何故今、思い出す。
確かにこの胸騒ぎはこの時に感じたものだ。
だが、思い出すのならば、せめて彼──スパルタクスと関係するあの路地裏での情景だろう。
なのに、何故。
イラン亜種聖杯戦争を思い出す。
『マスター』
『お前には厄介な──魂の髄から髄までに絡みついた、本物の聖杯──かの大釜や神々でさえも取り除くことは不可能であろう運命がある』
『あぁ、すまんが断言しよう。お前は死ぬその時まで、聖杯戦争から逃れることはできない。もしかしたら──いや、そこまで断言する必要はない、か』
『聖杯戦争に呼ばれる英霊ってのは半分以上が聖杯を望んで嬉々として応えた者だろうな』
『だが、何の因果かそれとも奇縁か。英霊の座全体で見ても少数であろう
『バーサーカーの時はその話をできる精神状態じゃあなかった。セイバーとライダーには聖杯に託す願いがあった』
『だからこそ、この問いはオレにしかできない』
『我が主、明雲凪斗に問う』
『お前は何故、戦うことを選んだ?』
────
『君の行動には決定的な矛盾がある』
『亜種聖杯戦争に巻き込まれた、などと言うが……脱落するための最短経路を思いつかない君ではない』
『いや、君は最初から
『それでも実行しない。拒絶している』
『ただ単純に、ソレを命じるのが嫌なだけ──そう考えただろう?』
『ああ、確かにそれも一因だ』
『私たちのような存在を、使い潰し、切り捨てることに躊躇いを覚える。魔術師としては致命的だが、人間としては正しい』
『しかし、だ。その躊躇いは本物の欲求の前ではあまりにも脆い』
『生きたいという当たり前の衝動。死にたくないという生命が最も優先する本能。その二つに晒されれば倫理など紙切れ同然だ』
『それなのに、君はこうしてアーチャーと共にいる』
『恐怖よりも強い感情が君の心の奥底に巣食っている証左に他ならない』
『さて、
────
『正直に言おうか。キミには今すぐ令呪を以て
『ボクはランサーやキャスターみたいに狙って呼ばれる英霊じゃない。実際、マスターも父上を呼ぼうとして、結果ボクが呼ばれたからね』
『だから、ボクはこれを運命だと思っている』
『父上に会うための、娘として見て貰えるための、たった一度の機会だってね』
『この聖杯戦争において最大の障害はキミのアーチャーだ』
『なのに、キミにもアーチャーにも
『ふざけるな。何故ここにいる。何故この戦場に立った』
『その答えを持たずに、ボクの運命を邪魔するな』
『主従共に願いがないのならさっさと退場してくれ。不愉快極まりない』
『これがボクの……いや、マスターとボクの本音だ』
『…………今日はここまでにしておくよ。流石に、子供相手にこの場で直ぐに答えを決めろなんて言わないさ』
『だけど』
『次、キミがその答えを持たずに、ボクの前に現れたなら──』
『ボクは英霊としての全てを以て──キミを殺す』
────
そして俺は、あの問いに何と答え──
「凪斗さん?」
「っ」
はっ、と意識が過去から戻る。
目の前にいるのは褐色の偉丈夫でも金髪の美丈夫でも赤髪の少女でもなく、心配そうな顔をこちらに向けるフィオレ。
「どうされました? ……すみません。やはり、気に障ってしまいましたか」
「いや、大丈夫、少しぼーっとしただけだから謝んないでくれ。それよりも、何で分かったんだ?」
あれからしばらく時間は経ったが、その間、俺がスパルタクスに
呪腕さんと蜘蛛丸の線はない。
だってあれからずっと将棋してるしあの二人。あ、フィオレに付いてきたであろうケイローンがルールブック見てる。
そもそも、あの二人は俺のデリケートなところを他の人に言うような性格ではない。
ならば何故彼女はこのことを知っている?
