Mr.聖杯戦争in外典   作:英鈍

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お久しぶりだけど本編じゃなくて番外編です。
だって本編よりこっちの方が先書き終わっちゃったから……


とある巨人と英雄の決戦

 

 薄明、または黎明。

 地平線から大地を照らす光と天より齎される光を閉ざす静謐の闇が混ざり合った空。

 光と闇の境目を飛翔する烏の群れの眼下には、一人の人間が映っていた。

 

 ルーンが刻まれし水晶の短剣達。

 主の拳の前にて輪をなし回るそれらは徐々に旋回速度を上げていき、魔力の高まりが光と音となって現れる。

 

 腰を深く落とし拳を構え、目を瞑りその瞼の裏に浮かぶはその勇姿。

 ノルウェーでの戦いにおいて強く記憶に残っている強敵、ヴァイキング公国の創始者たるノルマンディー公、徒歩王ロロに撃ち込んだ絶技。英霊の宝具。

 凪斗がとった構えは、そのシグルドが宝具を開放する時の構えと酷似していた。

 

 しかし、シグルドと比較すれば今の凪斗の心境は全くもって違う。

 

 今の明雲凪斗の心は──恐怖に満ちていた。

 

(怖いなぁ……)

 

 彼の現在の状態は最高と言っていい。

 

 寿命を代償とした傷の全癒。

 聖杯回路の過剰駆動(オーバーロード)による、時計塔にレコードを残す程の量の魔力の生成。

 かの東方の大英雄の力の一端を降す『迅星の光輪(ティシュトリヤ)』による彼の驚異的な身体能力の爆発的増加に、義姉直伝のトランス状態にも移行している。

 

 武器も至上。

 現代にこれ以上の代物はないのではないかと疑う程の逸品である、シグルドが作成した原初のルーンが刻まれた短剣。

 それにシグルドの霊基の欠片を組み込み、作成過程で偶然ながらも魔剣成立の伝承と重なったことで強化されたレムナント・コード最強の『希望の暁光(ガグンラーズ)』。

 

 

 それでも、彼は怖かった。

 

 

 アグリュト・パレネ・ギオスセファル。

 神代の時より地中海に居を構えるパレネ家の最高傑作と名高き、その身に巨人の暴虐を宿し十全に扱う強者。

 埋葬機関の代行者と戦闘し生き延びるという偉業を為した魔術師。

 そして、クロムウェルと再契約したあの夜にて己が一度敗北し、密かに燻っていた驕りを完璧に叩き潰した勝者。

 

 

 一度敗北したものを乗り越える。

 字面にしたら簡単であり、創作だったら主人公がパワーアップし乗り越える展開だが、現実でやるとすればそうはいかない。そう簡単に力を得ることができるものか。

 

 

 足が竦む。

 手が震える。

 顔が引き攣る。

 あの日の激痛を思い出し身が強張る。

 

 

 だが──己は報いなければいけない。

 

 

 彼女がその命を捧げたのならば、その命をもって報いる。

 それこそが彼女のマスターとして忠義を尽くされた男の、月光の下で彼女と盃を交わした一人の人間としてやらなければいけないこと。

 

 クロムウェルにそう諭された訳ではない、アグリュトの討伐を己に任した他のマスター達にそう言われた訳でもない、他ならぬ自分の意思でそう思ったのだ。

 故に、今更恐怖で足を止めるわけにはいかない。己のした選択に対して責任を果たさなければいけない。

 

 

 嗚呼、しかし、何よりもだ。

 

 

 ここで退いてしまったら──

  

 

 

 

「ゴールデンじゃない。そうだよな、ゴールデン」

 

 

 

 

 さぁ、恐怖を乗り越えろ。

 ()()()()の圧、己は幾度も受けてきた。

 金時が、シグルドが、ダレイオスが、アーラシュが、ユーウェインがいなくとも、一歩を踏み出せ。

 あの叛逆者の如く、笑顔を浮かべ恐怖を克服──否、恐怖を克服(圧政に叛逆)しろ。

 

