書いた明雲家の蔵について説明……しようと思ったら千文字超えちゃったのでどっかでまた載せます。
最近凪斗が経験してきた亜種聖杯戦争に召喚されたサーヴァントを具体的に設定してたんですが「あれ、ギリシャ京都インドどころか全部魔境じゃね?」と思ってきました。
なんかいつのまにかノルウェーにガチの方の弁慶いるしイランではフィンがキャスターで召喚されてるしポルトガルではメレアグロスとフェルグスが殺し合ってるし中国に至っては董卓がバチクソ暴れ回っててる……まぁその分凪斗のヤバさが盛れるからヨシ!元からヤバい?それはそう。
あとインド亜種聖杯戦争のセイバーとランサーの枠で天才的な発想をしてしまった。名前が出てくる時まで期待して待っててください。
「セイバー、身体に異常はあるか?」
「いや、もう大丈夫だ。なんならそうだな、"黒"の奴らの城塞に宝具をぶっ放してやってもいいぜ?」
「オーケー、元気が有り余っているのは分かった。分かったから──やるなよ? 絶対にやるなよ?」
「おいおい、冗談に決まってんだろ?」
「……いや、お前が言うと冗談に聞こえないんでな」
「あのな、マスター。オレはこれでも騎士だったんだぞ? 戦局くらい見極められるわ!」
「冗談だ、冗談」
獅子劫界離が拠点とする
重く沈んだ冷気が空間を支配し、死が未だ息づくという矛盾がある静寂の中──モードレッドはまるで場違いなほどに朗らかだった。
現代的な服装をまといながら、無造作に傍らの髑髏を弄ぶその姿は、騎士というより不良少女のようで。だが、それこそが円卓の騎士としてアーサー王伝説に刻まれた彼女の素であった。
その様子を見て獅子劫は苦笑しつつ髑髏を取り上げながらも、内心では安堵し、心強さすらも感じていた。
彼女がいつも通りでいてくれることに対して。
「ったく、あのクソ蜘蛛。次に会ったら叩っ斬ってやる」
「アレでも頼れる味方だ。それに今でも表向きは敵同士だ。しょうがないという他ないだろうよ」
「とは言ってもなぁ……じゃあ味方になった時に三回だけ! 三回だけならいいだろ?」
「お前な……せめて二回にしとけ」
「よぅし、言質取った!」
「あっ」
少しばかり苦い笑みを浮かべながら、獅子劫は心の中で友人とその愛息子へと謝罪する。
そう──現在に至るまで、セイバー・モードレッドはまともな戦闘行動ができなかった。
獅子劫は頭を軽く掻きながら、今や何事もなかったかのように振る舞うモードレッドの姿に、呆れ混じりの感嘆を覚える。
「
モードレッドが戦闘不能になった原因は、蜘蛛丸が持つ平将門公の『呪』だ。
円卓の騎士であろうと、神霊──それも日本有数の祟り神の呪いとなれば、容易には耐えきれない。致命傷になりかねないそれを受けてもなお、ケイローンに深傷を負わせこの地下墓地に帰還するまで剣を握り続けた彼女の精神力は、獅子劫が知る言葉では言い表せない程のものであった。
解呪が成功したのは、三つの要因が奇跡的に噛み合ったからに他ならない。
第一に、モードレッドの対魔力がランクBという高位にあったこと。
第二に、獅子劫自身が日本の呪術体系にある程度通じていたこと。
そして第三に、凪斗が戦闘後にとある手段で獅子劫に解呪用の礼装を託していたこと。
この三つが揃い、解呪が成功したのだ。
(かの平将門の呪いをほんの欠片とはいえまともに受けて生き延びるとはな。そりゃあ、「俺らの常識で測るな」とか言うわけだ)
サーヴァントという存在の非常識さを、獅子劫は過小評価していた。
凪斗が酒に酔った勢いでよく語っていた英霊達の活躍。
世界で最も多くの英霊に深く関わったであろう存在の友人の一人として、その膨大な知識と経験の一端に触れていたがゆえに、他のマスターよりはほんの少しだけだが理解しているつもりでいた。
だが、今なら断言できる。
実際に目の当たりにしなければ、その本質を理解することは到底できない、と。
英雄。
神話や伝説の時代を駆け抜け、名を歴史に刻み、今なお語り継がれる者たち。
その一端を、獅子劫は垣間見た気がした。