そんな問いに、彼女はなんてことのないように答えた。
「凪斗さんとはもう数年の仲ですから。様子がいつもと違うことぐらい分かりますよ? 凪斗さんがそのような顔になるのは大体サーヴァントのこと絡みですから。あと、お風呂上がりですよね? 凪斗さんはそういう時、いつもお風呂に入ってさっぱりしようとしてますし。今回はそうはいかなかったみたいですが」
「姉繋がり?」
「はい?」
「いやこっちの話」
びっくりした……。
昔、今みたいに悩んでた時に話しかけてきた蛍姉さんとサリアの姉御にそっくりだったわ。
フィオレと比べると性格に天と地ほどの差はあるけど。
蛍姉さんは言わずもがな。姉御なんて、あの明らかにお淑やか〜な見た目でローランの股間を容赦なく蹴るし、レゴブロックばら撒くしな……。
そういやあん時も素直に話したら良くなったな……よし、話すか。こういう時は思い切りが重要ってね。
「えぇと、何故スパルタクスの下に行かないのか、だったな」
ま、答えは単純だな。
「……怖いんだよな」
「怖い、ですか?」
「あぁ、怖くて怖くてたまらないんだ」
聖杯大戦への参加が決まった時、俺はほんの少しだけ期待してしまった。
スパルタクスが原作のように“赤”のバーサーカーとして召喚されることを。
そして、今のように捕らえられることを。
勿論、原作通りに行かない可能性も十分にあった。
ジーン・ラムが当初の狙い通りにマクベスを召喚できたのならば、スパルタクスがミレニア城塞に突撃することなどなかっただろう。
つーか、他の面子が同じじゃない可能性も十分にあり得たな。
アタランテの触媒に使われたのは俺がテセウスを召喚する時にも使ったアルゴー号の欠片。
つまりアタランテ以外のアルゴノーツでアーチャー適性のある者……ヘラクレスやピロクテテスが召喚されるかもしれなかった。
うん、マジでヘラクレスとピロクテテスは召喚されなくて良かった。理性有り魔力問題なし十二の試練フル稼働のヘラクレスとか相手にしたくねぇ……ピロクテテスもヒュドラの毒矢持ってきてたし……そもそもあの人ヒュドラ毒受けて十年耐えたやべーやつ……彼女を愚弄する気は一切ないが、アタランテが召喚されたのはぶっちゃけ不幸中の幸いだったな。
触媒にもよるが、アキレウスはトロイア戦争、カルナはクルクシェートラの戦いの面子だな。特にアキレウスはパトロクロスとニアミスする可能性は十分にあり得た。
そして、スパルタクス。
正直に言えば、フランス亜種聖杯戦争でどうやって彼が召喚されたのかは詳しく知らない。
だが、もし将来聖杯大戦で使われるはずだった触媒がフランス亜種聖杯戦争で使われ、紛失していたとしたら?
召喚されたのはスパルタクスではなく、全く別のバーサーカーだった可能性も普通にある。
おまけに俺の
静岡、ノルウェー、フランス、イラン、ポルトガル、韓国、中国、エジプト、ロシア、ギリシャ、京都、そしてインド。
それら全て俺が知らないサーヴァントが最低でも一騎は現界しており、知ってるサーヴァントもクー・フーリンのようにクラス違いでスキルや宝具が違うなんてことも普通にあった。おのれクランの猛犬、おのれクソ鬼畜外道軍師!