 

 足──動く。

 手──震えなし。

 痛み──今思うと姉はまだしも祖父による山での修行の方が痛い。何故先祖が鞍馬天狗──後に鬼一法眼と名乗る大天狗につけられたという修行を現代でも行うのか。継承することの大事さは分かるが、少しは手加減してほしいものだ。

 

 

 そして、顔──自然と笑みが浮かんだ。

 

 

 ならもう、大丈夫だ。

 

 

 この程度の恐怖、アレとは比べ物にならない。

 

 

 怒った姉に比べれば、竜と鼠の差なのだから。

 

 

 

 ◾️◾️◾️

 

 

 

(やはり奇妙な構えだ)

 

 短剣に拳を構える凪斗を見て思う。

 投げる、蹴るならまだしもまさか拳で短剣を撃つ──もとい投擲する者などアグリュトの四十余年の生にて凪斗が初めてであった。

 

(しかし、あの短剣では先ほどまでの我ならばまだしも、今の我の巨人外殻を貫くことはできないだろう)

 

 巨人外殻。

 きわめて特殊な組成にて巨人種の肉体を構成している、攻撃的エネルギーを吸収して魔力へと変換することが可能な強靭な外殻。

 パレネ家の者でも極小数の者は巨人外殻を有しており、中でもアグリュトは歴代で最も巨人に近づいた者として、相応の外殻を有していた。

 吸収限界を上回る攻撃については魔力変換できず、そのダメージを受けることになるが、アグリュトの見立てではあの短剣では外殻を突破することはできないだろう。

 

 何せ、あの代行者が放った黒鍵の一部すらも無効化したのだ。

 どうにも、それ以上の威力があるとは思えない。

 

(儀式の一環か?)

 

 本命はどう見てもあの長剣。今放った短剣ではないだろう。

 魔術的な意味を持つ必要な過程と仮定するが、そうしていたアグリュトの思考が止まった。

 

「────は?」

 

 アグリュトの目に映ったもの。

 それは、宙を舞う凪斗の右腕と、右腕を失った凪斗の姿であった。

 

 

 

 ◾️◾️◾️

 

 

 

(やっぱりな)

 

 知っていたかのように、凪斗は肘から先が消えた右腕を見る。

 力に腕が耐え切れなかったせいだろう。

 イランでの亜種聖杯戦争で召喚したアーラシュの『流星一条(ステラ)』のようだ、と彼は笑う。

 

(お前って、やっぱり凄いんだな)

 

 断面から走る激痛。

 出血は即座に傷口を焼いたからいいものの、傷口を焼くというのは()()()()()()がやはり痛い、凄く痛い。

 何よりも、消失感とも言うべき何かが心の中を支配している。

 

 右腕を失っただけでこれだ。

 自分が死ぬと分かっていながらも、人々を守るために命を懸けて矢を放った彼の凄さの一端をようやく分かる土俵に立てたと凪斗は喜び、そして──吹っ切れた。

 

 残った左腕に彼は()()()()とあるものを出現させる。

 光に薄く透けて独特な紋様を見せる二つの象牙に柄に絡み付く人骨、そして先端に付けられた大ぶりの宝石と宝石に宿る昏い緑色の炎が特徴的な杖。

 これこそは王権の象徴(レガリア)の一つ──王笏にして、レムナント・コード三番。

 不撓不屈の不死王にして破壊の暴風王ダレイオス三世の欠片や残滓から作りし魔術礼装。

 

 その名も、不撓宣言(アタナトイ・フシャーヤシヤ)

 

 ダレイオス三世が霊基の欠片に込めた()()()()を基に構築したその能力は『不死隊(アタナトイ)の召喚』──だが。

 

راهپیمایی(出陣)

 