「ちっくしょー! 大規模な戦闘があったってのに、セイバーが参戦できず寝たきりだったとか、恥にもほどがあんぞ!?」
「そう言うと思ってだな。凪斗にまた大規模な戦闘があったら連絡するように言っといた。ほれ」
「お、サンキュー」
……菓子を手渡された途端、満面の笑みに変わった野性味溢れる少女が、かの叛逆の騎士とはとても思えないが。
渡した菓子を嬉しそうに頬張るモードレッド。
だが、その振る舞いこそが、彼女がただの使い魔ではなく人間と同じ知性と感情を持つ確固たる存在であることを証明していた。
それと同時に、あることも暗に示していた。
マスターとサーヴァント、双方にとって破滅以外の何物でもない、絆の崩壊の果てに訪れるもの。
数多の英霊と絆を紡いだ凪斗でさえ、「絶対に起きないとは言い切れない」と認めた破局。
マスター殺し──。
(──アイツの話に出てきた、リュカオンのマスターのような末路は、まっぴらごめんだ)
人類史上誰よりも英霊と歩んできたであろう者の忠告。それはどんなマニュアルよりも重く、現実味を帯びていた。
だが──
「マスターマスター! これ一つ食ってみろよ! うめぇぞこれ!」
「そんなにか、どれどれ──こりゃあ確かに」
「だろ、だろ!? こっちもうめぇけど、オレはこれの方が好きだな!」
「いや、俺はこっち派だな。確かに美味いがこっちはちょいと甘すぎる」
「いやいや、こんぐらい甘い方がうめぇんだって!」
──少なくとも、今のところは。
そんな破滅の兆しなど、どこにも見当たらなかった。
◾️◾️◾️
「それにしても、アーチャーが脱落か」
モードレッドは寝転び無造作に紙を寄せる。
傍らには食べかけの菓子が置かれ、片手間にそれを口に運びながらも、視線は真剣そのものだった。
そこに記されていたのは、つい先日起こった戦闘の報告──そして、一人の英霊の脱落の報せであった。
「真名はアタランテ。あのカリュドーン狩りや黄金の林檎のな。凪斗曰く、アサシンが仕留めたらしい」
「おいおい、大丈夫なのか?」
モードレッドが顔を顰める。
アーチャー。
三騎士の一角にして、キャスターに並び遠距離戦を主とするクラス。
広域を制圧する火力、戦局を左右する緻密な狙撃、そして何より、正面からの戦闘では手の届かぬ位置からの制圧力は、陣営戦において計り知れない戦術的価値を有する。
それに加えて此度"赤"のアーチャーとして召喚されたのは純潔の狩人、かの英雄船団アルゴノーツの一員たるアタランテ。アーチャーのクラスに適合する英霊としては最上位と呼んでもいい一騎。
彼女の脱落は、戦略全体に影を落とすに足る。
しかし、そんなモードレッドの懸念を吹き飛ばすかのように、獅子劫は静かに迷いのない動きで首を縦に振った。
「確かに三騎士の一人が脱落というのは確かに痛いが、この一件でユグドミレニアにとって凪斗がスパイである線がかなり低くなった。それに凪斗の存在一つで容易に戦局は覆せる。お前が心配する程の痛手じゃないさ」
「そこまでか?」
「あぁ、それ程までにアイツの存在は大きい」
その言葉にあるのは凪斗に対しての圧倒的な信頼。
普通の価値観でサーヴァント一騎と一介の魔術師を天秤にかけたのなら、前者の方が遥かに重いと誰もが答えるだろう。
しかし、後者が明雲凪斗なのならば話は変わる。獅子劫界離の天秤は躊躇なく後者に傾いていた。
だが、凪斗のことを知らぬモードレッドにとってその過信とすら捉えられてしまう信頼は不可解であった。
「幾ら
「セイバー。いくら現代の人間だからといって油断してたら、お前でも足を掬われるぞ。アイツは現代の人間だとは思わない方がいい」
「どういう……あぁ、そういうことか」
英雄の生き様とは苛烈なものだ。
サーヴァント──ただの残滓、記録、影法師と言えども、聖杯戦争という短い時と言えども、一人の人間の生き様を変えるには十分足り得る光を持っている。
では、幼少の頃から十二回亜種聖杯戦争を経験した彼はどうなる?
彼が召喚し共に戦い、そして別れを迎えた英霊たち。その鮮烈な光を、幾度となく浴び続けた彼はどうなる?