……つまり俺が知っている“原作の流れ”なんて、最初から崩れる余地だらけだったわけだ。
しかし、“黒”のサーヴァントは、俺が呼んだ呪腕さん以外は原作通りの顔ぶれ。
“赤”も変わらず。ジークフリートとカルナが激突する光景すらも同じ。
それに合わせるように、俺の期待は膨らんでいき、アタランタを作戦通り最後の足掻きも潰して倒し、そして──スパルタクスは捕えられた。
自分勝手で、浅ましい、彼が最も嫌う圧政者が思い描くような、理想通りに。
それが、不味かったのかな。
いざ機会が来ると、怖気付いてしまった。
「俺はな、あの人に一度だけ感謝の言葉を告げられれば良かったんだ。あの時助けてくれたあの人じゃないってのは分かってる。紛れもない自己満足だってことも分かってるさ」
サーヴァントに記憶の連続性はない。
あの人に感謝の言葉を伝えたとしても、彼からすれば「忌まわしき圧政者の狗の一匹が感謝してきた」とかいう意味不明な現状だ。
それでも、俺はあの人に感謝の言葉を伝えたかった。
あの人がいなければ俺は、あの路地裏で代行者のおっさんと共にのたれ死ぬか、それともみっともなく生き恥晒してグールになっていただろう。
おっさんはあのクソ女に負けてしまって、当時はまだ面識がなかったローランとサリアの姉御はヘルラに、爺ちゃん(とプレラーティおじおばさん)はヘルラの眷属に阻まれ、黒太子は静観を選んで、ダレイオスはまだ召喚していない、姉さんは日本にいた。助けが来る筈はなかったんだ。
更にあの時はまだ聖杯回路が身体に馴染んでいない時期で、魔術よりも体術をメインに鍛えていた。あのクソ女に対抗する手段はおっさんの懐からパクった黒鍵と灰錠しか無かった。
生存は絶望的と言う他なく、死を覚悟していた。
その中で来たのが──彼だった。
希望だった。
ゴールデンに並ぶ光だった。シグルドに並ぶ灯火だった。ダレイオスに並ぶ不屈の象徴だった。
人生にて一番の強敵といえるアグリュトとの戦いの時も、絶対的強者であるリュカオンと戦った時も、人間が介入できる余地がないとすら思えたインド亜種聖杯戦争の時も。
負けても挫けても絶望しても立ち上がることができたのは、ゴールデンを始めとした英霊達に、蛍姉さんや爺ちゃんにサリアの姉御……にローランといった縁を繋いできた人々、そして彼が心にいたお陰だった。
「でも、怖いんだ。あの人に敵として見られるのが怖い。殺意を向けられるのが、あの人を見殺しにすることが、怖くてたまらない。
言いたいことはわかる。俺が召喚してきたサーヴァント達はみんな強くてかっこいいし有名なやつもいっぱいいる。だから、これからの亜種聖杯戦争で敵対することも十分にあり得る」
一度味方だったからこそ、鏡典英霊として日々の鍛錬に付き合ってもらっているからこそ、その恐ろしさは痛い程分かる。
シグルドの巧みな剣技にありとあらゆる状況に対応できる原初のルーン、それらを十全に使いこなすその叡智に加えて竜種由来の魔力炉心。
ダレイオスの無尽蔵に湧き出す不死隊と戦闘続行スキルと仕切り直しスキルに本人に軍略を組み合わせた、ワイルドハントに競り勝ちローランも二度と相手にしたくないと言う持久戦。
アーラシュの山をも削り取る矢を超遠距離から高速射撃──爆撃とも言う──する弓術に短時間の未来視をも可能にする千里眼。そして一切合切を粉砕する宝具。
パッと思いついた三騎だけでもこれだ、正直相手にしたくない。
もしもあいつらが敵にいたら、俺はその時契約しているサーヴァントと共に頭を悩ませていることだろう。
「だけどな、俺はちゃんとあいつらを殺せる。その自信はあるんだ」
シグルドも、ダレイオスも、アーラシュも。
ユーウェインも荊軻さんも■■■■■■もテセウスもニキチッチもアイアスのヤツも為朝もアシュヴァッターマンも。
もし亜種聖杯戦争で敵になっても、殺せる自信がある。
「でもな、あの四人だけはどうしても駄目なんだ」
あの日まで、世界に絶望し自殺に失敗し続けてただ生きてるだけの屍だった俺に、希望を与えてくれたゴールデン。
ゴールデンを失った後に、また悪夢に魘され絶望へと引き摺り込まれるところを助けてくれた蛍姉さん。
前世含めて初恋の人であった滝ちゃん。
そして、あの日俺を救ってくれた彼──スパルタクス。
この四人だけは、過程はどうあれどうしても殺せるビジョンが浮かばないんだ。
「ま、こんなみっともない理由だよ」
改めて整理したらすっごい女々しい!