 詠唱。

 しかし不死隊は実体化することなく、霊体の状態で現界し凪斗の身体に()()()()

 

 明雲家の魔術は『鏡』であるが、正しく言えば『鏡を利用した降霊術』である。

 明雲家の蔵に保管されている物品や呪体に宿る思念や力を己に降ろし、その力を御して怪異を屠ってきた退魔の一族こそが明雲家なのだ。

 

 現在、凪斗は『不撓宣言』で召喚した不死隊を己に降霊することで仮初ではあるが不死隊の保持する不死性を己に付与したのだ。

 更に言うと、宝具情報の一端である不死隊の情報に侵食される危険性はあれど、乗っ取られるリスクは彼には存在しない。

 

(俺の力なんてじゃんじゃん使っちゃってください! 乗っ取るなんてことしたら、王に処刑されてしまいますから!)

 

 降ろす不死隊に乗っ取る意思など存在しないからだ。

 共にUNOを始めとしたカードゲームをした仲の不死隊の言葉に、そして降ろした際に流れ出た思念に凪斗は笑みを浮かべる。

 

(貴様の思うままにやれ)

 

 ダレイオス三世の霊基の欠片に宿った思念より伝えられた言葉。

 それは、今の凪斗にとって最も響くものだった。

 

「全く……何でお前はそう、頼り甲斐があり過ぎんだよ……!」

 

 ならばその言葉に従おう。

 己が正しいと思ったことを、全力で。

 

「『迅星の光輪(ティシュトリヤ)』──」

 

 是なるはとある英雄の最期の模倣。

 己が命を代償に放った流星、その再現。

 

 凪斗の背に光輪が浮かび、そして──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──煌星臨界眩耀(アクタル・シェバーティール)

 

 

 

 ──彼は、流星となった。

 

 

 

 ◾️◾️◾️

 

 

 

 右腕が弾け飛んだ凪斗。

 その姿に一瞬思考に空白が生まれたアグリュトであったが、流石は歴戦の魔術師と言えよう。

 即座に思考を回復させる。

 

 相手の攻撃に対して幾つもの選択肢が生まれるが、一つを除いた全てを一瞬で破棄し、そのようなことを一瞬でも考えた数秒前の己を唾棄する。

 

「さぁ、来るがいい!!」

 

 迎撃。

 凪斗を迎え撃つ選択肢しか彼の中には存在しない。

 人間(英雄)の奥義を捩じ伏せて、相手の手札の一切合切を粉砕して勝利してこその巨人(怪物)なれば。

 

 瞬間、短剣を巨人外殻にて難なく弾いたアグリュトに向けて黒い影達が飛来する。

 

 空を飛んでいたワタリガラスの群れ──凪斗によって召喚された使い魔たちだ。

 烏達は己が身を弾丸とし、巨人の肉を抉り貪ろうと吶喊する。

 

 無論、そのことに気づかないアグリュトではない。

 

(動いたか……! だが、この烏共は先程までの我ならばまだしも、今の我の巨人外殻を貫ける程の力はない!)

 

 アグリュトの言う通りだ。

 現在の凪斗の力量では、烏達の本領を発揮することはできない。

 巨神因子を最大励起した状態で発現した彼の巨人外殻を貫ける程の力は今の烏達には存在しない。

 

(隙を作るつもりか!? 否、この程度の攻撃で、あの代行者の黒鍵よりも劣るであろう攻撃で我の隙を作れると思っているような貴様ではないだろう! さぁ、どうする!?)