必然──明雲凪斗の生は
亜種聖杯戦争を初めて経験した時の精神年齢が十五歳であることを二人は知らないが、英雄の生き様の前にはそれは些事、むしろ人格形成中の多感な時期であったため幼少期の時よりも多くの影響を受けていることだろう。
人格形成の根幹たる多感な時期に刻まれた
明雲家が源氏武者の流れを汲むことも多く影響したが、黄金の雷光に端を発し亜種聖杯戦争を通して練り上げられたその精神性は"魔術師"や"魔術使い"どころではなく、現代に有りうべからざる"戦士"のそれであった。
「成程ねぇ。確かに厄介だろうが、それとどこにオレが足を掬われる可能性と関係がある。幾らサーヴァントに通じる切り札があろうとも、オレとそいつが直接戦う訳じゃ──待て、まさか……」
「……大当たりだ、セイバー」
サングラスで隠された目が鋭くなる。
獅子劫の声には言葉を選ばぬ真剣さがあった。それは信頼ゆえでも、仲間としての誠意でもない。
今から話すことに対して、冗談や曖昧な理解など許されないからだ。
その雰囲気を察し、モードレッドは起き上がり胡座をかく。
「俺が知っている、アイツが持っているサーヴァントに通用する手札は四つだ」
獅子劫の指が一つ、立てられる。
「一つ目はレムナント・コード。アイツが作った、恐らくアイツにしか作れないであろう魔術礼装群」
二本目。
「二つ目は蜘蛛丸。俺が知っているのは平将門公の『呪』だけだが、それだけとはとても思えん。『明雲の厄宝』の噂を考えると、他にも何か──最低でも後二つはあると考えといた方がいいだろうな」
「巨大化とかしてたぞ?」
「……やっぱりな。
「次も不覚をとるオレじゃねぇよ」
「そりゃ良かった」
三本目。
「三つ目は鏡典英霊。凪斗一人で戦局を覆せると判断したのはこれの存在が大きいな。サーヴァントの劣化存在だが侮るなよ。アイツのことだ、『俺のサーヴァントはこんなに弱くない』なんて理由で宝具の真名解放すらも可能な程の再現をしている可能性がある」
「おいおい、そんな理由でか?」
「俺達にとっては『そんな理由』だが、アイツにとってはそこが重要なんだろうよ」
獅子劫の予想は当たっている。
『決戦術式/鏡典現世・七天再臨』及び霊基鏡ヴァルクルムの開発の発端にあった感情はまた別だが、鏡典英霊の改良の発端はいつもそれであった。
『俺のサーヴァントはこんなに弱くない』
『俺のサーヴァントはもっと強い』
『俺のサーヴァントは、もっとカッコいい』
そのような童のような純粋な思いが、模倣品を真に迫る物へと進化させてきたのだ。
「謂わば、アイツは亜種聖杯戦争に参加する度に手札が一枚増えているようなモンだ。それも大英雄クラスばかりのな」
そして、最後。
四本目の指が立てられる。
「四つ目。俺がこれから言うことは全て冗談なんかではなく真実。嘘偽りは一切ない。
「──おう」
そのモードレッドの返事に満足そうな笑みを浮かべた獅子劫は語り始める。
明雲凪斗、彼が持つ四つ目の切り札を。
「アイツの四つ目の切り札。名称なんかは知らん。俺が分かるのはただ一つ。それは──」
あぁ、今でもはっきりと思い出せる。
あの時を。
とある魔術組織の壊滅を請け負い、数ヶ月ぶりに彼と共に動いた、あの日を。
そして──逆鱗に触れる、などという言葉が甘すぎると理解した瞬間を。
逆鱗を砕かれ、踏みにじられ、挙げ句に唾を吐かれる。
そう形容してもなお生温い、彼の怒りを。
暗緑の炎を灯して進軍する不死の兵達は地獄の獄卒のようで。
黒鋼の鎧に身を包み、無言で突撃を繰り返す鉄の信徒たちは、死すら意に介さぬ殉教者のように見えて。
鏖殺衝動のみに駆られた忌まわしき異形どもは、骨、肉、魂を選り分けることなく喰らい尽くして。
人骨で構成された戦象が魔術師たちを踏み砕き。
黒鉄で組み上げられた獣王が魔術師達を蹂躙し。
怨嗟を纏った亡霊の女王が呪詛で魔術師達を物言わぬ骸へと変え続け。
古の怪異の力を内包した霊たちは主の怒りに呼応し咆哮と共に魔術師を殺し続け。
二騎の鏡典が後ろに侍り、百鬼の姫君とその息子がその怒りを宥めるように静かに隣に佇んで。
漆黒の雷霆を纏い、
憤怒の炎をその身で燃やし続け、
その切り札に覆われて──
「──サーヴァントとの白兵戦を可能にする」
感想を見るのが一番の楽しみなので新鮮な感想を宜しくお願い致します。実際感想を見て頑張るぞという気持ちになれるので是非に……