なんでこうなっちゃったかなぁ……と考えフィオレの方を向いたら──
「???」
「えっ」
フィオレは、心底意外そうな目で俺を見つめていた。
今の俺は彼女から見てそんなに奇妙な映り方をしていたのか?
俺の視線とぶつかった瞬間、彼女はハッとし、慌てたような表情を浮かべた。
「すみません。その、凪斗さんらしくないと思ってしまって……」
「俺らしく、ない?」
俺らしくないとはこれ如何に。
「えぇ、そうですよ? 今の凪斗さんは"赤"のバーサーカーの件を除いても何というか、そう。変です、おかしいです」
「……お前も随分と俺に毒されたなぁ。俺に会う前だったら絶対そんな言い方しなかったろうに」
「毒してきたのは凪斗さんですよ? おかげで携帯電話も洗濯機も食洗機も、IHコンロも使いこなせるようになっちゃったんですから。二日酔いに効く薬が置いてある場所も亜種聖杯戦争後にいつも飲むお酒の場所も覚えてしまいましたし」
「本当にごめんなさい……」
一言一言が鋭いナイフになりぐさっと俺の心に刺さる。
客観的に見ると、俺は成人間近とは言え未成年の美少女にお世話される酒カスの成人男性。
本来ならば魔術師らしく機械音痴だったはずの彼女が、今では最新家電を軽やかに操り、俺の酒癖をカバーするプロフェッショナルと化している……その変化に費やされた期間と、積み重なった生活の密度。
やべぇ事案だ! 何故カウレスは俺とフィオレをここまで放置したんだ!
カウレスの監督責任を心の中で叫びながら、俺はたまらずベランダの手すりに覆い被さった。冷たさが身に沁みる。
しょぼしょぼと萎んでいく俺の背中に、背後からフィオレの柔らかな微笑みが向けられたのが気配で分かった。
「少しは、らしくなりましたね」
「酒は飲んでないけど」
「ご自身でもその認識なら少しは控えてください。亜種聖杯戦争後はしょうがないですけど、瓶や缶の処理って少し大変なんですよ?」
「うぅ……」
返す言葉が何もねぇ。
記憶は一切ないが、俺が酒を呑んで色々と愚痴ってる間にせっせと空になった酒瓶を運び、次の酒を運んだらツマミを作って俺の愚痴を聞いて、潰れたらベッドに運び空瓶の処理をする姿が易々と思い浮かんでしまう。
……自己嫌悪で吐きそうになってきた。酒呑んでないのに。
「……偶になら、大丈夫です。今まで知っているようでいて何も知らなかった私が言うのも烏滸がましいことですが、凪斗さんは色々と苦労していますから」
「フィオレぇ……」
女神だ。本物の女神が此処にいる。
ダメ人間へと真っ逆さまに転落しそうな俺の生命線を、絶妙な塩梅で引き止め、ほどほどに保ってくれる慈悲の化身が降臨なさっている。
拝むべきか? 貢ぐべきか? いやしかし金を渡したらこれまでの関係に罅が……うごごご……
「そういや、俺らしくないって具体的にどの辺だった?」
本気で悩み始めたところでその思考を切り上げ、一つ気になっていたことをフィオレに聞く。
「そうですね、
当たり前では?