 

 そう、()()()()()()

 

 烏達の黒い身体が白く発光する。

 白き光を纏った烏達は集まり、混ざり、その形を変えていく。

 

 脚は強靭な後足へと。

 翼は鋼鉄すらも切り裂く凶爪を備えた前足へと。

 肉を抉る嘴は骨すら噛み砕く牙へと。

 黒い羽毛は刃を弾く純白の毛並みへと。

 その形は鳥類のものから四足獣──獅子のものへと。

 

 巨大な白獅子へと変貌した烏達は咆哮をあげ、空を駆けてアグリュトへとその牙を剥く。

 

 獅子の騎士より作り上げた魔術礼装により召喚されし竜殺しの獅子。

 レムナント・コード五番、士獣形態。

 その名を── 勇猛の白を吠えよ(プルーウ・ド・シュヴァリエ)

 

「グ、ウォォォォォァァァァ!!」

 

 白獅子はアグリュトの巨人外殻を貫き左肩の肉に食らいつき、肉を噛千切る。

 アグリュトは食らいついた獅子を吹き飛ばすも、左腕は使い物にならなくなってしまった。

 

 刹那、構え直す猶予もなく流星と化した凪斗の姿が目前に映る。

 

 これが意味すること即ち──決着の時。

 

「いいだろう、右腕一本あれば十分だ」

 

 片腕が使い物にならなくとも彼の選択肢は変わらない。

 迎撃。

 その一択しか存在しない。

 

「さぁ、戦い(マキア)の開戦に相応しい花を咲かすとしよう!」

  

 巨神因子を右腕に偏重。

 今この時、アグリュトの右腕は巨人と人間の混ざり物ではなく、純血の巨人に匹敵する──山河を削り崩落させる豪腕と化した。

 

 対する凪斗。

 黎明(グラム)状態の『希望の暁光』がアグリュトへと突き刺さる前に辿り着き、勢いのまま足を構える。

 左手には令呪が刻まれている故使えない。

 ならば足。

 かのケルトの大英雄の如く、足で放つ。

 拳は何度もあるが、足の経験はない。

 だが、きっと大丈夫だろう。

 彼らが、ついているのだから。

 

 

 足に()()()()()を纏い、放ち、彼は叫ぶ。

 

 

 

 

 

 その真名を。

 その名を冠するにはまだまだであるため、己で名付けたその技の名を──!

 

 

 

 

 

 

「『鏡典・壊劫の天輪(ガグンラーズ・グラム)』!!」

 

 

 

 

 

 そして、アグリュトは見た。

 

 

(──そういうことか)

 

 

 凪斗の姿に重なった、とある男の姿を。

 敗者は決まった。ならば、言うことは一つしかない。

 

 

「見事」

 

 

 剣より引き出された力は巨人を貫き、天を穿つ。

 

 

 

 

 ガグンラーズ。

 北欧の大神オーディンの数ある名の一つ。

 

 

 

 

 

 

 その意味は──勝利を決める者。

 

 

 

 ◾️◾️◾️

 

 

 

 勝敗は決した。

 

 片や、右腕は弾け飛び、右足も失うことはなかったものの力が入らないのか片膝をつき、呼吸を整えている凪斗。

 片や、左肩は食い千切られ、上半身の右半身に大きく風穴が空いたアグリュト。

 

 どちらが敗者──即ち死する運命なのかは明らか。

 しかし、凪斗は最後まで油断せず震える左腕に鞭打って懐に手を入れる。

 左手の指の間に挟まれたのは二つの勾玉。

 よく磨かれ艶やかな光を放つそれだが、その帯びているその魔力がただの装飾品としての勾玉ではないことを表していた。

 

 今にも倒れそうだというのに直立不動──かの武蔵坊弁慶の立ち往生を思わせるアグリュト。

 もしや、と思考を巡らせ──

 

「……一つ、聞きたい」

「ッ!?」

 

 その思考が当たりであるかのように、完全に致命傷を負った筈のアグリュトの声が彼の耳に入った。

 凪斗は驚愕愕然の感情と共に勾玉の機能を解放する。

 

訃吼(ふこう)灰閻(かいえん)!」

 

 瞬間、勾玉に封じ込められた二匹の霊が現界する。

 

 血で染められたかのような赤色と雷を纏ったかのような黄色が合わさった毛並み。

 炎の羽衣を纏った人間を悠に超える巨躯に大地を強く踏みしめる黒雲を纏った四肢。

 己が主人の敵対者を前に殺意の篭った目で睨め付ける巨大な猫──訃吼。

 

 三メートルを超える長身に筋骨隆々とした人形。

 全てが燃え尽きた後のような灰色の肌に、人外であることを示す角が生えた馬の頭。

 身の丈に匹敵する金棒を握り、静かに死にかけの巨人を見据える地獄の獄卒たる馬頭鬼──灰閻。

 

 二匹とも凪斗が明雲家の蔵に保管されていたものを利用し戦闘用に作成した人工霊。

 アグリュトとの一回目の戦いで打ちのめされ弱体化し、足手纏いになるため出さなかった二匹だが、今のアグリュトならば殺せるだろう。

 二匹を嗾けようとする凪斗に、アグリュトは制止の言葉をかける。

 

「そう警戒するな。この際で、言霊などを仕込むような無粋な真似はせぬよ……そも、そのような力すらも残っていないがな」

 

 そう、アグリュトは己に残った全ての力を使い死に至るまでの時間を遅らせている。

 神代より続く魔術刻印と巨人(ギガース)の生命力が合わさった奇跡と言えよう。

 だが、凪斗はそのようなことなど知らない。

 

「……信じられると思うか?」

「否。我も同じ立場なら信じぬだろうよ。しかし、先の言葉は真だ。我がパレネ家の名誉にかけて誓おう」

「…………」

 

 葛藤の末、凪斗は二匹を後ろに下がらせた。

 

「……感謝する」

「……聞きたいことってのは、なんだ」

「あの絶技についてのことだ。恐らくは英霊の宝具、その模倣だろう……?」

 

 凪斗は首肯する。

 あれこそはシグルドの宝具『壊劫の天輪(ベルヴェルク・グラム)』の模倣。

 オリジナルにはまだまだ及ばないが、しかし凪斗は宝具の模倣という偉業を成し遂げたのだ。

 

「英霊の宝具の模倣……我らの知を超えた力の再現。なぜそのようなことを為そうとしたのかを、我は最期に知りたいだけだ」

「なんだ、そんなことかよ」

 

 あっけらかんとした様子で震えながらも立ち上がった凪斗は言う。

 

「そんなこと、だと……?」

「あぁ、そんなことだ。生憎、お前が思ってるような、崇高な思想とか立派な動機とか、そんなもんはねぇよ」

 

 凪斗が『壊劫の天輪』を模倣しようと思った理由は、一つのありふれた、人が聞けばくだらないと一蹴するような理由だった。

 レムナント・コードを作ったのもそうだ。坂田金時の前でぽつりと、とある言葉を溢したから。

 

 しかしだ、崇高でもなく立派でもないが、くだらないとは思わない。

 なんせ、みんなその通りで、みんながそうだと思ったのは真実なのだから。

 

 

 坂田金時の雷を、

 

 

『なんだ大将! オレっちの雷を見てそう思うなんて、見どころがゴールデンにあるじゃねェか!』

 

 

 シグルドの剣技を、

 

 

『そうか、当方の技をか……一つ教えておこう、マスター。我ら英雄、子にそう思われ嬉しいと思わない者など、この世界にはいないだろう。無論、当方も含めてだ』

 

 

 ダレイオス三世と彼が従える不死隊(アタナトイ)を、

 

 

『……そうか、そうか! 我が不死隊を怖いなどではなくそう思うか! 全く、余のマスターは豪胆であるな!』

 

 

 アーラシュの弓術を、

 

 

『へぇ……ならマスターもやってみるか? 人に教えるってのは初めてだが……ハハッ! そんなに乗り気ならこっちも腕が鳴るってもんだ!』

 

 

 そして、己を逃すユーウェインを。

 

 