俺があの人に会いたくないのは確かに怖いからだ。
……何か妙に
「実は、前に凪斗さんに聞いたことがあるんです。亜種聖杯戦争が怖くないのか、と」
「え、そんなこと聞かれたっけ」
「お酒ですごく酔ってましたから」
「あぁ……うん……そりゃ覚えてねぇわな……」
「そしたら、凪斗さんはこう答えたんです」
『そりゃあ怖いに決まってんだろ! というか怖くないって思う奴の方が聖杯戦争向いてねぇと思うぞ俺ァ!』
『サーヴァントってのは歴史に刻まれた英雄偉人が使い魔になったモノだが、人並み以上の知性とチカラを持つ存在でもある』
『伝説を作ったために英雄と呼ばれる、偉業を成したが故に偉人と呼ばれる。そんな普通の尺度で測っちゃいけねぇ、その気になれば
『俺はちょっとしたズルがあるから極々一部のサーヴァントと友好関係をある程度までは結ぶことができる可能性をほんの僅かに持ってるがな!』
『友好関係を結んで、更にどう戦うかを相談しながら決めるのも大変なのに、そいつと同じような存在を最高で四騎相手にする必要がある!』
『ここでまーた大変なのが相手のサーヴァントの真名の推測だ。クラス、戦い方、言動、服装なんかから判断して、そっからスキルや宝具の考察。ま、神話歴史を鵜呑みにしちゃいかんがな。相手がクー・フーリンだと知ってもゲイ・ボルクが因果逆転の魔槍とか考察できるか普通!』
『何より忘れちゃいけねぇのが相手のマスターの存在だ。知略軍略魔術の腕に関してはその時まで分からんが、経験で言えば確実に俺は勝っている。だけど、
『他にも色々な盤外戦術やら何やら! もっかい言うぞ! 超怖い!』
「よくそこまで覚えてるな!?」
「その時の凪斗さんはすごく印象的でしたから。で、そこまで力説してたので、ならば何故亜種聖杯戦争に参加し続けるのか、と聞きました。そしたら──」
フィオレの口から紡がれる、大変酔っていた俺が言ったらしいその答え。
俺は、それを聞いて──
「────ハッ」
「……凪斗さん?」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
────それはもう、盛大に笑った。
隣でフィオレがぎょっとした顔をして、部屋の中のケイローンがびっくりしているが、それも構わず俺は笑う。
あぁ、全てに合点がいった!
滝ちゃんとアイアスが即刻俺に言おうとしたのも!
ダレイオスとニキチッチが俺が気付くまで待とうとしたのも!
アシュヴァッターマンがブチギレてることも!
そして──蜘蛛丸が「あーやっと戻りましたねバカ父様」みたいな雰囲気してるのも、呪腕さんが「成程そういうことか」みたいな雰囲気してるのも!
何もかもに辻褄が合う!
てかマジで馬鹿でクソだったな今までの俺!
そりゃ俺のことが大大大好きな灑津忌も荒ぶるわ!
「な、凪斗さん……? どうしました……?」
「いやなに、
「はい!?」
驚くフィオレを尻目に、俺は部屋の中を進み一つのものを手に取る。
額縁に木片が嵌められ、手に取った瞬間令呪が浮かんだ鏡──霊基鏡だ。
鏡典英霊七騎の完全顕現には亜種聖杯炉が必要だが、一騎二騎程度ならば聖杯回路の力で十分賄える。
そして、それよりも数段劣る不完全顕現は、召喚までの工程は必要ない。
「よっ」
俺の召喚に応え顕現してくれたのは、一人の戦士。
炎を纏う褐色肌の赤髪の青年。
普段担いでいる巨大な
召喚された戦士は、俺を怒りを込めた目で睨み付ける。
その目に対して、俺は真っ向から向き合った。
「謝罪はしねぇ。だが、もしお前がまだ俺をマスターとして認めているのなら、一つ頼みがある」
「アシュヴァ──いや、アーチャー」
「一発、頼む」
その言葉にアーチャー──バラモン最強の戦士は、笑みを浮かべ。
拳を固く握り締め、構えて。
俺の顔面へと、
一つ、希望を知り
二つ、愛を知り
三つ、不屈を知り
四つ、己を知った