『我が真名はユーウェイン! 我が名に、我が王アーサー・ペンドラゴンの名に誓おう! 何があろうとも、貴様に我がマスターを殺させはしない!』

 

 

 

 

「めっちゃくちゃカッコいいものは真似したいもんだろ?」

 

 

 

 どうしようもなく、そう思ったのだ。

 

 

 その言葉を聞いたアグリュトは納得したかのように瞼を閉じる。

 

(単純明快なものの方が、この男らしい、か)

 

 複雑奇怪な理由など、この男には似合わないだろう。

 

 カッコいい。真似したい。

 それは、もしかしたらだが己にも、己の先祖にも当て嵌まるのかもしれないと思った。

 パレネ家の初代は、巨人(ギガース)の巻き起こす暴虐の嵐に魅了されたからこそ、己も同じような存在になりたいと思ったのかもしれないと。

 

「……明雲凪斗よ。韓国にある我が工房を訪れるがいい。パレネ家現当主、アグリュト・パレネ・ギオスセフォルの名の下、工房より礼装を簒奪することを貴様に許そう。何、パレネ家の者に対しては魔術回路に遺言として記録しておく故案ずることはない。トラップに関しても、我が死した際に解除されるようにしてあるからな。存分に漁れ」

 

 その言葉に凪斗は怪訝な顔をする。

 顔は口よりも雄弁に語ると言わんばかりなその顔に、アグリュトは微笑を浮かべた。

 

「何故、という顔だな。そう不思議なことではない」

 

 

「英雄とは、巨人(怪物)の巣から財宝や武具を得るものだろう?」

 

 

(魔術師たる我としては、悔いはある。恨みもある。だが──)

 

 パレネ家とはギガースへの回帰、そして太祖である白き巨人セファールの復活を目指す家系。

 故にパレネ家の魔術師達は他の魔術師とは多少ズレており、史上最もギガースに近づいたアグリュトは魔術師と巨人の比率が歴代で最も巨人に傾いた男であった。

 

 だからこそ、目の前の少年を見て思う。

 

 片腕は千切れ飛び、立ってはいるものの右足には力が殆ど入っていないだろう。

 四肢を潰し、寿命を削ってでも短い時を過ごした暗殺者の覚悟と忠義に報いようとする愚者にして、(巨人)を討ち倒した人間(英雄)

 

 互いに全力をぶつけ合った死闘──これをこう言わずしてなんというか。

 

「嗚呼──良き、戦い(マキア)であった」

 

 その言葉と共に、最も巨人に近づいた男の生は幕を閉じた。

 

 死に至った彼を見つめ、凪斗はぽつりと呟く。

 

「……立ち往生とは。お前もカッコいいじゃねぇか」

  

 立ったまま力尽きたアグリュトを、凪斗は尊敬の目で見る。

 そして彼は背を向け、控えさせた二匹の霊の元に向かった。

 

「……さて、俺の腕、どこまで飛んだのかねぇ。反動が来ない内に、探さなきゃ、なぁ」




最近こいつワルキューレの勇士判定いけるんじゃねと思ってきた。

ちなみにこのアグリュト戦ですが、『希望の暁光』がなければ相打ちになって凪斗も死んでました。

具体的には『煌星臨界眩耀』でもまだギリギリ火力不足でアグリュトが『まだだ!!』して凪斗も手応えからまだ仕留めきれてないと確信して『まだだ!!』して、限界を超えてアグリュトを仕留めたことを確認した後に死亡。
荊軻さんの毒デバフでこれなので、本領発揮できていれば薬を使う余地もなくミンチにされていた模様。
アグリュト「伊達に埋葬機関から生き残っておらぬよ」

あと、活動報告にてレムナント・コード案募集しています。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=320095&uid=418240
作者の知識と想像力とネーミングセンスがもう限界なので、どうか……ご協力お願いします!

そして感想!
感想が一番のモチベなのでどうか!
よろしくお願いします!
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